「それ」を初めて見たのは、おいらたちがギルドに入って探検隊を結成して、まだ日も浅い頃のことだった。  
 
うっそうと生い茂った木々の葉すら隠してしまうような、濃いミルク色の霧が流れていく。  
この森に発生したダンジョンの名前は、『濃霧の森』  
視界の悪いこのダンジョンでは、「はぐれちゃった!」依頼が後を絶たない。  
森で離れ離れになってしまった相方を心配して、ギルドに救助を依頼してくるんだ。  
今日もそんなポケモンを助けるために、おいらたちはこの森にやってきていた。  
 
「もうかなり深くまで来たね。依頼のあった階までもう少しかなぁ」  
隣で早くも疲れてきちゃった様子で依頼メモを確認しているのは、パートナーのリオル。  
海岸で倒れていたおいらを助けてくれて、一緒に探検隊をすることになった大事な相棒だ。  
リオルというポケモンは幼そうな見かけをしているけれども、実は芯が強くって逞しい…  
って一般的には言われてるはずなんだけど、  
おいらのパートナーのこのリオルは、どうも違うみたいだ。  
海岸で初めて出会った時は、1人でギルドの建物にも入れなかったほどの怖がりだった。  
2人で冒険をするようになってからは、ちょっとはしっかりしてきたかなって思うけど、  
まだまだ頼りなくって、情けないなぁなんて感じちゃうこともしばしばだ。  
と、きゅるぅぅぅ〜…と切ない音が、霧の中で響いた。  
「あ…」  
リオルのお腹の音だ。  
「もー、リオルってばしょうがないなぁ」  
苦笑まじりに言うおいらだったけど、  
その音を聞いて思い出したかのように、おいらのお腹も小さくきゅるきゅるっと鳴って、空腹を主張しだした。  
「じゃ、次の階段を見つけたら、その途中でリンゴでも食べようか」  
「うん!」  
 
「ねえ、ヒコザル。人間だった頃のことって、何か思い出した?」  
「んー、まだ、全然…」  
「そっかぁ」  
階段に座ってリンゴを食べながら、リオルが久しぶりにそんなことを聞いてきた。  
最近ポケモン暮らし?が長くなってきて、ついつい自分でも忘れがちになるけど、  
おいらは人間だ。いや、人間だった。  
あの日、リオルと出会うまでは。  
なんでヒコザルになっちゃったのかわかんないし、人間だった頃の記憶はないけれど、  
何かしようとしてたんだってことだけは強く心に残っている。  
(何をしようとしてたんだろうなぁ…)  
「ねえ、ヒコザル」  
(時々ヘンな映像見えたりするしなぁ…。おいら、大丈夫かな)  
「ヒコザルってば!」  
「えっ?な、なに?」  
ぼうっと考え込んでいたら、リオルに肩をふにふにと肉球で突かれて、現実に引き戻された。  
リオルの興味はあっさり別なことへと移っていたようだ。  
 
「あのさ、ヒコザルは階段でたまにあるアレ、気づいてる?」  
「アレ?」  
そう言うリオルの指は、階段中央部にある隙間に向けられていた。  
階段の中央の折り返しにある、少し開けた部分の奥がずいぶんと広くなっていて、  
光の差し込まない目立たない場所に、更に奥に入っていけそうな空間がある。  
暗闇になってて目をこらさないとよく分からないけど、どこかにつながっていそうだ。  
「うん…。なんだろうね」  
今までもそんな隙間を見つけたことがあった。  
でも、いつもダンジョンを先に進むのが目的だったし、深く考えたこともなかったけれど、言われてみると気になる。  
「なんかね、奥から声が聞こえた気がしたんだけど」  
「えー?」  
おっかなびっくりその空洞へと近寄っていき、耳を寄せてみると、確かにそこからポケモンの声が聞こえてくる。  
「ほんとだ…」  
「ねっ、ねっ。なんだろう?行ってみない?」  
リオルの目が、興味深々に輝いている。  
昔のリオルだったら、怖がって「行くのやめようよぉ〜」とか言ってただろうに、少しは成長したってことなのかな。  
そんな思いを抱きつつ、そうっとその空洞へと進んでいくと、  
リオルが後ろからおいらの体にぴとっとくっつきながら、身を隠すようにしてついてきた。  
そんなに怖いんだったら「行ってみよう」なんて言わなきゃいいのに。  
(成長したようでしてないんだから…)  
 
意外と長く、トンネルのように続くその道を、足音をひそめながら進んでいくと  
聞こえてくる声が次第にはっきりしたものに変わってきた。  
これは…悲鳴?うめき声?  
いや違う。  
これは…何だ?  
(ダメだ。引き返した方がいい)  
嫌な予感がする。  
この先にあるのはきっと、おいら達がまだ見ちゃイケナイものだ。  
頭はしきりにそう警告してくるのに、不思議なほどに足は止まらず、1歩また1歩と先へ進んでいった。  
 
そして、その声が反響して聞こえるようになる頃には、おいらとリオルの目には、信じられない光景が映っていた。  
細い道を抜けると、意外と大きな空間が広がっていて、  
照明もほとんどない薄暗い暗闇の中で、数組のポケモン達がうごめき、その――愛し、合っていた。  
(う…わぁ…)  
互いに干渉しない距離を保ちながら、それぞれが思い思いに体を重ね合っている。  
荒い息遣いと、時折漏れる嬌声が部屋に交差し、独特な空気を作り上げていた。  
「これ…なに?なにしてるの?」  
横でポツリと呟くリオルの声を聞きながら、おいらの目はすぐ近くの1組のつがいに釘付けになっていた。  
ポケモンになり、人間だった頃より遥かにくっきりと闇を見通す瞳へと、飛び込んでくるその光景に…。  
 
「はぁっ、はぁっ、くっ、ううっ!」  
「みっ、みぃぃっ!すごいよぉ…」  
おいらと変わらないくらいの大きさのミミロルに覆いかぶさるように、ドーブルが乗っている。  
大きく開かれた股の間に入り込んで、盛んに腰を振っていた。  
お互いに喘ぎ声を漏らしながら、律動的に体が寄り、離れ、  
その度に辺りに、ずちゅっ…ぬちゅっ…という粘液音が響く。  
「みみぃっ!き、気持ちイイよぉ!ドーブルの、おっきぃ…!」  
「お前は可愛いなぁ、ミミロル。2回もタマゴ産んでるのに、まだきゅうきゅうしてやがる」  
快感によがるミミロルの頬を、そっとドーブルの筆先のような尾がなでると、  
その柔らかな先端はつつーっと体をなぞるように下っていき、  
ドーブルとミミロルの交わっている部位へと辿り着いて、そこにある敏感な臓器を撫でるように刺激し始めた。  
先端から粘液が滴って、そこをてらてらと淫猥に輝かせている。  
「ふぁぁっ!そんなっ、入れながら、そんなとこ弄らないで…!」  
その瞬間、ミミロルの強靭なバネを内包した体がきゅうっと弓なりになって、  
小さな体には堪え切れないほどの快感が襲っていることを訴えるが、  
ドーブルは構わずに両手で腰を押さえこんで、ずちゅっ…ぬちゅっ…と抽送を続けていた。  
 
(ドーブルが…オチンチンをミミロルの中に、入れてる…)  
時折見えるドーブルの股間のそれは、自分のものとは似ても似つかないほどに大きかったけど、  
オチンチンに間違いない。  
最初ミミロルが襲われてるのかと思ったけど、そうじゃない。  
ミミロルはそんなことをされて、喜んでる。  
(これって、えっちなことなんじゃあ…?)  
人間だった頃の記憶か、動物的な勘か。  
どっちか分からないけど、今目の前で行われている行為が、「えっちなこと」であることは理解できた。  
そしてそれこそがタマゴを作るための行為であることも。  
 
リオルはどうか知らないけど、おいらはもう「タマゴはペリッパーが運んでくる」とか、  
「キャベツ畑に落ちてる」とかいう話を信じてたわけじゃない。  
オスとメスがえっちなことをすると、タマゴができるんだってことは知っていた。  
ただ、そのえっちなことって、キスとか、その…そういうのだと思ってたけど、  
まさか…まさか、こんな…。  
 
目の前で容赦なく行われる性行為。  
2体のあえぎ声、乱れる息遣い、淫靡な香り、そして、粘液音。  
薄暗い中ぼんやりと見える、ドーブルの立派な男性器と、ミミロルの大きく拡げられた女性器。  
まだ子供のおいらが知るべきじゃない、見ちゃいけないこと。  
でも、見たい…。  
心臓が口から飛び出てきそうなほどに強く打っているのを感じながら、  
おいらは目を背けることができずにいた。  
 
「みっ!みぃぃっ!イクぅ、イっちゃうよぉ!」  
「いいぞぉ、イっちゃえよ。オレの液が欲しいんだろ?」  
「うんっ、うんっ!あっ、子供、まだ欲しいのぉ…!ああっ!ひっ!」  
ミミロルが短い腕をいっぱいに伸ばしてオスを誘い込むと、  
それまで比較的ゆっくりだったドーブルの腰の動きが、激しくなり、  
ずんっとミミロルの奥底までえぐり込むように突きこまれるようになる。  
「はぁっ、すっごぉい、奥まで、当たるよぉ…!またおっきくなってるよぉ、ダメっ、もうダメぇ」  
恍惚の表情を浮かべながら、ひくっ、ひくっと腰を痙攣させるミミロル。  
「……っ!!」と声にならない声をあげて、一際大きく首をのけぞらせると、  
はぁぁっ…と大きく息をついて、くたっと体の力が抜けてしまった。  
その柔らかくなった体を抱きとめたまま、名残惜しそうに腰の前後運動を続けていたドーブルも、  
「ううっ!」  
と一声うめき声をあげると、体をきゅうっと反らせて固まってしまう。  
「あっ、ああっ…、熱いの…、流れ込んでる…!」  
その瞬間、ぼうっと宙を見つめていたミミロルが、幸せそうにそう呟くのが聞こえた。  
 
「気持ちよかったか?ミミロル」  
「うん…」  
まだ性器で体を結合させたままの2体は、ゆっくりと顔を寄せ、唇を求めあう。  
くちゅっ…くちゅっ…と音がして、唇の隙間から互いの舌が絡んでいるのが見えた。  
そうして互いの粘膜を上下2か所で結合させながら、  
ドーブルとミミロルは更に貪欲に手足を、しっぽを、耳先を動かして、互いに感じ合っていた。  
「キス…してる…」  
その行為だけが理解の範疇にあったのだろう。  
ずっと黙ってたリオルが、隣で小さくポツリと呟くのが聞こえた。  
 
2度、3度と舌を絡め、はぁ…っと大きく息をつくと、そっとドーブルが身を起こす。  
「あっ…!垂れちゃう…」  
ぬぷっと音を立ててオスの茎を引き抜かれ、まだ塞がり切らない姿をおいらの目の前にさらけ出したその孔から、  
打ち注がれた白濁液が、どろどろと流れ出た。  
(あれが、女の子の…。女の子は、あそこにオチンチンが入る所があるんだ…)  
その光景を見た瞬間、今まで味わったことがないくらいかぁっと熱く顔が紅潮し、  
耳先まで真っ赤になるのが自分でも分かった。  
「ほら、しっかりきれいにしろよ」  
「んっ、むぐっ…くむっ…」  
ミミロルの秘所から引き抜かれた肉茎が、今度は小さな口へとねじ込まれる。  
嬉しそうにその全身に舌を絡めながら、ミミロルは奉仕を続けていた。  
 
「オチンチン、舐めてる…」  
再び、隣でぽつりとリオルが呟く。  
と、それに反応してこちらを振り向いたドーブルが、不機嫌そうにじろりと睨めつけてきた。  
「おい、何見てんだよ。他人に干渉しないのが、ここのルールだろ」  
「ご、ごめんなさい!」  
ミミロルの口に突きこまれてもまだ半ば以上外に出ている、ドーブルの大きな肉棒から目を背け、  
反射的に頭を下げて謝ると、未だに呆然としたままのリオルの頭も無理やり下げて謝らせて、  
おいらたちは急いでその穴から逃げ出した。  
間違えてモンスターハウスに入っちゃった時と同じくらいの勢いで。  
 
今回の探検は失敗だった。  
あの後結局、リオルはずっと心ここにあらずって感じで、全然使い物にならなくなっちゃって、  
あなぬけの玉を使ってダンジョンから脱出してきたのだった。  
 
「ねえ、ヒコザル。怒ってる?」  
「そんなことないよ。探検は…また次頑張ればいいんだし」  
後ろからすまなそうなリオルの声がする。  
おいらは振り向きもせずにそう答えた。  
「ごめん」  
「謝らなくていいって」  
ギルドへ帰る道すがら、さっきからずっとこんな感じだ。  
リオルを後ろに連れて、早足ですたすたと歩いていく。  
そうでもしないと、ゆっくり歩いていると、さっきの光景がすぐに頭に浮かんできて、  
かぁっと頭の芯が熱くなって、心臓がドキドキしちゃって、そして…  
 
「ねえ、ヒコザル、さっきのポケモン達、何してたの?」  
「し、知らないよ!おいらが分かるわけないじゃん!」  
「そっか…」  
突然聞いてきたリオルに、思わず怒鳴るような口調で言ってしまう。  
自分で言ってても分かるくらいのきついトーンに、リオルはしゅんとなって黙り込んでしまった。  
(ごめん、おいら、ちょっとだけなら分かるけど、とてもリオルにそんなこと…説明できないよ!)  
 
ひたすら無言でギルドへの長い道のりを歩いていく。  
するとリオルが、また小声で後ろから聞いてきた。  
「ねえ、ヒコザル。もしかして、さっきのアレって、えっちなことなのかな?」  
「なっ!何言ってんだよ!知らないって言ってるだろ!」  
「ヒコザル、さっきから顔真っ赤だよ?」  
「これは、炎タイプだから!!」  
後ろを振り向いて否定すると、その強い勢いに気圧されたようにリオルは詰まってしまった。  
そのまま更に足を速めて歩いていくと、  
「じゃあギルドのみんなに聞いてみる」  
後ろからぽつりとつぶやく声が聞こえた。  
(うう…。ここで「聞くな」っていうのもヘンだし…)  
結局ただ黙ったまま、リオルの前をすたすたと歩き続けた。  
だって、もし横に並んで歩いたりしたら…  
さっきの光景を思い出す度に、オチンチンがカチカチになって大きくなっちゃってるのが、リオルにバレちゃうんだもん。  
(これを…、このおっきくなったオチンチンを、さっきのドーブルがしてたみたいに、  
女の子の中に入れちゃうのが…タマゴを作るためにすること?そんなの、信じられないよ…)  
 
「おいら、ちょっと町によってくるから。リオルは先にギルドに帰っててよ」  
「えっ?」  
町に着く頃には、おいらもだいぶ落ち着いていた。  
さっきの出来事はどういうことなのか、どうしても確かめておきたい。  
でも、ギルドのみんながそんなこと教えてくれないのは分かっていた。  
 
「リオルはみんなに聞きたいことがあるんでしょ?先にギルドに行きなよ」  
「いや…、ヒコザルも一緒に…」  
やっぱりだ。  
リオルはおいらと一緒ならギルドのみんなに聞けると思ったんだろうけど、  
いつまでもおいらに甘えられても困る。  
「ダメだよ。聞きたいことがあるんなら、自分で聞きな」  
そっけないおいらの言葉に、すねたような顔をするリオル。  
これからリオルに質問されて困ることになるかもしれない、ギルドのみんなの顔を想像して、  
心の中でちょっとだけごめんねを言いながら、おいらは1人で町へと歩いて行った。  
 
「ああ、『踊り場』のことだぁな」  
「踊り場?」  
やってきたのはガラガラ道場。  
ダンジョンやモンスターに詳しいここなら、知っているはずだ。  
真面目な顔をして聞くと、ガラガラはあっさりと教えてくれた。  
「ヒコザルはギルドで探検隊になった時に、ダンジョンでは階段はさっさと降りるように言われなかっただか?」  
うーん、最初ギルドに入った時は、まだポケモンになりたてで混乱しててあんまり覚えてないんだけど…  
確かそんなことをペラップから言われたような気がしないでもない。  
 
「不思議のダンジョンはな、いろんな混乱を避けるために、階層ごとにオスとメスの棲み分けがされてるだ。  
奇数階にはオス、偶数階にはメスってな。  
で、タマゴを作る時は、間にある階段の踊り場に作られた空間でする決まりになってるだよ」  
そういうことだったんだ…  
「だから、探検隊はそこには入っちゃいけないし、中でも他人に干渉しないとか、いろいろ決まりがあるだよ」  
「そうなんだ…。ありがとう、ガラガラ」  
短くお礼を言うと、おいらはガラガラ道場をあとにした。  
 
おいらは知らなかったとはいえ、入っちゃいけない決まりのところに入っちゃったのか。  
ガラガラのおかげで、どうしてあんな所にあんな行為をする場所があるのかは理解できた。  
でも、やっぱり初めて見た「タマゴを作るためにする大人のえっちなこと」の衝撃はすさまじく、  
ちょっと目を閉じるとすぐにでもあの生々しい光景が浮かんできて、  
また硬くなっちゃいそうなオチンチンを、前かがみになって隠しながら、ギルドへと帰っていった。  
 
「ヒコザルぅ〜!」  
いつものおいらたちの部屋に入ると、いきなりべそをかいたリオルが抱きついてきた。  
なんとなくそうなる気はしてたけど。  
「もー、どうしたんだよ、リオル」  
 
なんでもリオルは、あの後散々迷った末にビッパに相談したらしい。  
するとビッパは「し、し、し、知らないでゲス〜。キマワリ姉さんにでも聞いてみるでゲス〜」と言って去っていき、  
キマワリは「キャー!恥ずかしいですわ!」と言って騒ぎまくり、  
チリーンは完全に知らん顔。  
結局騒ぎを聞きつけたペラップがやってきて、  
「まだタマゴも作れないおこちゃまが知る必要はない!  
階段はすぐ降りろって最初に言っておいたのを聞いてなかったのか!」  
と散々怒られたらしい。  
うーん。予想通りの反応。  
おいらがいないと、リオルはみんなに聞くこともできないかもしれないって思ってたのに、  
ちゃんと聞くことができたのは驚きだったけど。  
 
ペラップの言うとおり、リオルというポケモンは進化するまでタマゴを作れない。  
分類的にはピチューとかピィとかと一緒で、赤ちゃんみたいなもんだ。  
実際オチンチンのおっきさも赤ちゃんみたいだし…ってのは関係ないか。  
でも、ペラップが説明せずに怒っちゃう気持ちも分かる気がした。  
何にも知らない子供に、そういうの説明するのって難しいやら気が咎めるやらで、  
少しだけわかるおいらだって、知らないふりしちゃうぐらいなんだから。  
 
結局なだめているうちにリオルは落ち着いて、  
それから冒険のための道具を整理したり、新しく依頼を見に行ったり、  
これまでと変わらない暮らしが戻ってきたように感じていた。  
 
でも、夜になってあんなに困ったことになるとは、その時は全然思ってもみなかった…。  
おいらもペラップも、甘く見ていたんだ。  
何も知らないところに初めて大人の性行為を目にしてしまった子供の反応というものを。  
 
「じゃあ、おやすみ。リオル」  
「うん」  
そう言って寝床に手を触れた瞬間、最近お馴染みになりつつあるあの感覚に襲われた。  
――キィィィン…  
(うわ、またあの感じだ)  
耳鳴りとめまいがして、倒れそうになる。  
あっという間に視界が暗転し、全く別な世界の映像が頭の中に流れ込んできた。  
(今度は…何だ?)  
 
場所はすぐに分かった。この部屋だ。  
自分が寝ているのが見える。  
宙に浮かんで上空から見つめるようになったような視線の下で、  
自分――ヒコザルが横たわっている。  
その横で、何やらリオルがおかしな動きをしていた。  
ヒコザルの顔を覗き込むように見つめて、なにやらもじもじと体を動かしている。  
(何してるんだろう…?)  
と、視点が変わり、正面からリオルの顔が見えるようになった。  
どうやら自分の視点に戻ってきたようだ。  
こちらを見つめるリオルの頬は紅潮し、瞳はうるうると潤んでいる。  
今まで見たこともない表情だ。  
熱でもあるんだろうか。  
「ヒコザルぅ…」  
一言そう呟くと、リオルは身動きできないままのヒコザルにそっと口を寄せてきて…  
(はぁぁぁ!?いや、マジ、ダメだって!おいらのファーストキスが!いや、そーじゃなくて、オス同士だし!ダメぇぇ!)  
というヒコザルの心の叫びも空しく――  
 
「っだああぁぁぁっ!!」  
「うわっ!な、何?どしたの、ヒコザル?」  
あまりのショッキング映像っぷりに、はぁっはぁっと肩で息をしていると、  
「ヒコザル、また何か見えたの?」  
とリオルが心配そうに聞いてきた。  
いつもの純粋そうな、あどけない顔だ。  
でも、さっきの映像の蕩けたような顔のリオルは…。  
「ボクの顔、どうかした?」  
「あ、いや、なんでも…ないよ」  
じっと見つめるおいらを不思議そうに見返してくるリオル。  
ふいっと目をそらすと、おいらは考え込んでしまった。  
 
なんでもない…わけがない。  
今までも何度か同じように白昼夢のような映像を見た。  
そしてそれは、100%確実に、現実に起こった。  
間違っていたためしがない。  
 
(まずい。これは、とんでもなくまずいよ)  
貞操の危機だし。  
今まで考えたこともなかったけど、リオルってばおいらのこと“そういう意味”で好きなの?  
そう思ってみると、突然海岸で身元不明者と会って、すぐチーム結成って積極的すぎじゃないか?  
一目惚れ?  
ていうか、パートナーって響き自体ヤバいよね。人生のパートナー的な感じ?  
ゴメン、リオル。おいらキミのこと友達としてしか見てなくて!  
(うあああああああああああああああああああああ)  
 
「ヒコザル、大丈夫なの?」  
まるでコダックみたいに頭を抱え込んでしまったおいらを、  
後ろからそっとリオルが抱きしめる。  
「ひぃっ!!」  
「えっ?」  
思わずビクっとしてその手を振りほどいてしまったおいらを、悲しそうなリオルの目が見つめていた。  
「ねえ、ヒコザル。今日ヘンだよ。あの…ダンジョンから帰ってきてから。なんか、隠してるみたい」  
「……」  
「せっかく2人で探検隊をつくろうってチームを組んで、一緒に頑張ってきたのに、どうしたの?  
ギルドのみんなもボクを子供扱いするし。除けものにされるのはヤだよ…」  
(うわ、泣きそう…)  
言葉を発する度に、リオルの大きな瞳が潤んでいき、ついにぽろぽろと雫がこぼれ始めてしまった。  
 
「ゴメン。リオル」  
目の前で頬を伝っていく涙を見て、おいらはさっきまでリオルをどれだけ苦しめていたかを思い知らされた。  
リオルの言う通りだ。  
おいらってば、馬鹿みたいだ。  
ドーブルとミミロルがえっちなことしてるところを見てしまっただけで、こんなに動揺して、1人で勝手に背負いこんで。  
おいらが一番、リオルを子供扱いしてた。  
たった1人の大事なパートナーなんだから、もっとちゃんと一人前のポケモンとして扱ってあげないと。  
 
さっきの映像だって、今まで見た映像が全部現実になってるからって、今度もそうなるとは限らない。  
多分、このままリオルに何も教えないまま放っておいたらああなっちゃうぞってことなんだ。  
今からだって間に合うかもしれない。  
リオルにちゃんと教えてあげればいいんだ。  
そういう行為の意味を。  
そうすれば、あんなことにはならないに違いない!  
「ちゃんと、説明するね」  
おいらはきちんと座り込んで、リオルの目を正面から見ながら話しだした。  
 
「あのね、今日ドーブルとミミロルはタマゴを作ってたんだ」  
「タマゴを…?」  
「うん。ああやって、その、え…えっちをすると、タマゴができるんだ」  
真面目な話をしているつもりなのに、その言葉を出した瞬間、またかぁっと顔が紅潮するのを感じた。  
「なんでえっちなことするとタマゴができるの?」  
「なんでって…。そういうもんなんだよ」  
「なんでドーブルはミミロルを襲ってたの?」  
「いや、あれは襲ってたんじゃなくてね、えっちなことを…」  
「えっちなことなの?ドーブルってばミミロルにオチンチン入れてたよ。なんで?」  
 
後から後から出てくる、リオルの「なんで?」「なんで?」「なんで?」…  
(あー。もう無理)  
さっきの覚悟はどこへやら。ものの数分で白旗だった。  
好奇心のままに疑問をぶつけてくるリオルと、それにうまく説明ができない自分に混乱して、  
まるでひどい船酔いになったみたいに目の前がくらくらと回り始めてしまった。  
 
「もー、いい加減にしろよ!リオルだってチンチンあるから分かるだろ?  
チンチンがピーンって固くなったら、それを入れちゃうのがえっちなの!」  
「そんな…怒らなくったって…」  
おいらだって、詳しく知っているわけじゃない。  
なんでオチンチンを入れちゃうのがえっちなのか、そんなことする理由も、それでタマゴができる仕組みも分からない。  
でも、それでいいんだ。多分。  
大人になったら分かることなんだから。  
大人になったら…おいらも…  
今日見たドーブルとミミロルみたいに、あんなことを…  
 
あの時の光景も、辺りに響く喘ぎ声も、刺激的な香りも、まだ鮮明に思い出せる。  
五感に染み付いたその記憶に、自分の喉元でごくりという音が鳴るのを感じた。  
そんな時、リオルが発した新たな「なんで?」は、おいらを凍りつかせた。  
 
「ねえ、なんでヒコザルのオチンチンおっきくなってるの?」  
「っ!!」  
慌てて隠したけど、当てられた手のひらの下ですっかり元気になってしまったオチンチンが  
ヒクヒクと震えているのが感じられた。  
「こ、これは…その…」  
なんでだろう。あの時の光景を思い出すと、すぐにこうなっちゃう。  
興奮しているのは自分でもわかるけど、どうしたら収まるのかは分からなかった。  
 
「ヒコザルは…ボクとえっちしたいの?」  
「は、はぁぁ!?ち、違うよ!何言ってるんだよ!」  
「でも、オチンチンを固くしてえっちするんでしょ?あの…ドーブルみたいに」  
「だから…それは…」  
いや、それはそーなんだけどね。  
でも、それとこれとは違うんだよね。  
おいらは別にリオルに興奮してオチンチンが固くなってるわけじゃなくて、  
だからオチンチンが固くなってるからって、リオルとえっちがしたいわけじゃないわけで…  
 
頭の中ではいろんな言葉が渦巻いてるけど、うまく口からは出てくれなくて、  
その間もオチンチンからはズキズキするほど興奮が伝わって来ていた。  
「う〜〜」  
こいつめ!静まれ!と思いながら自分の股間をにらんで、  
ぎゅうっと根元を握ってみるけど、意識すればするほどそこは硬さを増しているようだった。  
 
悪戦苦闘していると、リオルはついにとんでもないことを言い始めた。  
「ボク、いいよ」  
「なにが?」  
「ヒコザルがしたいならいいよ。えっちしても」  
「は…?ええっ!?」  
一瞬リオルが何を言っているのかわからなくて、硬直してしまったおいらの前で、  
リオルはじっとこちらを見つめて言い寄ってくる。  
「ボク、ヒコザルと会わなかったら…こうして探検隊をしてなかったら、絶対今みたいになれてなかったと思うんだ。  
ビクビクして、何もできないままで…。ただ1人で海岸を見つめてたと思う。  
でも今は、ヒコザルがいてくれるから、ボクの隣にいて勇気をくれるから、こうして頑張れてる。  
ボク、ヒコザルがいてくれるなら、どんな所だって行ける。どんな冒険だってできるよ。  
だから、ヒコザルがボクとその…えっちしたいって言うなら、ボクは…それでも…」  
 
いやいやいやいやいや、違うし。  
なんか流れ的に、おいらがリオルに無理矢理迫ってる感じになっちゃってるし。  
「違うんだってば、リオル。これは別に…」  
「ううん、いいよ。ボク、ヒコザルとなら」  
(うあああああ、聞いてねぇ〜!)  
再び頭を抱え込んだおいらの前で、リオルは突然すくっと立ち上がると  
「だってほら、ボクも…固くなってるし」  
きれいに反り返っているそこを、おいらに見せつけるように近づけてきたのだった。  
 
「リオル…」  
初めて見る。  
リオルのオチンチンが大きくなっているところ。  
普段はおいらの指ほどもないくらいちっちゃくって、短めの毛皮にギリギリ先端まで隠れちゃうくらいなのに、  
勃起すると意外に大きくなって、ツンと体からナナメ上に向かって突き出ていた。  
まだ未発達なことを示すように、きれいに先端まで皮に包まれているものの…  
(なんか、おいらのよりおっきくなってる…)  
同じくらいの背丈同士で向き合うと、互いに固く興奮した幼茎が比べっこをするように寄り合い、  
ずんぐりと太く成長したリオルのそこが、一回り小さなおいらのそこを見下ろしている。  
 
(普段はあんなにちっちゃいのに、なんでこんなにおっきくなるんだろ?)  
いつもはおいらの半分くらいしかないのに。  
種族が違うから?  
おいらと同じくらい固くなってるんだろうか?  
リオルの誤解を解かないと…という思いが、  
目の前に突然突き出された、自分以外の大きくなったオチンチンへの興味と好奇心に掻き消されてしまっていた。  
 
意識せずに、自然とそこに手が伸びていた。  
「やっ、ん…」  
「あ、ご、ごめん…」  
ちょん…っと手で先っぽを持ってみると、まるで注射を嫌がる子供のようにリオルは全身で反応して、身を引いてしまった。  
初めて触った自分以外の勃起したオチンチンは、  
想像通りに固くって、そして意外なほどに暖かかった。  
 
「ごめん、リオル」  
「ううん。ちょっと、びっくりしただけ」  
おいらいきなり何してんだ…。  
ちょっと冷静さを取り戻し、リオルの顔を見てもう一度謝ると、  
同時に顔をあげてこっちを見たリオルは、さっき映像で見たのと同じ表情をしていた。  
頬を真っ赤に染め上げて、大きな瞳を興奮で潤ませて。  
くん…くんっ…と荒くなった鼻息が、鼻腔の奥で小さく音を立てているのが分かった。  
(あ…。可愛い…)  
胸の奥で、心臓がドクンと高なるのを感じる。  
全身に鳥肌が立つような感覚が走った。  
実はさっきの映像を見た時も少し思ってたけど、頬を染めたリオルは…可愛かった。  
オス同士なのに、なんでこうもリオルのことを可愛らしく思うんだろう。  
もしかしておいらが元々人間だから、ポケモンであるリオルのことを寵愛する対象として見てしまうのかもしれないけど、  
自分に懐き、擦り寄ってくるこのリオルのことが、たまらなく愛しい。  
 
「いいよ。触っても」  
リオルの手に導かれるままに、再びぴと…とそこに触れた指先から、  
さっき感じたリオルの熱い体温が、おいらの手のひら全体に伝導してくるのが感じられた。  
 
「ボク、ヘンなんだ。今日ドーブルとミミロルを見てから、何度もこんなになっちゃって…」  
おいら、自分のことで夢中で気付かなかったけど、リオルも同じだったんだ。  
右手でそっとリオルのそこを包み込むようにして握りこむと、  
同じオチンチンだというのに、自分のを握った時とは全然違う硬さと、太さと、熱さが感じられる。  
きゅっと強めに力を入れると、トクトクトクと早鐘のように打つリオルの鼓動が伝わってきた。  
そしてそれに合わせるように、胸の内で自分自身の心臓の鼓動もどんどん早くなっていって、同じリズムを刻み始めた。  
 
「ボクも触っていい?」  
そう言いながら、もうリオルの手はおいらの先端に触れようとしていた。  
先っぽから少しだけピンク色の先端が出ているのが珍しいのか、そこをしきりに撫でてくる。  
「すっごく、固いんだね」  
「うぁっ…!」  
無遠慮に動き回る、柔らかな肉球を有する小さな手掌。  
自分で触るのとは全然違う、異質な刺激が幼茎からジンジンと昇ってきた。  
最初はくすぐったい感じをガマンしてたけど、次第にそれは明らかな「気持ちよさ」へと変化していき、  
ゆっくりと頭の中にモヤをかけ、おいらの心を埋めさせていった…。  
 
「あれ?液が出てるよ?」  
興味津々のリオルの声に、自分のオチンチンを見てみると、確かに先っぽから小さな雫が出ている。  
ぎゅうっと握りこまれると、あっという間に大きくなって、  
そこに触れたリオルの指との間にねっとりと糸をひいた。  
「あ、ねばーってしてる。オシッコじゃないんだ…」  
リオルは不思議そうにそれを見ると、  
「なんか…、えっちだね」  
恥ずかしそうに照れた表情を浮かべる。  
それがまた、おいらの心を昂ぶらせた。  
 
「リオル…オチンチン、触りすぎだよぉ…」  
ただリオルのオチンチンを握っていることしかできないおいらと違い、  
リオルはいつもよりずっと積極的だ。  
しきりにおいらのオチンチンの全体を手の平の肉球で滑らせるように刺激し、  
先端から出る粘液に触れ、糸を曳かせて愉しんでいる。  
「すっごい。ヒコザルのオチンチン、先っぽがにゅうって出てきたー」  
「あ…あ、うう〜、ん…」  
ついにおいらは立っていられなくなって、ぺたんと腰を下ろし、  
そのまま押し倒されるようにして組み敷かれてしまった。  
オチンチンから伝わってくるジンジンとした感覚が体を支配して、緩慢にしか動けない。  
はぁっ…とため息をついて目を閉じた、その瞬間を狙ったかのように、  
唇をかすめて温もりが横切っていく。  
 
「えへへ。キスしちゃった」  
驚いて目を開いたおいらの前で、相変わらずの照れ顔のままそう言うリオルのセリフが、  
やたらと遠くから聞こえたように感じられた。  
 
(うあああああああ…、ファーストキスが〜〜〜)  
「何すんだよぉ…」  
イヤなはずなのに、跳ねのけたいはずなのに、性器を初めて弄られる興奮が身を火照らせていて、  
か細い、まるで誘惑でもしているかのような声しか出てこなかった。  
「ヒコザルのそんな顔、初めて見る。すごいね、えっちって。ドキドキする」  
リオルの表情を見れば、もう完全にタガが外れてしまっているのが瞭然だった。  
腰が自然と…あの、ドーブルがしてたみたいに、ゆっくりと前後に揺すられ、  
同時に更に大きく、固くなりつつあるオチンチンが、おいらの股間の辺りに擦りつけられていた。  
もう、止めようがなかった。  
リオルも、そしておいらも。  
 
「ミミロルがしてたみたいにしてあげるね」  
「えっ…?」  
突然目の前からリオルがいなくなる。  
まさか…と思い、のそのそと上体を起こしたときには、  
もうリオルはおいらの広げられた足の真ん中に陣取って、先端へと口を近づけていた。  
「やっ、ダメっ…あ、んん!」  
躊躇なくぱくっと一口にくわえられてしまい、  
もしかしてリオルにオチンチンを食べられちゃうんじゃあ…という不安で身を一瞬固くしたけど、  
その直後に襲いかかってきたのは、さっきまでとは段違いの快感だった。  
 
んぐっ、くむっ…とくぐもった声を漏らしながら、リオルが一心にそこにしゃぶりついている。  
「ふあっ、ああ…、すっごぉい…」  
(体温ってこんなに暖かいんだ…)  
大事なところだけ温泉に浸かっているみたいにぽかぽかして、  
リオルの柔らかい舌が当たってにゅるにゅるする。  
気持ちいい。  
もう、それ意外の言葉が頭に浮かばないくらいに、ただ気持ちよかった。  
リオルの口元からは、ちゅうちゅうとまるでストローで吸い上げるような音が響いて、  
まるでおいらのオチンチンがチョコレートになって、リオルの口の中で溶けていって、  
吸われてるんじゃないかって思っちゃうほどだ。  
 
リオルはおいらのオチンチンだけじゃあ物足りないとばかりに、  
長い口腔を使って袋まで一緒に頬張ってしまって、  
おいらの股にあるものは、全部リオルの口の中にぱくりとくわえ込まれてしまった。  
そのまま舌でころころと転がされると、  
あまりの気持ちよさに、オシッコがしたくなってきた。  
 
「あ…ダメ!リオル、おいらオシッコ!!離して…んんっ!!」  
さすがにオシッコをリオルの口の中で出すわけにはいかない。  
快感で痺れた体を必死で動かして、リオルの口撫から逃れた、その瞬間、  
ガマンしていた快感が堰を切ったように流れ出して、先端から迸った。  
 
びゅるっ、ドクッ、ドクドク…!  
無理矢理口を離され、ぽかんとしているリオルの目の前で、  
おいらのオチンチンが勝手にヒクヒクと跳ねながら、真っ白な液を噴き上げている。  
体が芯から絞られるような絶頂感がこみ上げていた。  
「うわぁ…。何、これ?」  
おいらもリオルも、初めて見るその液体にびっくりしたけど、  
今までオシッコしか出ないと思っていたところからそんな体液が出ることが、  
すごくえっちなことなんだということを、心の中のどこかで理解していた。  
 
「ねえ、リオル」  
「?」  
「なんか…、すっごい気持ちよかった…」  
ベトベトになったオチンチンに顔を近づけて、クンクンと匂いを嗅いでいるリオルにそう言うと、  
「ほんと!?ボクも…ヒコザルにしてほしいな」  
嬉しそうに目を輝かせながら、同時にオチンチンも嬉しそうにピクピクと震わせる。  
 
座り込んだリオルに四つん這いになって近寄ってはみたものの、  
いきなり大事なところをくわえ込むことはできなくって、  
グルーミングするみたいに、小さく舌を出してリオルの胸元を撫で始めた。  
「んっ、くんっ…!」  
ただ毛皮を撫でているだけなのに、いつもとは違うのか、  
おいらの吐息が吹きかかる度に、リオルが身をよじらせながら息を荒らげている。  
(気持ち…いいのかな?)  
いきなり口に含むのは抵抗があったとはいえ、  
勃起して自分よりも大きくなっているリオルのオチンチンが、気にならない訳が無い。  
そりっ…そりっ…とお腹のあたりの薄めに生えた毛皮を舌で寝かしつけながらそこを見つめていると、  
触ってもないのにまるで痙攣してるみたいに、ヒクヒクと小刻みに悦んでいるのが見て取れた。  
リオルの体が、さっきの自分と同じように、快感に飲み込まれていっている。  
その事実は、意外な程の満足感をヒコザルに与えてくれた。  
 
おヘソのあたりをぺろぺろと舐め上げながら、  
股間からこっちを向いて真っ直ぐに狙いを定めているオチンチンを、そっと手の平で握りこんだ。  
「うう…ん〜!あっ!んっ!ヒコザルぅ…」  
明らかに自分の物よりも太く、指がギリギリ回るほどのそこを撫で回すと、リオルは全身でよがり始める。  
まるで赤ちゃんのオチンチンみたいに、勃起しても全然皮は剥けなかったけど、  
ゆっくりと触っているうちにくちゅくちゅと音がしてきて、  
中で液が分泌されているのが分かった。  
「ふぅぅぁあ…ん!出ちゃうよぉ…」  
(さっきのおいらと同じだ。あの、白い液が出そうになってるんだ)  
見てみたい。  
男の子はみんなあんなのが出るのが、確かめてみたい。  
もっと気持ちよくさせてあげなくちゃ。今以上に。  
その一心で手の中で脈打つオチンチンに口元を寄せると、はむっとその先端をくわえ込んだ。  
 
「あっ!んん〜っ!!」  
ただ口の中に含んでいるだけだというのに、リオルは電撃でもされたみたいに体を震わせている。  
さっきリオルに同じことをされたばかりのおいらには、リオルの気持ちがよく分かった。  
「ヒコザル…!これ、すっごい、気持ちい…い」  
そっとリオルの顔を見ると、口を半開きにして、目はぼうっと遠くを見つめている。  
ちろっと舌で先端付近を舐める度に、堪えきれない快感が体を襲っているのか、  
んん…とうめき声をあげながら、幼児がイヤイヤするようにゆっくりと首を振っていた。  
 
(可愛い…リオル、ほんとに可愛いよ…)  
経験の全くないおいらの愛撫に素直に反応し、おいらにされるがままになっているリオルを見ていると、  
今までにないほどに、リオルのことを大切に思う気持ちが高まってくるのを感じた。  
リオルは…海岸で倒れてたおいらを助けてくれて、親身になって心配してくれて。  
人間だったということ意外に記憶のない、こんなおいらを信じて、一緒に探検隊をしようと言ってくれた。  
このリオルがいなかったら、おいらは今頃どうしてたんだろう?  
何も分からずに、ただ途方に暮れていただけだったかもしれない。  
最近は探検隊をするのにも慣れてきて、リオルのことを情けないところが多いとか、  
怖がりでちょっと頼りなくって、「おいらが支えてあげなくちゃ」なんて思っちゃうけど、  
本当に支えられているのはおいらの方だ…。  
大事な、大事なパートナーのリオル。  
そんなリオルが、おいらにオチンチンをくわえられて、素直に快感に喘いでいる。  
その姿は、完全に理性を壊してしまうほどに可愛いらしく、そして愛しかった。  
 
(おいら、リオルのこと大好きだ…!)  
オス同士だとか、そんなの関係ない。  
自分の心に正直になってそう意識し始めると、ただ肌を寄せ合っているだけの部分からも、  
今までとは全然違う感覚が体に染み渡ってくるのが感じられた。  
(ああ、もう、無茶苦茶にしちゃいたい!)  
ぎゅうっと力任せに抱きしめて、潰れちゃうくらいに締め上げてしまいたい。  
「あっ、んんっ…!ふあぁぁっ…!あっ!」  
そんな激情を込めながら、口の中で幼茎の先端に舌先をねじ込んで刺激すると、  
元気に震えるツボミからわずかに分泌される粘液が、淫靡な香りを伴って口腔内に溶けて広がった。  
 
「きゅぅっ!ああ…ん、もう、ヘンになっちゃうよぉ!」  
時間にしてみればほんの数秒だったかもしれない。  
ぎゅっとお互いに手を握りあい、愛しさに胸をいっぱいにしながらオチンチンを舌で弄んでいると、  
突然リオルはきゅうっと身を震わせ、くたっと全身から力が抜けて、  
腰が抜けたみたいに横たわってしまった。  
慌ててオチンチンから口を離すと、そこは何も放出しないままに、  
ゆっくりと満足したように身を縮め始めていた。  
 
(白いの、出てこないや…)  
唾液に濡れたそのツボミをつんつんとつついてみても、先端からは何も出てこない。  
(やっぱりリオルってタマゴを作れないポケモンだし、おいらとは違うのかな)  
自分との違いに疑問を感じながらそこを見ていると、  
まだ快感の余韻に溺れたままの、ぼんやりとしたリオルの声が聞こえた。  
「ヒコザル、ボクの中に…入れる?」  
 
「え?」  
一瞬何を言っているのか分からず、ぽかんとするおいらの前で、  
リオルはゆっくりと足を開いて、オシリを手で広げてみせた。  
まるで、今日見たミミロルみたいに。  
「ボク、ヒコザルとえっちしたい。今日見たみたいに。ボクのここ、ヒコザルのオチンチン、入るかな?」  
「……っ!」  
違う。  
今日見たミミロルの股間には、メスにしかない、オチンチンの入る孔があったはずだ。  
リオルは多分、勘違いしてる。  
オスとオスでそんなこと、していいはずがない。できるはずがない。  
でも、  
(オシリには孔があるし、入る…よね。もしかして、オス同士でもできるの?)  
それが絶対に違うと言い切るだけの性知識は、おいらにはなかったし…  
頬を染めながらおいらを誘う大好きなリオルの姿に反応して、  
またズキズキと痛いほどに立ち上がっているオチンチンを抑える理性は、もはや欠片も存在しなかった。  
「入れて…みよっか」  
 
ふと思いついたままに、さっき出した白いネバネバする液をオチンチンに塗りつけて、  
ゆっくりと狙いを定めてその孔に近づける。  
ぴと…と先っぽが触れた瞬間、何とも言えない粘膜を掻き分ける感触が響き、  
意外なほどゆるやかに、先細りのピンク色の先端が内部へと侵入していくのが見えた。  
「んっ!ううっ、はあぁぁ…あ、いっ、きつい…よぉ」  
「うっわぁ…、すっごい…!」  
狭小なその孔に挿入されながら、包皮が今までになかったほどに剥き上がる。  
その新たに晒け出された粘膜は、今度はリオルの体内の粘膜で柔らかに包まれて、  
ぐちゅぐちゅと擦り上げられ、ただひたすらに快感だけを送り込んできていた。  
目の前にあるリオルのものよりも小さいながらも、立派に硬くなった肉茎を根元までしっかり突き入れて、  
下腹部にぽてっと当たった袋の温もりを感じるほどに身体を密着させると、  
まるでおいらのオチンチンが、そこをこじ開けるたった1つの鍵であったかのように  
頭の中でカチリと音がして、おいらとリオルの全てが一緒になって溶けていくように感じた。  
 
「ヒコザルぅ、入ってるね。ちょっとだけきついけど、ボク、嬉しいよ」  
「リオル…」  
体内に始めて異物を挿入されながらも、健気にそんなことを言うリオルが可愛くて仕方がない。  
小さなオチンチンを全部埋め込みながら、ぎゅうっと強くその体を抱きしめて  
「リオル、大好きだよぉ」  
と呟くと、まるでおいらの強い欲求を宥めるように、リオルの肉球がそっと脇腹を撫でてきた。  
「あ…、もう、ダメ…、さっきみたいに…出そう」  
「うん、いいよ。このまま…」  
さっき口の中で味わったよりもずっと熱い、締め付けてくる刺激に、  
そんなに長く耐えていることはできなかった。  
急速に快感が高まっていき、限界を超えていく。  
リオルの承諾の言葉を聞くか聞かないかのうちに、おいらはリオルの内部に液を注ぎ込んでいた…。  
 
「ごめん、リオル」  
「何で謝るの?ボク、嬉しいな。ヒコザルとえっちできて」  
2回も液を放出したオチンチンがしゅんと小さくなっていくと同時に、  
ちょっとだけ理性を取り戻してリオルに謝ると、  
リオルは幸せそうな顔をしておいらににっこりと微笑んだ。  
 
そしてそのまま、とんでもないことを言い始めた。  
「タマゴ、できるかな?」  
「………は?」  
予想だにしていなかったその言葉に、思わず頭が真っ白になる。  
「だって、えっちしたらタマゴができるんでしょ?さっきそう言ってたじゃん」  
「……」  
うん、確かにさっき、おいらはそう言ったね。  
でもね、それはタマゴはメスが産むもんだっていう常識のもとであって、  
だからえっちはオスとメスがするもんなわけで…。  
でも確かに思い出してみると、さっきリオルに「えっちはオスとメスがするもんだよ」と言った記憶はない。  
そんなまさか、リオルがそこまで何も知らないどーしよーもないコドモだったなんて…  
(うあああああああああああああああああああああ)  
本日2度目。  
おいらはまたしても、コダックみたいに頭を抱え込んでしまった。  
 
「ねえ、ヒコザルってばー」  
何も言ってくれないおいらに、ちょっとぷぅっと頬を膨らませながら  
リオルがおいらの肩を肉球でつついてくる。  
「……。うん。そう…だね」  
もう、今更説明しようにも、何の気力も湧いてこなかった。  
明日にも、オシベとメシベの話でもしてあげよう。  
「もう、寝よっか。遅いし」  
「うん」  
自分で言いながら分かるほどやる気のない相槌をリオルに返しながら、  
初めて絶頂を味わった後の心地よい疲労感と、  
全く性知識のないリオルにとんでもないことをしてしまった罪悪感を抱えつつ、  
おいらは深い眠りへと落ちていった。  
 
「起きろぉぉぉーー!!!!朝だぞーー!!!」  
ドスドスドスと無遠慮な足音を響かせながら、その足音をかき消してしまうほどの大声が迫ってくる。  
まだ日も昇るか昇らないかという早朝だというのに。  
こうしてギルドのみんなを叩き起していくのがドゴームの日課だ。  
早く起きないと、耳元でハイパーボイスをくらってしまい、  
半日は頭がくらくらしながら仕事する羽目になっちゃう。  
まだまどろむ意識を必死で叩き起して、起き上がろうとするが、妙に体が重たくって動かない。  
なんだ…かなしばり?と考えている間もなく、バンッと大きな音を立ててドアが開いて…  
「起きろぉぉぉーー!!!朝………」  
次の瞬間、あのドゴームが、声に詰まって凍りついたように動きを止めていた。  
異様な雰囲気を感じ取って、あっという間に覚醒した意識で自分の状況を確かめて、  
おいらもドゴームと同じように凍りついてしまった。  
 
「っ!!」  
あの大音量の中、よくまだ寝てられるもんだと思うけど、  
呑気に寝ぼけたリオルが、おいらにのしかかる様にして覆いかぶさって、  
へこへこと情けなく腰を揺すっている。  
まるでドゴームに見せつけるような角度で、おいらの太ももに朝から元気に育った幼茎が擦りつけられていた。  
「い、いや、あの…これは…」  
「えへへぇ、ヒコザル、大好き〜」  
必死で言い訳を考えるものの、何も言葉が出てこないおいらの横で、  
幸せそうに呟くリオルの寝言が、シ…ンと静まり返っていた部屋に痛々しいまでに響いた。  
「あ…、うん、その、起きてれば、いいんだ。うん…」  
「ま、待ってぇ!違うんだ〜!」  
目を背け、ドアの閉まるカチャリという音も立てないようにそっと出て行くドゴームを見送ると、  
おいらはただ頭を抱えていた。  
 
 
『みっつー!みんな笑顔で明るいギルド!』  
「さあ、今日もみんな頑張って仕事するんだよ」  
朝の集会が終わり、みんなが各々の持ち場へと散っていく。  
まだ混乱が冷めやらず、リオルと一緒にしばらくぼうっと立ち尽くしていると、  
ふ…と、プクリン親方と目が合った。  
するとプクリンは、にっこりとその大きな瞳を細めながら、  
「キミたちはホントに仲がいいね。ともだちともだち〜♪」  
意味ありげにそう言って、歩いていったのだった。  
 
 
 
終わり  
 
 

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