「おいアブソル。テメェ、白に分類されてるってなぁどういうわけだ? 俺達、悪仲間だよな? なに、裏切り?」
「なんだぁ、アブソルたんはトゲチックやらの仲間?」
ヘルガーとマニューラがアブソルを追い詰めている。
「くっ、お前ら…人の粗探しばかりしている暇があったらボスのドンカラス様のお役に立つよう頭を働かせようとは思わないのか!」
アブソルが牙を剥いて凄むも、二匹は笑い飛ばしてさらに追い詰める。
「ほ〜ら、そうやっていい子ちゃんぶりやがって、マジでムカつくんだよな」
「同期のくせに俺たちゃヒラ、お前はボスの腹心だ。調子こいてんじゃね?」
「ボスのお役に立とうともしていないくせに!」
威嚇の耐性を崩さないながらも、じりじりと後退するアブソル。
「ヘルガー、マニューラ…お前たちはボスに何をした? どう貢献した!? ボスの命令も部下たちに任せ、遊び放題じゃないか!」
「ハァ? お前は調子に乗ってんだよ、いつもボスにいいカッコ見せて気に入られようとして…」
「調子に乗っているのはお前らだ! 俺はただ、ボスのお役に立とうと…」
「…見苦しいぞ、アブソル」
「!!」
アブソルが後退しようとすると、ブラッキーに背後を取られた。
「…お前は悪タイプの恥だ」
「ブ、ブラッキー!?…お前まで…」
ブラッキーはアブソルと並ぶドンカラスの側近だ。怠け者なヘルガーやマニューラと違って、ドンカラスに忠実な部下である。
「どういうつもりだ、ブラッキー」
「ヒャハハハ! 能天気なもんだな、アブソル。ブラッキー様もお前の出しゃばりには愛想つかせてんだよ!」
「言いがかりだ!」
アブソルは高笑いするヘルガーに吠えつくが、ブラッキーがアブソルの前に立った。
「…新人の癖に、調子に乗っているようだな」
「な…なに…ブラッキー、俺はただ…」
「……新人の癖に、大御所の俺を組織のNo.2の座から蹴落として調子に乗りやがって……」
「ち、違う! 俺はそんなつもりは……」
徐々に、3匹がアブソルを包囲する。
「…やっぱり、白い奴はせこいよなぁ、いっつも人前ではいい顔して、気に入られるのが得意技だ。」
「ブラッキー、お前たち…俺を馬鹿にするのも大概にしろ、男の癖に粘着質な…ボスへの貢献を形にして、俺に歯向かったらどうだ。」
「ククク…」
「へへへへへ…」
「………」
「? 何がおかしい?」
ヘルガーとマニューらが怪しく笑った。冷酷なブラッキーさえも、微笑を漏らしている。
「アブソル、俺がお前を見苦しいと言った意味が分からないようだな」
「な、なに?」
切り出したのはブラッキーだった。
「アブソル、お前、まだ秘密がばれていないと思っているのか?」
「…秘密、なんのことだ」
「クククッ、とぼけやがって」
マニューラがアブソルをじろじろ見つめる。
「アブソル、かっこつけんのやめにしない? お前の正体なんてバレてんだよ」
「…言っている意味が分からないな」
「そうか、言っても分からないか」
マニューラの言葉と同時に、ヘルガーがアブソルに突進し、アブソルを突き飛ばした。
「うわっ!」
アブソルが横倒しにされる。マニューラはすかさずそのアブソルの後ろ足をつかみ、無理やり開かせた。
「うっ!」
ブラッキーがアブソルの正面に立ち、アブソルを見下ろした。
「…とぼけるのもここまでだな、アブソル」
アブソルの後ろ足の付け根に、毛皮に隠れて見えづらいが筋が入っている。
マニューラが堪え切れずに大笑いし始めた。
「クハハハハハハ!!! 俺もはじめは気づかなかったぜ、まさかお前が♀だなんてなぁ」
「…………!! そ、それがどうした!!」
アブソルは最初、隙を突かれたといった顔をしたが、すぐに強気に戻る。
「♀で悪いか…この組織には、♀が法度であるという決まりでもあるのか!?」
マニューラが顎を摩る。
「いーや、ないな…」
「組織の中には雌だっているしな」
「…ドンカラス様も、ヒラも幹部にも関わらず、♂♀に区別はしていない…」
「フン、そうだろう。」
アブソルが鼻を鳴らし、マニューラを蹴飛ばして起き上がった。
「残念だったな、俺を叩く口実を必死に探しているようだが…俺が♀であることは俺の口実になんかならないからな…」
「ククッ…」
「へへへ…」
「………フッ…」
「なんだ、お前たち…まだ俺に文句があるのか、文句があるならせめて、幹部にでもなってから…」
「いや、今、言わせてもらおうか」
マニューラがアブソルの正面に立った。
「! な、なにっ……」
アブソルが反応するよりも早く、マニューラが冷気の籠った息を吹きつける。
「!!」
【こごえるかぜ】だ。凄まじい冷気を浴びて、アブソルが思わず膝を折る。
「くっ…!」
すかさず、ヘルガーがアブソルに飛びかかり、仰向けに組み伏せた。
「な、なにをする!」
ヘルガーが卑しく笑った。
「へへへへへ……」
「ヘルガー、マニューラ、なんのつもりだ! ふざけるな! 幹部にたてつくのは裏切り行為だぞ!」
アブソルがどんなに凄んでも、ヘルガーは全く怯む様子がない。
ヘルガーがにたっと嫌な笑みをアブソルに見せた。
「お前さぁ、♀の癖にいい気になるなよ」
「なっ…何!?」
「♀のくせによぉ、ボスのドンカラス様に気に入られようとか、なぁ」
「き、貴様……」
マニューラがヘルガーの後ろで、アブソルを嘲笑う。
「まさか、ボスに身体売ってやがるんじゃねぇか」
「なっ、馬鹿を言うな!」
「へぇーっ、そんなことして昇進してやがったのか、せこいなぁ」
「お、俺はそんなことはしていない!」
「おい、アブソル……よく聞け」
「くっ…」
ヘルガーがアブソルを睨みつけた。
「……マンコぶら下げてる野郎が組織に入ろうって魂胆がダメなんだよ。これだから白い奴は……」
「黙れっ! 白い白いと言うな! 色が何だ! つまらないことばかり言いやがって! 白に分類されるからなんだ!」
「お前みたいな白いポケモンには、おべっか使う遺伝子が細胞に染みついてるってことだよ」
「この野郎…勝手なことばかり言いやがって…」
ヘルガーがにやける。
「諦めやがれ、白いポケモンってぇのは、俺たち誇り高い黒いポケモンとは相反するもんなんだよ…」
「俺は誇り高い悪タイプのポケモンだ!!!」
「自覚がねぇみたいだな、お前が黒いポケモンになりきれてねぇって自覚が。思い知らせてやるよ……」
「…何…」
ヘルガーがアブソルの頬に涎を垂らした。
「うわっ、何を……」
アブソルがヘルガーの異変に気付いた。息が荒く、顔がより凶暴になっている。
それよりも、アブソルはヘルガーの下半身の異変に気がついた。
ヘルガーの股間から、どす黒い雄の象徴がそそり立っていた。
「なっ、なんのつもりだ…」
「つもりじゃねぇよ、黒の遺伝子ってやつがどんなもんなのか…お前の身体に教えてやろうと思ってな……」
「…ッ…貴様ッ…!!!」
「いいねぇ、ヘルガーから黒の遺伝子もらっちゃえば? そうしたらお前も黒になれるぞ?」
マニューラも笑いながら、後方から覗いている。
アブソルはもがこうとするが、先ほどの【にらみつける】でパワーが下がっているせいか、力が思うように出ない。
「へへへへへ…アブソル、てめぇが泣き叫ぶ顔が早く見たいぜ……」
「くっ……」
アブソルはまだ処女だ。アブソルの顔が、恐怖で引き攣る。
「やめろ」
キッパリと、ヘルガーを止めたのはブラッキーだった。
ヘルガーが大人しく、アブソルから降りる。
アブソルは一瞬、助かったと思ったが、その瞬間にブラッキーがヘルガーを一飛びで飛び越して、アブソルにのしかかった。
「!!」
ブラッキーは振り返り、牙を剥いてヘルガーに笑いかけた。
「…分かっているな、俺が先だ。お前ら、俺が楽しんでる間は下がっていろ。お前たちは後からだ。…俺が満足するまで戻るな!」
ブラッキーの指示に二匹がにやけ、ブラッキーの言うとおりに去って行った。
その場に二匹だけになり、ブラッキーが押し倒しているアブソルを見下ろした。
「安心しろ。もう大丈夫だ」
「もう大丈夫? ふざけるな!」
ブラッキーがアブソルの文句を遮るように、続けて言った。
「…大丈夫だ、あのヒラどもにお前は犯させない」
「くっ、同じことだ。お前に犯されるならな…」
「…アブソル…」
ブラッキーが急に、アブソルの唇を奪う。
「!!!」
無理やりではない、優しいキスだった。
ブラッキーがルビーのような瞳で、アブソルを見つめる。
「……好きだ」
「!!??」
混乱するアブソルを、さらに強く、のしかかるようにして抱いた。
「俺はお前のことをずっと好いていた……」
「なっ…何を言う…」
「俺はお前が♀であることを、お前が組織に入った時から知っていた。」
「!!」
「おっと、勘違いするな。俺はずっと黙っていたさ、あのヒラどもに教えたのも俺じゃない。それに俺は、お前を機関から追い出す気なんてないさ…」
「それがどうした……」
アブソルがブラッキーに吠える。
「お前なんかあのカス共と同じだ! 追い出す気がない? そう言えば俺を宥められるとでも思っているのか!! 俺が♀だからって、俺の身体を求めやがって! お前なんかクズの中のクズだ!」
「アブソル…お前のその、凛々しくて強く、弱気にならない顔が好きだ…確かにお前は♀だが、♀の女々しさなどない。凛々しいお前に俺は時と共に惚れていった。お前を手に入れる機会をずっと待っていたんだ……」
アブソルが舌打ちする。
「……俺を犯す機会を探って…だから、あのカスどもをけしかけたのか…?」
「そうじゃない。あいつらが俺に訴えてきたんだ。お前が♀だと気づいて、ちょっとヤキ入れてやろうと俺を誘ってきたんだ」
「…そうか…お前はそれに便乗したのか…! 俺を犯す絶好のチャンスだと、そいつらに乗ったんだな!!」
「アブソル! 組織参謀の俺を見くびっては困るな!」
「?」
ブラッキーが微笑みかけた。
「俺も奴らの怠けには手を焼いていたんだ。機会を見て追放してやろうと思っていた。…今日、奴らの話に便乗したふりをして、一芝居打ってあいつらをはめてやろうと思ってな」
「?? 何を言ってるんだ?」
「今、ドンカラス様がこちらに向かっている。俺が呼んだんだ。ドンカラス様に、今の二匹の失態を見せつけてさしあげればいい。幹部であるお前に因縁をつけ、♀であることに付け込んで肉体的に襲おうとしている姿を見れば、ボスも黙っていないだろう。奴らは追放される」
「………………」
「アブソル、お前にあらかじめ話しておけなかったのは悪かった。ただ、奴らを追放するために協力してほしかったんだ……」
「………………」
アブソルの表情に余裕が戻ってきた。
アブソルはブラッキーにのしかかられたまま、ブラッキーを見上げる。
「…お前は?」
「ん?」
「お前はどうするんだよ…」
「…………」
「お前、今の様子をドンカラス様が見れば、お前も追放されるんじゃないか? 芝居だろうが俺を襲ってるんだから、下手すればお前も同罪とみなされる。いいのか? 俺が、お前を信じてお前を庇うように弁明してやるとは限らないんだぜ?」
アブソルがわざとからかうように告げた。
ブラッキーがすかさず噛みついてくると踏んでいたが、ブラッキーは意外にも、急にしおれた。
「…………………」
「な、なんだよ? 何、急に黙っちまったんだよ? …じょ、冗談だよ、俺も乗ってやるって、お前のことも悪くないってちゃんとボスに……」
「すまない………」
「?」
ブラッキーがアブソルの目を見つめた。ブラッキーの目の奥に、野心のような欲望のような強い光が宿っている。
「俺も、本当は犯すふりをするだけのつもりだったんだ…。…済まないな、本当はやるつもりはなかったんだが、俺の理性はもう言うこときかねぇんだ………」
「は?」
アブソルは一瞬、ブラッキーの言葉の意味が分からなかったが、それの意味を汲み取り、急に血の気が引くのを感じた。
ブラッキーの表情から、先ほどのヘルガーと同じものを見出したのだ。ヘルガーよりは理性的な表情だが、その股間には、ヘルガーを上回るほどに勃起した巨根が揺れていた。
「な…馬鹿か? お前、そんなことして…」
「ドンカラス様が到着するまではまだ20分ほどあるだろう…20分あれば…」
「お、お前……俺がボスに何て言うと思う? お前に犯されたとボスに言えば、お前は終わりなんだぞ!」
「それでもかまわない!!!」
ブラッキーがアブソルの頬を舐めた。
「本当はこんなつもりじゃなかった…自分を見くびっていた、もっと理性的に動けると思っていた…だが、お前の顔をこんな近くで見て、お前の肉体にこんなに触れて…ガマンできるわけねぇんだよ……」
「ブラッキー、やめろ!」
ブラッキーはかまわずに、己の巨根をゆっくりと、アブソルの秘裂へと宛がう。
「や…やめろ…」
ブラッキーの股間の巨根の先端は先走り液で濡れている。その大きさは、勃起しているとはいえ尋常ではない太さだ。
「…驚いたか、俺の自慢だ。俺を一度でも味わった♀は、俺のじゃなきゃ満足出来なくなっちまう…自分でも憎いぜ」
「……本気か……?」
「…アブソル…お前が俺をどう言おうがかまわないさ…ただ、一つだけ言いたい……お前を愛してるんだよ…」
「……クッ……」
「アブソル…その憎たらしい顔、最高だ…」
ブラッキーは勢いをつけて、アブソルの腰へ、己の肉棒を沈めた。
【悪という色 Fin】