森の中にひっそりと存在する、小さな洞窟。  
その入口に立ち、すっと息を吸い込むと薄暗い洞窟の中へ向けて声を張った。  
 
「クチートー!!」  
 
洞窟の中に私の声が反響し、徐々に消えていく。  
と、それとは逆にトテトテとこちらに向かってくる足音が聞こえ出す。  
 
「キルリアちゃーん!」  
 
私の名を嬉しそうに呼びながら、小さな手を一生懸命に振る恋人──クチートの姿が見えた。  
そんなに急いで転んでしまうのではないか、と思うくらい弾んだ足取りだ。  
 
「わあ、来てくれたんだ!ありがとう、嬉しいな!」  
「もう、大げさね。今日行くねって約束したじゃない」  
 
ニコニコと喜びを表すクチートに、つい照れてそっけなく言ってしまった。  
しかし彼女は気にした風もなく、私の手を取ると洞窟の奥へ導いていく。  
彼女の柔らかく小さな手が私の手をぎゅっと握ってくるのが何だか嬉しい。  
 
「さ、どーぞ!」  
 
棲家に着くと、クチートは私に座るよう促した。  
鋼タイプである彼女にとっては快適な棲家でも、私にはゴツゴツとした地面が辛いのだけれど、  
そんな私のために彼女は棲家の一隅に柔らかな草を敷き詰めてくれているのだ。  
言われるが儘に草の上に腰を下ろすと、なにやら私を見つめる彼女の視線に気がついた。  
 
「どうしたの?」  
「えっと、あのね……抱っこしてほしいなー……」  
 
ほんの少しだけ恥ずかしそうにお願いを口にするクチート。  
私より幾分小さな彼女は、抱きしめられるのがお気に入りらしい。  
 
「もう、クチートは甘えたさんね」  
「えへへ!」  
 
口では呆れた風を装ったけれど、恋人のお強請りに私は胸をときめかせた。  
ただでさえ私は『かんじょうポケモン』であるが故に、相手の感情を受信できてしまうのだ。  
こんなにも素直に私に好意を寄せるクチートが、可愛くないはずがない。  
 
「ほら、おいで──きゃっ!?」  
「どーん!」  
 
手を広げた私の胸にクチートが勢いよく飛び込み、結果として私は押し倒された。  
ぼふっ、と柔らかな草がクッションとなり痛みはないけれど、驚いて変な声を出してしまった。  
 
「ちょっと、クチートったら!」  
「あははっ!ごめんね!」  
 
けらけらと笑うクチートが可愛くて、なんだか文句を言う気もなくなってしまった。  
すると、彼女は笑いを収め、上から私を見下ろしたままじっと見つめ出した。  
 
「クチート?……ん、んんっ」  
「んーー」  
 
私を押し倒した体勢のまま、突然クチートが口付けてきた。  
いきなりのことに少々驚きはしたが、彼女の行動が読めないのはいつものことだ。  
小さな舌が懸命に私の舌に絡んでくるので、それに応えてやる。  
お互いの唾液が混ざりあい喉を伝い、ちゅっ、ちゅっ、と唇を離し角度を変え、何度も口付けた。  
 
「んっ……は、あ」  
「はふ……ね、キルリアちゃん……」  
 
飲み切れなかった唾液が顎を伝う頃、漸く唇が離される。  
熱っぽく潤んだ眼差しでクチートが私を見つめ、囁く。  
 
「エッチ、したくなっちゃった……」  
 
ベロリ  
 
「ひゃうんっ!?なっ……なに!?」  
「下のお口にもちゅーしてあげたの。びっくりした?」  
 
突然の刺激に思わず上擦った声を上げると、クチートは悪戯が成功したような笑みを浮かべた。  
そして目線を下にやると、そこには私のフリルの下のスリットを舐め上げた彼女の大顎が揺れている。  
大顎は涎を垂らしながら笑いを浮かべるように歪むと、大きな舌をズルリと出した。  
舌の先端がスリットに寄せられ、生温かい息の熱さを感じ、私は身体をビクリと震わせる。  
 
「あっ……!ま、待って……ひあぁっ!?」  
 
熱い舌が遠慮なくスリットに唾液を塗りたくる。  
いきなりのことに驚き、突然の快楽によって力が入らなくなっていく。  
 
「キルリアちゃん、可愛い……もっとちゅーしてあげる」  
「んっ、んぅぅ……っ!」  
 
嬌声をあげる私の口をクチートが塞ぐ。  
先程のようにそれに応える余裕はなく、口内を彼女の思うままに蹂躙されてしまう。  
上と下、どちらとも分からないグチュグチュと生々しい水音が頭に響く。  
拙く絡められる小さな舌と、スリットを舐めまわす熱く大きな舌──  
酸欠で頭がぼんやりしてきた頃、ようやく塞がれた口が解放された。  
 
「はっ、はぅ……ああっ……!」  
 
「ふ、ぅ……キルリアちゃん、気持ちいい?」  
 
未だに私のスリットを大顎の舌で舐めまわしながら、無邪気な笑みで問い掛けてくるクチート。  
その可愛らしい表情と現状のあまりのギャップに、ゾクリと私の中を快楽が走りぬける。  
濡れそぼったスリットに熱がじんじんと集まる。  
 
「あぅっ……!ん……き、気持ち、い……ひゃ、あっ!」  
 
熱に浮かされながらも答えると、気を良くしたかのように舌が暴れ出した。  
刺激により硬く勃起したクリトリスを熱い舌が押しつぶすように嬲る。  
上下にクリトリスが揺すられ、快楽の波に流され、あられもない声を上げ続けてしまう。  
そんな私を見下ろすクチートが、口を開いた。  
 
「よかった……じゃあ、中に入れたらきっともっと気持ちいいよ」  
「きゃあ!?ああ、ひあぁっ!?」  
 
唾液と愛液で溢れたスリットに舌の先端が侵入してくる。  
ジュポジュポと卑猥な水音と私の嬌声が洞窟に響き渡り、頭の中まで犯されているような気までしてくる。  
膣が舌をぎゅぅっと締め付け、貧欲に刺激を求める。  
生温かい舌のぬらぬらとした感触に腰が震え、身体が跳ねた。  
 
「キルリアちゃんの胸、すべすべしてて気持ちいい……」  
 
快楽に背を仰け反らした私の胸を、クチートの小さな手が辿っていく。  
そして、凹凸のない白い胸に彼女の口付けが落ちる。  
彼女は私の胸に顔を埋めると抱きつき、上半身を完全に私に預けた。  
 
「う、あああっ!クチート、クチート……!」  
 
頭の中が快楽でぐちゃぐちゃになり、私は只管クチートの名を呼び彼女に縋りついた。  
理性が薄れ、私と彼女の≪感情≫の境目が薄れていく──  
 
 
── キルリアちゃん ──       
 
        ── 好き ──   ── 大好き ────  
 
   ── 愛してる ──  
 
 
クチートの≪感情≫の波が押し寄せる。  
それを直接受信し、私の中を奥の奥まで駆け巡っていく。  
 
「あっ……!っ……!」  
「イっちゃえ、キルリアちゃん」  
 
あまりの衝撃と快感に声も出せずにいると、クチートが私の耳元に唇を寄せ、そっと囁いた。  
ぐちゅっ、と大顎の舌がスリットの奥に捻じ込まれる。  
 
「ひあああぁぁっっ!」  
 
絶頂を迎え頭の中が真っ白になり、嬌声を張り上げビクビクと痙攣する。  
ぐちゃぐちゃに濡れひくつくスリットから、ジュポ……と舌が引き抜かれた。  
 
「ぁ……」  
 
その刺激に震え、あれだけ存在感のあった熱い舌が抜かれることに奇妙な喪失感を感じる。  
しかし、脱力しきった私の身体をぎゅっと抱きしめるクチートに、なにかが満たされるような気がした。  
少しの間、二匹で抱きしめ合い息を整える。  
 
「……キルリアちゃん、大丈夫?……ごめんね、突然……」  
 
と、先程まで私を翻弄していたクチートが急にしおらしく尋ねてきた。     
 
「あのね、抱きついてキルリアちゃんを見てるうちに、すっごく大好きだなあって気持ちが膨らんできてね……!」  
 
えっと、それで、と突然の情事に対する言い訳を口にするクチート。  
私に嫌われたくない、と必死に説明する彼女の姿を見ていると、怒る気なんか失せてしまう。  
そもそも怒ってなんかいないのだけど。  
 
「ふぅ……いいよ、嫌だった訳じゃないし……」  
「ほんと?怒ってない?嫌いになった?」  
 
恐る恐るこちらを窺ってくるクチートに、まったくもう、と思いながらも可愛いと思ってしまう。  
好きな人からあれだけダイレクトに好意をぶつけられて、嫌いになんかなれるわけがない。  
それに彼女のしょげる顔は見たくない。  
 
「好きにきまってるじゃない!それに、その……き、気持ちよかったし……」  
 
あーもう!恥ずかしい!  
と私が転がりたくなってきたところで、クチートは漸く安心したらしい。  
 
「よかったー……あ!重いよね、ごめんね!」  
 
と言うとクチートは身体の上から降りて、私の横に仰向けに寝転がった。  
重たくなくなったけれど、それがなんだか寂しくて、彼女にぎゅっと抱きつく。  
火照った身体に、鋼タイプ特有の彼女の低い体温が心地良い。  
唾液や愛液で身体がベタベタするけれど、気だるくて起き上がる気がしない。  
もう寝ちゃおう、後始末は起きてからでいいや。  
 
「キルリアちゃん、眠いの?……一緒に寝よっか」  
 
クチートが囁き、抱きしめ返してくれた。  
穏やかな空気の中、二匹で抱き合って眠りに落ちる一瞬、ふと思う。  
クチートは『あざむきポケモン』。  
もしかして、私が彼女を可愛がっているつもりで、私の方が彼女の手の中で可愛がられているのかな──なんてね。  
どちらにしても、今こうして抱き合って眠る事実に変わりはないもの。  
 
「おやすみ、クチート……」  
 

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