「……ウコ!……トウコ!」
私は寝惚けていたのだろうか……
「あ、トウヤ……ちょっとボーッとしてたみたいだ」
旅の途中に寄ったギアステーションで何度か顔を合わせ、それなりに親しくなった自分と一文字違いの名前の友人は心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「やっぱり嫌だった?」
なにが?と訊きかけて、一緒にスタジアムに見に来たバスケットの試合のことだと察する。
「ううん、凄くカッコよかったし!あの赤の4番の選手なんて」
「……途中でコケて怪我したから交代したね」
しまった……
却って墓穴を掘ってしまったらしい。
「……やっぱり、なんか悩んでるね」
見透かされていた。
そんなに分かりやすかっただろうか。
「言いたいことを言ってごらん。少なくとも楽にはなると思う」
いつの間にか私の頭は抱き寄せられて、視界には青いパーカー越しに隠れた彼の胸しか見えない。
「へ」
私は軽くパニックに陥ってしまう。
「僕じゃダメかな?」
私の頭の後ろを撫でる彼の手。
その手が優しくて、だからこそ慌てて離れた。
「そういうの……無しにしよう?今は楽しむ時間でしょ」
私は微笑んでいるだろうか?
苦しいけど、吐き出してはいけない。
これは紛れもない私の罪なのだから。
他の誰かが背負うことではないと思う。
私はどこか沈んだ暗い気持ちとはまるで正反対のテンションではしゃいでいる。
彼の手を引っ張って、久しぶりにミュージカルを見たし、観覧車にも乗った。
観覧車でまたあの事を思い出して、少しチクリと気持ちが痛んだがそんな気持ちをはしゃいで誤魔化した。
ストリートパフォーマンスを見たり絵描きさんに似顔絵を描いてもらったりもした。
絵描きさんに『なにか思い悩んでそうな横顔だ』と言われてギクッとしたのを、やっぱり笑って誤魔化した。
どこにいても自分を誤魔化していることも誤魔化し続けている……
そして、どこに行っても必ず私を知っている人がいる。
『プラズマ団の野望を食い止めた英雄』とかいう肩書きを持つ私を。
そんなミーハーな人達を避けるように真っ赤な跳ね橋まで来て、誰もいない夕方の西日に照らされる赤い跳ね橋で私達は落ちてる羽根を拾って遊んでいる……
そう言えば、あのプラズマ団の一件以来、私はトレーナーとのバトルを積極的にはしていない。
ギアステーションにもあまり通っていない。
それこそ、気が向いて今も今までと態度が変わらない彼に逢いたくなった時に来るだけの日々。
私はなにをしているんだろう。
いっそ、彼に全てをぶちまけてしまえばいい。
こうして二人でいるとつい、そう思ってしまう。
間違いなく私は彼に惚れているのだろう。
私をいつも通りの笑顔で迎えてくれたあの日に、それはわかっていた。
だけど、今の私にその資格があるのだろうか。
ずっと、自分の心に絡み付いている二本の鎖が私を封じ込めている……
「トウコ」
優しい声だ。
私の知る内では間違いなく最高にカッコいい彼の横顔。
嫌味のない優しさを湛えた笑顔。
それが今、私だけに向けられている……
なんだか無性に悲しくなって、返事に詰まる。
彼が心配している私の悩みは他の人には馬鹿馬鹿しくなるだろう部類の悩みなのだから。
「泣いてる?」
彼は私の頬に指を触れる。
私の頬を撫でて濡れた指は赤く照らされて輝いている……
「なんでもない。西日が目に染みたの」
「嘘だ」
また私の頭は引き寄せられる。
だが、今度は彼の胸の中ではない。
ちゅ……
自然と顎に手を添えられ私は真剣さを覗かせる彼の表情を見上げるように、彼は私のもはやごまかすことすら出来ない感情を覗き込むように。
お互いの唇が触れていた。
なんだろう。
凄く恥ずかしい。
きっと、私の顔は西日でごまかせないほど真っ赤になっている。
私の唇を彼の舌がなぞる。
「んっ、んーっ!」
肩が震えて、背中がゾクゾクする。
私は恥ずかしくて離れたいのか、このままキスしていたいのかわからなくなる。
頭の中がしっちゃかめっちゃかで、私の唇を割って入った彼の舌に踊らされるまま。
足にも力が入らなくなって、彼の肩を掴んで自分を支えているような状態。
彼の舌に私の舌を絡め取られ、裏側をなぞられた瞬間、目の前が真っ白になった。
「んぅううううううっ!」
なにかを叫んだような気がしたけど、きっとくぐもった嬌声でしかない……
「ここまで来れば……いいかな……」
どれくらい時間が経っただろう。
跳ね橋が上がると聞いて、私達は慌てて道脇の林に入った。
「なぁ……ここって……」
「こんなところまで別け入ってくる人もいないでしょう?」
さっきのキスのせいか、西日に照らされていたせいか、私の身体は火照っていた。
この火照りの意味もわかっているし、彼の股下で所在無さげに立ちかけている彼のソレもわかっている。
今だけでもいい。
私を愛してほしい。
「トウヤ」
私は上着のジャケットを肩から落とすように脱ぐ。
「今だけでもいい。私を……愛して」
「トウコ?」
返事は待たない。
彼の前で膝をついて彼のズボンのチャックを下ろし、下のトランクスも引っ張り、彼の自身を外に解放する。
他の人のを知らないが、半勃ちでも私の片手に収まらないし、きっと人並みには大きいのだろう。
噎せ返るほどじゃないけど、男の子の匂いがする。
ちょっと痴女臭いかな、とは思う。
でも、こんなことまでしておいて今更やめたら彼も怒るだろう。
それに、今だけは他になにも考えられないメスに成り下がりたかった。
「痛かったりしたら止めていいよ」
それだけ言って、躊躇わずに彼のモノを口にくわえる。
鈴口から皮をずり下ろすように舌を這わせる。
「トウ……く……」
舌にゴミらしいモノは触れない。
きっと清潔にしているんだろうな。
チロチロと舐めながら、うざったくなった帽子を脱ぎ捨てる。
帽子の鍔がなくなって見上げた先には、いつもは涼しい顔をしているか、にこやかに笑っている彼がなにかに耐えるように私の名前を途切れ途切れに呼んでいる姿が見える。
もっと彼を気持ちよくしたくて、よし深くまで飲み込んで棹を舐め回す。
「トウコッ!」
ビクリと彼の腰が震え、喉の奥まで貫かれる。
えずいてしまいそうになるのを耐えて、喘ぎ声としてくぐもらせて耐える。
ふにゃりとした彼の袋の中の珠を手の中で転がし、キュッと握る。
「で、出るっ!」
私の口から引き抜こうとするのを逆らってより深く、喉の奥の奥まで彼のモノを飲み込む。
ドクンッ!
彼のモノが喉の中で脈打ち、私の喉を圧し広げる。
喉の奥で熱の奔流がぶちまけられ、暴れまわる。
彼のモノを飲み込み過ぎて、その奔流を飲み込むことも吐き出すことも出来ない。
彼の白い熱が喉の奥から口にまで溢れ返り、すぼめていた口元からも漏れ出す。
鼻息も中から塞がれ、初めて鼻が喉に繋がっていることを実感しながら彼の精液を鼻からも溢れさせる。
そしてついに息が苦しくなって目眩がした頃に彼は無理矢理、私の口から未だに脈打つ彼のモノを引っ張り出す。
更に噴き出したのかまとわりついたのが跳ねたのかわからない精液が私の顔を汚す。
引き抜かれた勢いで私は倒れかけて、彼の精液を芝生に吐き出していた……
「はぁ……はぁ……トウコ……」
彼は足元で噎せ返りながら彼の白いそれを吐き出している私の頭を撫でる。
「ケホッ……カホッ……」
そんな彼の顔を見上げるどころか息を整えることも叶わないまま、喉奥から逆流していく彼の精液を垂れ流し続けている。
私の背中を撫でてくれる彼の手が温かくて余計に苦しい。
「凄いね……全然飲みきれなかった」
やっと吐き出すのも落ち着いて、ようやく喋れるようになったが、顔を汚しすぎて見上げられない。
白く濁った水溜まりが芝生に広がってしまっている……
彼は膝をつくと、なにも言わずに私の顔を持ち上げる。
「ひゃ」
「拭いてあげる」
彼は手に持ったハンカチで私の顔を拭いていく。
「止めなきゃいけなかったのに一人で気持ちよくなってごめん」
そんな彼の優しさでさっきとは違う苦しさを感じる。
「ホントは僕が君を気持ちよくしなきゃいけないのにね」
拭き終わったのかハンカチを畳んで、彼は顔を寄せる。
「今、キスしたらきっと不味いよ?」
「構わないよ。君がよくなってくれれば」
彼はまるっきり躊躇う様子もなく、私にキスをする。
せめて不快感がないように、口内に残る白濁の残滓を集めて飲み込む。
それを見計らったかのように彼の舌がまた、私の中に入り込む。
はむ……
んぢゅ……
今まで、キスがこんなに心地好かったとは知らなかった。
知る機会もなかった、というべきか。
深いキスに酔わされながら、私は彼にゆっくりと組み敷かれていく。
「綺麗だね」
シャツが捲り上げられ、ブラのフロントホックが外される。
「着痩せするタイプなんだね。思ってたより大きい」
鷲掴みにされ、むにゅむにゅと揉み解されていく。
最初は息が荒かっただけなのが、喘ぎ声が止まらない。
「は、う……うぅん……」
背中に走る感覚を逃がすように身体が仰け反り、ゆらゆらとのたうつ。
どういう感覚なのか解らず、もっと揉み解してほしくもあるし、止めてほしくもある。
「はぅっ!」
乳首を軽く触られただけで背中から跳ねてしまう。
電流が走ったような感覚……という訳じゃないけど、一気に冷静さを持っていかれるほど気持ちよくて。
「かわいいね」
久しぶりに言われた褒め言葉は私の理性を打ち砕くには充分な威力を持っていた。
「はっ!ああんっ!」
彼の手は休みなく私の胸を攻め立てる。
胸全体を撫で回したかと思えば、痛いほど勃った乳首を指で挟んで転がしたり、まるで新しいおもちゃで遊ぶ子供みたいに無邪気に扱われる。
何度となく背中を突っ張らせ喘ぐ内に、本当の限界が見えた。
彼が私の胸に舌を這わせ、そして乳首に甘噛みした時だった。
「あ、あぁああああっんっ!」
なにが起きたかわからない。
私はただ跳ね飛び、全身の筋肉が突っ張って、それでも収まらずに喉の奥から嬌声という形で身体の中に詰め込まれた快楽というエネルギーが外に溢れ返った。
「はぁ……はぁ……あっ……」
なんだか、上半身も汗みずくになっているが下半身までぐちょぐちょになってる気がする。
「脱がすよ」
彼が私のホットパンツをショーツごと脱がす。
風が火照った身体を冷やすようで気持ちいい……
チラリと見えたホットパンツが申し開き出来ないほどベチャベチャに濡れていたが、そこから先はなにも考えられなかった。
「挿れるよ。いい?」
ホットパンツを傍らに広げて置いた彼の言葉に私は小さく頷く。
彼の指が私の恥皮をめくって広げる。
ちゅく……
「ぁっ」
その時の指で広げられた感触と淫らさ満点な水音でまた私は小さく喘いでしまう。
そして火掻き棒のように熱いのがタラタラと愛液を漏らす膣口に触れる。
じゅぷ。
「はぅ」
じゅじゅ。
「ぅんっ」
じゅぷ……
彼のモノは私の媚肉を圧し広げ、ゆっくりと膣を穿っていく。
それが、なにかに引っ掛かったような感覚で止まる……
「初めてなんだね」
「はぁ……意外だった?……んっ」
私の媚肉は勝手に彼を締め付けて、私を喘がせる。
「力抜いて。痛い思いをさせたくない」
後頭部を撫でられ、私はそちらに気を取られた瞬間に彼のモノは私の初めてを破いた。
痛みが全身を突き抜け、力の篭りかけた私の手に彼の手が添えられる。
「おもいっきり握って」
彼の手をおもいっきり爪を立てるのも構わずに遠慮なく握る。
彼の表情が苦し気に歪む。
それでも握り締める手は広げられなくて。
「きっ……」
私はうわ言で彼を求めていた。
「……きすっ……して!」
彼は微笑んで、私に唇を重ねる。
「ふむっ!むぅうっ!」
堪えきれない痛みに泣きながら叫びそうなのを、彼の唇で封じ込める。
なんでだろう。
凄く辛いのに、凄く幸せな気分だ。
「んふ……はぁ……はぁ……」
痛みが耐えられる程度に和らいだところでようやく彼の手を放せた。
「大丈夫?まだツラい?」
彼の手がまた私を撫でる。
彼の優しさに私はまだ収まらない痛みを隠す。
「好きにしていいよ。もう大丈夫だから……」
「じゃあ……動くよ」
じゅぷ。
じゅぷ。
彼の肉棒が私の奥を更に穿っていく。
「あっ、ぁあんっ!」
私の奥の奥を圧し広げるような感覚がした辺りで、彼の動きが止まった。
「見てごらん」
「はぁ……んっ……」
少し首を上げようとしただけでナカの彼は私の媚肉を刺激する。
快楽に溺れかけながらも見た先には、彼を根元まで私の膣が飲み込んでいる淫媚で、恍惚としてしまう光景。
「全部……入ってるぅ……」
「よく頑張ったね」
私に軽く口付けてから、彼の腰が揺れナカを突いていく。
「あっ!はぅんっ!ぁあんっ!」
その動きは彼が気持ちよくなるための動きではない。
それくらいは私にもわかった。
私が痛みを感じないように加減をしてくれている。
どんどん私の意識は彼の肉棒に掻き出されていき、淫らな快楽を注ぎ込まれていく。
快楽のエネルギーは再び、まるで蛇口に嵌め込んだ水風船みたいに漏れ出す出口もなく、どんどん膨らんでいく。
あ、イク……
私はその臨界点を感じ、もはや言語にすらならない叫びを上げて、彼の声すら届かないところで肉棒からだめ押しに放たれた濁流に意識を押し流された……
「はぅ……ぅん……」
私はぼんやりと目を覚ます。
あぁ、もう夜になっちゃうな……
すっかり暗くなった辺りを見回して、そして私を抱き締めている彼に気付く。
私は肩に載る彼の頬を指でなぞる。
ピクリと震えて、彼は目を開く。
「トウコ、身体は大丈夫?」
きっとさっき、気を失ってしまったことが気がかりなのだろう。
「大丈夫……大丈夫だよ。うん」
このくらいは許されると思いたい。
そう思って彼に出来るだけ甘える。
「ナカに出しちゃったな……」
「うん、出されちゃった」
なんだかお腹の中がジーンと痛むような感覚と、なにかが満たされてるような感覚がごっちゃになっている。
「トウコ、ひょっとして……マズかったかな?」
「あ……あはははっ!」
「いや、ちょっと!その笑い、なんか凄く怖いって!」
笑って誤魔化すのはこれで終わりにしよう。
「大丈夫だよ。今日はそんな日じゃわぷっ!」
「いや、どうでもいい」
は?
いきなり抱き締めてきて、何を言い出すんだ?この人は……
「出来ちゃおうが出来てなかろうが、そんなのお構い無しに僕は君を受け止めたいんだ。ずっと……言いたかったんだ……好きだ!」
え……
私、もしかして告白された?
いや、紛れもなくこれは愛の告白だ。
にしても……
「もう少し、雰囲気作りをしてほしかったわ。こんな林の中で、情事の後の告白なんて……現実味が……無さすぎるよ……」
「ごめん。今まで、踏ん切りを着けられなかったんだ。君が眩しかったから……」
少し申し訳なさげに彼は甘く囁いてくれる。
「でも……なんか最近、考え込んでたり落ち込んでいるのを見てると放っておけなくなって……いきなりキスしたりしてごめんな」
「謝らないでよ……トウヤに悪いところなんてない……」
悪いのは私なのだ。
ずっと悩んで、ありもしない答えを探さなければならない私が……
「今は答えを聞かない。だけどせめて今、君が悩んでることの答えを一緒に探したいんだ。それくらいはさせてくれ」
これだけ私を溺れさせといて、そんなの卑怯だ……
「もっと甘えてもいい?」
「いくらでも甘えていいよ」
「強くなくてもいい?」
「苦しんでまで強がることなんてない」
ダメだ。
喉が詰まったように言葉が出ない。
ただ、ただひたすら泣き叫ぶ。
涙も叫びも止まらないのは、彼の腕の中だからなのだろうか。
「私は……私は……!」
強がるのはもう無理だった……
「あなたが好きで仕方無かった!ずっと!でも!でも私は怖かった!あなたまで私をチャンピオンとして扱いやしないかと!お願い!私をチャンピオンでもなんでもないただの女として……」
一緒にいさせてください。
言ってしまった……
私は一人の女というにはあまりに人々の注目を得てしまっているのに……
「もちろんだ。僕は君の肩書きだのに興味なんてない。君が欲しい!」
彼は強く言ってくれた……
私は彼に抱き付いて、答えを返す。
「私を捨てたら……絶対に許さないからね……」