あなたに包まれてみたいと思うなんて許されるのでしょうか。  
 
 
 
 
 
 
知らない土地。知らないトレーナー。ここはどこだろう。  
 
醜い魚。と言うのがよく言われる言葉だ。枯れ葉のような茶にごつごつとしは石のような体。  
背鰭は三角で不思議な形をしている。目はぎょろりとしていて唇は色がなく厚い。  
そんな自分が何故こんな所に。ぼんやりとヒンバスは思う。  
「これからよろしくね」  
新しい主人。  
「みんな、出ておいで!」  
そう言われて出てきたポケモン達は見たこともない、そして強そうな顔をしていた。  
「ちゃんとした水要因が欲しかったところだから丁度よかったわ」  
新しい主人が笑う。栗色のふんわりとした髪。前の主人の髪色も茶色だったが、今の主人の方が癖っ毛だ。  
「トモヤに綺麗な鱗は貰ったから、ある程度レベルが上がったら進化してもらうからね」  
眩しい。  
新しい仲間にそれまでのポケモン達がヒンバスの前にやってきて談笑する。  
見たこともないポケモンが珍しいのだろう。皆親しく話しかけたので、ヒンバスの緊張も解ける。  
そんな時ふと、眼についたのは一匹のポケモン。  
新しい主人の騎士のようにさりげなく周りに注意を払っている。  
緑の体に金の縁、所々にはえた葉が自分の苦手な草タイプであることを示している。  
美しい長い体で蜷局を巻いて顔を上げている。深い深い赤い目。綺麗なポケモンだった。  
「あなたは、主人が好きなんですね」  
「まぁ、私の主人だからな、お前もそうなる」  
絢爛な笑みを浮かべたそのポケモンはジャローダと名乗った。  
 
 
 
正直、自分は貧相なポケモンだと思っている。水鏡を前に何度ため息をついたことか。  
前の主人のボックスにいたとき、何度そう言われたことか。  
自分の名前も嫌いだった。ヒンバスは貧相のヒンだと言われ続けた。  
実際、この地方には、バスラオというポケモンがいるらしい。バスは、おそらく魚の名前だ。  
やっぱり、自分は貧相だから「ヒンバス」なのだろう。  
でもしょうがない。ヒンバスとして生まれてきたのだ。貧相は貧相なりに頑張るしかないのだ。  
 
 
 
 
「すみません」  
「気にするな」  
ボールの中で会話をする。  
学習装置を持たされた自分はバトルの最初に出て、すぐ引っ込み、他のポケモン、特に今の主人の一番の戦力なのだろう。ジャローダと多々、交換することがあった。  
交換するたびジャローダが傷つく。  
それを見るのは辛かった。  
悔しくて涙が出た。  
でも隠す。  
貧相な自分が涙を見せてはますます貧相だ。  
笑うのだ。  
せめて、みんなを明るくするために。  
主人が緑の髪の男と会うたび表情を硬くする。怒りでも悲しみでもないような複雑な顔をする。  
そんな顔をすると皆が心配する。だから自分が笑って、主人を励ます。  
それが自分の役目だから。  
だから涙はいけないんだ。  
戦力にもなれない自分は頑張るんだ。  
 
 
 
 
 
「なんだそのポケモン、珍しい」  
「ホウエンやシンオウで釣れるのよ、ここだけじゃなくて向こうでも珍しいんだから」  
「んの割には可愛くねぇな」  
いつも通り。貧相だもの、しょうがない。そう言われるのはもう慣れっこだ。  
ただ主人がバカにされたようで腹がたった。  
「戻って、ヒンバス」  
主人の静かな、声。  
震えていた。  
恥をかかせてしまった。  
とても申し訳ない気分でいっぱいだ。  
でも、涙は見せない。  
「ジャローダ!お願い!!!」  
 
 
バトルが終わり、食事の時間になる。野原にシートを広げて、主人が座る。  
その隣にチラチーノが座って主人に寄り添っていた。  
チラチーノはとても可愛らしくて陽気なポケモンだ。白いスカーフに一度触れたが柔らかく心地よい。ただ、チラチーノの魅力が見た目だけでないことなど分かっている。  
いつもからから笑っていて、自分を妹のように接してくれる。自分もいつかあんな素敵なポケモンになりたいと思う。  
 
目の前に池があり、ヒンバスはそこに放たれる。  
「嫌な事いうトレーナーだったね」  
「ホント失礼な輩だわ」  
ポケモンの言葉は人間には分からないが意思疎通はばっちりなのか、チラチーノは憤慨していた。  
「あなたはこんなに可愛らしいのに」  
指が池にの方を向いていたので、辺りをきょろりと見渡して、ポケモンを探す。  
「?」  
「まったく、トレーナーに人のポケモンけなされる理由なんてないわよ!」  
「そうそう」  
誰のことだろうと思う。確かに他人に自分の仲間を貶されたら、そう思うと。  
「だ、誰がそんな目にあったんですか?」  
ヒンバスは言って、飽きれた顔でジャローダが寄ってきた。  
「お前だろう」  
「え?でもさっき可愛いのにと…」  
「だから、お前だろう」  
「!?」  
顔が熱くなる。まさか。  
ジャローダは微笑む、顔が近い。蛇の長い尾で包まれると草原の匂いがした。  
「もう一度言おうかヒンバス。お前が可愛いんだ」  
「な…」  
なにを言うのだろう。そんな。自分が可愛いなんて。  
「皆は可愛いと言っているが、私はお前は綺麗だとも思うぞ」  
カッと、頭に血が上る。酷い仕打ちだ。  
「ジャローダさん!からかわないで下さい!」  
ばしゃんと、音が鳴る。水が跳ねる。  
自分は泣いてはいけない。  
それなら水に潜ればいい。  
涙は水だから、わからないから。  
嬉しいけど悲しかった。  
自分が可愛い?綺麗?そんなの幻想だ。  
分かる嘘を言われるのは、どんな罵倒より辛い。  
そんなことを、ジャローダに、言われるのは。  
すごくすごく。  
辛い。  
 
「あなた本当馬鹿ね」  
一部始終を見ていたチラチーノが半目で言った。  
「……」  
「あの子が自分の見た目にコンプレックス持ってるのはわかるでしょうに」  
「……」  
「それにしても、あなた、ああいうのが好みなのね」  
「……」  
「純真で無垢でいつも笑顔で素敵よね、鈍感でちょっと自分を卑下しすぎな気がするけど」  
「…もういいだろう」  
「あなたのそんな顔初めてみたわ」  
チラチーノはニヤリと笑う。ジャローダは何も言わずにチラチーノを睨むがチラチーノは気にしないでさらにけらけら笑った。  
ジャローダはため息をついた。  
見目を気にしているのは知っていた。それで辛い目にあったのも感じていた。  
だからこそ言ったのだ、それでも笑おうと皆を励まそうとしている彼女に。  
綺麗だと、頑張る君は可愛らしいのだと。  
 
こんな遠い場所に一匹で来て、寂しいだろう、怖かっただろう。  
そんな素振りは一つも見えなかった。  
なかなか戦力になれないことも、気にしているのを知っている。  
それでも必死で頑張る彼女を。  
傷つけた。  
優しい心。  
「……」  
女性の扱いなんて知らない。  
どんなに力があっても心の駆け引きになったら全く持って無力だ。  
距離を置かれたらどうしよう。  
ジャローダは涙目になりながらもう一度ため息をついた。  
こんなことは初めてだ。  
 
 
 
 
 
 
 
ポンと。ボールから出る。やっぱり小さな湖。みんなもボールから出ていて、各々が自由にしていた。  
テントが少し離れた所に張ってある。そこを守るようにジャローダは居て、主人にはチラチーノがついていた。  
星の美しい夜。月が綺麗だ。  
主人は池に放たれた自分をしゃがんで見つめる。  
「ね、あなたは頑張ったわ」  
優しく主人は微笑んでいた。  
「私は、あなたがどんな進化をするか知らないけど、ずっとパートナーよ」  
本当に幸せな言葉をくれた。  
ジャローダが言った。いつかお前もこうなると。今はそれがわかる。  
「ヒンバス、あなたが好きよ」  
涙が出そうだ。私もあなたが好きですと、聞こえない言葉だけど、気持ちは伝わると信じてる。  
自分は良い主人に出会えた。  
 
「よかったな」  
ゆるりとやってきたのは絢爛の緑。すっと主人の前に立つ。  
「ジャローダさん……」  
いつの間にかテントの前には違うポケモンが立っていた。  
ジャローダは主人の持っていた虹色の鱗を口に取ると首を下げる。  
「ふふ、あなたがヒンバスを気にかけていたのはわかってたわ。良いわ。お二人でどうぞ、私は明日の楽しみにしておくから」  
「え?」  
ジャローダは一度鱗を地面に置いて言う。  
「ありがとう、主人」  
「?」  
そうしてにっこりと笑むと主人はすたすたとテントに戻って行った。  
「え、主人!!」  
あっけに取られたヒンバスを余所にチラチーノ以外のポケモンはみんなボールに戻り、チラチーノは主人と一緒にテントの中に入っていった。  
こうして、ジャローダと二人きりになる。  
「……不満そうだな」  
「そんなことないです」  
「綺麗な鱗だな、どんな進化をするのだろうか」  
「……どんなに醜くなっても、きっとあの主人は私を捨てないって、この旅で知る事が出来ました。私は幸せ者です」  
真っ直ぐと、ヒンバスはジャローダを射抜く。  
「…」  
「早く恩返しがしたいんです、進化すれば強くなります。だから」  
「怖いのか」  
「……いいえ」  
「そうか」  
「…主人と、仲間と…あなたのおかげですよ、ジャローダさん」  
ヒンバスの瞳は希望で満ちあふれている。  
「あなたが私にくれた物があるんです」  
「…それが何かは教えてはくれないのか」  
ヒンバスの背びれに頬をよせてジャローダは言う。ヒンバスはくすぐったそうに微笑む。  
「内緒です」  
種族も体の大きさも、なにもかもが違う。  
だから、実ることがないのは知っているから。  
「…君は美しいよ」  
「…そう言われて幸せです」  
「嘘と思っているんだな?」  
「………」  
「君は、君が思っている程醜くはないよ」  
「…そうでしょうか」  
「ああ、以前傷つけたな…すまなかった」  
「いいえ、私こそ」  
「あの時の言葉も私の真実だよ」  
「疑ってしまうのは私の悪いところですね」  
「そう言えるのは君が成長した証だよ」  
そうして、しばらくゆっくりとした時間が流れる。ただ、名残惜しむようにジャローダはヒンバスを優しく撫でた。  
 
「君が進化をする前に言っておきたいことがある」  
「なんでしょうか?」  
沈黙を破り、ジャローダは宙を見上げ何かを躊躇っている。ヒンバスは不安でそれを見つめる。  
「…君は…その」  
「?」  
数分、いやもっと短いのかもしれないが長く感じた。その間を越えてジャローダが言う。  
「…私にはとても魅力的に映るんだよ」  
「え?」  
急なことに戸惑う。嬉しいけれど同時に顔が熱い。  
「何故驚く、何度も君に可愛いと、美しいと私は伝えたはずだが」  
「でも…それは…」  
「君はとても可愛らしく素敵だよ」  
甘い言葉。ジャローダにそれを言われた時、今まで逃げるようにその場を離れたり俯いた。  
だから初めて知った。  
こんなに真剣な眼で。こんなに切ない表情で。どこか必死な様子で。  
「…信じてしまいます」  
「そうでないと困る」  
ジャローダは思う。  
自分は何を言っているのだと。  
でも心が止まらない。  
募る想いが一気に脈を打つ。  
伝えたい。  
相手がどう思うかも考えない、それは暴力に似ていて。  
それでも焦がれてしまう。  
ああ、だめだ。  
 
止まるわけがない。  
 
「私は君に恋をしているんだ。ヒンバス…君が好きだ、例えどんな姿をしていて  
も、種族が違くても関係ない」  
 
 
 
 
そんな。まさか。  
ヒンバスはジャローダを見つめる。  
秘めた想い。  
彼が自分に恋を植え付けたのはいつだったかはもう忘れた。  
「……」  
でも、こんな姿でいいのかしら。これから進化する私をあなたはどう思うのかしら。  
「すごく嬉しいです…でも」  
「でも、の後はいらない。嬉しいままでいろ」  
そっと唇を寄せて。まるで人間のように。  
そしてジャローダはそっと虹色の鱗をヒンバスに差し出す。  
ヒンバスはそれを受け入れる。  
 
例えどんな進化をしてもかまわない。  
 
自分を信じてくれるひとが居る。  
なんて誇り高いこと。  
自分に恋をしたと言ってくれたひとが居る。  
なんて幸せなこと。  
ただ願わくば自分を受け入れてくれた皆のために、強くなる進化がしたい。  
 
どうか、どうか。  
 
光をあたりが包む。  
 
思わず声を上げたら自分のものではないような、伸びやかな声。  
進化の前よりは聞きやすい声になったようだ。それだけで嬉しい。  
やがて光が消え去り辺りが見えてくる。  
大分高さが違う気がした。大きくなったのだ。  
そしてはっきりと分かる位置。ジャローダの首が下がっていないのに目線の高さが近い。  
体の感覚で分かる。自分が蛇に近い生体なのだと。  
それは歓喜だ。愛しい人に近い体なのだから。  
やがて辺りを静寂が包む、不安になる。月明かりでは水鏡に自分の姿が映せない。思い浮かぶのは自分の名前だ。  
進化した彼女を見て、ジャローダの頬は見る見るうちに朱が指していく。そして先ほどよりも少々緊張した面もちで言葉を綴った。  
「君の新しい名前は…?」  
「ミロカロス…」  
「そうか…これは…驚いた」  
ふわりと、宙に浮くように水面から陸に上がる。  
目の上から垂れているものが視界に入る。桃色をしていた。  
尾も見ることが出来た。扇のようなそれはとても美しい曲線になっている。空のような青と色づいたピンクの模様。まるで自分のものではないようだ。  
「今の君は、君の心をそのまま姿に表しているんだな」  
ジャローダが微笑む。向けられた笑みは進化する前と同じで。  
慈しみに溢れていて。  
 
なんて幸福なのだろう。  
 
「ジャローダ…私…自分に誇れることが一日でこんなに増えるなんて思ってもみませんでした」  
ミロカロスの瞳は喜びで煌めいている。  
きっと頑張ってきたご褒美を皆がくれたんだ。  
それと同時に思うのは皆が自分を大切にしてくれていた事だ。  
醜い自分を虐げもせず、優しく平等に接してくれた。  
きっとその幸福が詰まって優しい桃色に肌の一部が染まったのだ。  
そう、だからこれからも頑張ろう。皆が微笑むことが出来るように。  
どのくらい強くなったかはわからない。けれど努力しよう。  
みんなと同じ目線でいられるようになりたいから。  
 
ミロカロスは月を見上げ目を閉じて想う。  
そして、ゆっくりとジャローダに顔を向ける。  
「私、幸せです」  
そして待ちわびた春に歓喜する花のような微笑みを浮かべた。  
 
 
自分が森の蛇ならばきっと彼女は海の蛇なのだろう。  
ジャローダは煌びやかに進化した愛しいひとをみつめる。  
大きな瞳。その上から垂れるのは桃色の鰭。顔から体の中心の淡いクリームは滑  
らかで伸びやかだ。途中から色が変わり遠い空の色、いや、深い海の色。月明か  
りに照らされて刹那、虹にも見える。  
進化する前から美しかったのだからやはり彼女であることに変わりはない。  
これで自分に自信がつくといいなと思う。  
頑張って微笑む彼女は可愛らしく、また、たくさんのものをもらった。同時に少し切なかった。  
でも、きっとこれからはもっと幸福な笑みを浮かべるのだろう。  
「……」  
守りたいとずっと思っていた。  
とても愛しいとずっと思っていた。  
だから。  
近い体にになったというだけなのに。  
 
「私、幸せです」  
 
ああ、その慈しみの笑み。  
「君が幸せだと、私も幸せだ」  
精一杯の言葉。  
「あなたは進化する前の私を好きと言ってくれました。それは変わらないのですね?」  
「もちろんだ」  
ミロカロスはジャローダにそっと体を寄せる。  
「嬉しい」  
彼女と触れることが出来るのはジャローダにとても幸福なことだ。元の魚のままでは尻尾で頭を撫でても傷つけてしまうかもしれない。  
でも今はそんなこともなく、絡めることができる。  
「私、あなたに触れたいって、包まれたいってずっと思っていました…」  
ミロカロスは体重を少々ジャローダに預ける。  
この熱っぽい視線は自分の勘違いだと思う。  
彼女は進化したばかりだし、そのようなことは知らないだろう。  
自分も初めての感情ではあるが、この体になって長い。だから、この眼差しはこれはそうであればいいと、思うことにより見せる甘い幻想だ。  
「ミロカロス」  
こんな甘ったるい声を出したくない。  
「…何故、君は私と同じ蛇となってしまったんだ」  
「え?」  
ミロカロスの顔が曇り、悲しみで歪む。  
「君を守りたいのに、君にこんな気持ちを抱いてしまうなんて」  
「どんな…?」  
おそおる顔を上げた瞬間、ミロカロスはジャローダに首元を噛みつかれた。  
「っ!?」  
痛くはない。驚きで声にならない声が上がる。  
そのままぺろりと舐められてミロカロスは身をたじろく。  
「すまない…進化したばかりの君に」  
「ひぁ」  
ジャローダからは甘い吐息が吐かれていた。ミロカロスには何がおこっているのかがわからない。  
ただジャローダがいつもより素敵に見えて、体が熱くなっている事しかわからない。  
ジャローダにされるがまま倒されて、ミロカロスの体は草原に這う。  
尾だけが水の中で体が反応する度にぱしゃんと跳ねる音がする。  
執拗に首元を舐められる。前進に甘い電気を浴びるように身体が跳ねて熱を帯びる。  
この気持ちはなんだろう。  
ミロカロスには理解ができない。  
ただジャローダを愛しいと思う。ジャローダにされていることは恥ずかしいけれど嬉しかった。  
ジャローダの体が接するだけでおかしな感覚に陥る。今まで味わった中でも感じたことのないものだ。  
人間はそれを表す言葉を持っているがミロカロスはわからない。ただ疼く。  
そして、ただただ溺れてしまいそうだ。  
 
初めての感覚に翻弄されるミロカロスを余所に、ジャローダは首から下に向かって舌を伸ばす。  
ある一点でミロカロスの体が弓なりにしなる。  
「ここは進化前の痕かな」  
それは茶色の鱗だった。  
「君がヒンバスでいたころの証だな」  
そこを慈しむようにジャローダは頬をよせる。  
「あの…可愛い君が残っているようで嬉しいよ」  
「今は…あの頃より醜いですか?」  
それでも寄り添うことを許してくれるなんて幸せだ。  
「醜い?誰が?」  
お仕置きといわんばかりにかぷりと、また甘くひと噛み。  
「んっ」  
「君の美しさに私は酔っているんだぞ?」  
そして唇を、舌を這う。  
「そ…な……」  
「ヒンバスの頃から君に触れたかった。出来なかったのは何故か」  
「…かたち…が、ちがうから?」  
「今は?」  
「おな…じ?」  
「だから」  
「だ…から?」  
「雄として君に欲情しているんだ」  
「あ…っ」  
そうして露わになった、そそり立つそれがミロカロスにあたる。  
「君は進化したてで不安だろう、もし嫌なら「つづけて…ください」」  
潤んだのは心。  
「わたし、あなたに…ふれたい。…つつまれた…ああんっ」  
言い終わる前に密部を尾で撫でられた。  
「もう、溶けそうだな」  
低い甘い声。  
「とけて…あ」  
実際、秘部はとろけるように密を垂らしていた。  
「ひ、あっああっ」  
ジャローダは尾を秘部に押し当て沈ませる。  
すると、ミロカロスの嬌声はいよいよ高くなる。  
心地よい疼きに悶えるミロカロスをもっと見たくてジャローダの尾がずるりと引き抜かれ、またそこに沈む。  
そして、それを何度も繰り返す。  
奥に当たれば声が上がり、ただされるがままの彼女を見ると支配欲が満たされる。  
そして自分が彼女をここまで乱すことが出来る事実に悦びを覚えた。  
しばらくそれを続ける。刺激があるのは音だ。  
ミロカロスの乱れた声にあわせて、密部を責め立てている音がぐじゅりと耳を犯す。  
また、ミロカロスが捩るたびに水に浸かった扇の尾がぴちゃりと跳ねた。  
まるで本当に溺れているようだ。  
「そろそろ、本番といこうか」  
「ん、あっ、ああん」  
囁きも聞こえない程、ミロカロスは必死で、それがジャローダには心地よい。  
「あ…」  
尾を抜くとミロカロスは物足りない顔でジャローダを見る。それがおかしくてジャローダが笑う。  
「いれるぞ」  
短く言って、自らのものをミロカロスに捻りんだ。  
尾にたっぷりと犯されたそこは、余裕とまでにはいかないが、しっかりとジャローダのそれを中で絡ませ刺激を与える。  
「く…ミロカロス」  
「ひぁ…ん…じゃろ…だ」  
ジャローダの性器には棘のようなものがついている。だから抜き差しはできない。  
一度入れたら中に何度も熱を注ぎ込み、満足するまで、抜くことはないのだ。  
「あっあん」  
ただ入るだけで気持ちよいのかミロカロスは全身をだらりと力なくなげだし、快楽に平伏してしている。  
ジャローダは舌を出してミロカロスの舌に絡める。  
舌の形が違うのは海に住む者と森に住む者の違いだろうか。  
 
「ミロカロス…慣れてきたか?」  
「ひんっ…え?あっ」  
答えを待たずにジャローダはミロカロスのもう片方の密部に尾を挿入した。  
「あ、あっああ」  
これが最初、ジャローダがミロカロスと交わりたいと思ったときに躊躇った理由だ。  
蛇となったこの身体には二本の性器がついていた。だから雌にも二本入るところがある。それは本能で知っている。  
通常は一本使えばいいのかもしれない。けれども愛しい存在に、片方だけで自分が満足できるなんて思っていなかった。  
 
ああ。  
溺れているのは、私だ。  
そんなのとっくの前に知っていたさ。  
 
二カ所の性器を同時に犯され、ミロカロスは快楽から目に涙を浮かべて身体をくねらせる。  
しかし、ジャローダに巻き付かれてあまり身動きはとれない。  
どんなにしつこく攻められても、どんなに快楽を与えられても、逃げることは出来ないのだ。  
「あっ」  
そうして打たれる波。  
「あっく。ひぁんっ」  
勢いよく抜かれた尾と入れ替えるように入るもうひとつの雄。  
「んっんん」  
苦しさに顔が歪む。  
でも。  
「ミロカロス…」  
ジャローダの熱に犯された表情が。  
吐息が。  
「ああ、じゃ…ろー、だ」  
この想いが、通じ合っていることの喜びとなって浸透していく。  
恍惚としたその様子に、ジャローダの終わりが近いのを悟る。  
「ん…あ」  
愛されて、自分は幸せ。  
慈しみを受けて、自分は幸せ。  
「あなた…を、ください」  
受け止めたい。  
受け止めることが出来る自分が誇らしい。  
「ああ…ミロ、カロス…好きだ、きみが、すきだ」  
自分も。  
そう答える前に強い波が襲ってきて、声にならない声を上げる。  
 
注がれている熱。  
 
「ふ、あ」  
 
宙に浮くような感覚。  
 
繋がったまま。  
 
 
「気持ちいいのか」  
「はい…」  
「そうか…」  
ジャローダが微笑む。そして、また、ずんっと体重がかかる。出される声は自分の、甘い高いもの。  
「悪いな…蛇はしつこいんだよ。少し前まで魚だった君には酷だが」  
「ひぁ…!…え?」  
まだ、ジャローダのそれは自分と繋がったままで。  
「後四、五時間は抜けないからな」  
「な…あんっやぁ」  
「楽しんでくれ」  
夜は長い。  
 
 
 
 
 
朝、日差しはまだ弱い。チラチーノは浅くなり始めた眠りから覚める。主人はまだ寝ている。  
自分が離れたら寒いだろうか。ぼんやりと思って、主人が蹴飛ばし  
た毛布を掛け直してやる。こんなだから自分が寄り添って寝ることになるのだ。  
「ジャローダとヒンバスはどうなったのかしら?」  
テントを出て、辺りを見回す。  
「あらあら」  
チラチーノはジャローダと見知らぬポケモンが、寄り添って横たわっている姿を見つける。  
見知らぬポケモンはそれは美しい姿をしていた。  
眠っているようだ。頬が紅潮している。なんだか怪しい雰囲気を感じる。  
「ずいぶん綺麗に進化したのね」  
「チラチーノか…」  
少々枯れた声がしてチラチーノは半目でジャローダを見た。  
「…あんた、何したの?」  
ジャローダはびくりと反応する。  
「いや、その」  
「同意の元でしょうね」  
「あ、当たり前だ!…多分」  
「多分ってなによ多分って」  
「ミロカロス…というらしい」  
「よかったわ。早く鏡を用意しないと、驚くわよね」  
「ああ」  
 
風が吹いた。  
ミロカロスはまだ眠っている。  
ジャローダはミロカロスに微笑む。  
驚きと喜びの未来は近い。  
 
 
おしまい  
 

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