「はあ〜ぁ……」  
 マサラタウン出身の女の子、リーフがポケモントレーナーとして旅立って、結構な日にちが経った。  
 オーキド博士から貰った最初のポケモン、フシギダネは進化して今はフシギソウになってる。  
 その他の手持ちポケモンはポッポのみ。  
 今いるクチバシティまでずっとこの2匹だけ。  
 フシギダネを選んだのが幸いし、ニビとハナダのジムは相性がよかった事もあってなんとかバッジを手に入れた。  
 しかし、ここクチバジムで躓いてる。  
「やっぱり、お月見山でイシツブテでもゲットしておけばよかったよ……」  
 クチバジムのリーダー、マチスは電気タイプのポケモンを使う。  
 草タイプのフシギソウに対し、電気技の効果はいまひとつ。しかし、全く効かないわけではない。  
 麻痺してしまうこともある、そもそも相手のライチュウはノーマルタイプの技も使ってくる。  
 ましてや飛行タイプのポッポじゃ歯が立たない。  
 もう何度負けたことか……考えただけでもため息が出てしまう。  
「ねぇ、ちょっとそこの君」  
「はい?」  
 そんな傷心の少女に忍び寄る影があった。  
 
 
「いやぁっ! やだ、やめ……っ!」  
 クチバシティから少し離れた草むらの中で、リーフは数人の男たちに取り押さえられていた。  
「あ、あの、ポケモ……」  
「そんなの君をこうする為の餌に決まってるでしょ?」  
「あんな嘘を信じるなんて、馬鹿なガキもいたもんだな」  
「そ、そんなっ!」  
「まっ、こういう子のおかげで俺達は楽しめるんだけどな」  
 ショックを受けるリーフを男たちはあざ笑う。  
 確かに、今思えば岩タイプのポケモンをあげるなんて話はうますぎた。  
 喉から手が出るほど欲しかったとはいえ、信じてしまった自分もバカだったとリーフは後悔した。  
 相手は数人で男。いくら暴れても、彼らは怯むことなくリーフの動きを封じていく。  
 両手を押さえられ、ポケモン達が入ったモンスターボールを取ることもできない。  
「このっ、いい加減大人しく、しろっ!」  
「お前は馬鹿か。抵抗されるからいいんだろうが。お、白か」  
「やあぁっ! やめて、ください!」  
「やめろと言ってやめる馬鹿はいないんだよねぇ。人の話を簡単に信じちまう馬鹿は目の前にいるけどさ」  
 男たちがまたあざ笑う。  
 その笑い声で悔しさでいっぱいになる。  
 男の一人がリーフの脚を広げ、白い下着に手をかけようとした。  
 すると、何かに気づき、再び笑い声をあげる。  
「ハハハ! おいおい、なんか染みてんぞ?」  
 男の言葉に、手の空いた他の連中もリーフのスカートの中にある白い布を覗き見る。  
「まじかよ……」  
「スゲー、ホントだ。もしかして感じてたのか?」  
「ガキの癖に変態だな。実はこうなるの期待してたんじゃね?」  
「ち、違……ちがいま……」  
「んじゃ、その期待に応えるとしますか!」  
 リーフは否定するも、震えた声では彼らには届かない。  
 一気に興奮が高まった男たちは、一斉にパンツごとズボンを脱ぎ、いきり立った肉棒を露にした。  
 はじめて見るモノは、リーフにとって恐怖以外何者でもない。  
 それが複数、徐々に近づいてくる。  
 男たちの目はまさに野獣のようだ。  
 怖い、リーフの頭の中が恐怖で染まっていく。  
 彼女は叫んだ。瞳に大粒の涙を溜め、頭の中で真っ先に浮かんだ人物の名を呼び、必死に助けを求めた。  
「ん? なんだ?」  
「なんだ彼氏か? まっ、呼ぶだけ無駄だろうけどな」  
「どうせそいつもガキだろ。今からお嬢ちゃんに、大人の良さを教えてやるよ」  
「いやああっ! 助けて、やだ、やだああぁぁ!」  
 
「ユンゲラー、念力!」  
 
「うおぁっ!」  
 突如として、男たちとは別の、聞き慣れた声が聞こえた。  
 それと同時に、一人の男の体が宙に浮き、そのまま近くの木に激突した。  
 男は気絶し、草むらの中に落下する。  
 それに驚く男たちも同様に、次々と宙に浮いていき、木に当たり気絶する。  
 一体何が起きたのかわからないリーフは、その光景を終始見ながらもポカーンとしていた。  
「ぐ、グリー……ン?」  
「よう」  
「うわぁぁーーん! ぐりぃぃぃーーん!!」  
「おわっ!」  
 立ち上がると、目の前にはリーフが先ほど助けを呼んだ茶髪の男の子がかっこつけて立っていた。  
 オーキド博士の孫でリーフの幼馴染でライバルのグリーン。  
 その隣にはユンゲラー。男たちはユンゲラーの念力でやられたのだと、この時初めてわかった。  
 グリーンが目の前まで来ると、恐怖心が一気になくなり、リーフは泣きながら彼に抱きついた。  
「ちょっ、あ、お、え、あ……あ、ええええっと……」  
「こわかったよぉ……」  
「わ、わかった。俺が来たからにはもう安心だから、と、と、とりあえず離れろ。あとぱんつ穿け」  
「っく……うん」  
 突然抱きつかれて慌てふためきながらも、自分の胸の中で泣くリーフから離れるグリーン。  
 リーフは先ほどの男たちに乱された服を調え、脱がされた拾ってそれを穿く。  
 そのシーンを見て興奮してるユンゲラーをボールに戻し、リーフのバッグやボール、帽子を拾っていく。  
「おまたせ。でもどうしてここに?」  
「んなもん後で言うから、とりあえずクチバに戻るぞ」  
「うん。あ、でもこの人たちはどうしよう」  
「そんな奴らほっとけ。ほら行くぜ」  
「あ、待って〜」  
 下半身丸出しで気絶してる男達を放置して、二人はクチバシティへ向かった。  
 
「あの、グリーン、さっきはありがとね」  
「んあ? あぁ、礼ならハイパーボール20個で手を打ってやるよ」  
「お金……あまり持ってないよ」  
「あ、馬鹿、じ、冗談だっての!」  
「でも、私があそこにいたってよくわかったね」  
「ま、まぁな。俺レベルの凄腕トレーナーになると勘も鋭くなるんだぜ、すごいだろ!」  
「へぇ、すご〜い」  
「…………そうやってすぐ信じるからあんな目に遭うんだよ」  
 本当のところユンゲラーの超能力を使って見つけた。  
 グリーンはその事をリーフには言わないでおいた。  
 そして最後、小声で呟いたことも彼女に少し聞かれてしまったようだが、適当に流しておく。  
「ま、まぁ俺様自身クチバに用事があったし、じいさんにお前の様子を見るよう言われたからな」  
「私の?」  
「お前、ここのポケモンジムに手間取ってるそうだな」  
「うん……」  
「ちょっとポケモン図鑑見せてみ。凄腕トレーナーの俺が見てやるよ」  
 言われるがまま、リーフは自分のポケモン図鑑をグリーンに手渡す。  
 彼女の図鑑を見て、グリーンは一度目を離し、もう一度じっくりと画面に表示されてる『つかまえた数』を見た。  
「3……だと……」  
「うん……」  
「ちょ、おま、3ってなんだよ!いくらなんでも10はいくだろ!」  
「だ、だって私、GETって苦手で……」  
「フシギダネとフシギソウはともかく、ポッポはまだ進化させてないのかよ!」  
「だ、だって私、ポケモンバトルって苦手で……」  
「……はぁ」  
 思わずグリーンの口からため息が出た。  
 つい、自分のじいさんは人選間違えたんじゃないかと思ってしまう。  
「…………来い」  
「え?」  
「今からポケモン捕まえに行くぞ。俺も手伝ってやる」  
 微妙に重い沈黙を破ったのはグリーンだった。  
 怒られるのかと思って肩を竦めていたリーフだったが、結構意外な反応につい間抜けな返しをしてしまう。  
 リーフの手を取り、グリーンはクチバシティを抜け11番道路へと向かった。  
 
 
「んーーっと……お、いたいた。リーフ、こっちだ」  
「ま、待って……あ、あれは、ポケモン?」  
 グリーンに連れられて11番道路に入ったところにある、とても深そうな洞窟に入った。  
 薄暗い洞窟内は少し涼しい。  
 実は暗いところも少し苦手なリーフは、震えながらゆっくり歩いていた。  
 グリーンはどんどん突き進み、2人の距離は徐々に離れていく。  
 そんな中、グリーンに呼ばれリーフは駆け寄ると、あるポケモンを発見。即座にポケモン図鑑を開いた。  
「ディグ?」  
 
『ディグダ もぐらポケモン。地下1メートルくらいを掘り進み木の根っこなどをかじって生きる。  
 偶に地上に顔を出す』  
 
「説明聞くのもいいけど逃げられるぞ」  
「う、うん。いって!、フシギソウ!」  
 出会ったのは、まさしくこの洞窟を作ったディグダであった。  
 ディグダは素早い。先手必勝だとグリーンは言う。  
 グリーンは手を出さない。  
 あくまで彼はアドバイスをする立場。この際だからポケモンバトルの方も慣れさせようという作戦だ。  
 リーフが選んだのはフシギソウ。地面タイプは草タイプが苦手、常識である。  
 こうして、グリーンとリーフのクチバジム攻略大作戦が始まった。  
 
「ありがとねグリーン。これで何とかなるかもしれないよ」  
「何とかしてもらわないと困るぞ」  
「困る?」  
「その……俺のライバルがそんなんじゃ困るってんだよ」  
「……」  
「……なんだよ?」  
「ううん、何でもない。そうだね、私がんばるよ」  
「おう、がんばれ」  
 無事ディグダをGETし、ディグダの穴から出ることには既に日は落ちかけていた。  
 もうすぐ夜ということで、2人はポケモンセンターへ向かった。  
 ポケモンセンターではポケモン治療の他、トレーナーの宿泊施設としても使えるからだ。  
 2人は別々の部屋だが、今はグリーンの部屋にいる。ベッドの上に座っている。  
 新しい仲間も増え、満面の笑みを浮かべているリーフをグリーンは頬を赤くして見ていた。  
「なんか、何から何までお世話になって悪いかも……」  
「じゃあ、礼はハイパーボール30個で……」  
「うぅ……お金ない」  
「トレーナーとバトルしまくればすぐ貯まるだろ。まっ、30個は冗談だけどな」  
「でも、やっぱりお礼させて!」  
「礼ねぇ……」  
 グリーンは悩んだ。  
 リーフの目を見る限り彼女は本気だ。礼をしなきゃ気がすまないと言ったところだろう。  
 しばらく沈黙が流れる……そして、  
「じゃあ、ポケモン交換しようぜ」  
 考えた末に、というか最初から考えていたことを言葉に表す。  
 少し悩んだ結果、リーフはそれを了承した。  
 そして2人はポケモンを交換するマシンの前へやってきた。  
 グリーンはリーフのポッポを指名したので、ポッポが入っているボールをマシンの上に乗せた。  
 グリーンもまたモンスターボールを乗せる。何が入っているのか、リーフは知らないが。  
 交換は無事終了した。  
「どんな子が入っているんだろう」  
 再び部屋に戻り、リーフはグリーンから貰ったモンスターボールのスイッチを押す。  
 ボールが開き、光と共に現れたポケモンは……  
 
「こん」  
 
「わあぁ、かわいい」  
 きつねポケモンのロコンだった。  
 茶褐色の体毛に、先端がカールした6本の尻尾が特徴の愛くるしいポケモン。  
 リーフは思わずロコンを抱きしめる。炎タイプなせいか、とても暖かい。  
「クチバの次はタマムシだろ。相手は草だからな、そいつなら楽勝だろ」  
「でもいいの?」  
「いいんだよ。俺にはリザードンがいるからな」  
 リザードン……ヒトカゲの最終進化系。  
 グリーンはもうそこまで育てていた。  
 きっと他のポケモンの強く育っているに違いない。  
 凄いと思いつつも、負けてられないとも思うあたり、リーフもグリーンをライバルだと認識している証拠である。  
「んで、このポッポはディグダGETの礼として受け取っておくぜ」  
 ロコンの頭を撫でているリーフの肩に手を回すグリーン。  
 そのまま彼女の肩を掴み、グイッと力を入れて自分のところに引き寄せる。  
 突然のことに体勢が崩れたリーフは、グリーンにその身を預けた。  
「あとは、昼間の連中から助けた、礼な」  
「え、グリ……ッ!」  
 
 そして、顔を見上げたリーフの唇を、彼は自分の唇で塞いだ。  
 
 
 
 

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