木漏れ日の温もりを感じながらも、ダークライは冷たい夜の訪れを待ち望んでいた。
自分以外のポケモンが住まないこの森に、夜にだけ通ってくる恋人がいる。
トレーナーに育てられているポケモンで名前はHABD。
初めて自分の手を取ってくれた友人で、今では恋人である。
HABDは『すばらしい のうりょくを もっている』ポケモンだから、
他のポケモンたちとよく卵を作っているらしい。
HABDはほとんどのポケモンとの間に卵を作ることができるから、
色んなポケモンたちとオスメス問わず……。
暗い思考を払い落すように、ダークライはふるふると頭をふった。
それはトレーナーの指示であって、HABD自身の選択ではないはずだ。
少なくとも自分を恋人と認めてくれてからは。
「でも、やっぱり……」
他のポケモンとの行為を考えると、もやもやした気持ちになってしまう。
ブリキのジョウロを胸の前で握りしめる。
「きっとミミロップやサーナイトもHABDにメロメロに違いない。
HABDは凄く格好良くて優しくて紳士だからな……」
トレーナーの命令で他のポケモンと卵を作るのは仕方がないとしても、
HABDにとっての特別な存在は自分だけであってほしい。
……あるアイディアを思い立ち、木の実畑から上等な実をもぎ取る。
HABDがやってくる時間まで、まだ余裕がある。
準備をしよう。少し勇気がいるが、HABDが喜んでくれるかもしれない。
真夜中。HABDはプテラの姿になってこの森へとやってきた。
化石から復元されたポケモンはメスが生まれにくいというから、
きっとHABDはプテラとも何度も……。
「どうしたの、ダークライ? 何かあったの?」
本来の姿に戻ったHABDが、ダークライの顔を見上げていた。
「な、なんでもない」
「ふーん」
「……プテラ、好きなのか?」
「うん、好き」
「っ!」
「見た目は武骨だけど、並みの鳥ポケモンよりも速く飛べるからね。便利だよ。格好良いし」
「そ、そうか」
「たまには気分を変えてチルットの姿でこようか?
面白いところだと、ゴルーグなんてのもあるよ」
「いや、いい……」
「そう? なんか今夜のダークライはちょっと変だなー」
その言葉にぴくっと反応してしまう。
「そ、そうか?」
HABDは気がついてくれるだろうか。木の実畑で花をつんで、髪飾りを作ったのだ。
誰よりもHABDに可愛いと思われたい。人間の娘が着飾るのを真似してみたのだが。
「あれ。ダークライ、髪に花がついてるよ。ドジだなー。
庭仕事に夢中になって、ゴミがついたのに気づかなかったのかな?
取ってあげるよ……あれ、ダークライ、どうして背中を向けて体育座りしてるのさ?」
HABDは凄く格好良くて優しくて紳士だけど、ちょっと鈍感かもしれない。
「……HABDに可愛いと思ってほしかったんだが……失敗だったな」
「ご、ごめん。ボク、あんまりオシャレとかわからないから……。
ダ、ダークライは凄く可愛いしキレイだよ!」
紫色の体をあたふたとゆらしながら
慌てて弁解するHABDの姿が愛らしく、手を伸ばして胸に抱いた。
「ありがとう。HABDもゼリーみたいで可愛い」
「……それ褒めてるの?」
ぷるぷるとした弾力ある手触りを楽しむ。
HABDの体は少しひんやりとしているが、氷のように全てを拒絶する冷たさではない。
注意深く触れてみれば、生き物としてのほのかな温もりがあることに気づくだろう。
「ダークライ、良い匂いだね」
HABDが体を伸ばし、頬に触れる。
触れられただけでこんな感情を抱いてしまうなんて、
自分でもはしたないと思っている。それでも、期待にざわつく心臓は止められない。
でも、HABDは少し意地悪だ。ダークライが自分から口に出すまで、
腕や首筋に触れるだけでそれ以上の行為に進むことはない。
「んー? どうしたの? ダークライ」
「なっ、なんでもないっ!」
愛する者との交わり。それは喜びでもあるのだけれど、
いつも手慣れた様子で主導権を握る恋人に、ほんの少し対抗心を感じてもいる。
今夜はガマン比べをしてみよう。絶対にHABDの方から求めさせてみせる。
たまには恋人とこんな勝負をしてみるのも悪くはない。
そのために準備だってしてあるのだ。
「だ、だんだん暖かくなってきたなー。
あ、暑いから少しまくってしまおうー」
ぎくしゃくとした説明口調の棒読み。両手でおずおずとスカート状の部分まくる。
貧相な太ももがのぞいている。
自分でやっておきながら、恥ずかしさで顔から火が出そうだ。
「それは大変だね」
太ももの辺りに、HABDが滴り落ちてきた。
「……っ!」
「へえ、暑いんだ。ぼく、体温低いから、君のこと冷ましてあげるよ」
ギリギリまで露わになった脚に、HABDの粘液質の体が絡まり、這い登る。
背筋を官能が走り抜けた。思わずもれそうになる甘い声を必死に抑える。
「ダークライの肌、凄く熱いよ。大丈夫?」
太ももや膝の裏を重点的に刺激される。
HABDはダークライの方から行為を求められるまで、肝心な部分に触れることはない。
「息も荒いんじゃない? 風邪ひいちゃったのかな?」
少年とも少女ともつかない声でささやかれる。
あどけなさと同時に大人の余裕を感じさせる声に、聴覚が犯される。
「ん……っ、そう、だな。少し体が火照っているみたいだ」
長くたなびく白い髪を掻き上げて、深呼吸。ドキドキする。
少し大胆な行為をしてみよう。緊張してきた。HABDは驚くだろうか。
それとも、ふしだらだと軽蔑するのだろうか。
スカート部分を自らの手でたくしあげる。
普通ならば秘所が見えてしまうほどに。
だが、ダークライの性器が露わになることはなかった。
白く艶やかな布が、ダークライの腰周りを守るように覆い隠している。
乱暴に扱えばすぐに破れてしまいそうな薄布だ。
ダークライを焦らすことを楽しんでいたHABDの動きが止まった。
「HABD」
かすれる声で名前を呼んだ。
「これは……予想外だよ。
例えるなら……Vなし同士の親から、
性格一致良特性5Vが産まれてきたぐらいの驚きだね」
HABDのたとえは難解すぎて、ダークライにはまったく理解できなかった。
わかっているのは、HABDが包みこむように優しく押し倒してきたということだ。
「ど、どうした、HABD。倒れこんでくるなんて、お前こそ具合が悪いのでは?」
いつも焦らされているお返しに、わざと意地悪なことを言ってみた。
「もう、わかってるくせに。今夜のダークライはずいぶん挑発的だね」
「ん……わからないな。はっきり口で言ってくれ」
いつも自分がそうであるように、HABDがもじもじする姿が見られるかと思ったが
どうやらこの柔軟な体を持つ恋人は一筋縄ではいかないようだ。
「じゃあはっきり言うよ。ちゃんと聞いてね。
ダークライ凄く可愛い。今すぐ交わって溶け合いたい。
はしたない声をいっぱいあげさせて、その凛々しい顔をとろとろにしてあげる。
あんな風に誘われたら、ぼく、もうガマンできないよ。
君のことぐちょぐちょに犯したくて堪らないんだ。……しても良いよね?」
「ん……あ、う。その……」
今夜は自分が主導権を握るはずが、ここぞという時に恥ずかしがってしまう。
目を泳がせ、小さな声で答えるしかできなかった。
「……ああ。HABDのために用意した。だ、だから……HABDの好きにして、良い……」
「本当? 嬉しいな」
そう言うなり、下着にべっとりとHABDの体が貼りつく。
自分の性器とHABDを隔てているのは、薄い布一枚だ。
脚の間からぷちゅぷちゅと粘液質な音が聞こえてくる。
恥ずかしくて目を閉じた。そんなことをしても、余計に音や感触に過敏になるだけなのに。
「うひゃあ。せっかくの下着がもうべちょべちょになっちゃったよ」
恋人と自分の粘液が混じって、薄布を濡らしている。
湿った布が性器にぴったりと貼りついて、少し気持ちが悪い。
「脱いじゃダメ、ダークライ。このままで犯してあげるよ」
下着の隙間から、HABDが入りこんでくるのがわかる。
薄い布は軟体の恋人から秘所を守る役には立たない。
「ひぁ……! そ、そっち、違……っ」
HABDはメスの性器には触れずに、後ろの穴に浅く侵入し始めた。
痛みこそ感じないが、正直あまり良い気分ではない。
気持ち良くないと言えばウソになるが、ある意味性器以上に恥ずかしい場所である。
「ダークライ。人間のメスの下着、君によく似合ってるよ」
「っ……! あ、ぅ……っ」
オスの方の性器に熱い血が回る。
華奢で小さな下着に押さえつけられ、切ない痛みが走る。
「あ、ひぃ……っ!」
「発情したメスみたいな鳴き声を出すんだね」
やたらとメスを強調するHABDの言葉とは裏腹に、
薄布の下ではダークライのオスの性器がどんどん熱を帯び、硬さを増していく。
「ひ……や、やだ……」
「ん? 何が嫌なのかな? はっきり口で言ってくれないと、ぼく、わからないよ」
口に出せるわけもなく、ふるふると首を振ることしかできなかった。
「可愛い。ダークライって女の子みたいだね」
優しく声をかけながら、HABDは後ろの穴に勢い良く入りこんできた。
「ああッ!?」
痛みはない。内臓を犯されるような感覚。
不快な異物感と、言い表しがたい快楽を同時に与えられる。脳が焼き切れそうだ。
「キツそうだね、大丈夫?」
張りつめたオスの性器が柔らかい粘液に包まれる。
先端からは透明な体液がだらしなく漏れ出していた。
メスのような格好をしながら、オスの性器を刺激され続ける。
倒錯的な愛撫の末に、下着をつけたまま白濁の液を吐き出した。
「んんッ、ふ……」
オスの部分にHABDが絡みつき、根元から先端へとしごき上げてくる。
「後ろの穴でイッちゃったんだね」
放置されたメスの部分がひくひくとうずいている。
達したと言うのに、まだお預けを喰らっている気分だ。
「う、あ……HABD……」
「んー? なあに?」
物欲しげな視線を送る。
だが、恋人が求めに応じる様子はない。口に出して懇願しない限り。
「ず、ずるいぞ……。んっ……いつも私に、っ……言わせてばかり、で」
相手に希望を伝えること自体は悪くない。内容が内容だけに少し恥ずかしいが。
「い、いつも私がねだって、ばかり、じゃないか」
「ダークライ?」
「これでは不公平だ」
「! ……ご、ごめん。ぼく、そこまで考えてなかったよ。君は嫌だったんだね」
HABDが慌てて体を離した。
「あ、ぅ……ち、違う」
それは誤解だ。嫌なわけではないのだが。
「その……、私だけが要求するのが不公平だと言ったんだ。
HABDがしてほしいことも教えてほしい……」
一旦離れたHABDの小さな体を抱き上げる。
膝の上に乗せて、話を続ける。
「そっか。うーん、でも、ぼく、ダークライにおねだりされるの、好きなんだけどな。
あんな風にエッチな声と表情で頼まれたら、どんどんサービスしたくなっちゃうよ」
今までしてきたおねだりの内容を思い返し、頬が熱くなる。
「でもまあ、ダークライがそう言ってくれるなら、
今度はぼくからも色々リクエストしてみようかな」
「ん。リクエストに応えられるよう、頑張る」
「うん、頑張って」
膝に乗せていたHABDがとろりと溶けて、脚の間に滑り落ちた。
メスの部分に甘い電流が走る。
「ひぅっ!」
「じゃあさっそくぼくからリクエストしちゃおうかな。
脚を大きく開いて、よく見せて」
「あ、ああ……」
座った姿勢で脚を広げていく。両手でスカートをたくしあげる。
ぐしょぐしょに濡れ、粘膜に貼り着いた下着をさらす。
「次は下着をつけたまま、あそこをくぱぁってしてみてよ」
知らない擬音だが、前後の文脈でなんとなく意味を察する。
「わかっ……た」
片手でスカートを押さえ、もう片方の手の指を使い、メスの性器を左右に広げる。
「その下着、白くて薄いから、濡れて透けちゃってるね。
君のそこがどうなってるのか、下着の上からでもわかっちゃう」
その言葉に反応し、メスの部分がうずく。
とろりとした愛液を吐き出し、下着をさらに濡らしてしまう。
「ひくひくって動いてる。可愛いね」
「ん、あふ……、HABD……そろそろ……」
「うん。ぼくからもお願いしようと思ってたんだ。
君の中に入りたい。良いかな?」
断る理由なんてない。荒い呼吸と共に頷く。
「ダークライ、大丈夫?」
「……へ、平気だ」
あの後、気を失うほど激しく体をむさぼられた。
のほほんとした顔をしているわりに、本気で欲情したメタモン族は結構凶悪だ。
ただ、たまにはこんな激しい交わりも悪くないだろう。
毎晩は無理だ。体が持たない。
「そう言えば、その下着、どうやって手に入れたの? 下着泥棒?」
「ばっ、バカ者! そんなことするか!」
HABDがくる前、森を出て他のポケモンたちのいるところへ向かった。
何か身を飾れるものと木の実を物々交換するつもりで出かけたのだ。
ハハコモリという服作りの上手いポケモンがいることは知識として知っていた。
恋人の気を引くために、リボンか何かがほしいと言ったら
「オスはこれで一撃必殺ハサミギロチン、ハッハーン10」と
やたらと色っぽい下着をオススメされた、というわけだ。
「いやいやいや、ハサミギロチンしちゃダメでしょ」
「私もそう思った」
あれから数週間。
HABDの方から、おねだりされることが多くなってきた。
恋人が要求を素直に教えてくれて、
それを受け入れるのは嬉しいのだが……。
「ダークライ! この縞々のパンツはいてみて!
きっとよく似合うと思うんだ!
やっぱり縞パンは青と白に限るよね!」
「ダークライ! 紫色のTバックを手に入れたんだ!
さあ、さっそくはいてみようか!
白の網タイツとピンヒールもあるよ!」
「ダークライ! ドロワーズって知ってるかな?
清純で古風な感じが逆にドキドキだよね!
あ、メイド服とゴスロリ服、どっちを着たい?」
……もしかしたら、
HABDに危ない趣味を目覚めさせてしまったのかもしれない。
おしまい