ポケモンセンターの一室の中。
僕、ワカバタウンのヒビキは部屋の電灯をつけるのも忘れ、一心にメタモンを変身させることに集中していた。
「…メタモン、もう少しこのあたりを…こう…」
メタモンが変身した姿に、僕は逐一けちをつけ、直させてゆく。僕はこんな作業を、かれこれ30分近くもやっていた。
「よし、そう、そのまま…こう、足を開いて…」
今度は足をつかみながら、それをゆっくりと開く。
僕の目に映っているのは、はしたない恰好で、恥ずかしげにはにかんでいるエリカさん。所詮メタモンが変身したものだから、ちょっと違和感はあるけれど、それでもなかなかによくできていると思う。
「…エリカさん…エリカさん…」
僕はエリカさんのことが、好きだった。むしろ恋い焦がれていた。
仕立ての良い和服に身を包み、髪型はおかっぱ。ほかのどんな女性とも違ったしとやかさと、バトルの時は容赦をしないしたたかさが共存したその態度。
その優雅な姿に骨抜きにされる男は多く、僕もその一人だったのである。
そしてひょんなことからエリカさんのポケギア番号を手に入れてしまった僕は、エリカさんへの思いが加速するようになり。
今日ついに、やましい行動…持っているメタモンを好きな女性に変身させていろいろするという、思春期の男子なら誰もが憧れる行動に出てしまったというわけdだ。
「エリカさんっ!」
辛抱たまらず、僕はエリカさん…に変身したメタモンに抱きついた。あのエリカさんが恥じらいながら笑っている姿なんて、今の僕にはあまりにも刺激が強すぎた。
あのエリカさんが、清楚できれいでかわいいエリカさんが、僕の言いなりになるんだ…!
ああ、エリカさん、エリカさん…どうしてそんなにもかわいくて、奥ゆかしくて、美しいんですか…!
「はぁ、はぁっ…!」
エリカさんに変身したメタモンに頬ずりをしていると、ふいに背後から、カシャッという音がした。
驚いて振り向くと、部屋の扉が開いており、そこにはカメラを持ったエリカさんが、嫣然と立っていた。
「あら、ヒビキさんでしたの。何をしていらっしゃったの?」
エリカさんはたおやかな微笑みを浮かべながら、僕の部屋に入ってくる。その視線は片時も、僕の顔から離れない。
「あ、いや、その…」
「なぁに?呼ばれたような気がしてきたんだけど…」
小首を傾げながら尋ねるエリカさん。僕はメタモンをモンスターボールにもどし、愛想笑いを浮かべた。
「あ、いや、これはその…」
「なぁに?」
「あ…そ、その、メタモンの変身の練習ですよ!いろんなものに変身できるようにしておいて損はありませんから…」
そうだ、こう言っておけばごまかせる。本当のことは、バレるわけにはいかないのだ。
「それ、嘘でしょう?」
だがエリカさんは微笑みながら、僕の希望をあっさりと踏み砕いた。
「不埒な雰囲気を嗅ぎつけてきてみれば…」
エリカさんはため息をつき、僕を見おろした。
「大方そのメタモンをわたくしに変身させて、破廉恥な振る舞いに及ぼうとしていたのでしょう?」
「そ、そんなことは…」
「違うとおっしゃいますの?でしたらこの写真、現像しておまわりさんに渡してしまってもかまわないということですわよね?」
「えっ!?」
エリカさんの発言に、僕は驚いた。自分で言うのもなんだが、メタモンの変身はかなり精巧だった。そんなのに頬ずりをしている僕は、ただの変態にしか見えない。…まぁ実際変態なんだけど…
そんな変態の写真をおまわりさんに突き出されたら、僕がおまわりさんに捕まることはまず間違いない。
「…え、エリカさんの言うとおりです…」
「あら、ではヒビキさんは、自分のメタモンをわたくしに変身させて、不埒な行いをしようとしていたと…そういうわけですわね?」
「は、はい…」
「そう…」
エリカさんはほうとため息をつき、そして、
「気持ち悪い」
笑顔のまったくない、軽蔑するような表情で、そう言い放った。
「あんなことをされていたなんて、考えるだけで身の毛がよだちますわね」
突き放すような語調で、エリカさんは言った。
「惨めで、ぶざまで、哀れですわ。こんなトレーナーに捕まえられて、メタモンもかわいそうですわね」
その声にも表情にも、慈悲や好意はみじんも感じられない。心の底から嫌悪されているのが、嫌でも分かった。
「このことは皆に知らせますわ。こんなおぞけの走るような殿方には近寄ってほしくありませんもの」
「そ、そんな…な、なんでもします、だからそれだけは…!」
「失礼ですが私、きれいなもの以外に興味はありませんの。あなたなんて、視界に入るだけでも不愉快ですわ」
情けを乞おうとあわててエリカさんにしがみつくと、エリカさんは、汚らしいものを見るような眼で僕のことを見下ろした。
「でも…」
その眼が、すっと細くなる。
「這いつくばって、人としての尊厳も失った男の子は見てみたいですわねぇ?」
そして鋭い眼光が、僕を射抜いた。
「あなたのなさったみじめなおこないは、私とあなたしか知らないこと。私がついうっかり口を滑らせなければ、誰にもばれません…うっかり口を滑らせなければ、ですけどね」
エリカさんは笑った。だがその笑顔は、僕が想像していた、清楚で奥ゆかしい花のような笑顔とはかけ離れていた。
逆らえば、ばらされる。この醜態を。
エリカさんはあらゆる場所に発言力を持つジムリーダーだし、生け花教室も開いているタマムシシティの名士だ。男女問わずファンも多い。
そんな人が、あの写真を見せてあることないこと言えば、誰もがそれを信じるだろう。そして僕は、社会的に終わってしまう。
僕に残された選択肢は、たったひとつしかなかった。
「あ、あの…ぼ、僕は何をすれば…」
自分の醜態をばらされない代わりに、エリカさんの言いなりになる。それがエリカさんの提示した条件だった。
「そうですわねぇ…そうだ。わたくしのペットになってくださらないかしら?」
エリカさんはさわやかな笑顔で、とんでもないことを言ってのけた。…ペットだって?
「ぺ、ペット…」
「ええ。ペットってご存じない?」
「い、いえ…あの、バトルとかに使うんじゃなくて、家で愛玩用に飼うポケモンのことですよね」
「そう。わたくし、ジムリーダーでしょう?だからペットって持ったことありませんの。ちょうどいい機会ですわ」
エリカさんはそう言いながら、悠然とした態度で僕の頭を撫でた。
「あなたはわたくしのペット。それでよろしいかしら?」
「は、はい…」
逆らうという選択肢は、僕にはない。僕はこうべを垂れてひざまずいた。
「よろしい。さて…ペットが服を着るなんて、ナンセンスですわよねぇ?」
エリカさんは僕を見ながら、わざとらしい口調でそう言った。
「えっ…」
「何をすればいいか、わかりますわよね?」
「は、はい…」
エリカさんの言葉に、僕はうなずき、服をおずおずと脱ぎ始めた。人にマジマジと見られながら服を脱ぐのは、恥ずかしいというより、不快感があった。
「…ぷっ、くくっ…あっはっはっはっは!」
服をすべて脱ぎ終えた瞬間、エリカさんは僕を指差して、けらけらと笑い始めた。
「本当、こっけいですわねぇ!なぁに、そのお姿!体は貧相!おちんちんもお粗末!あの素敵なお洋服は、その滑稽なお姿を隠すためのものでしたのねぇ!」
その笑い声が意味するところはたった一つ、侮辱だ。あのおしとやかなエリカさんがここまではっきりと人を侮辱するところなんて、考えたこともなかった。
「ぷっ、くくく…そのおちんちん、本当に小さいんですのねぇ…私の指より小さいんじゃありません?そんな粗末なもので誰が喜ぶの?…くっ…くくっ…」
エリカさんは、肩を震わせて笑う。何も言い返せなかった。僕のそれは自分でも気にしてしまうほど小さかったから。…どうして、こんなに小さいんだろう。
「はぁ、はぁ…取り乱してしまいましたわ、申し訳ありません」
エリカさんはひとしきり笑った後、僕に会釈をして、そしてすっと目を細めた。
「わたくし、きれいなもの以外は嫌いですわ…お座りなさい」
エリカさんはそう言って僕を座らせ、そして僕の膝をまじまじと見つめた。そこには先日、お月見山へ行ったときに転んでできた擦り傷があった。
「…この傷。醜くてけがらわしいわねぇ?」
エリカさんはそう言って、その傷口に爪を立てた。とたんに、僕の体に激痛が走った。
「がっ、あぐっ…!」
「いいこと?ヒビキさん」
僕がもだえることなどお構いなしに、エリカさんは爪で僕の傷をひっかく。
「あなたはこれからわたくしのペットなのですから…」
「あがっ、がっ、いたいっ…!」
「常に美しくありなさい、いいですわね?」
エリカさんは僕に、含ませるように言った。
「は、はい…!」
「あら…どうしてペットがしゃべっているのかしら?」
「ぐっ…うぐっ…」
涙が出てきたのは、痛みによるものか、恐怖によるものか、それとも…自分が情けないからなのだろうか。
「ねぇ、鳴いてごらんなさい?媚びてごらんなさい?」
僕が痛がろうが泣こうがお構いなしに、エリカさんは傷をひっかきながら、僕に迫る。
「そ、そんな…」
「ねぇ?」
エリカさんは微笑みながら、僕の傷口を爪で穿る。
あのエリカさんが、笑顔のまま、顔色一つ変えずに、僕の傷口をえぐっている。僕が痛がっているにも関わらず。嫌がっているにも関わらず。
エリカさんは笑顔のまま、僕を屈服させようとしているのだ。
「二度は言いませんわよ?」
エリカさんの笑顔が、今はただ、怖かった。
「…わん」
痛みと恐怖に屈服した僕は、人の言葉と尊厳を捨て、獣になり下がった。
「ふふっ…」
エリカさんはくすくすと笑いながら、僕の膝の傷から手を離した。血がだらだらと流れて、床に滴り落ちた。
「無様ですわねぇ…」
エリカさんは、僕の顎をつかみながら言った。
「ほら、こびへつらって笑ってみてくださらない?」
エリカさんの顔が、目前にある。エリカさんが侮るような、見下すような目つきで、僕を見つめている。僕は精いっぱいの作り笑いを浮かべた。
「本当に無様ねぇ、ヒビキさん。わたくし、その笑顔好きですわよ?」
エリカさんは笑う。その嘲るような笑顔に、僕はどきどきしていた。
「そうねぇ…次は…」
ひとしきり僕に媚びさせたあと、エリカさんは口元に手を当てて考え込んだ。
「そこに寝転がってくださらない?」
その言葉を受けて、僕はうつぶせに寝転がる。
「誰がうつぶせになれと言いました?」
途端に、脇腹に激痛が走った。
エリカさんに力いっぱい蹴飛ばされたのだということを理解するには、少し時間がかかった。あのエリカさんが、暴力に及んでいる姿なんて、考えたこともなかったから。
「うぐっ…」
「仰向けに決まってるでしょう」
エリカさんは冷たく言い放つ。僕は急いで、仰向けに寝転がった。蹴飛ばされたわき腹が、ジンジンと痛んだ。
いったい何をされるのだろう。まさか、お腹を踏まれたりとか…?そんなことされたら、下手すれば内臓がつぶれたりするんじゃ…
「…そうねぇ…何をしましょうか…」
エリカさんは僕を、値踏みするような目つきで見つめた。
「お腹を思いっきり踏んづけてみたら、面白そうですわねぇ?」
そう言って微笑むエリカさん。…そんな、冗談じゃない。そんなことをされたら大変なことになる…
「さすがにそれはかわいそうですわねぇ?やめてほしい?」
エリカさんが小首を傾げて尋ねる。僕は首をがくがくと縦に振った。
「それじゃあやめてあげますわ…」
その発言に、僕はほっとする。さすがにそんなひどいことを、エリカさんがするわけがない。これはただ、僕を怖がらせるための冗談なのだ。
僕はそう思っていた。
「なーんてねっ!」
しかしエリカさんは、本当にうれしそうな表情で、安堵していた僕のお腹を、踏み抜いた。
「うごっ…!」
僕のお腹を、重い衝撃が突き抜けた。
「うぐっ、ぐっ…!」
脂汗が額から吹き出す。こみ上げる嘔吐感を必死になって耐える。お腹に襲いかかる鈍痛はあまりにも重かった。体をくねらせてその痛みを少しでも軽減しようとするが、無駄な努力だった。
エリカさんは優しい人だから、そんな外道じみたことをするわけがないだろうと思っていた自分の考えは、あっさりと踏み砕かれたのだ。
「あらあら…すごい顔してますわよ?」
エリカさんはうれしそうに笑いながら、のたうちまわる僕の額を、そのかかとで踏んづける。
「はっ、はぁっ…!」
「ああ、楽しい…ヒビキさん、もっといい声で鳴いてくださらない?」
エリカさんは笑顔だった。ただ声の調子は、ふだんより明らかに強かった。まるでこの状況を、心の底から楽しんでいるような…
「それっ!」
「がっ、あぐっ…!」
「あはははは、面白いですわねぇ!ほらっ、このっ、このっ!」
背を、尻を、腰を、脛を蹴飛ばされ、僕はただ、のたうちまわることしかできない。エリカさんが僕の頭や首を蹴飛ばさないのが、せめてもの救いだと思った。
「…ふぅ、はしたなく騒いでしまいましたわ」
どれくらい蹴飛ばされていただろう。エリカさんは甘い声でそう呟き、ほっとため息をついた。体じゅうがじんじんと痛んだ。
「…正直なことを申し上げると、感服いたしましたわ」
「え…?」
「最初にお腹を踏みつけたとき、たぶん嘔吐なさるんじゃないかなと思っておりましたの。もちろん、そうなたらヒビキさんに後始末をさせるつもりでしたわ」
「えっ…」
エリカさんは笑顔でとんでもないことを言い放つ。僕にはその言葉に、底知れない悪意があるように感じられた。
「でもヒビキさんは耐えきった。…意外と我慢強いのですね」
エリカさんはそういいながら、僕の頭を撫でてくれる。純粋に褒めてくれているのだということがわかった。
…膝枕をしてもらったり、抱きしめてもらったり、頭をなでてもらったりすることを、どれほど夢見たことか。その夢が現実になっているのに、僕はまったく、嬉しいと思わなかった。
エリカさんの苛烈な加虐が、僕の心に、純粋な恐怖と、服従心を植え付けていた。
「そんなあなたに、ご褒美を差し上げますので…寝転がっていただけます?」
「え…」
エリカさんの言葉に、僕はどきりとした。またお腹を踏み抜かれるのではないか。あの時の痛みと恐怖がよみがえり、僕は身を固くする。
「そんなに怖がらなくてもよろしいのよ?さっきのようにお腹を踏んだり、何度も何度も蹴飛ばしたりなんてしませんもの」
そんな僕の心中を察したのか。エリカさんはそう言いながら、僕の頭を撫でた。
「大丈夫、わたくし嘘はつきませんわ」
エリカさんはにこやかに微笑む。僕が仰向けに寝転がるまで、待ち続けるつもりなのだろう。
このままじゃ物事がいつまでたっても進まないと思ったので、僕は覚悟をきめて、仰向けに寝転がった。
「それじゃあ…」
それを見てエリカさんは立ち上がる。
そしてその足を高く上げ、僕の腹へ踏み下ろした。
「ふんっ!」
思わず体を硬くする。そのかかとは僕の腹を踏み抜く…ということはなく、僕の腹の上で、ぴたりと止まった。
「…びっくりしました?」
「…わ、わん…」
「うふふ、いい子ですわね…そのいちいち怖がる姿、ぞくぞくしますわ…」
エリカさんはくすくすと笑い、そしてその足を僕の逸物にあてがった。
「…えっ?」
驚く僕を尻目に、エリカさんは逸物をぐいぐいと足で踏みつける。
「あっ、はぁん…」
快感が全身を駆け巡った。あのエリカさんが、僕にこんなことをしてくれるなんて…!
「嬉しいのかしら?」
「…は、はいっ…!」
「そう…こんなのでよがっておりますのね。男性のシンボルともいえるものを、一番大切ともいえるものを、わたくしに踏みつけられて、足蹴にされ…
そんなことされたら、普通は憤りますわ。それでも気持ちいいのですわね?」
「は、はい!」
「仕方のないことですわ…ヒビキさんにプライドなんてもの、ありませんものねぇ?」
エリカさんの声の調子には、妖艶なものが感じられる。ぞくぞくする。胸が、掻きならされるような…
「はっ、はい!」
「本当に薄汚い方…」
足にぐいぐいと、力が入る。かかとが付け根の部分を、潰すようにぐりぐりと踏み躙った。痛かったが、それよりも興奮が勝った。
あのエリカさんが、僕にこんなことをしてくれている。僕の心は歓喜ではじけ飛びそうだったのだ。
「あぐっ…はぁっ、はぁっ…」
「あっはっはっは!なぁに、その顔!踏みにじるのがそんなによろしいの?」
エリカさんが嘲るような哄笑を僕に浴びせながら、半ば蹴飛ばすように僕の肉棒を踏みつける。
「本当に救えないマゾなんですのねぇ!こらっ、このっ、このっ!」
エリカさんの表情が、愉悦に歪む。かかとに力が入り、僕の肉棒が踏みにじられる。
その痛みですら、今の僕には快感だった。
「はっ、はぁん…!」
そして僕の欲望は、はちきれた。体が震え、視界が白んだ。
快楽の波に耐えきれなくなった肉棒は、エリカさんの足に、白く濁った欲望を吐き出していった。
体が震える。あのエリカさんの前で、エリカさんに見られながら射精する。それがたまらなく、幸せだった。
「あら…堪え性のない方ね」
呆れたような声で、エリカさんは言う。きれいな純白の足袋が、どろどろとした精液で穢されてゆく。
「まったく…足袋が汚れてしまいましたわ」
エリカさんはそう言って、僕の前にその、汚れた足袋に包まれたおみ足を突き出した。
「きれいにしてくださる?」
エリカさんが妖艶に笑って、僕にそう催促する。僕はのろのろとエリカさんに這い寄り、そのおみ足を舌で舐めはじめた。
あのエリカさんのおみ足を舐めることができるなんて…僕は、なんて幸せ者なんだろう。
「…ふふっ、本当に救えない方…ねっ!」
エリカさんはクスクスと笑いながら、そのおみ足を僕の口にねじ込んだ。
「もっと気合いを入れてきれいにしてくださらない?」
舌が押されて吐き気を催しそうになる。歯が押され、歯茎が痛んだ。舌に感じられる味は、苦くて、しょっぱくて、とても不愉快だった。
けれどエリカさんが僕を見下ろしているときの、愉悦の混じった冷笑が、僕の神経をこの上なく昂ぶらせるのだ。
「じゅるっ、じゅっ…」
「ふふっ…素敵よ、ヒビキさん」
エリカさんは微笑む。エリカさんのその笑顔を、一秒でも長く見たい。僕はそう思いながら、エリカさんの足袋と、それにべったりとついた自分の精液を舐めとり続けた。
「ねぇ、ヒビキさん?」
エリカさんが僕に、甘い声で囁きかける。
僕は何も言えなかった。しゃべると何をされるか分からなかったから。
「しゃべってもよろしいわよ?」
そんな僕の心中を察したのか、エリカさんは穏やかな調子で言った。
「…は、はい…」
「なかなかいいすわり心地よ?」
エリカさんはうっとりとした声で言った。この位置からでは、彼女の表情はよく見えなかった。
腕はしびれてがくがくと震える。今すぐにでも倒れこんでしまいたかった。けれどそれをするわけにはいかない。エリカさんが僕のことを褒めてくださっているのだから。
「あ、ありがとうございます…」
僕は今、四つん這いになっている。
「ふぁぁ…座っている以外にすることがないって意外と暇ですわね…」
そしてその背中に、エリカさんが座っていらっしゃるのだ。
エリカさんは意外と重かった。まぁ当然のことだろう。エリカさんは成人女性だ。どれだけ軽くても確実に30kg以上はあるだろう。
その重さが、今の僕にはたまらなく気持ちよかった。
「ねぇヒビキさん?」
「は、はい」
「わたくし、あなたのこと気に入りましたわ」
そう言ってエリカさんは、僕の頭を撫でてくれる。
「これから毎日、私が呼びつけたらすぐに来ること。よろしいですわね?」
「は、はい!ありがとうございます!」
「よろしい。…ふふっ、本当に無様で、醜くて、見苦しくて…そんなヒビキさんのこと、わたくし、好きですわよ?」
エリカさんはくすくすと笑い、足を組んだ。背中にぐっと体重がかかり、僕の手がぶるぶると震えた。
苦しいけれど、嫌な気持ちはまったくなかった。それどころか、心のどこかでこんなことを望んでいたような気すらした。
形はどうであれ、僕はエリカさんと親密になれたし、望んでいたものとは違うが、感情を露出させたエリカさんの笑顔を見ることができるようになったのだ。
僕の初恋は、形はどうであれ、成就したのである。
「…ありがとうございます、エリカさん…」
「そんな、お礼なんていりませんわ。ヒビキさんはわたくしを楽しませてくれれば、それでよろしくてよ?」
エリカさんはくすくすと笑い、僕の背中に、ぐっと体重をかけた。
その重さが、今の僕の心をぞくぞくとふるわせるのだ。
日曜日の朝。僕は真っ暗闇の中で、一糸まとわぬ姿のまま、タンスの一番下の段に閉じ込められていた。
視界を封じられて普段より敏感になった聴覚が、外の喧騒をとらえている。エリカさんが門下生の女子と、談笑に興じておられるのだ。
「エリカさま、それでは私たちは買い出しに行ってまいります!」
「ええ、気をつけて」
何も見えない真っ黒な視界の中、エリカさんの婀娜っぽい声と、その門下生のきゃぴきゃぴした声が響く。ほどなくしてどたどたという足音が響き、部屋に静寂が戻ってきた。
「…ヒビキさん、ご気分はどう?」
僕の視界に、ふいに光が差した。仕立ての良い和服を着たエリカさんが、にこやかな笑顔で立っていた。
「もう、こんなに腫らしちゃって…」
逸物に、鋭い痛みが走った。エリカさんが、僕の逸物の皮に爪を立てたのだ。
「本当に節操のない方。お仕置きが待ちきれなかったのかしら?」
エリカさんはそう言って、僕にのあごに手をかける。
「これからたっぷりかわいがってあげますわ…たっぷりとね」
そう言って笑うエリカさんは、とても蠱惑的で、見ているだけでぞくぞくした。
この笑顔を見ることができる人は、この世で僕しかいない。そう考えるだけで、歓喜の震えが止まらなかった。
「はい、エリカさん…」
ひざまずいてそう答える僕の顔は、もしかしたら笑っているのかもしれなかった。