リゾートエリアは、今日も快晴だった。南国風の植物や池は、人間の手で作られた「自然」を感じさせてくれた。  
そんな温暖湿潤なリゾート地のポケモンセンターで、あたしは何度も心で反芻してきた言葉を、目の前にいる人に、叫ぶように言った。  
「あ、あの、コウキさん!あ、あたし、その…いつも、いっしょに、いたいんです!あなたと!」  
コウキさんというのは、フタバタウン出身のトレーナーで、各地を巡ってポケモン図鑑を完成させようと頑張っている人だ。  
優しくて、温厚。しかしポケモンバトルは驚くほど強いし、彼自身も結構タフだ。そして何より、彼は人に好かれるような魅力に溢れており、私もそれに魅了された一人だった。  
「いいよー」  
けれど目の前にいるのは、あたしの大好きなコウキさんではなく、あたしと仲良くしていただいている同業者だった。  
スズナさん。こおりタイプを使いこなす、キッサキシティのジムリーダーだ。  
ろくすっぽおしゃれもできないあたしにアクセサリーをくれたり、ジムリーダーのあり方を教えてくれたりする、あたしの姉のような先輩である。  
「スモモちゃん、もうちょっと淀みなく言えるといいかもね。で、意気ごみの方は?」  
「あ、あたし、やります!やってやります!」  
「行け行け、その意気だぞ!ってわけでほら、行こう?コウキ君の別荘、もうすぐそこなんだし」  
スズナさんは窓を指さす。コウキさんの根城である別荘の屋根が、ちょこんと見えた。…あそこに、コウキさんが…  
「…や、やっぱりもう一回練習していいですか?」  
「えー、またぁ?もう10回目だよ?」  
スズナさんの笑顔が露骨に曇った。当然だ、あたしはもう何度も、練習にスズナさんを付き合わせてしまっているのである。  
しかし何度練習しても、あたしはどうしても、コウキさんのところへ行く気になれなかった。  
もし、つれなくふられてしまったらどうしよう。そう考えると、どうしても弱気になってしまうのだ。  
 
「スモモちゃんさぁ、いい加減覚悟決めちゃいなって。こういうのはなるようにしかならないんだからさぁ」  
スズナさんは大きく伸びをして言った。まるでひとごとだ。…実際、ひとごとなんだけど。  
「な、なるようにしかならないって…」  
「ここまでじっくり計画練って、練習してきたでしょ?大丈夫、成功するって!おさらいするよ?まず別荘でコウキ君を待ってるの!  
で、コウキ君が来たら、ポケモンバトルに誘う!で、バトルが終わったら、適当なこと言って、その後『あなたとバトルできて楽しい』って想いを伝えた後に、告白!これでオッケー、いけるって!」  
スズナさんは私の肩をつかみ、激しく揺さぶりながら言った。  
「ポケモンバトルみたいに気合入れて押せ押せで告白しちゃえば、絶対オッケーもらえるって!コウキ君、押しに弱そうな感じだしさ」  
「で、でもやっぱり…」  
「じゃああたしが先に告白しちゃおっかなー?」  
スズナさんはにんまりと笑う。この人は、やると言ったら必ずやる人だ。あのコウキさんのことだ。スズナさんに気圧されて、そのまま首を縦に振ってしまいかねない。  
「そ、それはだめです!」  
「じゃあ早く告白しなきゃ!コウキ君って女の人にモテそうだから、早くしないと本当に他の人に取られちゃうよ?」  
「え、で、でも…」  
「シロナさんとかがさぁ、『自分の部屋、帰りたくない…』なんて言ってあの黒いコート脱ぎ始めたら、コウキ君、コロッと落ちちゃうよ?」  
スズナさんは笑いながら言ったが、その内容はとうてい笑い話では済ませられなかった。  
シロナさんが美しいブロンドの髪をたなびかせ、コウキさんにしなだれかかり、そっと甘い言葉をかける。コウキさんがその言葉に蕩かされ、そのまま2人はいいムードに…  
そうなることは、容易に想像できた。そうだ、そうなる前にことを済ませるために、今日はここまで来たんじゃないか!  
「…行きます」  
「おっ、ようやく腹をくくったんだね?」  
「はい。…あたし、行きます」  
あたしはスズナさんをまっすぐ見据え、そしてうなずいた。  
恐れはまったくなかった。おどおどして何度も練習していたのが、突然馬鹿らしくなった。  
そうだ。コウキさんはいかにも押しに弱そうな感じの人だ。頼まれたら断れないタイプの人、とでも言うべきか。  
勝負所に来ているモミさんや、チャンピオンのシロナさんのような、抜群のプロポーションと大人の色香を持つ女の人に迫られたら、間違いなく首を縦に振ってしまうだろう。そうなる前に、あたしが仕掛ける!  
「やってやります!」  
「おお、目が本気だ…あたし、応援するよ!がんばれがんばれスモモちゃん!」  
「はい!」  
あたしは構え、そして大きく息を吐く。  
今のあたしなら、きっとコウキさんへ想いを伝え、そしてその先のステップへ進める。根拠はないが、そう確信していた。  
 
コウキさんの別荘は、ポケモンセンターのすぐ近くにある。なんでもひょんなことから、どこかのお金持ちにこの別荘を譲ってもらったらしい。  
その開き窓が、少しだけ開いている。ということは、コウキさんが中にいるということだ。あたしはコウキさんの様子をうかがうべく、その隙間から中を覗いた。  
「…えっ…」  
そしてあたしは、目を疑った。  
コウキさんは、確かにそこにいた。生まれたままの姿で、ベッドに腰かけていた。  
そしてけばけばしいドレスの女性が、彼の股間にむしゃぶりついていた。あの髪形、見まごうことなどあるわけがない。メリッサさんだ。  
「どう、いる?…えっ?」  
スズナさんがあたしの上から窓をのぞき込み、そして絶句した。  
「あ、あれ…メリッサさん…だよね?」  
スズナさんが、とぎれとぎれに言う。  
「ど、どうして…」  
口から自然と、言葉がこぼれる。目の前でコウキさんがしていたのは、これから告白をしようと意気込んでいたあたしにとって、最も残酷な行為だった。  
コウキさんは、生まれたままの姿でベッドに腰かけて、荒い息を吐いている。無駄な肉のついていない、線の細い身体だ。  
一方メリッサさんは、こちらからでは見づらいが、ドレスの上からでもわかるほど肉付きの良い体である。  
「め、メリッサさん…ぼ、僕、もう…!」  
「じゅぷ、ちゅっ…」  
コウキさんが、気の抜けたような、情けない声をあげる。  
「あっ、あっ…」  
そしてその体が、突然びくびくと震えた。メリッサさんの喉が、ゴクリ、ゴクリと鳴る。  
「は、はぁっ…はぁ…」  
コウキさんの痙攣が終わると、メリッサさんはコウキさんに笑いかけた。  
「出ましたネー…すっごく、ドロドロしてます」  
舌の上にのせた白濁をコウキさんに見せ、メリッサさんはおいしそうに、それを喉の奥へと押し流した。  
「そ、そんな、汚いですって!」  
「そんなことない!これ、恋人なら、当然のことよ?」  
そう言ってメリッサさんは、コウキさんの唇に、自らの唇を重ねた。  
「んっ、んぐっ…」  
「ふふっ…お味は、どうですか?」  
メリッサさんが笑う。自信と余裕に溢れた、大人の笑みだった。  
「…しょっぱくて、苦いです…」  
「それが愛の味。アナタ、よく覚えておくといいです」  
メリッサさんは、なまめかしく舌なめずりをする。彼女の舌先が彼女の口元に垂れた白濁をすくいとると、メリッサさんは嫣然と笑った。  
あたしもスズナさんも、目の前で行われているいとなみから、目を離せずにいた。  
あたしにとってそれは、この上なく残酷でおぞましい光景のはずなのに、あたしはそれを食い入るように見つめてしまっていた。  
「コウキさん…」  
壁を隔てた場所にいる愛しき人は今、円熟した魅力にあふれた女性においしくいただかれてしまっている。  
私が見ているとも知らずに。私の気持ちも知らずに。  
「ふふっ、アナタ、本当にキスに弱いデスネー」  
「は、はい…」  
「それじゃあはじめましょうか」  
メリッサさんはそう言って立ち上がると、その場でくるりと一回転して、ドレスの背中にあるファスナーに手をかけた。  
 
左手でスカートの裾をつかみ、じりじりとあげていく。右手は腿のラインを、なまめかしい手つきでなぞる。女の武器を最大限に利用した、婀娜っぽい女性ならではのアピール。  
その行為は、服を脱ぐ動作にしてはあまりにも無駄が多く、だからこそ見る者の視線を釘付けにして離さない。  
「…め、メリッサさん…!」  
コウキさんはといえば、そのあまりにもあでやかなストリップショーを、食い入るように見つめていた。  
コウキさんの喉が、ゴクリと鳴る。息が荒くなり、目が見開かれる。股間の物はビクビクと脈打ちながら、反り返って天をさしていた。  
コウキさんのそんな姿を、あたしは見たことがなかった。  
その姿はまるで獣のようで、あの優しくて穏やかなコウキさんをここまでたぎらせるほどの魔性が、メリッサさんには備わっているのだということが、嫌でも理解できた。  
けばけばしいドレスがなくてもメリッサさんのプロポーションは抜群だったし、勝ち気で余裕のある態度が、その姿態の魅力をさらに引き出している。  
体つきも幼く、常にいっぱいいっぱいのあたしでは、どう頑張ってもたどり着けない領域の魅力が、コウキさんの心をとろかしているのだ。  
「ふふっ…」  
来ていた物をすべて脱ぎ棄て、一糸まとわぬ姿になったメリッサさんは、艶然と笑い、コウキさんの頬をそっと撫でる。  
たったそれだけの仕草なのに、女のあたしですらドキリとしてしまうほど妖しかった。  
今、あたしの心にあるのは、大きな後悔。…なぜ、あたしはこんなにも貧相なんだろう。なぜ、あたしはこんなに大胆な態度をとれなかったのだろう。  
「め、メリッサさん…!」  
私がそんなことを思っているとは露知らず、コウキさんはあらわになったその豊満な肉体に飛びついた。  
「激しいデス、アナタ、がっつきすぎデスヨ?」  
「メリッサさん、メリッサさん!…っちゅ、ちゅぱ…」  
コウキさんは円熟した魅力のある女性の名を何度も呼びながら、たわわに実ったその人の胸にむしゃぶりついた。  
「落ち着きなさい?アタシ、逃げたりしない」  
「はぁ、はぁ…!」  
メリッサさんは優しく、その発情した少年を取り押さえた。  
「だってメリッサさん、すごくいい香りで…」  
「ふふっ、お世辞言っても何もでないデスヨ?」  
「お世辞なんかじゃないです!…ホントに、その…くらくらしちゃって…」  
コウキさんがあたふたと言い訳をする。その姿はまるで、悪戯をいさめられた小さな子供のようだった。  
「どんな理由があっても、女の子のこと考えられない男はダメ。あたし、すごーくビックリしました」  
「ごめんなさい…」  
「あたし、もうホントに傷つきました。今日はもう帰ります」  
「そ、そんな…!」  
コウキさんが泣きそうな表情になる。あたしの心に希望が浮かんだ。今メリッサさんが帰ってくれれば、これ以上コウキさんを弄ばれずに済む…!  
 
「ふふっ、今のはジョーク」  
だがあたしの一縷の望みはすぐに、メリッサさんの色っぽい微笑みに、粉みじんに砕かれた。  
「もう我慢できないでしょう?」  
「…は、はい!」  
「素直な子デスネー…あたし、そういう子、好き」  
メリッサさんは笑顔を見せて、天蓋付きのベッドに寝転がり、その股を大胆に開いた。  
「来なさい」  
メリッサさんはそう言って、人差し指をくいくいと動かして挑発した。  
「メリッサさん!」  
引っ張りすぎて切れた輪ゴムのように、コウキさんは飛び出した。メリッサさんの体が押し倒される。  
「はぁ、はぁっ…!…あれっ、このっ…」  
「落ち着きなさい。ほら、ここを、ちゃんと狙って…」  
コウキさんの剛直が、メリッサさんの女穴をこする。焦っていることは、誰が見ても明白。  
メリッサさんはそんなコウキさんに笑いかけ、優しくエスコートする。ほどなく彼の剛直は、メリッサさんの中へと押し入っていった。  
「んっ…奥まで…入りました…」  
「はぁっ、はぁっ…!」  
「ふふっ…もう逃がさないです…」  
メリッサさんの長い脚がコウキさんの腰に絡みつき、コウキさんを抱き寄せる。コウキさんは倒れ込むように、メリッサさんに体を預けた。  
「メリッサさん、メリッサさん…!」  
熱に浮かされたように相手の名を繰り返しながら、コウキさんは腰を振り始めた。  
「おぉっ、あぁっ…!」  
メリッサさんは、獣の雄叫びのような嬌声をあげる。化粧を厚塗りした顔はすっかりとろけきっていた。眉はハの字になり、目の焦点は合っておらず、普段の余裕と威厳は完全に吹き飛んでいた。  
「メリッサさん…いいにおい…」  
腰を激しく振り続けながら、コウキさんは深呼吸を繰り返す。メリッサさんはそんなコウキさんを、優しく撫でた。  
「大好きです、メリッサさん、メリッサさん!」  
優しくて温厚な、大好きだった男の人は、獣のように女を求め、あさましく腰を振り続ける。  
「おほっ、あはぁ、あぁっ…あぁっ!あふっ、あふっ…!」  
自信と余裕のある態度を崩さない、ひそかに憧れていた女の人は、いまや品なく喘ぎ、いやらしく体をくねらせる。  
お互いの肉が、相手の肉を求める、獣のような情交。そんな2人の様子を、あたしはただ、涙を流しながら見つめることしかできなかった。  
悔しいのか。悲しいのか。それすらも分からなかった。ここから逃げてしまおうとも思ったけれど、あたしは視線をそらすことすらできなかった。  
 
「すごい…」  
隣で、息を呑む音が聞こえる。スズナさんも、見知った2人が致しているこの激しい愛欲の行為から、目を離せないのだろう。  
今2人は1つとなり、お互いの愛を激しく確かめ合っているのだ。私の入り込むすきなど、どこにあるものか。  
ああ。いっそこのまま、消えてしまえたらいいのに。  
「い、いきます、メリッサさん、いきますっ!」  
「あ、はぁん…きて…」  
あたしの想いなぞ知る由もなく、2人の愛はまさにクライマックスに達しようとしていた。  
「いっしょに、イかせてクダサイ…」  
「は、はい、えっと、いきますよ、いっせーのっ…!」  
コウキさんとメリッサさんの指が絡み合い、お互いの視線が絡み合う。その表情は2人とも悩ましげで、相手を愛する人のそれだった。  
「せっ!」  
そしてその声とともに、2人のタガは外れた。  
「あっ、はっ…はぁっ…!」  
コウキさんはメリッサさんを、ぎゅっと力強く抱きしめ、腰をがくがくと震わす。  
「おうっ、おおおっ、おおおおおん…おほっ、おほぉぉぉっ!」  
長い脚をびくびくと痙攣させながら、メリッサさんは体を反らせ、女としての快楽を貪欲にむさぼり、そしてあさましく喘いだ。  
「あはぁっ…ふぅ、ふぅ…」  
2人の痙攣がおさまり、2人はずるずると動きながら離れた。メリッサさんの膣から、どろりとしたものが垂れ落ちた。  
「いっぱい出ましたネー…」  
「メリッサさん、すごい顔してました…声も大きかったし」  
「そうですか…うーん、恥ずかしいですね」  
メリッサさんはそう言って、コウキさんに飛びかかり、その唇をふさいだ。  
「んっ…んーっ…」  
唇をふさがれたコウキさんは、メリッサさんになすすべもなく口内を凌辱される。  
「っぷはぁ、はぁ、はぁ…」  
「まだまだデスネー…キスしながら、息できるようになってくだサーイ」  
「えっ…息、できるんですか?」  
「…うふふ、これからたっぷり教えるから、アナタ、ちゃんと覚えなさい。…女の人の悦ばせ方も教えてあげマース、いいですね?」  
「は、はい!」  
「よろしい」  
メリッサさんは妖艶に笑うと、コウキさんのしなびきった分身に手をかけた。その動きはまさに、第二回戦の始まりの予告だった。  
あんなに激しく愛し合ったのに、まだするつもりなの?まだ満足できていないの…?  
「…スモモちゃん、行こう」  
ふっと意識が現実へと引き戻された。スズナさんが、私の腕をつかんでいた。  
「は、はい…」  
あたしはスズナさんに引っ張られながら、コウキさんの別荘を後にした。  
…多分もう、ここには二度と来ないのだろうなと、おぼろげに思いながら。  
 
日がどっぷりと暮れる頃。リゾートエリアにあるレストランで、あたしとスズナさんは食事をすることになった。  
「…」  
スズナさんは物憂げな表情で、料理をじっと見つめている。  
「…ここのレストラン、おいしいですね、スズナさん」  
「え?あ、うん…」  
「あの、あたしのことなら、大丈夫です」  
私は笑った。笑わなければ、いけなかった。  
「あたしがうじうじしていたのが全部悪いんです。あたし、まだまだ修行不足だから…きっと罰が当たったんですよ。未熟者が男に夢中になるなんて、百年早いんだーって」  
目から何かが溢れそうになったけど…我慢しないと…我慢しないと…!  
でも…コウキさんが…あのコウキさんが…!  
「だから、だから…平気ですからぁ…!」  
我慢なんて、できるわけ、ない…!  
「スモモちゃん、無理しないで…」  
「うわぁぁぁぁん…」  
スズナさんが、決壊した私の心を、崩れ落ちた私の体を、ギュッと抱きしめてくれる。  
「…スモモちゃん、武者修行でもかねてしばらく旅行でも行ってみたらどうかな」  
「武者、修行…」  
「まぁそういう口実の…いわゆる傷心旅行って奴。しばらくふらふらしてたら、きっとふっきれるって。協力するよ」  
スズナさんはそう言って、私に笑いかける。  
「そう、ですね…考えてみます…」  
あたしはそう言って、腕で涙をぬぐった。  
あたしの心が負った傷は、あたしが思っている以上に深いものなのかもしれなかった。  
 
カントー地方、タマムシシティの町中にある食堂で、私は目の前に出された料理をがつがつと平らげていた。  
ヤマブキシティの格闘道場でのトレーニング中、空きっ腹を抱えていたあたしは、ひょんなことからその食堂で大食いコンテストが行われることを知った。  
うまくいけばタダで、料理をおなかいっぱい食べることができる。あたしはその甘い誘惑に負け、ほいほいとタマムシシティへ行ってしまったのである。  
「大食いコンテスト…こんないいものが、あったなんて…!」  
こういう「大食い」を売りにするような店は、たいていまずい。スズナさんがそう言っていたが、この店はどうやら例外のようだ。  
全体的に大味ではあったが、それがむしろ今の私の舌を優しく包み込んでくれる。こんな料理だったら毎日何杯でも食べられてしまう。  
「こんなにおいしい上に優勝したら料金がタダなんて、幸せすぎですよーっ!」  
思わずそう叫びながら、私は口の中にご飯をかっ込んだ。  
しばらくやけ食いでもしていたら、この心の傷も癒えるだろうか。…でも、傷が癒える頃には、せっかくトレーニングで引き締めた体に無駄なお肉がついちゃうかな?  
「…すごっ…」  
間違えてこの食堂に入ってきたのであろう、白い帽子をかぶった女の子が、私を見て露骨に引いた。どうやら私の食べっぷりは、それだけすごいものらしかった。  
まぁそれだけ、失恋の痛手がひどいということでもあるのだろう。今私は、心を満たす食事…つまり傷心のやけ食いをしているのだから。  
「じゅるり…」  
「ど、どうしたのよバクフーン…」  
彼女の連れているポケモンが、おいしそうな料理によだれを垂らすのを横目に、あたしは目の前に出されたスープを飲み干す。  
おなかも心も、どうやらまだまだ満足していないらしい。まだまだ食べられるぞと、食欲がうなりをあげている。  
きっとカントーから帰る頃には、おなかに余分な肉がついていることだろう。そうなればトレーニングのしなおしだなぁ…。  
そう考えながら、私は新たに出された料理に箸を付けるのだった。  
 
 

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