サンヨウジム戦を終えたトウヤはポケモンセンターでポケモンを回復させた後、次のジムのあるシッポウシティに旅立つことにした。  
サンヨウシティからシッポウシティまでの道のりはおよそ1日程度かかる。  
トウヤ「シッポウシティまでに何か新しいポケモンを捕まえようかな?フタチマルとボンはどちらも電気が弱点だから、電気に対抗できる地面タイプあたりがいいかな。」  
トウヤは対電気対策のポケモンを捕まえることに決めた。  
 
 
3番道路  
トウヤが草むらを探しに歩いていると、やたらと自転車に乗った人が多いことに気付いた。  
今、サイクリングでも流行ってるのかな?と、トウヤは思ったが、籠の中身を見て、すぐにその理由に気付いた。  
多くの人の籠の中身はタマゴだった。そう、それはポケモンの卵だ。そのなかには、マグマッグやヒトモシに卵を持たせて自転車を走らせるトレーナーもいた。  
ほのおのからだ。  
通常、直接攻撃をすると30%の確率で相手をやけどにするのがこの特性の表向きの姿である。  
しかしこの特性には卵の孵化にかかる歩数を減少させるというもう一つの効果があるのだ。  
そういえば、ここはよく廃人ロードって、呼ばれてたけどこれがその理由か・・・、とトウヤは昔見た本でそんなことが書いてあるのを思い出した。  
と、同時にトウヤは夢の跡地のポケモンたちのことを思い出した。  
(この中にいるタマゴのどれだけがあの夢の跡地に行くのか?)  
おそらく、半分以上が行くだろうとトウヤは思った。  
ポケモンの能力というのは、そのポケモンによって千差万別だ。それはポケモンだけではなく、人間だって同じだ。  
天才が生まれることがあれば、凡愚が生まれることだってある。  
しかし、たとえ愚かな子が生まれたからといって、その子を捨てる人間の親はいないだろう。自分たちの大切な子なのだ。大切に育てるにきまっている。  
野生のポケモンの親も同じだろう。どんなことがあっても、絶対に自分の子は守る。自分が死んでも子は手放さないだろう。  
だが人間の手のもとに生まれたポケモンは、現在の技術によりそのポケモンの能力がすぐにわかってしまう。  
実力主義者のもとに生まれたポケモンは、優秀でなければ、すぐに捨てられ、流浪する。  
だが、その優秀な能力で生まれたポケモンも幸せではないだろう。  
トウヤは数年前にニュースで、ポケモンを育てるのに「きょうせいギブス」やら、「ドラッグ」が流行っているというのを思い出した。  
きっと優秀なポケモンは、そんなギブスをつけられたり、まずい薬を大量に飲まされているのだろう、と感じた。  
今度夢の跡地に来るときは、またいろいろなポケモンが増えているだろうと、トウヤは予測した。  
 
 
ようやくトウヤが草むらを見つけたのは、サンヨウを出て半日ほど経った時だった。  
さっそくトウヤは草むらに入ってみることにした。  
基本的に出てくるポケモンはヨーテリーにミネズミにチョロネコなど、以前通った道にも出たポケモンたちだ。  
するとトウヤが初めて見るポケモンが出てきた。  
シママ「シマーッ!」  
たいでんポケモン、でんきタイプのシママであった。  
シママの特性はたしか避雷針か電気エンジンだったな、とトウヤは思い出して、電気タイプ対策になることがわかったのでゲットすることにした。  
トウヤ「いけ、フタチマル!みずてっぽうで弱らせろ!」  
フタチマル「フター!」  
フタチマルはトウヤの言うとおり、シママを倒さない程度のみずてっぽうを放った。  
みずてっぽうはいい感じにシママを弱らせた。  
トウヤ「いまだ、いけモンスターボール!」  
トウヤはシママに向かってモンスターボールを投げた。ゲットのためにモンスターボールを投げるのは初の体験であった。  
ブルッ、ブルッ、ブルッ、ポンっ。  
モンスターボールの振動が止まった。これはポケモンの捕獲に成功したことを表す。  
トウヤ「よしっ!シママゲットだぜ!」  
トウヤはポケモンを初めてゲットしたのがうれしいのだろう、はしゃぎまくっていたせいで、道行くトレーナーたちに奇異の目で見られていた。  
トウヤはボールからシママを取り出すと  
トウヤ「これからよろしくな、シママ。」  
と、言って弱ったシママに薬を使ってやった。  
シママ「シマっ!」  
と、シママも溌剌とした声でトウヤの言葉に応じてくれた。  
シママの治療が終わると、トウヤはシママをボールに戻し、再びシッポウシティに向かって歩き出した。  
 
 
トウヤがシッポウシティに到着したのは、シママをゲットした翌日の正午ごろであった。  
トウヤ「ここがシッポウシティか。なんか倉庫みたいな家がいっぱいだな。」  
とトウヤは言い、さきほどゲートで渡されたシッポウシティのパンフレットを読んでみた。  
シッポウシティはかつて、ヒウンシティに届いた貨物を貯蔵するために大量の倉庫が作られた。  
しかし、その後ヒウンシティの開発に伴い港は縮小したため、イッシュの港の機能はホドモエシティに移転することになってしまった。  
そのため、シッポウシティの倉庫は使わなくなり、しばらくの間放置されてしまった。  
その後、隣町のサンヨウシティが例の工場のおかげで発展すると大都市ヒウンシティと、雇用のためのサンヨウシティの中間の町ということで倉庫を利用して宿泊業を営む人が増え、  
シッポウシティは宿場町として栄えた。  
しかし、サンヨウの例の工場が、お取り潰しになるとシッポウは再び人が訪れなくなってしまった。  
そんな時、シッポウ出身のとある富豪がこの町に博物館を開いたのだ。  
この富豪はイッシュ地方でも有名な考古学者であり、自分が今までに集めた化石や古美術を展示したいと思い、ヒウンシティよりも地価が圧倒的に安いこのシッポウシティに博物館を建設した。  
富豪はその後に、私立シッポウ大学を建てた。すると、国立イッシュ大学に不合格になった優秀な学生の多くがこの大学に入学しはじめたうえに、イッシュで屈指の博物館がこのシッポウに  
あるということで、様々な地方の考古学者たちが多く訪れるようになり、シッポウは活気を取り戻したのだ。  
現在、旧倉庫のほとんどはシッポウ大学の学生寮かほかの地域から来た観光客や考古学者のための宿場として利用されており、シッポウシティは学園都市として繁栄している。シッポウシティ人口の六割はシッポウ大学の学生である。  
そのシッポウシティに繁栄をもたらした富豪の娘であるアロエもこのシッポウ大学出身の人物である。  
父譲りの考古学の天才で、カントーの名門タマムシ大学への留学経験のある彼女は、同じく考古学科に属していた夫(現在はイッシュ大学考古学教授)と結婚した。  
またポケモンバトルにおいても優秀であった彼女は、結婚後にポケモンリーグ本部からジムリーダーをしてほしいと要請され、博物館兼図書館の館長を務めることで条件をのんだ。  
 
トウヤはパンフレットを閉じると、とりあえずポケモンセンターに向かうことにした。  
ポケモンセンターに行く道中、たくさんの学生らしき若者たちが歩いてるのを見て、トウヤはここが学園都市だということを実感した。  
 
トウヤがポケモンセンターでポケモンを回復させると、腹を満たすためにカフェへ向かうことにした。  
学園都市であるために、カフェはあっさりと見つかった。トウヤがカフェのドアを開けると  
ベル「あ、トウヤー!」  
ドアの左手のテーブルにベルが座っていた。奥にはチェレンもいる。  
トウヤ「チェレン、ベル。」  
トウヤはドアを閉めるとすぐに二人のほうへ向かった。テーブルの上には紅茶やクッキーがある。  
チェレン「やぁ、トウヤ。君はまだシッポウについたばかりかい?」  
チェレンは紅茶を飲むのをやめ、トウヤに尋ねた。  
トウヤ「あぁ。2時間前くらいについたばかりだ。二人はジム戦を終えたのか?」  
トウヤはとりあえずウエイターにサイコソーダーを注文してから、二人にそう尋ねた。  
チェレン「あぁ、一応僕もベルも勝ったよ。トウヤは明日にでも、アロエさんと戦うんだろ?」  
トウヤはクッキーをつまみながら、そうだ、と言った。  
そこから先は三人の旅の軌跡を時が忘れるほど、話し合った。  
ベルが夢の跡地のトウヤに怒りっぷりを話すと、さすがのチェレンも驚いた。チェレンが驚く顔などあまり見ないため、トウヤはそのギャップに少し笑ってしまった。  
三人のネタが尽きたのは、午後6時頃のことだった。  
テレビを見ると、もう夕方のニュースが始まっていた。  
ニュースの内容は、最近流行のヒウンアイス、ポケモンの大量発生、ソウリュウシティのグルメなど、とても平和的な内容であった。  
ニュースがCMに突入した。  
 
 「ポケモンとは神が生み出した神聖で賢い存在。当時は人間と同じ尊い存在だった。  
  しかしその後、ポケモンは人間に使役される存在となってしまった。  
  なぜ、神聖な存在である彼らが人間という業の塊に使役されなければならないだろうか?  
  ポケモンは人間の手から離され、自由にならなければならない。  
  モンスターボールという息苦しい空間に監禁せず、自然の土、自然の空気のもとに存在するべき存在だ!  
  あなたもポケモンのことを少しでも思ってるなら、どうかお考えを・・・・。」  
 
             ポケモンに自由を   
                     プラズマ団  
カラクサで演説をしていたあの男だった。下には「プラズマ団組長 ゲーチス」と書いてあった。  
トウヤ(ゲーチス・・・か。)  
トウヤがその名を心に刻んでおくことにした。  
 
 

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