第3話
その夜、トウヤは対アロエ戦の対策を立てていた。
チェレンの話によると、アロエはノーマルタイプを使ってくるらしい。
トウヤの現在のポケモンはフタチマル、ワシボン、シママの3匹で、ノーマルタイプの弱点であるかくとうタイプのポケモンはいなく、かくとう技も覚えていない。
ここは力押しで行くのが無難だな、とトウヤは思ったが、問題はだれを先鋒にするかについてだ。
パーティのなかで、もっともレベルが高くて火力のあるフタチマルはできるだけ最後にしたかった。
そうなるとワシボンかシママを先鋒にすることになる。ノーマルタイプというのは得意なタイプこそ存在はしないが、様々なタイプの技を覚えられるため、かなりトリッキーな戦いをすることができる。
実際にトウヤはサンヨウジム戦で、ヤナップが飛行タイプ対策のがんせきおとしを覚えており、相性の悪いワシボンを打ち破っている。
自分の手持ちにかくとうタイプこそいないが、ほかのタイプの対策を行っているだろう。
そうなると弱点の少ないほうを先鋒にするのがいいだろう。
大将であるフタチマルを除くと、ワシボンの弱点はいわ、こおり、でんき。シママの弱点はじめんのみだ。
トウヤ(そうだな。シママにとってはジム戦初体験だから、いい経験になるだろう。)
トウヤは対アロエの先鋒をシママにすることに決め、モンスターボールからシママを出して、
トウヤ「明日のジム戦の先鋒はお前だ、頼むなシママ。」
と、シママに話しかけた。
シママ「シマー!」
シママは大きな声で返事をした。
翌朝、ポケモンセンターの食堂で朝食を食べているとチェレンとベルがやってきた。
ベル「トウヤは今日ジム戦だよね?」
朝なのに、相変わらず元気な声でベルが尋ねる。
トウヤ「あぁ。ベルたちは先にヒウンシティに行くのか?」
眠そうな声でトウヤも尋ねる。
ベル「うん。今日、この町にアーティさんが来てるから、アーティさんのアトリエに行ってみようと思うんだぁ。」
アーティ?どこかで聞いた名前だな・・・?トウヤは眠気が完全にさめていないのか、アーティの名前を思い出せない。
チェレン「ぼくはヤグルマの森周辺でポケモンを鍛えるよ。道行くトレーナーを倒すだけじゃ、ジムリーダーには勝てないからね。」
チェレンもトウヤ同様少々眠そうな声でそう答えた。
ただ、トウヤはこの2人と比べると少々遅れをとっていたので急がなければならないと思った。
トウヤ「そうだ、チェレン。アロエさんってポケモンで例えるなら?」
トウヤが初の人が聞いたら、おかしいと思うような質問をする。
チェレン「ん?そうだな・・・ガルーラかな?」
と、チェレンはパンをつまみながら答えた。
チェレンは昔から人をよく見る性格で、その人をポケモンに例えるというおかしな癖があった。
ちなみにトウヤはおとなしい性格だったためポッポというあまり嬉しくないポケモンに例えられている。
ベルはミミロルやチラーミィやピッピなど挙げるとキリがないと言われた。
チェレン「でも、ベルの昨日の話(夢の跡地の騒動)が本当なら、トウヤはオノノクスが似合うのかな?」
と、微笑しながら言った。
トウヤはポッポから大出世できたのが少し嬉しかった。
ウヤはチェレンとベルと別れ、シッポウジムもといシッポウ博物館へと向かった。
ジム(博物館)に入ると、いるのは観光客やら学生やら考古学者やらが多くいた。考古学者たちは、トウヤでは全く理解のできないことを話していた。
奥に行くと、図書館になっており、ここには先の人物たちだけでなく、子供の姿も見れる。
こんな場所で勝負しても迷惑にならないだろうか?と、トウヤは思いながら秘書に尋ねた。
トウヤ「すいません。シッポウジムに挑戦したいのですが?」
秘書「あら、あなた挑戦者?私がジムリーダーのアロエです。ようこそ、シッポウジムへ。」
どうやら、この大柄の女性がジムリーダーのアロエらしい。なるほど、ガルーラらしく大柄で強そうだが、母性を感じられるような女性だ。
アロエ「ジムは地下にあるわ。ついてらっしゃい。」
トウヤはアロエの言う通りに、彼女についていった。しばらく先に行くとモンスターボールの絵が描いてある階段があった。
トウヤ「バトルの音なんかが、迷惑にならないんですか?」
と、アロエに尋ねた。
アロエ「ははっ、このジムの防音対策をなめるんじゃないよ。」
と、陽気な声で答えた。
今思うと愚問だったな、当たり前のことじゃないかとトウヤは思った。
階段を降り終えると、バトルフィールドが広がっている。やはりここがジムなのか、とトウヤは再認識した。
アロエ「さぁ、かかってらっしゃい。行きなさい、ミルホッグ!」
アロエの出したポケモンは、ミーアキャットのようなポケモンであるミルホッグ。
トウヤ「いけ、シママ!」
トウヤは昨日の計画通り、シママを繰り出した。
先制のうったのはトウヤだった。
トウヤ「シママ、電磁波!」
電磁波はミルホッグに的中。ミルホッグの動きを鈍くした。
アロエ「ミルホッグ、あやしいひかり」
ミルホッグの体から不気味な光が発し、シママは混乱をしてしまった。シママの目の焦点はあっていない。
トウヤ「シママ、電撃波!」
しかし、トウヤの命令とは裏腹にシママは自分に攻撃をした。
アロエ「ミルホッグ!さいみんじゅつ!」
しかしミルホッグもアロエの命令に従わなかった。痺れて動けないのだ。
トウヤは助かったと内心思った。さいみんじゅつが当たったら、さらに分が悪くなるからだ。
トウヤは一時シママにこれ以上戦わせることをあきらめて、フタチマルに変えることにした。できればフタチマルは使いたくないが、ワシボンではミルホッグ相手では少し火力不足な面があるからだ。
トウヤ「戻れ、シママ!いけ、フタチマル」
フタチマル「フターチ!」
これで、次にシママを出すときに混乱はなくなっている。
アロエ「ミルホッグ、かみくだく!」
アロエは攻撃に移行することにしたらしい。ミルホッグがフタチマルの下腹部にかみついてきた。
フタチマル「ターッ!!」
フタチマルに当たり、苦しそうだ。
トウヤ「耐えろ、フタチマル。シェルブレード!」
フタチマルは体制を立て直すと、ホタチでミルホッグを切り裂いた。
ミルホッグ「ミルホッ!!」
ミルホッグは相当食らったらしい。
アロエ「負けるな、ミルホッグ!かみくだく!」
ミルホッグは再びフタチマルにかみつこうとした。しかし、ミルホッグは途中で止まってしまった。また痺れがきいたらしい。
トウヤ「よし、フタチマル!シェルブレード!」
フタチマルは再びミルホッグを切り裂いた。さすがのミルホッグも耐えられなかった。
ミルホッグ「ミー・・・。」
ミルホッグは完全に伸びてしまった。
アロエ「あらら、このミルホッグがそれほど手を出せずにやられちゃうなんて、あんたやるねぇ。戻りな、ミルホッグ。」
アロエはそう言って、ミルホッグをボールに戻した。
トウヤもとりあえずフタチマルを戻すことにした。
アロエ「さぁ、いってらっしゃいハーデリア!さぁ、この子を倒せばあんたの勝ちだよ、坊や。」
アロエが出したのはハーデリア。犬のようなポケモンだ。
トウヤ「いけ!ボン!」
トウヤは現在無傷なワシボンを出すことにした。
トウヤ「ボン!つばさでうつ!」
ワシボンはハーデリアに向かい、猛々しい羽根でたたきつけてきた。ハーデリアの表情を見ると少しは食らっているようだ。
アロエ「なかなか強いワシボンだね。でも悪いけど、そう簡単に勝たせるわけにはいかないよ。ハーデリア、でんじは!」
ハーデリアの体から電磁波が放たれる。ワシボンは痺れてしまった。
アロエ「悪いね、あんたと同じ戦法をやらせてもらったわ。」
やはり早いポケモン用の対策を立てていたか・・・。とりあえずトウヤはワシボンで強行することにした。
トウヤ「ボン!つばさでうつ!」
しかし、やはりワシボンの動きは遅かった。
アロエ「遅いよ、ハーデリア突進!」
ハーデリアの強力な突進がワシボンに的中!ワシボンはやられてしまった。
トウヤ「戻れ、ボン。よく頑張ってくれた。」
トウヤは考えた。あのハーデリアは中々強力だ。まだ体力も有り余っている。フタチマルで何とかなるだろうか・・・。強行は少し危険かもしれない・・・。
するとトウヤはある作戦を思いついたのだ。
トウヤ「いけ、フタチマル!」
トウヤが出したのはフタチマルだった。
アロエ「なるほど。そのフタチマルで強行しようというわけね。でもうまくいくかしら?ハーデリア、電磁波!」
ハーデリアの体から再び電磁波が放たれる。
トウヤ「やはり電磁波で来ましたね。戻れ!フタチマル!いけ、シママ!」
トウヤは素早くフタチマルを戻し、シママを繰り出したのだ。
アロエ「なんだって!?」
ハーデリアはシママに向かって電磁波を放つ。しかしシママは気分がよさそうである。
ひらいしん。これがトウヤのシママの特性だ。
ダブルバトルやトリプルバトルの際に電気技をすると、この特性を持つポケモンのもとに攻撃がいく特性であるが、同時に電気技を受けたポケモンの特攻が上がるのだ。
トウヤの作戦は見事に成功したのだ。
トウヤ「いけ、電撃波!!」
シママから一段階協力の電撃波が放たれる。これには、さすがのハーデリアも耐えられるはずがない。
ハーデリアは今の電撃波で体が少し黒ずんでおり、完全に戦闘不能であった。
アロエ「あらあら、また負けちゃったね〜。これで三連敗だよ。」
アロエはそういうとトウヤのもとに来て、
アロエ「さ、受け取りな。ベーシックバッジだよ。」
トウヤは喜んで、バッジを受け取った。
トウヤ「ありがとうございます!!」
トウヤはこのジムの防音対策がきかないくらいの大きな声で、アロエに礼をした。
続く。