「ちょっと生殖器を露出させて貰えないだろうか」 
親友だと思っていた他種族の、しかも同性に、こう告げられたら貴殿は如何するだろうか。 
騎士なら黙ってメガホーン。誰でもそうする。私もそうした。 
「――いきなり何だ」 
紙一重で私の一撃を避け、若干眼を見開いた親友、否、破廉恥極まる無礼者が被害者面で私を見て来る。 
私はぎりぎりと歯噛みし、鋭い眼差しで無礼者、そしてかつての友であったハッサムを睨み据えた。 
「それはこちらの台詞だ、馬鹿者がっ!!何だ藪から棒に、は、は、破廉恥極まりないっ!!!」 
口角から泡を飛ばし、怒鳴りつけると、若干厭わし気に彼は眼を眇めた。 
何だその顔は。まるで私が非常識の様ではないか。 
「まぁ、落ち着け。話の全貌も聞かず、すぐさま行動に移してしまうのがお前の悪い癖だ」 
私の狼狽を他所、逆に諌める様な口調でハッサムは語りかける。 
「同性の友人に、生殖器を見せろと言うとち狂った提案をする輩から、何を聞くと言うのだ」 
鼻息も荒く反論するが、ハッサムの静かな眼で射竦められると、徐々に怒りのボルテージが下がり、私は結局高々と掲げた槍を下ろした。 
「……言ってみろ」 
何時もの如く、結局は私の方が折れた。 
それは、私が森の如く豊かで寛容な心を持つが故に出来る譲歩であって、決して負けた訳では無いことを此処にしっかと記しておこう。 
 
「今度、マスターの意向で、お前と同種族…シュバルゴの雌と、つがう事になった」 
「ほう」 
私は、頬が引き攣るのを感じた。何故にハッサムなのか。この私では役不足なのか。 
所謂何とかVなハッサムの優秀な遺伝子が、バトル中どの様に発揮されるか、戦友である私は、誰よりも知っている。 
知っているが、私とて優秀な技と能力を持っていると…… 
「で、だ。立体映像を見せて貰って、俺はほとほと、弱りきってしまった」 
「うむ?」 
珍しく両手の鋏を落とし、項垂れるハッサムに、憐憫の情が湧き上がりそうになるのを懸命に堪えた。 
無関心を装い、静かに続きを促す。 
「あの完璧な継ぎ目。…どこをどう、攻略すればいいのか。欠片も解らん」 
「……その娘に、聞けばいいだろう」 
「そんなこと出来る訳無いだろうっ!!」 
珍しく奴が声を荒げ、私は思わず眼を見開く。 
荒々しく壁に打ち付けた鋏を小刻みに戦慄かせ、ハッサムは眼を眇めた。 
「俺を誰だと思っている。テクニシャンの名を欲しい儘にする、ハッサムだぞ。そんな、雌を知らない童貞の様な真似が出来るかっ!」 
私の友は、若干自惚れ屋で妙な所でプライドが高いのが難点である。 
そして童貞の何が悪いと言うのか。別に私は童貞では無いが、童貞を馬鹿にする言い方はやめた方がいい。 
私は童貞では無いが、そう、騎士として思う。本当に童貞では無いぞ。 
憮然とする私に視線を流し、雌やトレーナーに精悍とよく騒がれる顔を引き締め、斜め四十五度の角度でハッサムは私を見た。 
「だから、シュバルゴ。俺を助けると思って…生殖器をちょっと露出して貰えないだろうか」 
雄は黙ってメガホーン。誰でもそうする。私もそうした。 
 
小癪なことに二撃目も何無く交わし、軽く跳躍したハッサムは、予想以上に重たい体を使い、私に対して「圧し掛かり」をしかけて来た。 
「この俺がこんなにも頼み込んでいると言うのに…お前を生涯の友と信じていたのは俺だけだったのか」 
心底悲し気に表情を曇らせ、ハッサムは開いた鋏で私の腰を掴む。 
隆起に富む刃部分で硬い私の殻を軋む程強く挟んだかと思えば緩め、曲線を描く背で青い皮膜を撫ぜて来る。 
薄い皮膜に這い登る悪寒に私は身を仰け反らせ、ッカー!と進化前の様に牙を剥き出して威嚇した。 
「お、も、た、い!生涯の友に、こんなことをする奴が何処にいるっ!…っ!」 
ハッサムは怯む事無く、寧ろ無造作に顔を突き出す。 
開いた私の口に、入り込むぬらぬらとした物があった。 
柔らかい様な、硬い様な、隆起や摩擦の乏しいものが、私の口中を満たす。 
剥いた牙を押し退ける様に撓り、翻す身で口蓋の隆起へと身を摺り寄せる。 
突如の出来事に怯み固まる私の舌を擽り、ぐっと全身を使って押し潰し、アーボックの様淫猥に絡みついた。 
訳が解らぬ儘、息苦しさに顔を背ける私の口を、ハッサムの口が追う。 
彼の口が被さり、私の口周りがどちらのものとも知れぬ唾液でねとねとになる迄、散々に舐め回された。 
腕と鎧の隙間に彼の鋏の先が忍び込み、細い肢を軋ませる様、甘い仕草で締め付け、引掻く。 
「ん、……ふぅうう……っ…っ」 
得体の知れぬ痺れに襲われ、思わず撓らせた背中を彼の手がゆっくりと撫で下ろす。 
冠の赤毛が逆立ち、視界が揺らめいて自分自身が涙ぐんでいることに遅まきながら気付いた。 
執拗に口中を舐め回され、ようやくに解放された私の口と彼の口を繋ぐ唾液の太い糸を、呆然と見遣る。 
「――き、貴様…何、何、をし、て…!!」 
ぶるぶると戦慄く私を心底愉快気に見下ろし、彼は両の鋏を私の下半身へと下ろした。 
「何だかんだで、友人想いの奴だよ、お前は」 
何と言う事だろう。私の生殖器は主人たる私の意志に反して天を指し示さんばかりに太く逞しく露出していた。 
「ちちちちちち、違う、これは…ッ!」 
慌てて三本目の槍を隠そうとするが、時既に遅し。 
逆にハッサムの体に摺り寄せ、左右に腰を捩る事で先端から滲み出た汁が周囲へと飛沫を散らす。 
ぶるんぶるんと撓む肉槍はハッサムの視線を受けて嬉々として脈動し、先端から嬉し涙すら零してさえいた。 
「雄同士なんだ、生殖器の二本や三本、恥かしがることは無いだろう。……それより、もっと見せてくれ」 
焦る私を他所、ハッサムは淡々と言葉を重ねる。 
撓る肉槍をねっとりと撫で上げられ、否応無しに私の息が荒く弾んだ。 
ハッサムが緩慢に私の上から退いても猶、私は動けずにいた。 
恥かしすぎて、この儘消えて無くなりたかった。 
「へぇ…ここがスリットになっているのか」 
巻いた殻の頂は薄く、同時に皮膚の様な柔らかさを持つ。 
縦割れの狭間が開き、そこから私の生殖器は身を露にしていた。 
ハッサムが見ている前で生殖器は硬く充血し、先からねっとりとした生臭い汁を滲ませている。 
根元には湿気を含んで湿った黄色と黒の繊毛が在り、細い毛の合間に先走りの玉を散らしていた。 
植物の蜜や水に似た、特有の匂いが私の下半身から滲む。 
「も、もう、いいだろう……っ」 
羞恥心が限界に達し、私は下半身をのたうつ様悶えさせて訴えた。 
「…ん?ぁあ、……だが、よくよく考えれば、ペニスの場所を知っても意味が無い。穴は何処だ」 
ハッサムの鋏が脈動する私の生殖器を下方から無造作に押し上げ、鋏の先がスリットの狭間を探る。 
徐々に太くなる丸みを銜え込んで縦筋が左右に割れ、ぐいぐいと押しやられる肉槍が上下に揺れて雫を撒き散らした。 
「おおおおお、おまっ!やめ、いやだ、やめ、…ぇ、あ、あっひ、…ぅう、うっ…!!」 
私は身を起こし、懸命に拒絶したが、殊更熱心に彼は私の下半身を捏ね回す。 
ぐちぐちと淫靡な音が響き、こみ上げる熱が爆発した。 
熟れた私の砲身の先から精液が迸り、間近で私の下肢を眺めていたハッサムの顔面を汚した。 
若干怯み眼を見開くハッサムの顔に僅か下がった溜飲は、徐に身を起こした彼の股間に聳え立つ逸物に見事霧散した。 
「………ぇ?」 
微かな光沢すら持つ硬い肉槍は、私の視線を受けて猶反り返った。 
拉げた先端から薄透明な粘液が滴り、昆虫の足に似たそれがハッサムの生殖器であることに遅まきながら気付いた。 
「……目で見ても、よくわからないから、もっと鋭敏な器官で探すことにしよう」 
そう言いながら彼は見せ付ける様に撓る剛直を扱き、言葉に反して先端を正確な位置へと押し当てた。 
太く拉げた硬い先端が、私の縦筋を押し遣り、汁気に塗れた肉穴へと埋まる。 
白銀の周囲が引き攣れ、むちりと割れた箇所から、桃色の肉が覗いた。 
「ここ、だろうか」 
ず、と先端が、内部へと埋まる。 
太く張り詰めた肉棒に内部から精嚢を刺激され、私の腰がびくりと跳ね上がる。 
「や、やめ、やめろ、ハッサム……」 
拒絶の言葉に反し、私の内部は異物に戦慄きながらも嬉々として飲み込み、絡み付いては更に奥へと誘う様蠕動する。 
柔らかな肉が硬い異物を包み込み、収縮する肉壁からはぬめった粘液が溢れ出す。 
ハッサムは薄ら笑いを浮かべながら腰を進め、終には全てを私の中へと埋めた。 
軽く突き上げられるだけで、私の口から悲鳴とも呻きともつかぬ声が上がる。 
「――……こうしてみると、…雌の様だな」 
私の生殖器は萎えて収縮した皮膜の先から薄桃の頭を微かに覗かせるのみとなり、其処から溢れる精液が内部へと入り込むハッサムの動きを助ける。 
ぐしゅ、ぐしゅ、と音を立てて絡みつく肉のいやらしさと、ひくつく鈴口から溢れる精液に、顔が熱く火照る。 
私の内部が柔らかく蕩ければ蕩ける程内部に嵌め込まれた硬い肉棒を感じ、息苦しさと内部で暴れまわる快楽で、私は次第に訳が解らなくなった。 
私の硬い甲殻と彼の外甲殻がぶつかり合い、その振動すら刺激となって私は泣き咽んだ。 
ハッサムに言われるが儘にあられも無い格好をし、ひどく破廉恥な台詞すら口走った様な気がする。 
しかしそれは私の名誉のため、伏せることにする。 
 
 
さて、ハッサムと我が同族の嬢のことだが、当然の様に見合いは失敗した。 
当然だ、雌と雄では体の造りが異なる。 
違う穴に挿入しようとする雄は、指南を請う童貞よりも性質が悪いだろう。 
そう思う私だが、ハッサムの奴は頑なに違うと言い張った。 
「――結局、あのお嬢さんには想う雄がいた様だ。その雄の話ばかりを聞かされた」 
溜息混じりにそう告げる奴に、私は若干同情を抱いた。「そうか」とだけ呟いた私を、ハッサムは静かに見据えた。 
「俺も俺で、お前の話ばかりをしていたから、きっと、お互い様なんだろう」 
軽く首を傾ぎ、事も無気に呟いた奴に、私は「そうか」とだけ返した。 
非常に嫌な予感がした。 
ハッサムは静かに距離を縮め、私の槍をそっと握り締める。 
「ところで、シュバルゴ。ちょっと生殖」 
彼が握り締めていてくれた御蔭で、今回は珍しく命中した。 
 

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