「あん…」  
 
 穏やかな昼下がり。  
 森の中の古びた図書館。  
 打ち捨てられすでに廃墟となった館の、雑草がはびこり足の踏み場もない荒れ放題の裏庭。  
 なにか丸っこくて灰色の生き物が体をよじっている。  
 
 「あっあっ…あー…は…気持ちイイ…っ」  
 
 くちゅくちゅくちゅ…  
 濡れそぼった股間を何度も擦りあげるジュペッタ。  
 口のジッパーはだらしなく開いたままで、洋館の壁に背を預けてオナニーに耽っている。  
 
 「あ!い…っくぅ!!」  
 
 びくっびく!!  
 どろっ…膣の中から濃い愛液のかたまりが滴り落ちた。  
 
 「はあ…はあ…あ〜気持ちよかった。もう一回しようかな…」  
 
 そのとき、なんとなく日向のほうを壁沿い見やると、ジュペッタがいる角の反対側、そこの樹の下に何や  
 
ら真っ黒な影が!  
 じっとこちらを見ている青い目が、日陰で光っている!  
 
 「うわうわうわうわ!なにアンタ!見てたでしょ!!まさか変態?!」  
 「!!」  
 
 ビクッ!!  
 黒い影はジュペッタと目があったことに気付くと驚いたように肩を跳ねさせ、石造りの洋館の陰に隠れて  
 
しまう。  
 ジュペッタは叫んだ。  
 
 「ちょっとおーー!!そこ動くな!!」  
 
 影の尾が洋館の端から飛び出たままで静止。  
 ジュペッタは濡らした股間を拭うこともせず反対側に駆け寄った。  
 
 「ねえねえいつから見てた?名前は?どこに住んでる?あたしジュペッタ!うわ〜ジュペッタになってから誰かと話すの初めてかもー!!ねえアンタ名前は?」  
 「………」  
 
 黒い影は黙ったまま。  
 頭部からは白くたなびく霞、折れそうに細い腰、キノコのカサのように広がったスカートからさいばしのように細い脚が二本、地面をつっついている。  
 微妙に浮遊していてふわふわ揺れているみたい。  
 翳があって揺れる感じ…、あたしと同じゴーストタイプかな。  
 
 「ってか、アンタはオスなの?メスなの?」  
 
 ばばっ!!  
 ジュペッタは黒い影のスカートをめくった。  
 相手はすらりとした長い脚をもち、ジュペッタの二倍ぐらい身長があったので、ジュペッタはそのスカートの中にもぐりこむかたちになる。  
 
 「!!」  
 
 ばばっ!!  
 
 「うぎゃ!」  
 
 相手は驚いてしゃがみこんでしまった。  
 もそもそとジュペッタはなんとかスカートの中からはいだす。  
 
 「ぷはっ…えっと、ちんこないってことはアンタもメスなの?」  
 「〜〜〜!!!」  
 
 黒い影はジュペッタを青い目でキッとにらみ、砂の像が崩れるように一瞬で影そのものになってしまった。  
 そのまま猛スピードで滑るように逃げていく。  
 ジュペッタは追いかけた。  
 
 「でかい図体してそれだけで涙目になるのー?!逃げんなよ話そうよー!!」  
 
 でも角を曲がったとき、どこにもひとりでに動く影はなく、ジュペッタは洋館の玄関口の前に一人だった。  
 あたりはしーんとしている。  
 塗装がはがれた重そうな木の扉が半開きになっている。  
 
 「あいつここに住んでるのかなあ」  
 
 ダークライは洋館の二階へ駆け上がりドアの隙間から滑り込み実体に戻ると、ベッドに身を投げ出した。  
 ダークライは意識があるうちからずっとこの廃墟に住んでいるが、自分以外に言葉を話す存在を見たのは初めてだった。  
 しかも話しかけてきた…濡れて、「交尾の準備」が整った局部を隠しもせず!交尾に関係するそこを、現実に見たのも初めてだった。  
 もとは図書館だったため、埃と古書ばかりのこの洋館で、ダークライはすっかり本の虫だった。  
 知識があっても、実際に見ると想像以上のショックを受け、ダークライは胸の鼓動が収まらなかった。  
 粘液で濡れた局部。  
 脚を広げて、手で、指で…最初はゆっくり…徐々にはやく…摩擦していた。  
 脚の間の穴で指が出し入れされているのを見た。  
 水っぽい音がして、木漏れ日を受けると粘液がきらきらしていた。  
 本では感じ取れない、生のにおい。  
 息遣い。  
 声。  
 本で読んだときは何とも思わなかった、その「交尾の準備」がダークライを虜にしてしまった。  
 体が…熱い…。  
 これも初めての感覚で、ダークライは恐る恐る自分の脚の間に手を伸ばしてみた。  
 
 ダークライには性別がない。  
 脚の間には何もなく、ダークライの手はつるんとした股間を滑り降りてアナルに指を伸ばした。  
 しっとりと汗ばんでいて、まわりを撫でていると、体の奥が疼くような気がする。  
 ジュペッタ、といったか…。  
 
 彼女がしていたように、穴を擦ってみた。  
 
 「……………」  
 
 徐々にはやく。  
 
 「………ッ…」  
 
 ダークライは物足りない気がして、彼女がしていたのを思い出して、自分の中に指を入れてみた。  
 
 「…ぁ………」  
 
 自分の中は熱くて、ぬめっていて、つるつるしている…好奇心が指をせかす。  
 さらに探りを入れると…  
 
 「………!!」  
 
 びくびくっ!!  
 その一点を擦りあげた瞬間、ダークライの目の奥で火花が散った。  
 なんだこれは…!!  
 
 ジュペッタは暗い洋館の中を、さっきの黒い影を探してまわった。  
 ガチャ!  
 
 「おーい」  
 
 しかし、石造りの洋館は窓も十分にあるとはいえない。  
 特に廊下などは昼間なのに薄暗くて全体的に陰であった。  
 ガチャッ!  
 
 「ねえー」  
 
 手当たり次第に部屋のドアを開けていく。  
 ガチャ!  
 
 「どの部屋も本ばっかりだなあ」  
 
 ジュペッタは字が読めないので何の本かはわからなかったが、ゴミ捨て場でみるようなエロ本ではないことは確かだった。  
 
 「突然スカートめくっちゃって悪かったよ〜」  
 
 なかなか気配も感じられないのでひとりごちるとそのとき、  
 
 「?」  
 
 二階で物音がしているような気がする!  
 
 ジュペッタは二階に駆け上がり、怪しいドアをバッとあけた。  
 すると、  
 
 「ア…ッア…あ!」  
 「あーーーーー!!!さっきの!!!」  
 「ッやあああ!!」  
 
 さっきの黒い姿がベッドの上で弓なりになっていた!  
 開かれた細長い脚、ベッドに膝をついてぷるぷると震えている。  
 
 「で、出ていけ…っ!!」  
 「やだよせっかく見つけたのに。ってかアンタすっごい辛そうだよ。イけないの?」  
 「ン…う…!……」  
 「見せて…」  
 
 どうやら穴の小ささに対して指が太すぎて、うまく刺激できないらしい。  
 相手は性感にうるんだ目でジュペッタをとろん…と見つめている。  
 
 「…かわいい…」  
 
 ジュペッタは自分が抑えられなくなって、口のチャックをはずすと、相手の顔をおおう白い前髪をかきあげてやり、唇を重ねた。  
 
 「…!!…!!…」  
 「…ん…ん、ふ…」  
 
 ちゅっ…ちゅく…口の中を探り、もどかしい快感に震える舌をからめとって嬲る。  
 
 ジュペッタは長い片腕を後ろに伸ばして、拙い愛撫しかできない黒い手と交代させた。  
 
 「…どう?さっきより…イイでしょ?」  
 
 こくこくと必死で頷いているが、黒はジュペッタから顔を背けて手で隠してしまった。  
 ジュペッタはあきれてしまった。  
 
 「え〜恥ずかしいの?あたしはアンタのおまたもアナルももう見ちゃったんだよ?」  
 
 指先に唾をつけてさらに深く挿しこむと、相手は目を見開いて体を強張らせた。  
 
 「…ッ…ァアッ!」  
 「…ココがイイんだ?」  
 
 そこを激しく擦りあげてやる。  
 チュクチュクチュクチュク…  
 
 「ぅ…!ぅ…!…!!」  
 「イっていいよ、見ててあげるから」  
 
 うるんだ青い目と目があったので、ジュペッタはまたキスをしてやった。  
 
 「…ア…ぅ…!!」  
 
 びくびくびくっ!  
 目をきつく閉じ、ダークライはジュペッタをぎゅううっと抱きしめ、初めての絶頂に身体を震わせた。  
 
 
 「いや〜突然スカートめくっちゃってごめんね?」  
 
 ダークライは首をふった。  
 もうスカートの中どころかその奥まで見られて触れられてしまったのだ。  
 今更そんなことを謝るのは変だ、とダークライは思った。  
 ジュペッタは肩に回されたダークライの腕を撫でながら言った。  
 
 「そういやまだ名前聞いてなかったね。あたしはジュペッタ。アンタは?」  
 
 ダークライ。  
 
 「ふーん。聞いたことない種族…ち○こもま○こもないし、“ダークライ”って変わってるね」  
 
 人目につくようなところで交尾の準備をするお前のが変だ…と言うと、  
 ジュペッタは赤い目をくるくると動かして、  
 
 「え?別に交尾の準備とかじゃないよ?気持ちイイからシてただけ」  
 
 ダークライは目を白黒させた。  
 文章の世界と現実はかなりちがう。  
 
 「あたしより大人に見えるのに、なんにも全然知らないの?いろいろ教えてあげる〜!」  
 
 なにをだ。  
 ダークライはそう思ったが、一方でリアルな行為への抑えられない期待も感じていた。  
 
 「まああたしもそんなにポケモン生活の経験があるわけじゃないけど!!」  
 
 ぎゅっ。  
 陽気に笑うジュペッタをダークライは赤くなった頬を見られないように胸に抱きこんだ。  
 
 
 

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