「ねぇ、早く早く!」
「もうちょっと…」
ベルが木の下で急かしている。トレードマークの帽子がない。
それもそのはずで、俺が一生懸命に登っている木の上に、引っ掛かってしまって
いるのだ。
「……よし! おーい取れたぞー!」
下に向かって二、三度大きく帽子を振った。
「なら早く降りてきてよぉ」
「そんなに急かさないでくれよ」
スルスルと木から降りだしたサトシは、高名の木登りではなかったらしい。
「ねぇまだ?」
待ちきれずにサトシの真下までパタパタと走ってくる。
「だから、急かすなっととと!」
「えぇ! ちょちょちょ」
ふとした油断から足を踏み外したサトシが奇声を発しながら落下した。真下の
ベルに覆いかぶさるように二人が衝突する。
「痛たた……ベル、大丈夫か? ん? なんだこの柔らかい感触は」
自分の手の先には……ベルの十歳とは思えない豊か過ぎる胸があった。
「(これが女の子の胸なのか…)」
「サトシ、早く起きてくれない?」
「わっ! ごめんごめん、ハハッハッ」
愛想笑いでごまかしながら飛び起きた。胸を触ったことをどう思っているのだろうか。
「どうしたのサトシ? 変な顔して、あっ! もしかした頭打っちゃったの?」
上目遣いでこちらをじっと見つめてくる。
「いや、そんなことないぜ、ほら元気元気!」
身体を大きく動かして、異常のないことをアピールする。
内心では胸のことで頭が一杯だったのだが。
「帽子ありがと。行かなくっちゃ! じゃあね」
帽子をちょこんと頭に乗せると瞬く間に走り去ってしまった。
胸を触ってしまったことに気が付かなかったらしい。
「……もう一回触りたいな、女の子の胸」
ポケモンマスター一筋のサトシにとうとう思春期が訪れたのだった。
…少々。
「あのさ、タケシ。相談があるんだけど聞いてくれないか?」
ポケモンセンターの一角、画面の向こうにはタケシが見える。
「恋煩いでもしたのか? ハハッなんてな」
飛び上がったサトシは弾みで横に置いてある観葉植物をひっくり返した。
「……あれ? まさか」
「そのまさかみたいなんだよ。こっちで知りあったんだけどさぁ」
タケシの表情が急に険しくなった。
「どうしたんだよ? やっぱ恋とかって」
「待てい!」
タケシの雰囲気が一変し、まるでポケモンバトルをしているような闘気が溢れ出す。
「とりあえずそっちに男の聖書を送るぞ!
そこにオレ直筆のマニュアルを同封するから!」
「あ、う、うん受け取るよ」
オーラに押されとりあえず頷く。
「そいつをよく見ておけ! 届いたら連絡しろ!
さらばだ!」
勢いよく映像が消えた…気がした。
「(男の聖書ってなんだ?)」
「なーんだ、ポケモン図鑑じゃないか」
数日後に別のポケモンセンターに届いた小包の中には
厚さ五センチの「タケシ炎の恋愛!」と、
厚さ十センチの「全地方網羅! ポケモン大図鑑」が入っていた。
「これのどこが聖書なんだ? 確かにトレーナーには…ん!」
なんとなく開いたページには、大人のお姉さんの生態がしっかりと描き込まれている。
「まあいいや」
あまり深く考えないことにした。次に、直筆マニュアルの目次を開いてみると
その一、女性はさりげないやさしさに弱い!…P5〜11
その二、男らしさをアピールせよ!…P12〜19
その三、時にはワイルドになれ!…P20〜30
……ハァ。
「恋って難しいんだなぁ」
サトシは遠くの景色を見つめている。
「あれ? サトシ君どうしたの?」
視界の隅に見覚えのある帽子が映った。
「ベル!」
サトシは運命を感じた気がした。
「でね、チラーミィったら」
森の中の少し開けた場所。
だいたいポケモンセンターから半日歩いたところだろうか。
目的地が同じということで、ベルも一緒にいる。
今は夕食の時間だ。
デントとアイリスが向かいに座り、横にはベル。ソースを頬につけたまま
元気良く喋っている。
「デント、ソース取ってくれ」
「この特製ソースは僕の自身作さ! ベースに…」
おいしいのはわかるけど、説明されてもなぁ。
楽しい食事が終わり、ベルは元気良く話し続け、片付けが終わり、まだ話し続け、
いつの間にか夜も随分深くなっている。けれどベルは全く疲れを見せない。パジャマ
に着替えるときでさえ、テントから声が聞こえてくるくらいなのだから。
「そのときはもう」
デントが大きな欠伸で話を遮った。
「僕はそろそろ寝るよ。アイリスは…寝ちゃってるみたいだね」
テーブルに突っ伏してスヤスヤと寝息を立てている。
「サトシ、僕たちはあっちのテントで寝るから、ベルと君はそこね」
木の下のテントが寝床ということだ。
「ああ、わかったよ。おやすみデント」
デントはやさしくアイリスを抱き上げると、テントへ入っていった。
満天の星空の下に二人きり、これほどに良いシチュエーションはない。その中でサトシは
迷っていた。
「(オレはいったいどうすりゃいいんだ?)」
言わなければ伝わらない。しかし拒絶されればそれまで。
「(ああもう考えるより行動だ! そっちの方がオレに合ってる)」
サトシは勢いよく立ち上がり、一言に全ての思いを込めた。
「ベル、君が好きだ!」
「うん、私もサトシ君のこと好きだよ。でね、そしたらね…お父さんったら」
少々天然のベルはサトシの言葉を友人として好き、という意味と勘違いしたらしい。ここ
まで来たらサトシも引き下がれない。さらに言葉を続けた。
「違うんだよ、ベル。オレは君が欲しい! 独り占めにしたいんだ!」
彼が言い放った言葉の真意にやっと気づいたベルは耳まで真っ赤に染まり、黙って俯いて
しまった。
ベルもサトシも動かない。サトシはベルをじっと見つめている。
そのうちに小さな声が聞こえてきた。
「それって、どうしても?」
「どうしても!」
間髪入れずにサトシは返事をした。
「ずっと好きでいてくれる?」
「もちろん!」
また、沈黙。
ベルがゆっくりと顔を上げた。
「……じゃあ、私を全部あげる。さあどうぞ」
「へっ?」
「好きな人同士はこーゆーことするんでしょ」
ベルはサトシの手を握り、自分の胸へ押し付けた。自分を思春期に引き上げた豊かな胸を
触ってしまったサトシは理性の枷を消飛ばした。
「じゃあ、遠慮なく」
サトシは正面の立ち位置から両方の胸を強く揉んでみる。以前と違い今度は薄手の
パジャマと下着だけなので、胸の大きさもその弾力もより分かる。
強く握り過ぎたためかベルの表情が歪む。
「もっとやさしく揉んでよ」
「ごめん。このくらい?」
力を弱めやさしく包み込むように揉みしだく。
すぐにベルの表情が和らいだ。
「うん、気持ち良ぃよぉ。でも、みんなに見つかるのやだからテントに入ろう」
立ち上がったベルはサトシの手を引き、木の下のテントへ入った。
サトシは手早くテントの入り口を閉めて、
ベルの背後に腰を下ろした。今度は脇の下から手を入れて、乳房を掴む。
「んっ! もう、サトシのえっち」
口ではそう言ったが、ベルは自分の身体が普段より熱を帯びていることを
分かっていた。
「全部あげるって言ったじゃないか。もう放さないよ」
サトシは指の動きを再開した。今度は持ち上げるように揉んでみたり、
両方の乳房を擦り合わせてみたりする。その度にベルは快感の波に晒される。
「ふぁ……気持ちいぃ」
サトシがベルの耳に囁いた。
「ねぇ、直に触ってもいい?」
ベルの首が上下に一度動く。けれど、サトシがボタンに
手を掛けようするのを止めた。
「自分で脱げるよ、サトシ」
こちらに向かって座り直したベルが一番下のボタンに手を掛けた。
細い指がボタンを下からひとつひとつ外していく。
徐々に見えてくる白い肌が、ランタンの赤みを帯びた光に濡らされる。
すべてのボタンが外されたときに見えたのはシンプルな白い下着だ。
そして、パジャマの上をそっと横に置いた。
「ついでに下も脱いじゃおっと!」
腰に手を当てて、パジャマの下を少し下げる。
その後お尻を浮かせて太ももを露出させた。さらに、前に身体を倒して足首を通す。
これで彼女が身に着けているものは純白の下着だけとなった。
少し頬を赤くしながら、ベルは言う。
「今度はサトシが脱いでよ。サトシの暖かさをもっと強く感じたいの」
「分かった」
立ち上がったサトシは服を脱ぎ、横に投げた。トランクスの一部分が
異様に膨らんでいる。
「(こんなに膨らんじゃって、男の子ってみんなこんなのかなぁ)」
「さあ、続けるよ」
サトシはベルを押し倒し、五指を大きく広げ真上から乳房をキャッチした。
そして開け閉めを繰り返す。
「……気、気持ちいぃ……け、けど……これじゃ……もっと
……ピッタリくっ付いてよぉ」
喘ぎ声で途切れ途切れになりながら、ベルが懇願する。
「下着外したら、もっと暖かくしてあげられるよ。それっ!」
「いやん!」
返答も聞かずにサトシは下着を押し上げた。とうとう豊かな双丘が全貌を現す。
白く健康的な乳房の頂上に桜色の乳首が控えめにある。
サトシは唾を飲み込んだ。
「そんなにじっと見ないでよぉ、恥ずかしいよぉ」
サトシの指は無意識に行動を再開した。人差し指で螺旋を描くように指を這わせる。
頂点に達したところで、軽く先端を摘む。
「あぁん!」
たまらず、大きな喘ぎ声が漏れた。
続けて指の腹をつかい転がす。
「はぁうん!」
さらに摘まんで引っ張る。
「んんん!」
「(直がこんなに気持ち良いなんて思わなかった)」
「ベル、すっごくかわいいよ」
「うん。サ、サトシ、私すっごく気持ちいぃよ。
だからね……そのね……入れてほしい」
伏せ目がちにそっと呟いた。けれど、サトシの耳にはちゃんと聞こえた。
「……いいのか? ほんとに」
「だって、私はサトシのものだもん!」
「分かったよ。こんなにうれしいことはないや!」
サトシは立ち上がりトランクスを脱ぎ捨てた。
ベルは恥じらいながらも下着を下ろす。
「行くよ」
四つん這いになったベルは首をこちらに向けた。
「いいよ。きて」
サトシの男根がベルの秘所に挿入される寸前、外から声が聞こえてきた。
「イッツ、クッキングターイム! いやあ僕としたことが新作のソースの下ごしらえを
忘れて眠ってしまうなんて。ソースは寝かせることが重要なのにね。ハハッ」
どうやらデントのようだ。サトシが小声で問う。
「続けていい?」
ベルは全力で首を横に振った。
「いやよ! 見つかったらいやだもん」
「大丈夫、見つからないよ。きっと料理に夢中だし」
「いやったら、いや! また今度にしよう」
ベルはそそくさと服を着て寝袋に入ってしまった。
「じゃあ、おやすみサトシ」
「そ、そんなぁ」
「(デントのやつ! ……怒ってもしかたないか。はぁ)」
さみしい夜はまだ長い。
完(続くかも)