ジュペッタはダークライの肩の上にいた。  
 華奢な足をいつものベッドの上に投げ出したダークライはたくさんのクッションを背もたれにして座っている。  
 ジュペッタはダークライの大きくせり出した胸をこねまわした。  
 
 「ァ…ンッッ」  
 「押さえないでよ、もっとダークライの声、聞きたいし…」  
 
 片方の腕を伸ばし脚の間に滑り込ませると、ダークライが息をのんだ。  
 
 「もう、ダークライが我慢するなら触ってあげないぞ♪」  
 
 ダークライの細い太ももをなで、その奥に迫ろうとするように見せかけて、肝心な場所には指一本触れないでおくジュペッタ。  
 
 「すべすべだね〜」  
 
 ぶるっ  
 期待ばかりが膨らんで腰の奥にたまるようで、ダークライは甘い疼きに身体を震わせた。  
 意地悪なジュペッタの手は相変わらず微妙に見当違いの場所を弄っている。  
 ダークライは目を潤ませて口を押え、荒い息を吐いた。  
 
 「…頼む…」  
 「じゃあどこを触ってほしいの?」  
 
 「ッ…も…もっと…」  
 「もっと?」  
 「奥を…、…ッ!!は…!!」  
 
 ジュペッタの指が待ち望んでいた場所に触れる。  
 爆発しそうなほど愛撫への期待であふれていたダークライのアナルはすんなりとジュペッタの指を受け入れた。  
 
 「ふッ…ア…!…ゥ…」  
 「もっと」  
 
 ちろ、ちろ…  
 ジュペッタはダークライの顎から銀髪の生え際まで、ゆっくりと舌を移動させていった。  
 ゾクゾクゾク…ッ  
 
 「ア…ッ!ア…ァ!ふア…!…ふ…」  
 「そう…かわいい、ダークライ」  
 
 いつもの行為が終わってから、ダークライとジュペッタは顔を向き合わせて余韻に浸っていた。  
 
 「まだ…」  
 「何?」  
 「その…“交尾の準備”を…」  
 「オナニーだよ」  
 「…うむ……………屋外でも、する、のか?」  
 「たまにね。解放感があるし気持ちイイよ!今はちょうど気持ちイイ季節だしね」  
 
 最初に出会ったとき、洋館の庭で声を上げてオナニーに耽るジュペッタを、ダークライは思い出した。  
 もともとニンゲンの図書館だったらしい洋館の資料には、屋外でオナニーする事例は書いていなかったため、 
声をかけられたダークライは驚いて逃げてしまったこと。  
 
 「……」  
 「あ〜また本に書いてあることと比べてるでしょ。あたしはポケモン!本を書いたのはニンゲン!」  
 「……私としては……」  
 
 ちいさな胸を張るジュペッタに、ダークライはなんとなく羞恥を感じて目をそらした。  
 
 「…恋人のそんな姿を他人に見せたくない…し…」  
 
 ダークライは顔を赤くしてそうつぶやいた。  
 
 「え?」  
 
 だがジュペッタからかえってきたのは意外な答えだった。  
 
 「あたしたち友達でしょ?」  
 
 驚いたように言うジュペッタに、今度はダークライが驚く番だった。  
 
 「…なのか?」  
 「ダークライのことは好きだよ?でもそれって友達としてだから」  
 「……」  
 「だって女の子同士だし!女の子同士でつがいとかないでしょ?」  
 「私はメスじゃない…」  
 
 ジュペッタの赤い目がきょとん、とした表情でダークライを見ている。  
 
 「ダークライち○こないじゃん。それじゃああたしはダークライのタマゴ生めないし、つがいにはなれないよ?」  
 「だが…」  
 「何読んでるんだか知らないけど、ニンゲンのハナシでしょ。ポケモンには“恋人”とかないの」  
 「……」  
 「ポケモンはタマゴができなきゃ結局は離れちゃうの。タマゴができなきゃ結局はほかのポケモンと一緒に 
なるんだよ」  
 
 ダークライはなんと返していいかわからず黙っていた。  
 
 「あたしたちはニンゲンと違うんだよ…ニンゲンに毒されないで!」  
 「……ジュペッタ!」  
 
 そう吐き捨てるとジュペッタはベッドからとび降り、ダークライを置いて飛び出して行ってしまった。  
 
 
 森の中、ジュペッタが一匹でとぼとぼ歩いていると、前方から声をかけられた。  
 白くて細い体に、若草色の頭部の女性的なポケモンが、手を振っている。  
 
 「…×××××!×××××なの?!」  
 
 見覚えのある姿に懐かしい名前で呼ばれて、思わず反応してしまう。  
 
 「あれ、サーナイトじゃん…あれ?!」  
 「覚えてたのね…!やっぱりジュペッタになってたのね」  
 
 エスパータイプのサーナイトは、ジュペッタがかつてご主人に大切にされていたぬいぐるみだと、そのまと 
うオーラでわかったのだそうだ。  
 
 「久しぶり〜ご主人は元気?」  
 
 サーナイトは悲しそうな顔をした。  
 
 「もう知らないわ…」  
 「なにかあったの?そういえばパーティのみんなの気配もないし…サーナイト一人だよね」  
 
 堪えきれなくなったようにサーナイトは叫んだ。  
 
 「捨てられたの…わたし捨てられたのよ!」  
 
 「高個体値のタマゴをつくれって言われたからがんばったら…相手のポケモンが萎えちゃって…」  
 「まさか…ED?」  
 「そう。もうわたし相手じゃ無理なんだって。タマゴ、まだできるのに…」  
 
 サーナイトは彼女のご主人が最初の地方リーグを抜ける前からの付き合いだったはずだ。  
 義務教育が終わったばかりの背中を、幼いラルトスがてちてちと追いかけていた。  
 しかし今の彼は完全に能力主義になってしまい…  
 
 「それで遺伝するからってより能力の高いあっちが残されて、わたしは捨てられたのよ」  
 「サーナイト…相手のポケモンに未練はないの?」  
 「…交尾の時しか顔を合わせなかったから。気持ちはなかったわ」  
 
 それよりもご主人さまがわたしを見なくなってしまったことが寂しい、とサーナイトは悲しげに笑った。  
 
 「わたし、これから故郷に帰るの。ホウエン地方…遠いけど、テレポートするから」  
 
 じゃあ…、と言って去ろうとするサーナイトは、ふと思い出したように振り返った。  
 
 「そうだ×××××も一緒に帰る?」  
 「え…」
 「ミシロタウンのお母さん、ジュペッタになったって言ったら、迎えてくれると思うわ」  
 「……」  
 
 
 人見知りで、本ばかり読んでいて、  
 いつもだまって話を聞いていてくれる。  
 ずっと大人っぽいのになんにも知らないの。  
 ベッドに沈めた時の幼い顔。  
 
 
 「ごめん。あたし、こっちに大切な子ができたの」  
 
 「そう…おめでとう、××…ううん、ジュペッタ」  
 「ありがとう、サーナイト」  
 「こっちに遊びに来ることがあるかもしれないし、また会いましょうね」  
 「もちろん!歓迎するよ!いつでも来てね」  
 
 きゅっ。  
 二匹は抱き合って別れを惜しみ、サーナイトは笑顔でテレポートしていった。  
 
 
 空に吸い込まれるように彼女がテレポートしていった点をしばらくみつめ、視線を地上に戻すと、洋館から 
伸びた一本道の上に黒い影が。  
 古びた石造りの洋館を背にいつもの姿が。  
 
 「お昼にしようと思ったんだがー!!」  
 「ダークライ…」  
 
 白い髪をたなびかせ、腕にきのみをいっぱい抱えて佇んでいる。  
 
 「ダークライ!!」  
 
 こみあげるものにまかせ、ジュペッタは短い足の出せる最高速度でダークライに駆け寄り飛びついた。  
 驚いて見開かれる青い瞳にキスを落す。  
 
 「ジュペッタ、…んむ!」  
 
 しっかりとダークライの首に腕を回し唇をむさぼる。  
 
 顔の角度を変えてより深く吸いつくと、ダークライの体から力が抜けていく。  
 
 「ん…ジュペッタ………ぁ、…ん」  
 
 ぽろ、とダークライが抱えていたきのみがその腕から落ちる。  
 それを追いかけるようにダークライもゆっくりと地面にしりをついた。  
 
 「ダークライ…」  
 「…いきなりなんだ…」  
 「あたしと恋人同士になって!!」  
 
 ジュペッタはダークライのふわふわした肩を両手でつかんで言った。  
 
 「?!」  
 「あたし…勘違いしてた」  
 
 青い瞳がじっとみつめている。  
 
 「なんかさっ、ポケモンになってから、“ポケモンであること”に拘りすぎてた。そうすれば、捨てられた 
ぬいぐるみのあたしから逃れられる気がして」  
 
 捨てられることが怖かった。  
 
 「ポケモンだから、タマゴができれば捨てられることはないって」  
 
 ぬいぐるみだった頃とは違って、肉体を持つ今はタマゴを作ることができる。  
 
 「でもそんなことないんだなって」  
 
 ダークライがジュペッタの背中に手を添える。  
 
 「…一番重要なのは…」  
 
 背を撫でてくれる、温かい、優しい手。  
 
 「…一緒にいたいって、気持ちなんだよ…」  
 
 「ジュ、ジュペッタ、恥ずかしい…」  
 「やだ〜もっと見せてよ?開いて、奥まで…」  
 「違う…また私ばかり…」  
 「あっ…ダークライ、あたしにも、してくれるの?」  
 
 潤んだダークライの目。  
 じっと見つめ返すと、ダークライはおずおずと手を伸ばしてきた。  
 猫をあやすようにジュペッタの喉元をくすぐる。  
 
 「ふふ」  
 「…私もジュペッタに喜んでもらいたいんだ」  
 「うれしい…ダークライにあたしのこといっぱい教えてあげる!」  
 
 
 ジュペッタとダークライはお互いの脚の間に顔を埋めるように絡み合っていた。  
 ダークライは彼女のクリトリスを舐めながら膣に指を出し入れした。  
 じゅっ、じゅぷ、ぷちゅ、  
 出し入れするたびに愛液が泡立って弾け、ダークライの顔をよごした。  
 
 「んっむ…そこ!…はぁ…そこなのぉ!もっとクリクリして!もっと深くえぐって!」  
 「…!!…!!」  
 
 身長差がかなりあるため、ダークライは細い腰を折れそうなほど曲げなければならない。  
 
 「あああぁダークライ…む…イイよぉ!はぁっ…あ…気持ちイイよぉ」  
 
 維持するのが難しい体勢な上に、ジュペッタの巧みな攻めに体ががくがくして、いうことを聞かない。  
 
 「…ぁ!…ゥ!!!…イ…ッ」  
 
 びくっ!!  
 中の敏感なところを擦られてダークライは思わず膝を跳ねさせた。  
 
 「ちょっと脚閉じないでくれる?…あっ…んん、狭いし舐められない…」  
 「…あ、ああ…」  
 
 
 「さいきんダークライ脚の間も感じるようになってきたね」  
 「…そうか?」  
 「うん、最初はアナルだけだったでしょ?今は胸を弄られるのも好きだし…ダークライはどんどん敏感になっ 
ていくね」  
 「…うむ…」  
 「出会ったころより全然しゃべれるようになったよね」  
 「……」  
 
 ダークライは俯いている。  
 
 「もっと変わって、あたし色に染まって、ダークライ……わっ!!」  
 
 頬を紅潮させた青い瞳がジュペッタを抱きしめている。  
 
 「…ジュペッタ」  
 「ふふ…もう一回シようか」  
 
 黒い腕の中にすっぽりと収まるジュペッタは、赤い瞳に情欲を滲ませてダークライを見上げた。  
 
 「ぁ…」  
 
 横になって、お互いを手で愛撫しながら、絶え間なく唇を重ねる。  
 
 「……」  
 
 胸を揉みあい、吐息の合間に愛を囁いて、敏感な頂点を探って、  
 
 「……」  
 
 しっとりと汗ばんだ肌に舌を這わせて、指を絡めて、腰を絡めて、  
 
 「…愛して?」  
 
 粘液をすくいとって、味わって、溶けあって…  
 
 「ダークライ、ずっといっしょだよ」  
 「ああ…ジュペッタ、愛してる…」  
 
 朽ちた洋館のなか、生の喜びを抱き合う二つの影がひっそりと重なっていた。  
 

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