「じゃあ、お留守番よろしく。キバゴ」 
 ご主人は、靴を履きながら言った。 
「はい!  任せてください」 
 僕は元気良く返事をする。 
 ご主人には『キバー!』としか聞こえないだろうけど。 
 青色の長い髪の毛をツインテールにしたニンゲンの女の子。 
 世間ではエリートトレーナーと呼ばれる彼女の右手には白い包帯が巻かれていた。 
 痛々しいその姿。それもこれも、あいつのせいだ。 
 
「ごめんね。病院にはポケモンを連れていけないから……。」 
 病院というのは、ニンゲンの病気やケガを治す場所。 
 ニンゲンを治せるポケモンセンターみたいなものだ。 
 ニンゲンはケガの治りが遅い生き物だから、特別な道具が必要なんだろう。 
 
「ポケモンフーズ置いていくから。お腹が空いたら、あの子と仲良く食べてね」 
 自動扉が開く。 
 ここ、ソウリュウシティは新しい技術を積極的に取り入れている。 
 そのせいで、普通の民家でも勝手に動く不思議な扉が付いているのだ。 
 
「あー、一つ言い忘れてた」 
 ご主人はかがんで、僕と目線を合わせた。 
 ケガをしてない左手で、僕の頭を撫でながら優しい口調で語る。 
「あの子と仲良くしてね。あんな事があったけど、……君たちは私がゲットした以上、仲間なわけだし」 
 僕が返事をする前に、ご主人は行ってしまった。 
 部屋の中が急に静かになる。 
 ご主人にケガを負わせたあいつと二人きりというのは気が重い。 
 横に突き出たキバをいじりながらため息をつく。 
 だが、僕にはご主人の留守を守るという立派な仕事が有る。 
 あいつに近づきたくないが、目を離したら何をしでかすかわからない。 
 僕はあいつが居る二階へ上がった。 
 僕の体の半分程の段差を何度も登るのは、正直きつい。 
 全部の段を登りきる頃には、軽く息切れをおこしていた。 
 もっと体力をつけねば。 
 そんな僕の苦労とは裏腹に、あいつは黒くて硬い床に腹ばいになって呑気に寝息をたてていた。 
  
 あいつの名はモノズ。濃い青色の体をした、僕より一回り大きい、ポケモンだ。 
 頭と胸元にだけ黒い毛でおおわれているのが特徴的。 
 前髪が長く、目の部分を覆っていて表情がわからない。それが僕には、何とも不気味に思えた。 
 
「……まあ、寝てるなら何の問題もないか」 
 モノズはそぼうポケモンと呼ばれる位、乱暴なポケモンだ。 
 しかし、眠っているなら無害だ。 
 よだれを口の端から垂らして眠りを貪るモノズを見て、僕は少し気が楽になった。 
 そうだ、ご主人が帰ってくるまでモノズが眠っていてくれれば何も心配することはない。 
 そう思うと緊張が緩み、体の力が抜けた。 
 起きているのが僕しかいない部屋。 
 何もすることがないので、ぼんやりとあたりを見回す。 
 
 全体的に黒と青で統一されていて、クールな印象を受ける部屋だ。 
 聞こえるのは静かなモノズの寝息と、ブーンという小さな機械音。 
 壁から突き出た照明は部屋をぐるりと囲む。 
 そこから出る光は青白く、少し部屋が薄暗い。 
 あまり明るくしすぎない、というのがここに住むニンゲンの習性なのだろう。 
 台所、ベッド、本棚、パソコン……その他もろもろの家具が一つの部屋に収まっている。 
 ご主人がきちんと手入れしてるおかげで、物は整然と片付けられていてすっきりしている。 
 本当は、そんなに広くはないが必要最小限の物しか置かれてないので、窮屈な感じはしない。 
 
 部屋の中央には、広いテーブル。四隅から丸い輪郭をした青い光が立ち上っている。 
 その上には、緑と青の丸い皿が一つずつ。緑の皿は僕がいつも食事に使っているもの。 
 青は多分、モノズ用だ。 
 二つの皿には、一口大の茶色くて丸い粒をしたポケモンフードが盛りつけられている。 
 良く見ると、青い皿に盛られている量が少し多い気がする。モノズの方が若干体が大きいからだろうか? 
 何にせよ、今はお腹が空いていないので用はない。 
 
「ふむ困った。……留守番といっても特にすることがない」 
 独り言だ。当然、誰も答える者は居ない。 
 自主トレでもしてようか?でも、ご主人の家の中で激しい運動したら怒られるし…… 
 そうなると、残りは一つ。 
 
「……くぅ」 
 モノズとできるだけ離れた位置に陣取り、仰向けに眠る。 
 横を向くと、キバが床を傷つけるからだ。 
 ご主人の家を傷つけない為の配慮。 
 異なる種類の生物が共に生きる為には、こういうのも必要なわけだ。 
 もっとも、ニンゲンはポケモンがそんな事を考えてるなんて夢にも思わないだろうけど。 
 そんな事を考えてるうちに、意識が深い眠りに捕われ沈み込んでいった。 
 この後、大変なことになるとも知らずに。 
 
 光も思考も存在しない深い眠り。 
 それを破ったのは、ゴトリという大きな音だった。 
 まるで、何か大きなものが床に落ちたような……そんな音だった。 
 慌てて飛び起きた僕の目の前に広がる光景に……息を呑む。 
 
「なんだ……これは?」 
 部屋はぐちゃぐちゃに荒らされていた。 
 本棚が倒れ、中の本が散乱している。 
 さっきの音の正体は多分これだろう。 
 引き倒されたパソコンにつながれてる、ケーブルがちぎれている。 
 ベッドも傷つき、綿が飛び出している。 
 良く見ると、壁にも傷がついている。 
 黒い壁に白い傷は悪目立ちする。 
 誰がこんなことをしたか? 
 答えは明白だ。 
 台所の方から、ガシャンという音。 
 多分、皿が落ちたんだろう。 
 音のした方へいってみると、この惨状を引き起こした犯人―モノズが居た。 
 
 モノズは片っぱしから体当たりし、噛みついて暴れまわっている。 
 ニンゲンからそぼうポケモンと呼ばれているのもうなずける。 
 いや、のんきにうなずいてる場合ではない。 
 ここはご主人と僕が暮らしてきた大事な家。止めなければ。 
「お、おい君! 迷惑行為はやめないか!」 
 うしろから、たてがみを引っ張ってモノズを制止する。 
 モノズは振りむき、そして…… 
 突然右手に痛みが走った。 
「……は?」 
 意味がわからなかった。 
 モノズは僕の手に噛みついていた。ご主人にしたのと同じように。 
 頭は何が起こったのか、十分に理解していない。 
 だけど、体の方は僕の意思を待たずに迅速に反応した。 
 残った左手でモノズの頭にチョップを叩きつける。 
 モノズにとっては相当なダメージだったようで、あっさりと口を離した。 
 血は出ていないものの、右手に歯形がくっきりと残りズキズキと痛む。 
 
「い、いきなり何するんだ!?」 
 怒りより疑問が浮かんだ。 
 何故、いきなり攻撃されなければならないのだ。 
 僕の問いにモノズは答える。 
「それは俺のセリフだゴラァ! メシのくせにこの俺を殴りやがって」 
「……すまない。君の言っていることの意味が良くわからない」 
 モノズの言葉が予想外過ぎて、怒るのをつい忘れてしまった。 
 種族が違うとここまで話が通じないものなのか。 
 全く理解できない相手を前にして、寒々としたものを感じていた。 
「お前がわかろうと、わかるまいと関係ねえ。大人しく俺に食われろ!」 
「そんなの嫌に決まってるだろ!」 
「てめえ……わがまま言ってるんじゃねえよ!」 
「どっちが、わがままだ!」 
 モノズは完全に僕を食べ物と認識している。 
 それだけは分かった。 
「だあー! うるさいメシだ。黙らせてやる!」 
 モノズはいきなりこちらに体当たりしてきた。 
「うがあああ! 痛え!」 
 だが、ダメージを受けたのは僕ではなくモノズの方だった。 
 体当たりがわずかに横に外れ、横に突き出した僕の牙に胴体をひっかかれたのだ。 
「くそー。やりやがったな! メシのくせに生意気だぞ!」 
「いや、何もしてないし、メシでもないが……。そもそも僕にはキバゴというちゃんとした名前が……」 
「うるせえ! 今度こそ、覚悟しやがれ!」 
 再び、モノズの体当たり。 
 今度は牙に当たることはなかった。 
 僕の横を綺麗に通り過ぎて、壁に激突した。 
 頭をもろにぶつけた。とても痛そうだ。 
 妙だ。さっきから、モノズは狙いを大きく外している。 
 別に僕がよけているわけでもないのに。 
 もしかしたら、あれのせいかもしれない。 
「君は前髪を伸ばしすぎだ。それでは前が見えないだろ」 
「そんなの関係ねえ。どっちにしろ見えねえし」 
「……君は目が見えないのか?」 
「そうだけど、何か文句あっか? 言っておくが、見えなくても俺は全然、平気だぜ。片っぱしから体当たりしたり噛みついていけば周りの状況なんてすぐわかる」 
 良く見ると、モノズの体には生傷がたくさんついている。 
 自分の体でぶつかって、傷ついて初めて周囲を認識できる。 
 これがモノズという生き物の習性なのだろう。 
 生きにくい奴だと思う。 
「あーくそ、腹がへりすぎてクラクラしてきた。さあ、今度こそ観念してオレの栄養になりやがれ!」 
「僕は食べ物ではないと何度も言ってるだろ!」 
「うるせえ。とっとと食われろ!」 
 飢えたモノズと話をするのは無理だ。 
 この状況を打破するカギは……ご主人が残してくれている。 
 僕は青い皿の上にあったポケモンフードを手に取った。 
「そんなに腹が減ってるなら……」 
 モノズを真正面に見据える。  
 
「これでも食らえ! そぉい!」 
 モノズの口の中にポケモンフードを突っ込んだ。 
 噛まれないように、すぐに手を引っ込める。 
 手にモノズの唾液がつく。正直、生臭くて気持ち悪い。 
 手をぶんぶんと振ったが、当然その程度では乾かない。 
 ああ、はやく手を洗いたい。 
 
「んが? なにこれ、うまあー」 
 モノズの第一声がコレである。 
 いきなり口の中に手を突っ込まれた後の反応がコレだ。 
 普通、怒るなり驚くなりすると思うのだが。 
 本当にモノズは食べることしか考えていないようだ。 
 正直呆れる。 
 
「おい、お前! もっとだ。もっと食わせろコノヤロウ!」 
「いや、ポケモンフードならあっちのテーブルの所にあるが……」 
「あっちとか言われてもわかんねえぞ」 
 そういえば、モノズは目が見えなかった。 
 あっちとか、そっちとか言っても分かるわけがない。 
「まいっか。適当に噛みつきまくっていればそのうち……」 
「やめろ! やめてくれ! いや、やめて下さいお願いします!」 
 これ以上部屋を荒らされるわけにはいかない。 
「敬語でお願いしても駄目だ! 俺は敬語が使えない若者だからな!」 
「いばって言うことか!」 
 モノズは今にも駆け出しそうだ。 
 いかん。このままではお部屋が完全に汚部屋になってしまう。 
「待て待て! 僕が案内するから、滅茶苦茶な方向に走りまわるのはやめてくれ!」 
「うん、わかったやめる」 
 意外とあっさり止まったな。 
「こっちだ、ちょっと引っ張るぞ」 
 モノズの首の毛を引っ張って皿の方へ誘導した。 
 
「もぐ……うまいなこれ、もぐ……」 
「食べながらしゃべるな」 
「もぐ……じゃ、しゃべりながら食べる」 
「それでは同じではないか!」 
「もぐ……細かい……もぐ……ことは気にすんな!」 
 モノズは皿に顔を突っ込んで、がつがつと犬食いする。 
 その食べ方は、はっきり言って汚い。 
 食べカスが皿の外に飛び散ったり、顔に付いたりしている。 
 
「うはっ……むふっ……うめえ!」 
 それにしても、モノズは実においしそうに食べる。 
 幸せそうなその様子を見ると、心が和らいで文句を言う気力もなくなってしまう。 
「んぎ……! ゲホッ!」 
 あ、むせた。 
 慌ててかっこむからこうなる。世話の焼ける奴だ。 
「もっと、ゆっくり食べれば良いではないか……」 
 モノズの背中をさすりながら、たしなめる。 
「うるせえな。早く食べないと横取りされるだろ!」 
「いや……別に僕は横取りなんてしないが」 
 そういえば、テレビで見たことがある。 
 野生の暮らしでは、苦労して取った食料を横取りされる事が多いのだと。 
「ひょっとして、君は少し前まで野生だったのか?」 
「ヤセイ? なんだそれは? うまいのか?」 
「食べ物ではないが……。えーと、ニンゲンの世話にならずに生きることを野生というんだ」 
「物心ついた時から、ずっと一匹だったからなあ。多分、そのヤセイって奴だと思うぜ」 
 やはりそうか。 
 目が見えず、体に生傷を作りながら、やっとの思いで手にした食べ物を横取りされる。 
 卵の時から、ご主人の元で育った僕にはわからない苦労だ。 
 モノズが食べ物に執着するのも無理もないのかもしれない。 
 
「ニンゲンといえば 最近一回噛みついてやったな。あんまり、うまくなかった」 
「それ、僕たちのご主人なんだが……」 
 ついさっきまで野生だったのだ。 
 ニンゲンと共に生きる方法もわからないのだろう。 
 それを教える前に、ご主人はケガをして今はいない。 
 モノズが部屋を散らかしたのもそのせいだ。 
 
  
 
「そういやお前、 メシの所に連れてってくれるし、横取りしないし変な奴だな。 
何かたくらんでんのか? 太らせてから食うとかそういうアレか?」 
「いや、そういうアレでもないが……」 
「じゃあ、お前は何だ? 何でこんなことしてくれるんだ?」 
「どうしてって……」 
 はじめは、部屋を荒らされないようにするため。 
 それだけだった。 
 モノズは乱暴に見えたが。 
 ただ誰かと一緒に生きる方法を知らないだけなのだ。 
 ならば、ご主人にモノズの事を任されている、この僕が 
モノズに色々と教え助けてやらないといけないのだろう。 
 こういう間柄をなんと呼ぶか。僕は知っている。 
 僕とご主人のような関係……それは。 
「君の仲間だからだ」 
「仲間? なにそれ食えんのか?」 
「いや、食えないよ……。その何でも食べようとする思考パターンはやめないか?」 
 一匹で生きてきたモノズには仲間という概念そのものがないようだ。 
「仲間っていうのはな、お互いに助け合う者のことだ」 
「助け合う? そんなこと今までやったこともないから良くわからないぞ」 
「今はわからなくても良いさ。でも、一つだけ覚えて追い欲しい」 
「何だ?」 
「君が噛みついたニンゲンも仲間なんだ」 
「ニンゲンが仲間? 悪い、お前の言ってること全然わかんねえ」 
 モノズは首をひねる。 
 無理もないことなのかもしれない。 
 野生とニンゲンと一緒に生きるポケモンでは、違いすぎる。 
「まあ、そのうちわかるさ。とりあえず、君が今食べているポケモンフードは、そのニンゲンが用意したものだ」 
「ええ!? そうなのか?」 
「そうだとも。だから、むやみに傷つけると食事が出なくなる。これだけは知っておいてくれ」 
「うう……わかった。もう噛まない」 
 エサで釣る形だが、これでもうご主人が傷つくことはないだろう。 
 今後、本当の信頼関係を結べるかどうかは、ご主人次第だ。 
 
「あれ? だけど、おかしいぞ? どうしてニンゲンが食い物くれるんだ?」 
「それは、トレーナーが……」 
「トレーナーって何だ?」 
「それは……」 
 次々と繰り出されるモノズの質問に一つ一つ丁寧に答えていく。 
 そのたびに、モノズは「ヘー」とか「ホー」とか言っていちいち感心している。 
 自分の話をそんな風に聞いてくれるのは、嬉しいものだ。 
 トレーナーとポケモンの関係。 
 トレーナーはポケモンを育て、ポケモンはトレーナーの為に戦う。 
 僕にとっては当たり前のことでも、モノズにとってはそうではない。 
 特に毎日食べ物が与えられるというのはモノズにとって、大きな驚きだったようだ。 
 
 
 
「お前、すごいな。飼われるプロだな」 
「……それは褒めてるのか?」 
「うん!」 
 無邪気に返される。本当に褒めてるんだろう。 
 皮肉を言うような奴には見えないし。 
 モノズは乱暴な習性を持ってはいるが、悪い奴ではなさそうだ。 
 
「お前は食わないでおいてやる。感謝しろよ!」 
「……ありがとう」 
 前言撤回。やっぱりこいつは、とんでもない奴だ。 
 
 
「ただいまー」 
 ご主人が帰ってきた。 
 ドタドタと階段を駆け上がってくる音がする。 
 あ、まずい。 
  
「あれ? ……なんじゃこりゃああああああ!」 
 すっかり荒れ果てた部屋を見るやいなや、ご主人は両手を頬に当て、絶叫した。 
 ああ、可哀想なご主人。 
「うう、ボックスに入れとけば良かった……何で思いつかなかったんだろう……」 
 ご主人はぶつぶつ言いながら、割れた皿をほうきで掃きとっている。 
「ん? 何だ? 何やってんだ?」 
「君が散らかしたから片付けてるんだよ」 
「かた……づける?」 
「巣を綺麗にすることだよ」 
「へえ、そんなことすんのか。お前ら変わってんな。 
俺も手伝ってやろう。あで!」 
 モノズはまた壁にぶつかった。 
 彼には悪いが、モノズが居ると片付くものも片付かない。 
「モノズ、戻って!」 
 モノズはモンスターボールから放たれる赤い光に捕われ吸い込まれていった。 
「さあ、気合い入れていくよ!」 
 結局夜遅くまで、ご主人と僕とでを苦労して片付けるはめになった。 
 
 それから、ご主人と僕とモノズ。二匹と一人の生活が始まった。  
 僕は先輩として、モノズに色々と世話を焼くことになる。 
 野生の暮らしが抜けないモノズには苦労させられた。だが、僕は不思議と嫌だと思わなかった。 
 多分、初めて後輩ができたから嬉しかったのだろう。 
 突拍子の無い行動を取るモノズとそれに振りまわされる僕。 
 そんな関係がずっと続く。僕はそう思っていた。  
 
「わー! やめろ、やめないか!」 
 青い尻尾を引っ張って叫ぶ。 
 二回も進化した僕の力は非常に強い。 
 オノノクス、それが今の僕の名だ。 
 黄金色に輝く鎧のような鱗が黒いボディーを包む。 
 顎から両側に突き出ていたキバは鋭さを増し、鉄骨を斬る程の威力を持つ。 
 金の鎧と、刃先が朱色に染まったアゴオノ。どれも僕の誇りだ。 
 毎日、ご主人が砥石でピカピカにしてくれている。 
  
 だが、この力でもこいつを完全に制止するのは難しい。 
「邪魔すんな! 俺はこれを食う!」 
 口をぱくつかせながらわめくのはサザンドラ。 
 あのモノズが進化の末にたどり着いた姿。三つも頭が有るポケモンだ。 
 真ん中の頭の他に、二つ。普通なら手の部分が頭になっている。 
 モノズ時代では、ギャルゲーの主人公のように前髪を降ろして目を隠していたが、今は違う。 
 暗い赤色に染まった前髪は逆立ち、中に隠れていた赤く鋭い眼光をさらす。 
 背中には六枚の漆黒の羽。翼の一つ一つに切れ込みが入っており、遠目にはまるで口を開いた頭のように見える。 
 初めて会うポケモンは震えあがってしまうだろう。サザンドラは顔、怖いし。 
 ただ、まん丸なお腹や、モノズだった頃の名残が残る小さな足はちょっと可愛いと思う。 
 本人に可愛いなんて言ったら怒り狂うだろうから言わないが。 
  
  
 こいつの足元には、桃色の小さな花びらを開いたコスモスが。 
 秋風にそよぐ、その可憐な花を食べるとか、信じられないことをこいつは言っている。 
 何でも食べようとする思考パターンはモノズだった頃から全く変わっていない。 
「目についた物を何でも食べるのはやめろって、僕もご主人もいつも言ってるだろ!」 
 モノズが迎えた二回目の進化。 
 こいつがサザンドラになった時、今まで長い前髪に隠れていた眼が開いた。 
 おかげで、こいつは眼が見えるようになった。これで、僕が道案内する必要はなくなった。 
 もう、手を焼かせられることはない。そう思ったが、甘かったようだ。 
 サザンドラはその真っ赤な瞳に映ったものを何でも食べようとしてしまうのだ。 
 ちょうど、今みたいに。 
「離せ! 離せよコノヤロウ!」 
「駄目だ! ご主人が席を外してる今、僕の目の前でアホな事をするのは許さないぞ!」 
「アホって言うな!」 
「ならば、バ……いや、やめておこう」 
「あ、テメー俺の事バカって言おうとしたな! バカ言う方がバカなんだぞ。このバーカ!」 
 その理屈だと、バカバカと連呼してるサザンドラが一番……いや、言い返すのはよそう。 
 ご主人に与えられた貴重な休み時間をこんな形で過ごすハメになるとは……。 
 思わずため息が出る。 
 穏やかな秋晴れの柔らかな陽光が降り注ぐ、丘。 
 ビレッジブリッジとカゴメタウンを結ぶこの道にニンゲンは12番道路と名付けた。 
 歩くだけで、楽しくなってしまうなだらかな丘陵地帯だ。 
 静かな時を過ごすには、もってこいな場所である。 
 それなのに、……ああそれなのに、それなのに。 
 僕はゆっくり休むどころか、サザンドラと低俗極まりない争いをしているのだ。 
 ご主人が居ればモンスターボールに入れてもらうんだが、それも叶わない。 
 『ポケモン同士、水入らずで楽しんでね』 
 そう言ったご主人は、ビレッジブリッジへ謎の歌を聞きに行ってしまった。 
 都合良くサザンドラの世話を丸投げされたような気が……いや、ご主人に限ってそんなことは……。 
 だが、モノズと初めて会った時も今考えてみると放任過ぎる気が……ああ、何を考えてるんだ僕は。 
 そんな事より、今はサザンドラをなんとかしなければ。 
  
   
 
「良い加減に……」 
 僕は足をしっかり踏みしめ、腰を落とす。 
 赤い爪が付いた二本の足に体重がかかり柔らかい土にめりこんだ。 
 息を止め、一気に力を込めてサザンドラの尻尾を引っ張る。 
「しないかぁあああ!」 
「うぎゃ!?」 
 僕の力がサザンドラに上回った。 
 僕とサザンドラは一緒に後ろに倒れこんでしまう。 
 二匹の成熟したドラゴン。 
 その巨体が同時に丘へ転がり、ドスリと重い音が響いた。 
 幸い、柔らかな草が豊かに茂っていたので、あまり痛くはなかったが。 
 
「まったく……これでは全然、休憩になってないではないか……これでは今後の鍛錬に影響が……」 
 上体を起こし、ぶつぶつと小言を言う。 
 サザンドラは仰向けに倒れながら僕の話を黙って聞いている。 
 少しは反省してくれたのだろうか? サザンドラにしては、珍しい事もあるものだ。 
「大体だな、ご主人が栄養バランスを考えて食事を用意してくれてるのに、君が勝手に拾い食いするとそのバランスが……」 
「あ? ……悪い、全然聞いてねえ」 
「はあ……まあ、そんな事だろうと思ったていたさ……」 
 サザンドラが僕の説教をまともに聞かないことくらい、とうにわかっていた。 
 それだけ長い付き合いなのだ。 
 僕も一々腹を立てたりはしない。毎回、キレていたらあたりは焼け野原になってしまう。 
 
 しかし、今のサザンドラの様子は少し変だ。 
 じっとしてるのが何よりも苦手な彼は寝転がったまま。一言も言葉を発しない。 
「おい、サザンドラ。どうしたんだ?」 
「え? ああ……別にどうともしねえけど……ちょっと、みとれてた」 
「みとれる? 何に?」 
 確かにここは良い景色だが、言葉を失うほど綺麗な物なんて無い。 
 横に突き出た刃の側面を指先でいじりながら、考え込む。 
「あれ」 
 サザンドラは右手を真上に突き出して指し示す。 
 右手と言ったが、彼の他の生物では両手に当たる部分には頭がくっついている。 
 だから、右頭と言った方が正確かもしれない。 
「うん?」 
 サザンドラの指し示す空中へ眼を向ける。 
 ひこうタイプのポケモンが飛んでいるわけでもないし、ニンゲンの作った飛行機とかいうバケモノが居るわけでもない。 
 そこには何も無い。あるのは、ただ一つ。 
「……空か?」 
 サザンドラはうなづいた。 
 ただの空を食い入るように見つめるサザンドラ。 
「別になんてことのない、普通の空だと思うが……」 
「そりゃお前は、見慣れてるからなあ。でも、俺にとっては……すげえモノに見えるんだ」 
 サザンドラの眼が見えるようになったのはつい最近の事。 
 眼に映るもの全てが、新鮮な驚きをもたらすのだろう。 
 生まれたての赤ん坊のように。 
「……そんなものか?」 
 僕もサザンドラと同じように寝転がってみる。 
 もちろん、有る程度サザンドラと距離を置いて。 
 でないと、キバが刺さってしまう。 
 
 目に飛び込んできたのは、どこまでも広がる秋空だった。 
 高い丘から、見上げたせいだ。 
 ニンゲンの作ったビルや高い木々によって、狭まることなくのびのびと広がっている。 
 涼しさの混じる澄んだ空気を通して見る高い空。 
 明るく爽やかな薄い青が満たす空間に、薄く引き延ばされたような白雲のかけらが何枚も浮かんでいた。 
 ずっと見ていると、吸い込まれそうな気がしてくる。 
 
「まあ……確かにすごいのかもしれんな」 
 サザンドラ程感動してるわけではないが。 
「へへ……そうだろ?」 
 サザンドラの声色は嬉しそうだった。 
 それからしばらく、黙って空を見上げていた。 
 元々、ここには休憩する為に来たのだ。体を休めるにはこうするのが一番だろう。 
 サザンドラが大人しくしてくれるなら、それにこしたことはない。 
 悪くない時間だ。そう思っていた。 
「おい、こんなの俺のガラじゃないかもしんねー。だけど、良い機会だから一応言っておくぜ」 
 サザンドラがいきなり話しかけてきた。 
「どうしたんだ? いきなり」 
「良いから黙って聞けよコノヤロウ」 
 サザンドラは咳払いを何回もする。 
 そんなに言いづらい事なんだろうか。 
 思わず口を挟みそうになるが、サザンドラの言う通り黙っている。 
 ようやくサザンドラが重い口を開いた。 
「……あ、ありがとな。これでも、感謝してる」 
「え……?」 
「お前とあの女が居なきゃ進化できなかったと思う。そうだったら、この空も見えなかったんだろうな……」 
 サザンドラに進化するには相当強くならなくてはならない。 
 ドラゴンタイプは、基本的に進化が遅い。 
 その中でもサザンドラの遅さは群を抜いている。 
 トレーナーに根気よく育ててもらって、やっと進化できる位。 
「何を水臭い事を言ってるんだ。仲間だろ?」 
「仲間……仲間かあ。俺たちはずっと仲間……」 
 サザンドラは確認するようにぼんやりとつぶやく。 
「ああ、その通りだ」 
 サザンドラはまた黙りこんでしまった。 
「あ、一つ言っておくがな、あの女じゃなくてちゃんとご主人って呼ばないと……」 
 その小言を言い終えることはできなかった。 
 サザンドラはいきなり起き上がると、僕の体の上に覆いかぶさってきた。 
 まるで獲物を逃がさないように捕える獰猛な肉食獣のように。 
 サザンドラの影が、僕の体に落ちる。 
 逆光のせいで、サザンドラの表情は良く分からない。 
 突然の行動に少し驚く。何かの遊びだろうか? 
 ずしりと感じるサザンドラの体重。 
 僕は体が丈夫だけど、ちょっと辛い。 
 サザンドラは浮遊することができるポケモンなのに、意外と重い。 
 ご主人が測ってくれたのだが、僕は105.5kgでサザンドラは160kg。 
 身長はどちらも180cmなのに……。 
『俺は口が三つ有る。だから、三人前食わせろ!』 
 とか言って、食いまくるから太ってるのだろう。 
 僕がサザンドラの体重を心配してると…… 
 
 
「オノノクス。俺、お前の事大好きだ」 
 そんなこと今さら言わなくても知っている。 
 それだけ長い時間を共に過ごしてきたのだ。 
「僕も君のことは好きだよ。大切な仲間だからな」 
「……違う」 
「ん? 何が違うんだ?」 
「仲間とかそういうのじゃなくて……俺の好きは、こう何ていうんだ。もっと生々しい意味というか……わかれよ、コノヤロウ!」 
「いや、何でいきなり怒られるんだ?」 
「クソッ! じゃあ……これならわかるか?」 
 サザンドラの顔が降りてくる。   
「動くなよ。キバが刺さる」 
 お互いの顔がぴったりとくっつく。 
 僕の口にサザンドラの口が押しつけられる。 
 まるで、キスしてるみたいに。 
 ……あれ? 
「むっ! むぅうううう!」 
 キスしてるみたいじゃなくて、キスしてるんだ。 
 何でこんなことに。わけがわからない。 
 慌ててサザンドラの胴体を両手でボカボカ殴るが、全然やめてくれない。 
 それどろか僕の唇を通り抜けて、サザンドラの舌が入りこんできた。 
「んがぁ!」 
 強引に侵入してきたサザンドラの舌は、僕の口内を思うまま蹂躙した。 
 ほっぺたを内側からグチュグチュと音を立てながら激しく舐めまわし、舌を強引に絡ませてくる。 
 貪るような獰猛な口付けだ。 
 口の中で暴れまわるサザンドラの舌。 
 容赦なく注がれるサザンドラの唾液。戸惑いながらも、ごくりと飲みほしてしまう。 
 頭を動かすと、キバでサザンドラの頭を斬ってしまうため、満足に動けない。 
 こんなことをされても、サザンドラの身を案じてる自分がおかしかった。 
 僕の口を味わい尽くしたサザンドラは舌を引き抜く。 
 びちゃりと唾液があふれてこぼれた。 
「これで、わかったか?」 
 サザンドラの好きの意味。 
 ここまですればさすがにわかる。わかるが……  
「ふふふ、ふざけるな! ぼ、僕は男だぞ!」 
「自分のこと僕なんて呼ぶ女が居るわけないだろ」 
「いや、たまに居るが……ってそういうことではない! こんなのホモじゃないか!」 
「そうだ。俺、お前のこと好き。男同士だけど、それでも好きなんだ。だから俺はホモだ」 
「そんなこと、いきなり言われてもだな……」 
「で、返事は?」 
「いや、返事とか言われてもだな……」 
「好きか嫌いか、どっちだよ」 
「君のことは嫌いでは決してなくてだな、好きではあるんだがその好きはこういう意味ではなくて……」 
「……じれってえなあ。返事しねえなら、勝手に進めるぞ」 
 そう言うと、両腕に付いた頭を僕の体に乗せた。 
 二つの頭それぞれから舌が出て、ゆっくりと僕を舐めまわす。 
「うわ! やめろ! やめないか!」 
「もう我慢できねえ。どうしてもやめさせたいなら……」 
 サザンドラは首を僕のキバのそばへ持っていく。 
「俺の首を斬れ」 
 静かな口調でとんでもない事を言う。 
 僕の頭は自由に動ける。 
 ちょっと顔を振れば、簡単にサザンドラの首を落とせるだろう。 
「馬鹿なこと言うな! そんなことできるわけないだろう!」 
「だったら……大人しく俺に食われろ」 
 この場合の『食われる』とは、言葉そのままの意味じゃない。 
 そのことを僕は身をもって知ることになる。 
 僕の体の上を縦横無尽に二枚の舌が這いずる。 
 僕の体を覆う金色の鎧が、サザンドラの腕の先に付いた頭に舐められ、つばで汚れていく。 
 サザンドラの生臭い臭いが僕にすりこまれる。 
 金色の部位は身を守るために堅くできている。当然、感覚はほとんどない。 
 それでも、サザンドラにベロベロと舐められるのは恥ずかしい。 
「やめろ! 誰かに見られたらどうする!?」 
 ここは見通しの良い野外。しかも、丘の上。 
 周囲から丸見えだ。 
 陽が高いのに、こんな所でこんな事をしていたら…… 
「大丈夫だって。俺たちにケンカを売ってくる命知らずな奴なんて居ねえし」  
「そういう問題じゃない!」 
「どういう問題なんだ? 危険が無いなら隠れる必要ないだろ」 
 野生のポケモンは野外で交尾をする。 
 誰かに見られて恥ずかしいなんて気持ちを持っていたら、そんなことはできない。 
 きっと、そんな野生の心がサザンドラの中に残っているのだろう。 
 隠れる理由は、外敵の脅威以外にもある。 
「……恥ずかしい」 
「ぷっ!」 
 サザンドラは噴き出した。 
「笑うな!」 
「ああ、すまねえ。お前、可愛いな」 
「馬鹿にするな! 僕は真剣に……」 
「わかった、わかった。まあ、見せつけてやりゃ良いんじゃねーの?」 
「えっ」 
「ゴツいドラゴン二匹がホモってるの見たら、余程の変態じゃない限り逃げ出すって。気にすんな」 
「え、ちょっと待っ……」 
 僕の抗議を無視して、サザンドラの顔が降りる。 
「ぐ……!」 
 胸元を舐められた。 
 金色の鎧は全身を覆っているわけではない。 
 顔、胸から腹、脚部の内側、足は黒い地肌が露出している。 
 鎧に守られてないそこは比較的柔らかい。 
 そしてなにより、触覚が鋭い部位である。 
 そこを舐められると、どうしても反応してしまうのだ。 
「ふーん……オノノクスは黒い所が感じるんだな」 
 サザンドラは好色な笑みを浮かべ、心底嬉しそうだ。 
 皮膚が黒い所を重点的に舐めまわされる。 
 顔はサザンドラの頭に、厚い胸板は右腕、太ももは左腕に舐めつくされる。 
 三か所同時に、皮膚の薄い所を責められてはたまらない。 
「う……がっ! はぁっ!」 
「オノノクス、気持ち良いのか?」 
「ち……がう」 
「そうか。ならもっと、頑張んねえとな」 
 舌の動きがより強く、激しくなっていく。 
 僕は口をきゅっと引き結ぶ。そうしないと、無様に喘ぎ散らしてしまいそうだったから。 
 
「でさ、お前のチンチンどこにあるんだ?」 
 ドラゴンタイプのポケモンの雄は生殖器を体内に収めている。 
 ニンゲンのように、服を着なくても大事なところを隠せるのだ。 
 種族が違えば、ぱっと見、どこにあるのかわからない。 
「誰が言うか!」 
 これは最後の砦なのだ。 
 もし、サザンドラが僕のアレを見つけたら……考えただけでも恐ろしい。 
「ふーん。まいっか。股の所探せばわかるか」 
 サザンドラの頭が股間にうずまる。 
「おーい、どこだー? オノノクスのチンコー。気持ち良くしてやるから顔を見せろー」 
「バカな事を言うな!」 
「うーんここかあ?」 
 サザンドラは股の部分を三つ首の舌を慎重に走らせて、探っている。 
 ぽっこりと膨らんだ黄金色の部位をちろちろと舐めとる。 
 だが、ここは僕の大事なところではない。 
 金色の部分をいくら舐められても平気だ。 
「おっかしーなあ。もっこりしてるから、ここだと思ったんだけど……」 
「もっこり言うな。……良い加減諦めたらどうだ?」 
「くっそー。絶対見つけてやるからな!」 
 僕の下腹から尻尾までは、全て金色だ。 
 いくら舐められても平気。 
 このまま諦めてくれると良いのだが……。 
 
「もっと下か?」 
 腹部から尻尾の根元まで、三枚の舌につうっと舐め下ろされる。 
「ん……!」 
 ソコに触れた時、体がわずかに緊張した。 
 サザンドラは、それを見逃さなかった。 
「ああー、なるほど。継ぎ目か」 
 サザンドラは目を輝かせ、無邪気に笑った。 
「くっ!」 
 下腹を覆う、ふっくらと丸い大きな金の鎧。その下にある尻尾の根元を覆う角ばった金の鎧。 
 その間に有る継ぎ目が、僕たちオノノクスの局部がある所。 
 金の鎧の隙間の奥に、生々しい肉の色。 
 横に裂けたスリットが有る。 
「オノノクスのココ、マンコみてえだな」 
「馬鹿にするな。僕は男だ」 
「怒るなって。じゃあ、男だっていう証拠、見せてもらうからな」 
 サザンドラは左右の頭で軽く噛んで、スリットを上下に引っ張る。 
 癒着していた肉が、にちゃっと音を立てて引き剥がされる。 
 デリケートな局部を守るため、そこは常に液が貯められている。 
 入口が空いたことで、ぽたりと透明な組織液が漏れた。 
「おいおい、なんだよ。元気ないなあ」 
 スリットの内部を覗いたサザンドラがはやしたてる。 
 僕のペニスは小さくなってスリットに収納されている。 
 きっとそれを見て言ったのだろう。 
「よしよし。俺が良くしてやるからな」 
 サザンドラは唇をスリットに近づけキスした。 
 ぐちゅりと音をたてながら、細く長い舌が、僕の中に分け入る。 
「う……ひっ!」 
 初めて味わう感覚。 
 自分で指を入れて慰めたことはあるが、舌が入ってくるのは初めてだ。 
 股間をを中からくすぐられるような奇妙な感覚。なめらかなサザンドラの舌の感触に体が震える。 
「オノノクスのおマンコ、びっちょびちょですげえエロいぞ」 
 サザンドラは口元をスリットからあふれる透明な体液で濡らしている。  
 サザンドラは未勃起のペニスを舌先でつんつんと遊びに誘うように突いた。 
「頼む。本当に……や、ひぃ!……やめてくれ……」 
 僕の制止が届くわけもない。 
 スリットはサザンドラの舌に犯され尽くされていく。 
 入口の淵をなぞるように舐めとられると、更なる刺激をねだるように腰を突きだしてしまう。 
 肉の割れ目を無理やり開かれ、中をべろべろ舐められる。 
 サザンドラの唾液とスリットの分泌液がすり合わさって、グチグチと卑猥な水音をたてる。 
 、 
 
 ヴァギナと交わるペニスのように、何回も舌が出し入れされる。 
 そして……スリットの中で縮こまっているペニスに舌を撫でつけていく。 
「うあ……はあ……うああ!」 
 サザンドラの舌技によって、僕の男根が徐々に育っていく。 
 舐められ、可愛がられ膨張を続けるペニスはスリットのスペースを圧迫していく。 
 興奮が高まる最中、サザンドラは舌を引きぬく。 
「一個だけだと物足りないだろ? 二個でやってやるよ」 
「二個?……なんの、ことだ?」 
 サザンドラはにやりと笑う。 
「こういうことだ!」 
 腕の先についた頭。左と右の両方から僕のスリットへ舌が伸びる。 
 生温かな液がたっぷりと溜まった体内を二枚の舌がかき混ぜる。 
 サザンドラにとって、左右の頭から出る舌は僕らにとっての指のようなもの。 
 その舌さばきは正確かつ巧みだ。 
 左の頭から伸びる舌は、スリットの内壁を押し広げるように力を加えながらベロンと舐めずる。 
 右の舌は、ペニスにぎゅうぎゅうに絡まり直接的な快楽を容赦なく叩きこんでいる。 
 ペニスとそれを包むスリット。その両方が性の喜びに湧き あがり、かっと熱くなる。 
 サザンドラの愛撫をねだるように、どんどん液が湧いていく。 
「うっはー。オノノクスのおマンコ、ぐっちょぐちょー」 
「違う! 僕は……僕は男だって何回も言ってるだろ!」 
「でも、今のオノノクス、女みたいだぞ? 割れ目からエッチい汁がどばどば出てて」 
「くっ……!」 
 サザンドラの言うとおりだった。 
 もはや、スリットの中に体液がおさまりきらない。 
 舌が出し入れされる隙に、ごぽりと零れる。 
 そのまま、サザンドラの舌を伝って落ち、草地を下品な汁で濡らしている。 
 割れ目をひくつかせ、サザンドラの手コキなのかクンニなのかわからない奇妙なテクニックに喜び、無色の液を漏らしまくる。 
 それはまさしく、膣を愛撫され喜ぶ雌のような姿。そう言われても仕方がない。 
「だが……それでも、僕は女なんかじゃない!」 
「へへっ、そうだよなぁ。オノノクスは立派な男だもんなあ」 
 サザンドラがいやらしく笑う。 
 嫌な予感がする。ものすごく嫌な予感がする。 
「サザンドラ……何を……」 
「男らしい姿にしてやるよ、オノノクス!」 
 二枚の舌が、スリットに隠れるペニスをはさむ。 
 内部で十分に勃ちあがった僕自身を、二枚の舌で引っ張りあげた。 
 液にまみれた淫らな男根がついに外へ。 
「うわああ!」 
 窮屈な体内から解放された赤黒い雄肉はぶるんと激しく揺れ、がまん汁をまき散らしながら飛び出す。 
 体温から引き離され、秋の涼しい大気を男根から感じた時、外に出してしまったのだと改めて実感する。 
「これで、誰から見ても男だってちゃんとわかるな!」 
 サザンドラは実に楽しそうに笑った。 
 確かに、 スリットから生える男の象徴を見れば誰でも雄だとすぐにわかるだろう。 
 ずんぐりと太った円錐状の肉茎。 
 表面にくっきりと血管を浮かべ、痛い位勃起している。  
「それにしても、太いなあ。オノノクスってみんなこんなにチンコ、ぶっといのか?」 
「うるさい! 見るな!」 
「それに、黒いしさあ。相当使い込んでるだろコレ。お前って意外と、経験豊富だったりするのか? 
真面目そうに見えて、実はヤリチンなんだな」 
「そんなわけないだろ! これは自分で……」  
 あ、しまった。口が滑った。 
「こんなに黒くなるまでオナニーしてたのか? オノノクスってむっつりスケベだな」 
「ぐぅ……もう、何とでも言え」 
 二回も進化を経験した体は十分に成熟している。 
 もちろん、性的な意味でも。 
 夜になると良く、誰かと交わりたい欲求がたかぶりペニスがぱんぱんに腫れる。 
 だが、ご主人が選んだ相手以外に手をだすなんて、僕には考えられないことだった。 
 高まった性欲をぶつける相手が居ないから、自分で処理していたのだ。 
 誰だってやってる事だ。 
 ここまで黒くなるのだって、僕がスケベだからではなくちゃんとした理由がある。 
 ドラゴン特有の精力のせいだ。 
 僕たちドラゴンタイプは基本的に高い能力を持っている。 
 困ったことに、それは、性においても同じなのだ。 
 一回や二回射精したところで、おさまりきらない。 
 自分で性欲処理する場合、何回も何回もシゴいて出さないといけない。 
 そのせいで、僕のはこんなに黒くなってしまった。 
 
「よし、俺がオナニーより気持ちよくしてやるよ」 
 いきなり、サザンドラが陰茎に顔を寄せる。 
 こんな近くから、性器を見られている。 
 恥ずかしさからか、はたまた興奮からなのか陰茎がピクリと揺れた。 
「へへへ……うまそうだなあ。待ってろ、今しゃぶってやるからな」 
 舌舐めずりしながらサザンドラは言った。 
 生温かい吐息がかかる。 
 嫌なはず。嫌なはずなのに、抵抗できない。 
 サザンドラの『しゃぶってやる』という言葉に暗い欲望と期待の気持ちを覚えてしまった。 
 仲間を性の捌け口として見てる自分に嫌気がさす。 
 だが、そんなことを考えている余裕はすぐになくなってしまう。 
「じゃあ……いただきまーす」 
 サザンドラは口を目いっぱい開いた。 
 口の中は唾液がたっぷりと滴っていた。 
 唾液の筋が上下に何本も走る。 
 ――駄目だ、あんなものにしゃぶられたら、僕は…… 
 残り少ない理性の警告。 
 それも無駄に終わる。 
 
 サザンドラは僕のを口にふくんだ。 
 先端を咥え、細長い舌でチロチロと舐めてくる。 
 柔らかくて、生温かく湿っぽい感触が男根に塗りこまれる。 
 雄に……サザンドラに……フェラチオされてる。 
 快感と背徳感がごちゃ混ぜになって、わけがわからない。 
「う……あ……あ。やめ……やめろよぉ」 
 僕の制止の言葉は、逆にサザンドラを煽ってしまったようだ。 
 より深く、口の中に男根をずぶずぶと沈めていく。 
 唇をくぽくぽと動かして竿を揉みほぐす。 
 柔らかく独特な感触は、じんじんとした熱となって性器にたまる。 
 唇だけでなく、舌も淫らな行為に手を出し始めた。 
 裏筋にそって、なめらかな舌がベロリと舐め上げる。 
 のどかな丘に似つかわしくないくちゃくちゃという卑猥な水音が響いた。 
 
「む……むぐ……ひもひいい?」 
 僕のを咥えたまま、サザンドラは話しかける。 
 言葉と同時に与えられる唇の動きにすら、性感を見出してしまう。 
 きっと、『気持ち良い?』と聞いているんだろう。 
 だが、僕は認めるわけにはいかなかった。 
 首をぶんぶん横に振る。 
 地面に何度も牙が突き刺さった。 
「……ひゃら、ほれはらほう?」 
 両腕についた頭が、ゆっくりと口淫に乱れる男根に近づいてくる。 
 サザンドラの意図が何となくわかってしまう。 
 やがてくるだろう、快楽に戦慄を覚える。 
 くちゃっと小さな音をたて、左右の頭が口を開いた。 
 唾液をぽたぽた落としながら、舌が伸びる。 
 左右の頭からも、湿った生温かい吐息を感じた。 
 口が一つでもこれ程、感じているのだ。 
 それが三つになったら……僕はどうなってしまうんだろう? 
 その答えはすぐに分かった。 
 二つの腕の先に付いた頭が、陰茎にかぶりつき舌で弄んだ。 
「う……あ……! うわああああああああ!!」 
 三つ首そうがかかりで行われる、とてつもなく濃厚な口淫。 
 僕は目に涙を貯めながら絶叫することしかできない。 
 上下にディープスロートする中央。 
 舌できつく根元を巻きつける右。 
 唇でしっかりと噛み、ごしごしと扱く左。 
 ぐびゅぐびゅと大きな水音を立てながら、僕の男根と三つの口がこすりあう。 
 がまん汁と唾液があられもなくはじけ飛び、丘を汚す。  
 三つの頭。三つの口。三つの舌。 
 その全てが僕を愛撫する。 
 もう、僕は限界だった。 
「サザンドラ! 離せ! 出る!」 
 足をばたつかせ、必死にかすれた声を出す。 
「あ……ああ! で、出ちまう。サザンドラの口に精液……でちゃ……!」 
 股間がかっと熱くなる。 
 肛門がきゅっと締まる。 
 体全体がこわばり、意識が股間の一点に集中する。 
 ぐつぐつと煮えたぎる雄液が、解放を求めて発射口に殺到し男根の先を膨らませる。 
 射精が始まる。 
「グォオオオオオ!」 
 ドラゴンの咆哮をあげながら、喉奥に精液をぶちこむ。  
 溜まっていた欲はとどまることを知らない。 
 口に受けきれない分が口の端からこぼれ、白いそれがのぞく。 
「ぐほっ!」 
 容赦なく注がれる精液の勢いに圧倒され、サザンドラは口を放した。 
 唇からでろっと白の液が垂れていた。 
 しっかりと包まれていた男根が解放され、精のむわっとした青臭さが丘に広がる。 
 噴出はまだ続いている。 
 びゅっびゅっとサザンドラの顔へと徹底的に精がかけられ、汚していく。 
「う……あ……止まらない……止まら……ない」 
 ドラゴンの精力は半端ではない。 
 一回の射精は三十秒以上続く。 
 断続的にびゅくびゅくと吹き上げる白い遡り。 
 サザンドラは逃げることもなく、受け止める。 
 深い青色をした顔、紅色の頭髪を雄汁が真っ白に染めていく。 
 口内射精だけでなく、顔射までさせてもらえた男根は喜び勇み力一杯射精した。 
  
 ……射精がやっと終わった。 
 荒く息をつきながら、白濁まみれになったサザンドラを見る。 
 途中で放したとはいえ、サザンドラは相当な量を口で受け止めてしまったはずだ。 
 早く吐き出させないと……。 
 射精後の脱力の中、ぼんやりと考えていると、サザンドラは目をつぶり、口を閉じた。 
 上を向き、息を止める。 
 黒い羽毛に包まれていたが、喉が動き、ごくりと嚥下したのがわかった。 
「あ……」 
 サザンドラに精液を飲まれてしまった。 
 心の中に脱力感と敗北感が広がる。 
  
「へへへ……お前のザーメン、どろどろ。喉に絡んで飲みずれえ。味も濃いしよお。相当溜まってたなこりゃ。ちゃんと抜いてるか?」 
 右腕を使って、顔に付いた白濁を舐めとりながらサザンドラはにやける。 
「あ……すまない。……本当に……」 
「何で謝るんだ? 俺の方からしたことじゃん」 
 口に出され、顔を汚されたというのにまったく嫌がるそぶりを見せない。 
 濃縮された精。強く粘り、どぎつい雄臭さを放っている。 
 味だって、きっとひどい。それでも、サザンドラは平然と舐めとり、飲みこんだ。 
 何だか妙な気分だ。まるで、自分が全部受け入れられたような……そんな気がした。 
  
「でも、お前ばっか気持ち良くなって、なんか不公平だな」 
「……無理やりしゃぶっておいて、不公平もなにもないだろう……」 
「ま、そうなんだけどさ。うーん……そうだ!」 
 サザンドラの眼が怪しく輝く。 
 ろくでもないことを思いついたんだろう。   
「お前もシテてみろよ」 
「どういう……意味だ?」 
「お前の方から攻めてこいって意味だよ。マグロ相手にしててもつまんねえし。俺も気持ち良くなりたいしな」 
 サザンドラのろくでもない提案。 
 サザンドラの方から襲ってきたくせに、奉仕まで求めるのか。 
 いくらなんでも都合が良すぎる。 
  
「誰がそんなことするか、馬鹿者め」 
「あ、またバカって言ったなコノヤロウ! だけど、そんなこと言ってられるのも今のうちだぜ」 
「勝手に言ってろ」 
 サザンドラが脅すが、僕はひるまない。 
 サザンドラが何を言っても、何をしても、僕の方からあいつに奉仕するなんてありえない。 
 もう付き合ってられない。 
 僕は無視することにした。 
    
「自信ないのか? そうだよな、オノノクスは真面目だからそう言うの下手っぽいし」 
 サザンドラが僕を侮辱してくる。 
 僕はそれを右から左へ受け流す。 
 サザンドラの下らない悪口に腹を立てたら僕の程度が下がる。 
 これは、僕がサザンドラやご主人と暮らす為に作りだした一種のスキルだ。 
 いちいち、つまらないことで腹を立てていたらやっていけない。 
 今回もそうだ。 
 いつも通りに、受け流せば良い……いつも通りに。 
 
「やられっぱなしで悔しくないのかよ? お前、性格臆病だったっけ?」 
「そんなわけないだろう!」 
 反射的に言い返してしまう。 
 心の中に、ちりちりと怒りの炎が少しずつ燃え広がっていくのがわかる。 
 ……おかしい。 
 こんな安い挑発に僕が乗るなんて……。 
 ん? 挑発? 
「まさか……!」 
「お、気付いたか。できればメロメロの方が良かったんだけど、そんな技覚えてねえし」 
 メロメロは同性に効かないなんて、講釈を垂れている余裕はなかった。 
「やっぱり……挑発なんだな!」 
「お、正解。さすが優等生のオノノクス君」 
「クソッ! ご主人に教わった技を、こんな下らないことに使うな!」 
「あー、はいはい。わかりましたよっと」 
 挑発とは、バトルで使える技だ。 
 相手の気持ちを奮い立たせ、闘争本能で満たす技術。 
 落ち着いていればやり過ごせる悪口とはわけが違う。 
 相手の気持ちを操る挑発という技は、マインドコントロールに近い。 
 僕はサザンドラの挑発を受けて、頭に血が上っている。 
 駄目だ。なんとか落ち着かないと……。 
 深呼吸して心を静めようとするが、全然効果がない。 
 挑発という技は、それほど強力なのだ。 
 倒れている僕にサザンドラが近づく。 
 息がかかる位、近くで、サザンドラは言った。 
「悔しかったら、俺を滅茶苦茶にしてみせろよ。このドーテーヤロウが」 
「……!!」 
 頭に血が上りカッとなってしまった。 
 気付くと、がばりと起き上がり、サザンドラに飛びかかていた。 
 僕のいきなりの行動に驚き、サザンドラは体勢を崩し、尻もちをついた。 
「お、どうした。少しはやる気になったか? インポヤロウ」 
 小さな足を投げ出し、ぺたんを座り込むサザンドラの肩を強くつかむ。 
 僕の眼は血走ってるだろう。 
 サザンドラの言葉、その一つ一つがむかついてしょうがない。 
 駄目だ。もう、怒りがおさえられない。 
「サザンドラ……。君は言い過ぎた」 
「だったらどうするんだ?」 
「それは……」 
 言いながら、サザンドラの体に目を向ける。 
 標的はサザンドラの足の間。 
 青くて丸い胴体の下方に、それはある。 
 縦に走る筋。固く閉じた肉の割れ目。 
 その裂け目は長く、中に収納してる物の大きさを暗に示している。 
 もう一つ、目についたものがスリットの下方にある。 
 左右にぷっくりと盛りあがった部位。 
 体内に収納してる睾丸が青い皮膚を盛り上げているのだ。 
 種は違うとはいえ、同じドラゴンの雄。 
 大体の体の構造はわかる。これなら問題はない。 
「……こうする」 
 真っ赤な爪で、サザンドラのスリットをずぶりと突いた。 
「が……! ヘヘ、やっと来たか」 
「……後悔させてやるよ、サザンドラ」 
「できるもんなら、やってみろ、コノヤロウ」 
 性器を直接責められているにもかかわらず、サザンドラは軽口をたたく。 
 余裕があるということなのか。 
 ……気に入らない。 
 僕は指をさらに深く潜り込ませた。 
 肉と汁が指に絡まる。 
「ギャ……!」 
「君の中は、ずいぶん湿ってるんだな。フェラしながら感じていたのか? 変態め」 
「へへ、悪かったな……女みたいに喘ぎまくってるお前を見たら興奮しちまったんだよ」 
「……黙れ」 
 ぐるりと一周、スリット中をかき回す。 
 肉と体液が混ざりあい、ぐちゅりと水音をたてた。 
「ぐっ……!」 
 サザンドラの体がこわばり、息が荒くなる。 
 僕もこんな風に感じていたのだろうか。 
 サザンドラに犯されている間、しつこく『女みたい』と言われたことが記憶に蘇ってくる。 
 一方的にやられる屈辱。 
 その報復をするように、攻めを強める。 
 赤い爪で何度も何度も割れ目を突き刺す。 
 はじめは焦らすように、ゆっくりと。 
 徐々に動きを速め大胆にしていく。 
「オ、オノノクス……!」 
「きゅうきゅう締めつけてくるな。感じているのか?」 
「いや、まだ足りねえな。もっと俺を楽しませろ」 
「生意気な奴め」 
 指を二本に増やし、サザンドラの中を更に広げる。 
 粘液が満ちるソコを、ぐぽぐぽ音をたてながら弄ぶ。 
 スリットだけではない。余った左手は、双玉に伸びる。 
 薄い皮膚の下に隠れる金玉を優しく撫でてやる。 
 荒々しくかき乱されるスリットと、優しく愛撫される睾丸。 
 異なる二つの刺激でサザンドラを追い詰める。 
 効果はあったようで、サザンドラは体をぷるぷる震わせて、快楽に耐えているようだ。 
 
「オノノクス、もっとちゃんと……シテくれよ」 
「……なんのことだ?」 
 僕はとぼける。 
 スリットの中のサザンドラ自身はまだ、いじっていない。 
「なんだよぉ……焦らすなって。早くチンコ触ってくれよぉ」 
 目を潤ませて、おねだりしてくる。 
 強面のサザンドラが、こんなことをする様子は少しおかしくもある。 
「しょうがないな」 
 肉の裂け目の奥に息づくサザンドラの雄。 
 僕を求めて、うごめくそれをつまんでぐにぐにと揉みしだく。 
 僕が愛撫するたびに、ペニスがぐんぐん大きくなっていく。  
「う……あ、あ……もっと……もっとぉ……」 
「ふん。君は本当に淫乱だな」 
「そんなのどうでも良いだろ……もっとシてくれよぉ」 
「まったく、しょうがないな……」  
 僕はため息をつく。 
「ほら、早く出て来い」 
 サザンドラのペニスをごしごしと扱きあげる。 
 単純だが、速い動き。 
 直接的な刺激を受けて、陰茎の成長速度があがる。 
 スリット内でぱんぱんに膨れ上がる。 
 そして……ついに。 
「あ、あ……はあ!」 
 サザンドラの男根がずるりと這い出てきた。 
 腺液が滴る長大な逸物。 
 青い体色の中で自分の存在を誇示するように、桃色の雄肉が勃つ。 
「長いな……」 
 太さは僕に劣るが、長さはサザンドラの方が上。 
 細い血管がびっしりと浮く、高やかなペニスはびくびくと揺れていた。 
 その様は見る者を圧倒するが、色は妙に子供っぽい。 
 穢れを知らない、無垢なピンク。 
 どす黒い僕のとは対照的だ。 
 
「オノノクス、早く……」 
「急かすな」 
 露出した陰茎を握り、上下に扱く。 
「うぅ……オノノクスの手、すごく気持ち良い……」 
「そんなに手が良いのか?」 
「いつも自分でしゃぶってるからな……。手の固くてしっかりした感じは新鮮なんだ」 
 サザンドラには手がないからか。 
 僕がサザンドラの左右の頭に乱されたのと同じ。 
 自分が持っていない器官に愛撫される感触は、慣れていないせいで非常に強く体を揺さぶる。 
 それにしても、セルフフェラでオナニーしてるとは……。少し、うらやましい。 
 サザンドラのペニスが綺麗なピンクなのも、固い手ではなく柔らかい舌でしか触ってないからかもしれない。 
 手淫を施すたび、サザンドラは、鼻を鳴らし、気持ち良さそうに目を細める。 
 それが嬉しくて、力を強める。 
 日頃の鍛錬で培われた、確かな握力でぬめる長物をしっかりと握り、激しく上下させる。 
「い……いいぞぉ、オノノクス……うぉ、おぅ……」 
 野太い喘ぎ声を出しながら、サザンドラがよがる。 
 世間で恐れられる、悪竜の面影はもうない。 
 僕に性器をいじられ、淫らに快楽を享受するサザンドラ。 
 ……その姿に僕は情欲をあおられてしまった。 
 すっかり回復した僕の逸物はよだれをたらしながら屹立する。 
「ヘヘ……オノノクスも興奮しちまったか?」 
 大きくなった僕のを見てサザンドラがからかう。 
 ……そうだ、僕はよがるサザンドラを見て、はっきりと欲情してしまったのだ。 
 快を得てるサザンドラに、嫉妬している。 
  
「……オノノクス?」 
「僕も気持ち良くなりたい」 
 僕はサザンドラの腰に乗っかった。 
 互いの腰部がくっつき、二つの男根が触れあう。 
「なにするんだ?」 
「すぐにわかる」 
 二本の陰茎を両手で束ね、がっちりと兜合わせを組む。 
 サザンドラの雄の持つ熱さを、股間で感じる。 
 淫らな液でてかる二本の竿を一緒にしごきあげる。 
 お互いの裏筋がこすれ合う感触に、ゾクリと背筋が震えた。 
「う……ああ……お前、エロすぎ……!」 
「ふ……は……エロい……のは……お互い様だろ」 
 ねっとりと絡み合う、二つの雄。 
 がまん汁を混ぜながら、こすれあい高まっていく。 
 僕もサザンドラも、腰を擦り寄せペニスにより強く圧をかけていく。 
「も……もう、我慢できねえ!」 
 サザンドラが出すのかと思ったが、そうではなかった。 
 左右の頭が、押し付け合う男根にむしゃぶりついてきた。 
「くぅ! サ、サザンドラ……?」 
「はあ……はあ……一緒にやろうぜ」 
 しこしこと扱く手淫に、ぬめっとした口淫が加わる。 
 激しく擦られ、強く振動する二本の竿に、サザンドラの口の舌が滅茶苦茶に絡み合う。 
 僕の両手とサザンドラの双頭。 
 それらが協力して繰り広げる兜合わせは途方もなく濃密だ。 
 僕の手が擦るシュッシュッという乾いた音。 
 サザンドラの両側の頭が舐めるグジュグジュという湿った音。 
 その二つが混じり合い、とてつもなく下品で淫らな旋律を奏でた。 
「やべえ……まじ、気持ち良すぎだぜ。お前もだろ?」 
「あ……ああ。すごく……気持ち良い……」 
「そうだろぉ……なあ、最後までいっちゃおうぜぇ?」 
 擦られ、舐められ、押し合う二本の雄。 
 まるで、愛し合うかのように、先端がキスをする。 
 二匹の先走りが、糸を引き二つの男根をつないだが、激しい手淫によってすぐに切れる。  
 激しく揺れながら、透明な液をまき散らす僕たちのモノ。 
 どうやら、限界が近いようだ。 
 下腹の奥にずきずきと感じる、発射の予感。 
 それに向けて、ラストスパートとばかりに上下に強く、そして速くしごいた。 
「は、は、は、は、……オノ……ノクス!」 
 短く荒い呼吸。尻尾を何度も地面に激しく叩きつけ、六枚の羽根をばさつかせる。 
 サザンドラも絶頂が近い。 
 二つの頭は先端にかぶりつき、鈴口を舐めとり吸い上げにかかった。 
 発射を促す、その動きに喜び、僕とサザンドラのが最後の膨張をした。 
「サザンドラぁ! 出る! 出るううう!」 
「……お、俺も、だ……一緒に……イこうぜ!」 
 ぎちぎちに握りこまれた二本の竿。とどめとばかりにその先端をべろりと舐めた時…… 
 ついに僕たちは達した。 
「グオオッ……!」 
 咆哮する二匹の雄竜。 
 二つの巨根は、雄臭い精を一緒に吹き上げる。 
 勢いはすさまじく、僕たちの頭上を越える程。 
 二匹分の雄の欲望は、真っ白な雨となって僕たちを汚した。 
 全身、種まみれになった僕たちは、なおも欲を放つ肉棒をぼんやりと見つめていた。  
 
 
「やー、すごく良かったなあ。上手だったぞ、オノノクス」 
「褒められても嬉しくないな」 
「でも、お前ノリノリだったじゃん」 
「それは挑発のせい……」 
「でも、途中から効果切れただろ。結構時間たってるし」 
「あ……」 
 言われて気付いた。 
 挑発の効果はもって五分。さっきの行為はそれ以上の時間がかかっている。 
 僕の怒りは、途中から性欲にすりかわっていた。 
「つまり僕は、自分の意思で君と、雄と……」 
「ヤっちゃったわけだな」 
 サザンドラはにこりと笑った。 
「ぐふっ……!」 
 頭を抱えてうずくまる。 
 僕はなんということをしてしまったのだ。 
 後悔と自己嫌悪が胸の中に満ち、嫌な熱を持って僕を責める。 
 雄同士で、性的なことをしてしまった。 
 ご主人に会わせる顔がない。どうしよう。 
 待て待て、まだこのことはご主人が知らない事だ。 
 どこか、川か湖かないだろうか? 
 そこで、この体を綺麗にしてしまえば…… 
 
「なあなあ」 
 地面を睨みつけて唸る僕に、サザンドラが話しかける。 
「うるさいな。君に構ってる暇は……」 
「次、しようぜ」 
「は? 次? ……うわ!」 
 突き飛ばされて、草地に背中を打ちつける。 
 起き上がる隙すら与えてもらえなかった。 
 サザンドラは僕の体の上に跨り、組み伏せる。 
 間違いない。サザンドラは”次”をするつもりだ。 
「な、なあ……次っていうのは……」 
「決まってんじゃん! 挿入だよ!」 
「なっ……!」 
 一瞬言葉を失う。 
 いけない。それだけはいけない。 
 それをするともう、引き返せない気がする。 
  
 
「あれ、わかんないか? お前のスリットに、俺のチンコを入れるんだよ。ケツの穴の方が良いか?」 
「嫌に決まってるだろ!」 
「あはは、そうだよな。痛そうだし、ウンコ出る所だし」 
「そういう意味ではない! 雄同士でこんなことをするのはだな、自然の……」 
 サザンドラを諭そうとしたが、すぐに言葉をさえぎられる。 
「うるせえ! 前も言ったけど、本気で嫌だったらキバで俺を斬れよ」 
「そんなことできるわけないだろ! 仲間同士で傷つけあったら、ご主人が……」 
「……また、仲間かよ」 
 サザンドラが寂しそうな表情を浮かべた。 
「サザンドラ?」 
「もう、嫌なんだよ……仲間ってだけじゃ……」 
 仲間という言葉がまずかったらしい。 
 考えてみれば、当然のことかもしれない。 
 自分は好意を持っているのに、相手からは仲間としか見られていない。 
 お互いに、相手が大事なことは変わらない。 
 だが、感情が微妙にすれ違っている。 
 サザンドラにとって、これは嫌い合うより苦しい関係だろう。 
 僕が何とかしないと。 
 だが、僕に何ができる?  
 何も言えず、固まる僕らの間を、凛とした冷たさを含んだ秋風が通り抜けて行った。 
 重苦しい沈黙。 
 それを破ったのはサザンドラだった。 
「……もう仲間じゃいられなくしてやる」 
 僕の足の間に、サザンドラは胴体を割り込ませてきた。 
 サザンドラの太いお腹をはさみこむように、僕の足が開く。 
 僕のスリットは無防備にサザンドラにあばかれる。 
 サザンドラは下半身を少し浮かせ、ソコに狙いをつける。 
 腺液で湿った肉の割れ目を、サザンドラの雄槍が今にも貫かんとしていた。 
「うわ! やめろ! やめるんだサザンドラ!」 
 手足をばたつかせ抵抗する。 
 力は僕の方が強いが、この体勢ではサザンドラの体重を押し返せない。 
 頭は動かせるので、キバは使える。 
 だが、鉄骨すら斬り裂く威力のキバをサザンドラに使うと鮮血の結末になってしまう。 
 駄目だ。ろくな抵抗ができない。八方ふさがりの四面楚歌だ。 
 もう、サザンドラの先っぽが、僕のスリットの入口に触れる。 
 怯えるように萎える僕の陰茎を押しのけ、サザンドラのサザンドラの熱く滾るペニスがにじり寄る。 
 僕のペニスのすぐ下。スリットのわずかな隙間をいまにも犯さんと、サザンドラのがいきりたつ。 
「サザンドラ……頼む……頼む、やめてくれ……」 
 雄に犯される恐怖に震え上がり、涙目で懇願する。 
 こうなっては、意地だのプライドだの考えてる余裕はなかった。 
「オノノクス……」 
 サザンドラが、申し訳なさそうなしゅんとした表情を一瞬浮かべる。 
 良かった。これでやめてくれる。 
 安堵のため息をつく。だが…… 
「ごめん、オノノクス。でも、やめられねえ」 
「え? うあっ……!」 
 返答はできなかった。 
 サザンドラがついに僕を犯したのだ。 
 僕のペニスを押しのけ、サザンドラの長物がにちゃにちゃと音をたてて中に入っていく。 
 前の穴で繋がっているから、正常位で交わる雄と雌と大して変わらない体勢だ。 
 雌の役をやっているのは雄である僕。 
 二つの巨体に挟まれ揺れる肉棒がこれが男同士の性行為であることを雄弁に語る。 
 
 以前受けたフェラや兜合わせの興奮によって、スリットの中には透明な粘液であふれ返っている。 
 サザンドラの男根も我慢汁で濡れているため、結合部は汁気をたっぷりと帯び挿入を強力に手助けした。 
 サザンドラの挿入に合わせ、腺液がごぽりと零れる。 
 深く、より深く男根が突き刺さっていく。 
 根元にいくほど太さを増していくが、淫らな肉の割れ目は貪欲に呑みこんでいく。 
 猛烈な異物感。指や舌とは桁はずれな、質量がもたらす圧迫感に体の芯を揺さぶられた。 
 
「う……ふっ……や、やっと一つに……」 
 サザンドラは挿入の快楽に鼻息を荒くして興奮している。 
 あんなに長かったサザンドラの逸物は僕のスリットに根元まで受け入れられ、二匹の下腹がぴったりとくっつく。 
 股間の穴で確かに感じるサザンドラの熱い雄。その重厚な圧力に反応して、じりじりと焼けつくような疼きが僕の腰部を襲う。 
  
「うぅ……サザンドラ……抜いて……くれ……頼む」 
「嫌だ……やめたくない……ずっと、こうしたかったんだ」 
「サザンドラ……?」 
「動くぞ」 
 サザンドラが腰を振り始めた。 
 スリットの中を何度も刺し貫き、体液を混ぜる。 
 スリットを襲うその雄々しい刺激に僕はひたすら乱される。 
 スリットから来るそれは、陰茎をいじるよりも間接的だが深い性感だ。 
 陰茎の根底からぞわぞわと、くすぐったさがこみあげてくる。 
「うあ……! う、ああ……!」 
 サザンドラに突かれる度に、僕は雌みたいに喘いだ。 
 そんな僕の痴態に気を良くしたのか、サザンドラの攻めが強まる。 
 僕の尻尾にサザンドラの尻尾が絡みついていく。お互いの密着感を強める為だろうか。 
 黄金色の甲殻に覆われた太い尾に、先っぽに黒い羽毛をつけた暗い青の尻尾が螺旋を描いて巻きついた。 
 尻尾だけではなかった。 
 サザンドラの大きくて丸い太鼓腹。 
 十分すぎる食事と、ご主人の適切なトレーニングによってふくよかな脂肪とたくましい筋肉が同居していた。 
 程良い弾力を持った、ムチムチしたお腹が僕の陰茎を押しつぶす。 
 サザンドラが僕を犯す度に、極上の肉感を持ったお腹によって陰茎が擦りおろされる。 
 直接的で分かりやすい刺激に僕は素直に悦び、ヨガった。 
「う、ひぃ! ひああああ!」 
「ふ……はっ、仲間に……んく……犯される……気分はどうだ?オノノクス。」 
 答えの代わりに僕はサザンドラにしがみついた。ふさふさの紺の体毛の優しい感触に不思議と安心感を覚える。 
 サザンドラの地肌はつるつる、ぷにぷにしているのに、胸部から上はふっさりとした毛並みに覆われている。 
 六枚の羽根も、軽く柔らかな羽毛を纏っており、背中に手を回すと、圧倒的な物量で僕に気持ちよさを与えてくれる。 
 まるで大きなぬいぐるみを抱きしめているかのような気持ちよさだ。 
「へへ……まんざらでもねえみたいだな」 
 挿入の快楽に耐える為、固く引きしまっていたサザンドラ表情が少しだけ崩れ、小さな笑みを浮かべる。 
「違う……違う……! うああ!」 
 否定の言葉は喘ぎにすぐに沈む。 
「まあ、雄同士でこんなことしてたら、もう仲間なんかじゃねえけどな!」 
 仲間じゃない。その言葉とは裏腹にサザンドラの行為は親密さと愛情を確かめるようなモノに変じる。 
 必死にしがみつく僕にこたえるように、サザンドラは身を擦り寄せ、二本の腕で抱きしめた。 
 その間、スリットを淫らに犯す、腰の動きは止むことはない。 
 ぎゅっと抱き合い、正常位で交わるその様はまるで仲の良い番いのようだった。 
 
「嬉しいぜえ……真面目なお前が雄同士の交尾で良くなる変態になってくれてよお」 
「あ……ちが……僕は……変態なんかじゃ……ああ!」 
「へへ……口より体の方が正直っていうのはこういう時に言うんだろうなあ」 
 サザンドラが体重をかけた重厚な一撃をスリットに与えた。 
「う……ひぃ!」 
 口から甘い絶叫が飛び出す。まぎれもない快楽の証であった。 
 僕は、サザンドラの雄に犯されている変態。 
 その事実は体の奥から絶えず襲い来る、狂おしい程の熱情が証明していた。 
 僕は……もう戻れない。 
 戻れないなら、いっそのこのまま……。 
「サ、サザンドラぁ……」 
「なんだ? まだ認めないとか言うじゃないだろうな?」 
 そんなつもりはない。そのことを示してやるのだ。 
 僕はサザンドラの中央の頭を抱きよせ、そっと告げた。 
「もっと、してよぉ……」 
 自分でもびっくりする位甘い声だった。 
 でも後悔はない。 
 もう戻れないなら、行ける所まで行ってしまおう。 
 それが僕の選択だった。 
 
「オノノクス!? ……お前?」 
 サザンドラは口をぽっかりあけて驚く。 
 だが、凶悪な笑みが戻るのにさほど時間はかからなかった。 
「良いぜえ……望み通りにしてやるよ!」 
 淫らな挿入は、この上もなく速く、強く、そして重くなった。 
 鍛えられたドラゴンの巨体が激しくぶつかり合い、ズシンズシンという大きな重低音を丘に響かせる。 
 あつくたぎるお互いの雄がスリット内で、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音をたてながら絡み合う。 
 雄竜同士の貪るような交尾に僕は歓喜した。 
「うああ! サザンドラ! サザンドラァ!」 
 わけのわからいまま、彼の名を叫ぶ。 
 果てない性感に思考はかき消され、わけのわからないまま喘ぎ散らした。 
 
「はっ……はっ……オノノクス……!」 
 激しさを増した交わりは、サザンドラにもかなりの快楽を与えたようだ。 
 息を切らしながら、必死に僕の上で腰を振っている。 
 真っ赤な眼を細め、鋭い牙が生えた口元は固く引き結んだ、しかめっ面。 
 放出を我慢しているのが丸わかりだ。 
 
 ―可愛い。 
 僕の心にそんな言葉が浮かんだ。 
 それは僕の素直な感情だった。 
 ずっと可愛いと思っていた。 
 サザンドラの丸いお腹も、短い足も、ふさふさな毛並みも、ちょっとおバカな所も、わがままな性格も。 
 獰猛な悪竜にこんな気持ちを抱く僕。それをもう否定はしない。 
 
「あ……はあ……! 僕、もう……!」 
 犯されたスリットの熱、太鼓腹に押しつぶされる陰茎、そしてサザンドラへの気持ち。 
 身も心も満たす気持ちよさは僕を雄として感じる最高の瞬間へせり上げる。 
 丸いお腹の下で、陰茎の中に熱い欲がぱんぱんに溜まり、精一杯太くなる。 
 解放を求めて痙攣するソレは先走りでぐちゃぐちゃだ。 
 高まる発射の予感。お尻とペニスの間の会陰がずきずきと疼く。 
 僕はサザンドラの胸毛にきゅっと捕まり、淫らに犯されながらその時を期待して待つ。 
 息が止まり、体が固まる。 
 そして、その時が来た。 
「う……う……うわああああああん!」 
 僕は泣き叫びながら、大量の射精をした。 
 青臭い白濁が僕とサザンドラのお腹を汚す。 
 その間も、サザンドラはスリットを犯し続けた。 
 サザンドラの剛直が僕を突き刺すたび、小刻みにびゅくびゅくと放出を続ける。 
 
「お、俺も……!」 
 少し遅れたが、サザンドラも、もう限界のようだ。 
「オノノクス……中に出すぞ!」 
「……ああ、かまわない」 
 絶頂の余韻に痺れる体。 
 その最後の力を使って、僕は股間に力を込める。 
 竜の筋力によって、スリットがぎゅっと締まる。 
「ぐう!」 
 サザンドラの目が大きく見開かれる。 
 僕はサザンドラの頭を優しく撫でる。 
「出せ、サザンドラ……。もう我慢しなくて良い」 
 この上ない力で、僕の内部を狭め、サザンドラの雄を圧搾した。 
「グォオオオオオオオオオン!」 
 サザンドラは野生的な雄叫びをあげながら達した。 
 僕のスリットを白い精が恐ろしい勢いで注ぎこまれる。 
「熱い……熱い……な」 
 雄の欲の持つ熱に、犯され僕は恍惚とする。   
 目をきつくつむり、震えながら射精する愛しい雄の頭を、僕はいたわる様に優しく撫で続けた。 
  
「はあ……はあ……どうだ、これでもうお前は俺のモンだ」 
 中出しの快楽の余韻に息を荒くしながらサザンドラは言った。 
 相手の中に精を放てば、その相手は自分の所有物。 
 実に奇妙な理屈だ。僕は少し呆れてしまう。 
 
「……そうか。まあ、そういうことで良いよ」 
 でも、今はその理屈に乗るとしよう。 
「なんだ、その言い方は?」 
 サザンドラが首をかしげる。 
「君のようなワガママな暴れん坊に付き合える雌ポケモンなんて居るわけないからな」 
「なんだと!」 
 サザンドラはキバをむき出しにして怒る。 
 怒りを露わにした悪竜。普通のポケモンなら怯えて当然。 
 だが、僕はもう慣れているから平気だ。 
 僕は怯むことなく、あくまで平然と僕の気持ちを述べる。 
「だから……僕は……ずっと君のそばに居てやろうと思うんだ」 
「え? それって……」 
「僕はサザンドラの気持ちを受け入れよう。これからよろしくな」 
 サザンドラはぽかんとした表情のまま固まる。 
 暗さを増した空に吹く風が火照った体を冷やす。 
 動かない。時が固まったみたいに動かない。 
 さすがに心配になって声をかけようとしたその時…… 
 
「うおおおお! ありがとう、オノノクス! ありがとう!」 
 サザンドラが寝転がる僕に抱きつく。 
 そのまま頬ずりでもしそうな勢いだ。 
 ん……頬ずり?  
「うわ! 抱きつくなサザンドラ! 離れろ!」 
「え、なんで?」 
「ケガするだろ! 僕のキバをちゃんと見てから行動しろ!」 
「あ、忘れてた」 
「忘れるなよ……」 
 やっぱりサザンドラはアホの仔だ。 
 僕がついてやらないといけないと改めて思ってしまう。 
 気が付くと日が傾き、空はオレンジ色。 
 気温は下がっていたが、不思議と僕の心は温かかった。 
  
「おい、サザンドラ」 
「ん、どうした?」 
「その……そろそろ抜いてくれないか?」 
「ああ、悪い悪い。すぐやるよ」 
 体内から、サザンドラの男根がずるりと引きぬかれる。 
「う……」 
 股間の穴からひり出されるその感触に顔をしかめ耐える。 
 栓をしていたものがなくなり、スリットからサザンドラの精がごぽりと零れる。 
 抜かれた肉棒には白い精でまみれていた。その硬さと大きさに陰りは見えない。 
 体内を満たしていた圧迫感が無くなったことに、僕は解放感よりも寂しさを感じていた。 
  
「よーし、じゃ、次やろうぜ!」 
 僕を抱き起こしながらサザンドラは言った。 
「え? まだ……やるのか?」 
「当たり前だろ? お前のもまだ大きいままじゃん」 
 サザンドラは、ぺちぺちと僕のペニスを右腕で叩いた。 
 彼の言うとおり、僕のも勃起したままで、まだ満足していない様子だ。 
 上体を起こした僕の背後にサザンドラは腰を下ろす。 
「じゃ、上に乗って」 
「えっと……これは、どういう」 
「背面座位だよ。言わせんなよ恥ずかしい」 
 言葉とは裏腹に、サザンドラからは全く恥じらいを感じない。 
 まあ、そんなサザンドラの求めに応じてしまう僕も恥知らずなのかもしれないが…… 
 
 柔らかい草地の上に短くて太い足を投げ出し座るサザンドラ。 
 彼に背中を向けたまま、股ぐらに乗る。 
 下には硬く勃つサザンドラの肉棒。 
 僕のスリットを貫くように、位置を調整しながら腰をゆっくり下ろす。 
「いいぞ、オノノクス。そのまま俺のを入れて……」 
「ん……!」 
 サザンドラのを掴み、入口にあてがう。 
 そのまま、腰を下げ肉棒を咥えこんでいく。 
 まるで、自分から犯されるのを望んでいるようで少し恥ずかしい。 
 だがその羞恥も、好きな相手と繋がる喜びに霧散する。 
 
「お、全部入ったな」 
「う……はあ……はあ」 
 サザンドラの言葉に反応する余裕はもうない。 
「じゃ、今度は俺が頑張る番だな」 
 後ろから両腕が回ってくる。 
 僕の黒色の胸板を、双頭が舐める。 
 ご主人の厳しいトレーニングのおかげで、大胸筋ははちきれんばかりに張っている。 
「へへ……硬い。よく鍛えてあんなあ」 
 サザンドラは嬉しそうに、そして好色そうに笑う。 
 僕がサザンドラのお腹に抱くような感情を、サザンドラも感じているのだろう。 
 自分の体にサザンドラが欲情している。その事実が単純に嬉しかった。 
 
 サザンドラの腰がゆっくりと持ちあがる。 
「うっ……くぁあ!」 
 スリットに再び訪れた熱に僕は悦びの声をあげる。 
 僕の中に残っていた精液のぬめりを利用して、スムーズに挿入が行われる。 
 徐々に速くなっていく腰の動き。 
 甘い痺れに僕は悶えた。 
「ふ……はあ……もっと良くしてやるよ」 
 左右の頭が不穏な動きをし始める。 
 左の頭は下から揺さぶられ、頼りなく揺れる僕のペニスに迫る。 
 そのまま、僕のをじゅぶじゅぶと音をたててしゃぶりあげた。 
  
 一方、右の頭はスリットへ。 
 二匹の結合部をべろべろと舐めまくる。 
 その間も、僕を貫く肉棒の動きは止まっていない。 
 ペニスが深く突き刺さるスリットのわずかな隙間になめらかな舌がねじりこまれる。 
 唾液と我慢汁が肉棒と舌で掻き混ざりちゅぐちゅと湿った音が響いた。 
「うあああ! ダメ、ダメ! ダメだよサザンドラぁああああ!」 
 熱く滾る硬い陰茎と柔らかくなめらかな舌、濃厚なフェラチオ。 
 舐められ、しゃぶられ、突かれて徹底的に犯されてしまう。 
 様々な性感を同時に叩きこまれた僕は、よだれを垂らし無様に泣き叫んだ。 
 そんな僕の様子に興奮したのか、淫らな腰の律動も激しさを増す。 
 暴れる僕の体を後ろからしっかりと抱きとめ、首筋に噛みつきながら腰を強く上下させる。 
 噛みつかれる鋭い痛みも、狂おしい程のこの快楽から僕を覚ましてはくれなかった。 
 しっかりと僕のスリットを犯していく雄竜の荒い吐息が首筋にかかる。 
 僕の中でまた、サザンドラが大きくなる。 
 凶悪な双頭の愛撫を受け続けた僕のペニスも、今にも破裂しそうなほど膨らんでいた。 
「くっ!……お前ん中、すげえ気持ち良いぜ……。トロットロでよお」 
「う……うあ……あっ……あっ!」 
「どうした? 答える余裕もねえのか?」 
 返事の代わりに出だのは、あられもない嬌声だった。 
 言葉にならないその叫びは、僕の心情を雄弁に語っていた。 
「そうかそうか……ならそろそろ、イカせてやろうかな!」 
 サザンドラが僕の体を少し持ち上げた後、自らの肉棒めがけて落とした。 
 僕の体重が乗った、強力な挿入の衝撃。それがとどめだった。 
「んうぅううううう!」 
 僕のをしゃぶる、サザンドラの左の口の中へ精を放つ。 
 強烈な肺活量で吸い上げる淫らな口は、じゅるじゅると飲まれていく。 
 ぐったりする僕の体を名残惜しそうにしばらく揺すった後、サザンドラも達した。 
 サザンドラの体がぶるりと震え、白いねばねばが再び注がれる。 
「うう……また中に……」 
 スリットの中に放たれた二度目の液を、僕はぼんやりと受け止める。 
 たくさん中出しされたせいで、下腹が少し張っている。 
 
「ふぅ……良かったぜえオノノクス。やっぱお前って最高だ」 
 ペニスを引き抜きながら、満足感を吐露するサザンドラ。 
 乱れた呼吸を整えながら、朗らかに笑う。 
 想いの通じた相手に、精を受け取ってもらう。 
 それは雄の根源につながる喜びなのだろう。 
 何故だろう。 
 サザンドラが満足してくれて嬉しいはずなのに、苛々している自分が居る。 
「……不公平だ」 
 気が付くとそんな言葉を呟いていた。 
「あ? お前、あんま気持ち良くなかったのか? あんなにアンアン言ってたのに?」 
 サザンドラは首をかしげる。  
「そういう意味じゃない。確かに僕も……その……気持ち良かったのは事実だ」 
 サザンドラに抱かれる快楽はすさまじいものだった。 
 その面では不満はない。でも、心の中がもやもやするのだ。  
 
「なら全然問題ねえじゃねーか」 
「問題は有る。僕だって雄なんだぞ?」 
 サザンドラは、何かに気付いたようで、はっとした表情になる。 
    
「ああ、なるほどね。お前もタチやりてえんだ?」 
 サザンドラに指摘されて、やっと自分の中のもやもやの正体がわかる。 
 僕は一方的に雌役をやらされるのが嫌だったのだ。 
「なんだよ。それなら早く言えば良いのに」 
「……やらせてくれるのか?」 
「別に構わないぜ? 俺、タチにこだわりねえし。気持ち良けりゃどっちでも良いじゃん」 
 なんというか……意外とあっさり受け入れて拍子抜けだ。 
 だが、自分の要求が通ったことは素直に喜ぶべきなんだろう。   
 僕はサザンドラの上で座った状態から立ち上がる。 
 次は、僕がサザンドラを組み敷く番なのだ。 
 欲情と闘争心が静かに心を焦がす。 
 サザンドラも余裕たっぷりといった様子でゆっくりと立ち上がる。 
 斧竜と悪竜。二匹の成熟した竜が向き合うと、場に奇妙に張りつめた空気が流れた。 
 
「ちゃんとできんのか? オノノクス。やり方教えてやろうか?」 
 サザンドラは僕をからかう。 
「……大丈夫だ」 
 内心ムッっとしたが、ここはこらえた。 
 ここは言葉で返すより、行為でお返しをするべき。 
 そう考えたからだ。 
 ひざまずき、サザンドラの右手……ではなく右頭をとりその唇に口づけを落とす。 
「……ヌルいぞ、オノノクス。もっとガツガツ来いよ」 
 サザンドラは不満げだが、僕は無視して右頭への愛撫を続ける。 
 舌を入れて、情熱的にディープキスする。 
 右頭は僕のペニスと精を舐めまわしていた。 
 そのせいで、僕は苦くしょっぱい自らの液の味を知る羽目になる。 
 僕はそのひどい味に顔をしかめるが、行為は止めない。 
 半ば意地になって、滅茶苦茶に右頭と舌を絡ませる。 
 僕のその努力も無駄ではなかったようだ。 
 
「……ヌルいって言ってるだろ……クソッ! なんかムズムズする」 
 サザンドラは険しい表情をしている。 
 そこにかつての余裕はない。 
 右頭でもキスの快楽を得られるようだ。 
 それを確認して僕は、口を放す。 
 透明な唾液が二匹の舌の間に長い糸を引いて、そして切れた。 
  
 さて、次は……フェラにも挑戦してみるか。 
 僕は短くて平べったい足の間に顔を寄せる。 
 
「お、しゃぶってくれんのか?」 
 サザンドラはヨーテリーみたいに尻尾をブンブンと振っている。 
 無邪気に喜ぶその様子を微笑ましく思う。 
「待て。一つ言っておかないといけない事が有る」 
「なんだよ。早くフェラしてくれよー」 
「待てって言ってるだろ! 大人しくしないと、ちょんぎれるぞ」 
「あ? ちょんぎれるって……」 
「当たり前のことだが、僕の口の周りには鋭いキバが生えているだろ」 
「そんなの見ればわかるぞ」 
「ならわかるだろう? 僕がちょっと首を横に振るだけで、サザンドラの大事な所が……」 
「ひぃ!」 
 サザンドラは怯えて後ずさった。 
 無理もない。ここを失うのは雄にとって最大の恐怖なのだ。 
 
「危ないし、やっぱりやめておくか?」 
「いや、俺は恐怖に屈しない! やってくれ!」 
 大げさなセリフだと思ったが口には出さないでおいた。 
「じゃあ、絶対に動くなよ。絶対だぞ」 
「わかったから、はやくしゃぶってくれよ!」 
 本当にわかったのか疑問だが、まあ良い。 
 いくらサザンドラでも、性器が刃にさらされるこの状況下で勝手なことはできまい。 
 僕は仁王立ちするサザンドラの足元へ跪き、彼の股間に屹立するモノを両手で握る。 
 サザンドラの息が一瞬止まった。 
 
 固く握りこんだ肉棒。 
 自らの吐き出した、白濁の残りかすをまといながら、なおも熱く硬くそそり立つ。 
 若い雄竜の精力はこれ程のものなのだ。 
 強烈な雄の臭いが鼻につくグロテスクな長物。 
 それを口に入れることに少し抵抗を感じてしまう。 
 
「なあなあ、はやくー」 
 サザンドラは僕を急かす。 
 正直、かなり不安だが……やるしかないだろう。 
 大丈夫だ。サザンドラにできて、僕にできないことなんてあるわけない。 
 僕は目をきつく瞑る。 
 そして、舌を伸ばし、恐る恐る先っぽをひと舐めした。 
「ん……!」 
 肉棒が小さく振れ、サザンドラが鼻を鳴らした。 
 明らかに感じている。 
 サザンドラの痴態に励まされ、僕は舌の動きを強める。 
 僕は顔を動かし、様々な角度から肉棒を舐めまわした。 
 淫らな舌の動きに押され陰茎がグニグニと揺れる。 
 陰茎の上を舌べろが這いずり、唾液を塗り広げられる。 
 苦さと酸っぱさが混じる雄の味に、えずきそうになりながらも必死に舌を動かした。 
 
「うはあ……お前、意外と上手だな」 
『意外と』は余分だ。そう言い返す代わりに、更なる愛撫をサザンドラに与える。 
 肉棒をゆっくり舐め下ろし、竿の根物へ。 
 両側に、ぷっくりと膨らむ内臓式の玉を唇で優しく挟む。 
「ちょっ……! そんなとこやらなくて良いって!」 
 慌てて止めるサザンドラを無視して、行為を続ける。 
 紺色の薄い皮膚の下に息づく睾丸を軽くしゃぶってやる。 
 子種の生産を促すように、やわやわと口で揉みほぐす。 
 玉袋をフェラされる不可思議な刺激にサザンドラは身もだえした。 
「金玉なんかどうでも良いだろぉ……ちゃんとチンコしゃぶってくれよぉ……」 
 切なげな声でサザンドラは懇願する。 
 威厳も何もない凶暴な悪竜の姿に暗い喜びを覚えた僕は、彼の言うとおりにしてやることにした。 
 
 体内に収まる金玉を弄ぶ役目を両手に譲り、口は再び陰茎へ。 
 口を大きく開け、湿った生温かい息を吐きかける。 
 口内にたっぷりと唾液を貯めていたため、よだれが口の端から零れる。 
「はやく、はやく……! はやくしてくれよぉ……」 
 サザンドラは愛撫をねだり腰を突きだす。 
 涙を流すようにがまん汁を垂れ流す先端を僕はぱくりと食いついた。 
 舌を裏筋に沿わせ、にちゃにちゃと汚らしい水音をたてながら僕の顔がゆっくりと降りていく。 
 口の中が、サザンドラの肉棒で一杯になる。 
 強烈な雄の青臭さとえぐ味。それに対し、不快感だけでなく不思議な興奮を覚えている自分が居た。 
「あー! あー! 気持ち良い! 気持ち良いぞ、オノノクス!」 
 サザンドラは尻尾をバシバシと激しく地面に叩きつけた。 
 恥じらいもなにもない。サザンドラは素直に口淫の快楽を享受している。 
「はあ……ひい……! もう、俺……」 
 口の中で、放出の兆しを示すように肉棒が痙攣した。 
 僕はとっさに口を離した。 
 フェラチオの水音がいきなり止み、静かになる。  
 射精の寸前で愛撫を取り上げられたサザンドラの雄は欲望の噴出を求めて痛々しいほど勃起していた。 
「なんでやめるんだよ! はやくイカせろよお!」 
「すぐに終わったらつまらないじゃないか。少しは我慢しろ」 
 サザンドラにとって、我慢は最も苦手なこと。 
 それを知っていながら、あえて僕はそう言った。 
 
「くそっ! こうなったら……」 
 サザンドラの眼が鋭くなり、両手が僕の顔に伸びてくる。 
 どうやらサザンドラは、僕の顔を掴んで動けなくし、口を無理やり犯してしまおうという魂胆のようだ。 
「イマラチオしてやる!」 
「イラマチオ、だ」 
「どっちでも良いだろ! 国語の先生かよテメー」 
 まあ、確かにどっちでも良いか……。 
 どうせ、サザンドラの望みは叶わない。 
 何故なら僕はオノノクスだからだ。 
「おい、サザンドラ」 
「なんだ? 今さらやめろって言っても……」 
「ちょん切れるぞ」 
「え?」 
「君が無理矢理にしゃぶらせたら、きっと僕は苦しくてもがいてしまうと思うんだ」 
「そ、それがどうした!」 
「いや、顔を振った拍子にキバが君の大事なところを……」 
「ひっ!」 
 サザンドラの腕が飛びのいた。 
 どうやらわかってくれたようだ。 
 
「まあ、そういうことだ。長く楽しめ、サザンドラ」 
「ぐぬぬ……」 
 悔しそうに呻くサザンドラを尻目に、僕は再び愛撫を開始する。 
 今度は手の動きも加える。 
 フェラを続けながら、睾丸から陰茎まで、まんべんなく手で揉みしだく。 
 射精に至らぬよう慎重に力加減した、いやらしい手淫だ。 
 ちゅっちゅと軽く吸いつく音がする。 
 観念したように、サザンドラは大人しくそれを受け入れていた。 
 サザンドラにとって、長い時間が始まる。 
 
「う……あ……ああ……」 
 あれからどれ程の時間がたったか。 
 サザンドラは射精の一歩手前まで追いつめ、また引き返されるを何度も繰り返された。 
 今は、虚ろな目で小さな喘ぎを続けるのみだ。 
 鈴口は、ぱくぱくと開閉し、最高の快楽を渇望する。だが、僕はその願いをまだ叶えるつもりはない。 
 長く続く愛撫に、僕はもうすっかり、肉棒の味に慣れてしまった。 
 顎が疲れるなあ……などと呑気に考えながらのんびりとペニスをしゃぶっていると…… 
 
「もう良い! もう自分でやる!」 
 サザンドラがいきなり大声を出した。 
 僕は驚いて、陰茎を口から出してしまう。 
 サザンドラは僕の唾液が塗り込められた自分のモノに素早く腕を伸ばした。 
 そのまま両腕の先の双頭が、サザンドラ自身のペニスをのみこんだ。 
 ぐちゃぐちゃと音をたてながら、力いっぱいペニスを咥えこんだ双頭が乱雑に上下する。  
 いきなり始まった、サザンドラのセルフフェラに目をとられてしまう。 
 それがまずかった。 
 
「ああああ! 出る出る出る!」 
「え、ちょっと……!」 
 僕の制止は届かなかった。 
「うっ……くっ!」 
 サザンドラの雄はあっけなく限界に達した。 
 僕の顔に立ち小便するような体勢で、サザンドラは射精した。 
 きつい臭気と生温かさを持った白濁が容赦なく顔にかかる。 
 黄金色の鎧も、朱色に輝く顎斧も雄の白に沈む。 
 目に入らぬよう、きつくまぶたを閉じ、大人しく顔射を受けることしか僕はできなかった。 
  
「……ワリい。顔に出しちった」 
 だらしなくにやけながらサザンドラは謝る。 
 誠意の感じられない謝罪だが、僕は気にしないでおくことにした。 
 僕もサザンドラを苛めすぎたと思うし。 
「まったく……君はしょうがないな……」 
 僕は顔にかかった精を手でぬぐいながら、立ち上がった。 
 僕の顔はサザンドラの精液でぐちゃぐちゃ。 
 横に突き出たキバからは白い雫がぽたぽた落ちている。 
 本当にひどい姿だ。 
 だが、ここで嘆くよりも他にすべきことがある。  
  
「じゃ、サザンドラ四つん這いになって尻をあげて」 
「あ? それってどういう……」 
「僕もサザンドラに挿れたい。僕にもタチやらせてくれるのだろう?」 
 僕の股間は、サザンドラの体を求めていきり立ったまま。 
 僕の方も欲望を遂げたい。 
 そんな焦りから、僕は返答を待たず サザンドラの後ろに回り込んで突き飛ばした。 
 起き上がる時間を与えず、すぐに僕はサザンドラの背に覆いかぶさる。 
 
「ちょっ、お前……! ふざけんな!」 
 僕の下で、サザンドラがあがく。 
 僕は上からしっかり押さえつけて、抵抗を抑える。 
 しばらくじたばたするが、抜け出すことはできまい。 
 僕だって、ご主人のトレーニングで力をつけているのだ。  
「諦めろ、サザンドラ」 
「クソッ! 後で覚えてろよコノヤロウ!」 
 さすがに観念したのか、サザンドラが大人しくなった。 
 これでようやく先に進めるだろう。 
 僕はサザンドラの太い尻尾を両腕で抱きしめ、持ちあげた。 
  
「ほら、お尻あげて。でないと挿れにくい」 
「チッ、うるせえなあ」 
 サザンドラは愚痴りながらも、僕の言うとおりにしてくれた。 
 腰が浮き、半勃ちの肉棒が生える桃色のスリットが後ろから見える。 
 僕はそこに自分のをあてがい、ぬめる入口をなぞる。 
 いよいよだ。挿入の期待に胸が震える。 
「挿れるぞ、サザンドラ……」 
「いちいち言うな……さっさとやれ」 
「わかった。力、抜けよ」 
 僕は腰を前に突き出し、サザンドラの中に自身の雄を押し込めた。 
 ぐちゅりと音をたてながら、スリットが僕のペニスの先を呑みこむ。 
 男根から感じるサザンドラの中の感触は柔らかく温かく、そしてきつい。 
 
「ぐおっ……! お、お前の……太すぎ……!」 
 サザンドラが低い声で呻く。 
 自分の中に他の雄の性器が有るという異物感と圧迫感。 
 僕も体験したからわかる。 
 僕はそれを少しでも和らげたくて、腰を円を描くように動かした。 
 サザンドラの中で僕の太いモノが蠢き、中を押し広げていく。 
 うっかり放出してしまわないよう歯を食いしばりながら、根気強くサザンドラのスリットを僕の陰茎に慣らしていく。 
 体内をゆっくりとかき混ぜられるもどかしい感触に、サザンドラは小さく震えて耐えているようだった。 
   
「が……は……ガバガバに……なっちまう……」 
 たっぷりと時間をかけたせいで、根元まで挿入するころにはサザンドラのスリットはすっかりトロトロになっていた。 
 柔らかな粘膜は、僕の肉棒を優しく包み込んでくれている。 
 これなら、強くやっても問題なさそうだ。 
 だが、その前にもっとサザンドラの肉体を味わっておこう。 
 僕はサザンドラと繋がったまま、彼の背中に手を伸ばす。 
 六枚の黒い羽根と、ふっさりとした獣毛が生えた背を撫でこする。 
 たっぷりの黒毛がもたらす、優しく柔らかな感触を楽しむ。 
 次はぽっこりと膨らんだ腹だ。 
 むちっとした丸い太鼓腹を後ろから抱き締め、極上の肉感に酔う。 
 これは何度味わっても良い。 
 顔は怖いのに、毛がふさふさでお腹が丸いというのは反則的な可愛さだ。 
 僕は欲望のおもむくまま、サザンドラの体を撫で尽くした。 
 びくびくとサザンドラの胴体が跳ねまわる。 
「や……やめろ。やめろよぉ」 
 サザンドラが懇願する。 
 僕からは顔が見えないけど、きっと必死そうな表情だと声色から推測できる。 
「どうした? 痛いのか?」 
 サザンドラはぶんぶんと首を振った。 
 しばらく息を整えたあと、サザンドラはかすれた声で僕に告げた。 
「お前の手……気持ち良すぎるんだよぉ……」 
 その声を聞いた時、この悪竜が愛おしくとたまらないと思った。 
 僕はサザンドラの陰茎を右手でしっかり握りこむ。 
「な……? オノノクス!?」 
「動くぞ」 
 もう力加減はできなかった。 
 僕はサザンドラのモノを激しく手でコキながら、腰を力強く打ちつける。 
「グギャ……ガア……!」 
 サザンドラの喘ぎは竜の咆哮じみてくる。 
 それは僕も同じ。 
「ゴアアア!」 
 理性を手放し、僕たちは雄叫びをあげながら交わる。 
 二匹の雄竜の巨体がぶつかり合う重低音。 
 強烈な握力で行われる手淫と、とびきりに激しい挿入で粘液が弾けるぐちゃぐちゃという湿った音。 
 それらが混じり合い、ひたすらに淫らな音響になって丘に鳴り響く。 
 興奮が高まり、手淫と挿入の攻めは更に強まる。 
 手コキの性感に反応したのか、サザンドラの体がこわばり、スリットが締まる。 
 肉壁に食いちぎらんばかりの力で肉棒を締めあげらる快楽に僕はよがり狂い、サザンドラを犯しまくった。 
 サザンドラの六枚の羽根はぴんと持ちあがり、持ち主の悦楽を示しているようだ。 
 そろそろ、サザンドラの限界も近い。 
 僕の手に弄ばれるサザンドラの肉棒が、切なげに痙攣したからわかる。 
「グォアアアアアア!」 
 僕の手の中にサザンドラは精を放った。 
 その瞬間、サザンドラの中がこれまでにない程、引き締まった。 
 サザンドラが射精したという事実に対する興奮と、極上の締まり。 
 これに耐えられるわけがない。 
 
 僕は愛しい悪竜の背中をしっかりと抱きしめ、最後の一突きをスリットに与えた。 
 最も深い所まで届くズンと重い一撃。 
 次は僕が欲望を遂げる番だ。 
「グォオオオオオオオオオン!!」 
 サザンドラの中に特別濃厚な精を撃ちこむ。 
 ねばねばの白い子種がサザンドラのスリットをまたたくまに満たし、受けきれない白濁がごぽごぽと零れる。  
 凶暴な悪竜を犯し、その体の中に精を刻んでやったという征服感に震えるほど喜びを感じていた。 
 
「いやー、気持ち良かったなオノノクス」 
 屈託なくサザンドラは笑う。 
 その体には白い液がいたるところにこびりつき、スリットからは精があふれている。 
「まあ……そうだな」 
 僕の体もひどく汚れた。 
 キバも黄金の鎧もサザンドラの子種がべっとりと張り付いている。 
 今さらだが、自分たちがいかに淫らな行為にひたっていたかを思い知らされる。 
 二匹が噴いた大量の精液の甘だるい臭いが夜風に吹き散らされ丘に広がる。 
 近所迷惑も良いところだ。 
 カゴメタウンやビレッジブリッジまで臭いが届かないと良いが…… 
 ん、ビレッジブリッジ? 
 何か忘れているような…… 
 
「そういやあの女遅いな。何やってんだ?」 
「あ……」 
 すっかり忘れていた。 
 ご主人がビレッジブリッジから帰ってきてしまう。 
「は、はやく体を洗わないと!」 
 精液まみれの僕らを見たら何と思われるか…… 
 慌てて水場を探そうとしたその時だった。 
 
「ごめーん! 遅くなった……」 
 ご主人が小走りで駆け寄ってくる。 
 なんとタイミングが悪い。 
 もう駄目だ。これは隠せない。 
 自分の手持ちポケモン二匹がホモってたなんて知ったらご主人はどうなることやら…… 
「……って、なんじゃこりゃあああ!」 
 僕らの姿を見てご主人は絶叫した。 
 僕はキバの側面を指でいじりながら、言葉が通じないご主人にどうやって僕らの関係をわかってもらうか考えていた。 
 
完 
 
 
 
 
 

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