瞼を開け、目を擦って時計を見る。時はまだ正午。  
「暇ね…」  
彼女は四天王のカトレア。  
彼女にとって、一人でいる時間は退屈以外の何物でもない。  
誰かに呼ばれれば話は別だが、この寒い時期に外に出るのも面倒であった。  
故に彼女は基本的に、一日の大部分を睡眠時間に割いているのであった。  
「全く…何故こんな時間に起きてしまったのかしら」  
そう呟いて再び毛布の中に入ろうとしたその時、部屋の外から靴音が聞こえた。  
「挑戦者の方かしら…?」  
そう言って寝ぼけ眼を再び擦りつつカーテンを開けるとそこには見慣れた姿があった。  
「あら、ギーマさん。アナタでしたの」  
「ああ、そうさ。挑戦者でなくて、悪かったね」  
ギーマは皮肉めいた口調で笑って言った。  
「そんなことはないわ。丁度こちらも退屈していたの。ひとつ手合わせでもどうかしら?」  
彼女がモンスターボールを取り出したのを見て、彼は少し考えたようなポーズをとる。  
「そうだな…悪くない誘いだが、生憎こちらは君自身に用があるんだ」  
「どういうことかしら?」  
「君のベッドで語り合いたい、と言えば君でも分かるかな」  
彼女はそれを聞いて思わず吹き出した。  
「ふふっ…おかしな人。はじめから格好付けず言ってくださっても良かったのに」  
「あまり下品な言葉を君の前で使いたくなくてね」  
「別に私は構いませんわ。さあ、どうぞ。お入りなさいな」  
 
カーテンの中に二人で入ると、カトレアは小さく笑った。  
「えっと…今日はアタクシから脱ぎましょうか?」  
「今日はやけに積極的だな」  
彼女はギーマの見ている前で、服を丁寧に脱いでいった。  
レースのついた下着姿で、彼の方を見つめてはにかんだ。  
「あの…やっぱり…」  
「最後は、脱がしてほしいと?」  
「ええ…」  
彼はカトレアの下着を丁寧に外した。  
小さな胸と柔らかい女性器が見える。  
恥ずかしそうにそれを隠す彼女を尻目に、彼はゆっくりと彼女をベッドに寝かせた。  
 
「ほら、手をどけないと…ことが進まないよ」  
「だって…恥ずかし…」  
「もう何度も見られているだろう?さあ」  
「あっ…」  
折れてしまいそうに細く白い腕を掴んで、彼は彼女の胸を触った。  
首筋に小さく息を吹きかけてから、耳を甘噛みした。  
そのまま、彼の手は彼女の鳩尾をなぞって、太腿の部位へと移動した。  
「はっ…だめですっ…ぎーま…さんっ…」  
喘ぐ彼女のうなじにキスを落とし、そのまま女性器に指が触れた。  
「んあっ…ふっ…まだ…はやっ…はやいですっ…まだ…」  
しかし彼はその言葉を無視して指で膣内をまさぐる。  
勘で陰核の部分を探り当て、指の腹を擦った。  
「ひんっ…だめっ…ふぁ…やめっ…ああっ」  
「そろそろかな」  
彼はそう言って指を引き抜いた。  
小さい彼女の呼吸が部屋に響いている。  
「はぁ…はぁ…はぁ…ぎーま、さん…」  
「ん?」  
「アタクシの身体、物足りなくありませんか」  
そう言うカトレアの物悲しそうな目は現在の状況から生まれたものではなかった。  
「いや、そうは思わないがね。とても魅力的だ。なぜ急に?」  
「ふと、思ったのです。アタクシは細い身体を煌びやかな衣装で隠しているだけなのではないかと。そしてその身体と同じように脆い心を、強い口調で覆っているだけなのではと…。そう思うと、不安になって…」  
「それが本当だとしても、君の魅力には何の変化もない」  
「そう、でしょうか…」  
「むしろ、強い女性がふと見せる弱い面こそ、男には魅力的に映る。そう、今の君のようにね」  
「ありがとう。お世辞でも嬉しいわ…」  
「嘘や口説き文句でこんなことを言っているように見えるかい?」  
彼はそう言うと、彼女の唇にキスをして舌を挿れる。  
蕩けるような感覚と唾の音に酔いしれる二人。  
糸を引いて出た唾を腕で切って彼女は言った。  
「感じますわ…アナタはそこまでアタクシを…」  
「おいおい、恩を感じた風に言わないでくれ。ただ、君の姿に魅了された。それだけさ」  
「ふふっ…素直でない人…」  
彼はくすりと笑う可憐な女性をベッドの上で激しく抱いた。  
「ああ、素直でないさ。悪人だからね」  
器用にズボンの上から彼女の女性器に肉棒を挿入する黒い男。  
不意を突かれてなすがままにされる彼女の乳首を噛む。  
それを皮切りに、体のあちこちにキスを落としていく。  
言葉にならない高い声をあげる彼女を腰を動かしつつ抱き上げる。  
彼女の細い脚も、弱い力ながらも呼応するように彼の腰に絡む。  
「んあああああ!」  
耳を劈くような嬌声をあげて髪を振り乱すと、彼女の意識は途切れた。  
 
###  
 
彼女が起き上がると、丁寧に服が着せられていた。  
「いつもありがとう、わざわざ…」  
「いいっていいって。こっちが好きでやってる事さ」  
彼女が自身の身体を見ると、丁度服から見える部位にはキスマークが見えないようになっていた。もっとも、身体は噛まれた部分が赤くなってまだ痛いのであるが。  
「いつも思うけど…器用な人ね、アナタ」  
「褒め言葉と受け取っても?」  
「さあね…ふふっ」  
「君は最近笑うことが多くなったな」  
「そうかしら。もしそうなら、アナタのおかげよ」  
「ほう、何故かな?」  
「アタクシを初めてオンナとして見てくれたから…かしら」  
ギーマは予想外の言葉に動揺するのを隠しつつ言った。  
「卑怯なお嬢様だ。そんなことを言われたら、君から離れられないじゃないか」  
「そうしてくださると嬉しいわ」  
「言われなくても、君に出会った時から君以外見ていないがね」  
「ふふっ、やっぱり面白い人…」  
「さて、そろそろ時間かな。挑戦者の足音が聞こえてきた」  
「あら、そうね。それじゃあ、またいずれ」  
「ああ、では失礼するよ。また『ここ』で語り合おう」  
 
ギーマの言葉に再び笑顔を見せるカトレア。  
カーテンから出てワープした彼。  
それと入れ替わるように現れた挑戦者が外に見える。  
「さて、参りましょうか」  
一言そう呟いて彼女はモンスターボールを取り、カーテンを開けた。  
「どなた…?」  
 
(終)  
 

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