「クダリさーん!」
今日もまた、バトルサブウェイに明るい少女の声が響く。
「こんにちは、トウコちゃん」
僕はいつも通り挨拶をする。
いつもと何も変わらない。
・・・そう、全てがいつも通り。
少女は僕に眩しいほどの笑顔を向け、こんにちは!と返してくれた。
たったそれだけのことにも、僕の胸は高鳴った。
「今日ね、トウヤ達にチョコレートをあげたの」
「チョコレート・・・?」
「うん、今日は2月14日。バレンタインデーでしょ?」
そっか。すっかり忘れてたよ。
「それでね、大好きなクダリさんに・・・これ!」
彼女は鞄を漁り、そこから可愛いリボンのついた紙袋を取り出した。
「本命のチョコレートです」
ほんのりと頬を赤く染め、はにかむ彼女が愛おしく感じる。
「ありがとう。・・・ノボリには?」
彼女が僕を慕ってくれているのはとても嬉しい。
その反面、実の兄への気持ちにも興味が湧く。
「ノボリさんのもあります。でも・・・義理チョコです」
その言葉に、僕はひっそりとした笑みを浮かべる。
「そっか・・・」
「はい。私が好きなのはクダリさんですから!」
僕は溜め息をついた。
それが本物の僕に向けられた言葉だと思うと、悲しい。
だって、僕は・・・・・・
「トウコ様。私は貴方が欲しいです」
貼り付けていた笑顔。
僕・・・いいえ、私にはやはり笑顔は難しすぎました。
「えっ?」
「何故ですか?こんなに似ているのに、何故貴方はクダリを選ぶのです?」
力強く抱き締めれば、驚いたのか、彼女の手から紙袋が落ちる。