]V:決別  
 
 
――ミナモシティ デパート  
「そんな事が……」  
「歳を取る程、脛に傷は増えるもんよ。格好悪い事ばっかりね」  
 雨脚は強くなる一方。ゴロゴロと雷鳴は引っ切り無しに聞こえていて、天の底が抜けた様な大雨は止む気配が無い。二人は屋内の人影が疎らな狭いベンチに腰掛けていた。  
 途中休憩を挟んだシロナにハルカは複雑な表情を浮かべる。順風満帆で来ていたのに突然二人に立ち込めた暗雲がこの後の展開を容易に想像させない。  
 一刻も早く続きを聞きたい気分だったが、語りながら時折辛そうな顔をするシロナにそれを求めるのは酷だった。  
「良く、立ち直れましたね」  
「四天王のお陰様でね」  
 普通あんな別れ方を切り出されたら女ならばトラウマに陥っても不思議じゃないし、逆恨みする事だって有るかも知れない。だが、シロナはそうならなかったのだ。  
「諦めようとか思わなかったんですか?」  
「そりゃ、挫けそうにはなったわ。でも、不思議と恨む気にはなれなかったし、信じたいって思ったのよ、彼を」  
「・・・」  
 そんな或る意味失礼な質問に対してもシロナは臆する事無く答えた。その横顔はある種の達観を感じさせる様な落ち着きを孕み、同時に美しく感じられた。  
「そうじゃないと、あたしは彼の女として相応しく無いっても思った。信じない限り、またあたしを必要としてはくれないってね」  
 相手を恨む事など考え付かない。寧ろ、それを飲み込んで許容する。よっぽど相手を好いていない限りそんな想いには至らないとハルカはユウキとの関係から何と無く理解している。しかもそれを実践するとはどれだけこの女の情は深いのだろう。  
 同じ女として嫉妬しそうになってしまった。  
「強いですね、シロナさん」  
「ああ、それは逆。弱いわよ? あたし。ダイゴもそう。見せない様にしてるだけ」  
 皮肉るつもりはない。純粋に憧れの感情を込めてそう言ってやるとシロナは照れる様子も無くそう告げた。  
 自分達の弱さに付いて、理解はしていてもそれを他人に晒せるかと言えばそれはかなり難しい事だ。だが、それを隠そうとしないシロナは本当に格好良かった。  
「成る程。だから、一緒に居られるんですね」  
「当たりよ。ハルカちゃん」  
 相補性理論なぞ糞喰らえだと思っていたハルカだが、成る程。好き合った上で足りない部分を埋め合っているカップルと言うのも確かに存在するらしい事を知った。  
 目の前の女と、今は彼氏が一緒に留守番しているあの男だ。  
「じゃ、話の続き、良いかしら?」  
「はい」  
 是非も無い。アンタ等の経験した人生の山場を聞かせろ。ハルカはシロナの語りに耳を傾けた。  
 
 
 確信は無かったけどさ。心に暗い影を持ってるって気付いてた。  
 でも、あたしはそれを聞かなかったし、ダイゴもそれを言わなかった。  
 きっと何時かは話してくれると思っていたけど、それが間違いだったわ。  
 無理言っても訊く冪だったし、あたしが真っ先に気に掛けなきゃいけない事だったのよ。  
 ……今でも自分の無力さが腹立たしくなるわ。  
 ダイゴはずっと泣いてたのよ。仮面の裏で、ずっと独りで……  
 
 
 ダイゴ襲撃事件から一週間経過。  
 飯も喉を通らないと言った感じに憔悴していたシロナだったが、何とか普通の会話が出来る程には回復していた。しかし、それでも尚彼女が負ったダメージは大きく、とてもではないがチャンピオン業に復帰出来る状態では無かった。  
 そんなシロナをどうにかする為に、緊急のミーティングが開かれた。  
 
――シンオウリーグ本部 会議室  
「シロナさん、無理は」  
「……平気。お仕事サボる事出来ないから」  
 リョウが心配そうにシロナの様子を気に掛ける。一応、会議に足を運んだシロナだったが、無理をしているのはバレバレでそれは見ていて痛々しかった。  
「でも、その状態では周りの士気にも影響が……」  
「……平気だから。ちゃんと、やるから」  
 言っても無駄だと判っていても、何かしらの言葉は掛けなければいけない。責任感が強いのは結構だが、それで周りのテンションを下げていては頂点に立つ者しては失格だ。だが、シロナはきっと何かしていなければ立ち行かない状態なのだろう。  
「どう考えても無理だな、そりゃ」  
「ええ。同感ね」  
 骸骨が人間の皮を被った様な生きる屍状態のシロナにオーバとキクノが哀れんだ視線を向ける。何時崩れ落ちてもおかしくない、そんな状態に変えたあの男に対し怒りの感情が湧いてくる四天王だった。  
「しっかし、何なんだよ、あのダイゴって野郎は。突然乗り込んで来て、ウチの姫さんズタボロにしやがってよお」  
「デボンコーポレーションの御曹司。嘗てのホウエンリーグの支配者。どうやら、シロナさんとは深い仲だった様です」  
 オーバの疑問に対し、ゴヨウは殆ど意味が無い情報しか持っていなかった。  
 実害はドア一枚が壊れただけだし、その修理もダイゴが置いていった金で既に済んでいる。ホウエンリーグとの話し合いも理事会を通じてとっくに終っていた。  
 だが、それでも心に湧いた不快感は簡単に拭えそうに無い。  
 一体全体何の目的でダイゴはリーグに乗り込んで来たのか、それが不明瞭だから尚の事感情のやり場に困っている。しかし、それは四天王は愚か渦中の人間であるシロナにだって判らない事だった。  
「ちっ、金持ちのボンボンかよ。何にせよ、自分の女こんな風に泣かすなんざ、最低の野郎だぜ。別れて正解だったんじゃねえの?」  
 何が原因であれ、ダイゴがシロナを傷付けた事だけは弁解の余地が無い。オーバは心の憤りを素直に言葉にする。しかし、その言葉はシロナにとっては許せないモノだった。  
「止めて」  
 心は未だに血を流している筈なのに、シロナは毅然とした態度でオーバを睨み付ける。その金色の瞳だけは未だ死んではいなかった。  
 
「ダイゴを悪く言わないで。それに、未だ終わってないから」  
「っかあああ! こんな状態でも未だ庇うってか! アンタ、一途過ぎだろ!」  
 彼氏を貶すな。そして勝手に終らすな。シロナは未だにダイゴとの事を諦めていない。  
 そんなシロナにオーバが吃驚した様に叫ぶ。その妄執とも言う冪執着心が男の心では理解出来なかったのだ。  
「気持ちは判ります。しかし、もう、彼に貴女への気持ちは無いのでは……」  
「それでもっ!」  
 それはゴヨウも同じだった様だ。引き摺って辛い思いをするのなら、諦めた方が良い。失恋のショックも暫くすれば癒えると遠回しに説得する。  
 だが、少なくともシロナにとってそんな助言は大きなお世話だった。  
「あたしは、ダイゴを信じてる。絶対、何かある筈なのよ。そうじゃなかったらあんな……」  
 意固地になっていると思われるのは仕方が無い。だが、そうしなければいけない気がシロナにはしていたのだ。  
 一度疑えば足は止まるし、迷って最終的に信じる事が出来なくなる。そうなってはもう二度とダイゴは戻って来ないとシロナの女の勘が告げていたのだ。  
「……そう。そんなに好きなのね、彼の事が」  
「はい。愛しているんです、今も」  
 そんなシロナの想いに付いて、同じ女として感じ入る事があったのか、キクノは確認する様に尋ねるとシロナは胸を張って答えた。その堂々とした姿にはシロナの女としての誇りが滲んでいた。  
「じゃあ、貴女がやる事は決まったわね」  
「キクノさん」  
 其処迄腹が決まっているなら、もう道は一つだけだ。キクノはシロナにそれを指し示す。  
「シロナ、貴女ホウエンに飛びなさい」  
「え、でも」  
 北で燻っている裡は状況に進展は無い。何かあったとするならば、ダイゴにとっての拠点であるホウエン地方にその鍵がある。其処で情報収集するしかないとキクノは進言した。  
 無論、それはシロナも判っていた事である。しかし、チャンピオンが地元を離れて行動するのは色々と制約が付く。チャンプになりたてのシロナにとってそれは実現が難しい事だったのだ。  
「賛成です。ダイゴさんが何であんな事したのか、判るかも。上手く行けば会えるかもだし」  
「賛成。どの道今の貴女ではチャンピオン業は荷が重い。なら、しっかりと彼と向き合い、心を元の状態に戻す冪です」  
「異論は無え。ホウエンリーグにゃアイツを知ってる奴位居るだろ? 今回の事、改めて侘び入れさせる序に聞いてくりゃ良い」  
「みんな……」  
 しかし、こう言う時に頼りになるのは仲間の存在である。野郎三人が戸惑うシロナの背中を押してやった。  
「賛成多数ね。……こっちは私達が何とかする。貴女は貴女の納得するやり方で決着付けなさい」  
「ありがとう」  
 どうせ年度が動き出したばかりで暫くは暇なのだ。別にチャンピオンが不在であったとしても短期間ならば四天王だけでリーグは何とか動かせる。  
 だから、悔いを残したくないなら、自分の手で決着を付けろ。キクノのエールを受けてシロナは決断した。  
「あたし、行くわ。ホウエンに行って、ダイゴと話してくる!」  
 翌日。シロナはホウエンへと旅立った。  
 
――ホウエン カナズミ空港  
「ダイゴ……あたし、諦めないよ」  
 此処に来るのも数年振りだ。あの時は若さと希望が胸一杯で、こんな風に思い悩む何て考えもしなかった。  
 今は独りきり。頼る物が何も無い状態でシロナは今と向き合わなければならなかった。  
 
 
――サイユウシティ ホウエンリーグ本部  
 ニッポンの南の端。ポケモンの楽園と称される美しい島。北の住人であるシロナは最初にこの場所に足を運んだ。空を飛んでのショートカットが使えないので、正攻法の強行軍でシロナはやって来た。  
 ミナモから休まず波乗りを続けて半日近く。大滝を越えてチャンピオンロードの猛者達を退けてその場所に辿り着いた時、ホウエンに着いてから既に丸一日が経過していた。  
 
「ようこそ、ホウエンリーグへ……って、貴女は!?」  
 エントランスに足を踏み入れると、警備員が気さくな挨拶を交わして来た。しかし、やって来たのが誰か判ると、途端にその顔が恐怖に歪む。  
「ダイゴを出しなさい」  
「つ、ツワブキ氏ですか!? こ、この度は我がリーグの元チャンプがご迷惑を……」  
 一々そんな事に構っていられないのでシロナは単刀直入に用件を伝える。焦った警備員は何を思ったのか、胡麻を擂る様な態度を取って来た。  
「ダイゴを出せ!」  
 それが気に喰わないシロナは大声で怒鳴り付ける。自分でも顔が醜く歪むのが判ったが、こちらも遊びに来ている訳では無いので今は無視した。  
「ひっ!? ツワブキ氏は行方不明です! 我々も全力を挙げて捜索中ですが、何処に居るかとんと判らない次第でして……」  
「! なら話の判る奴を出せ! なんなら無理矢理突破して……」  
 鬼の形相に肝を冷やした警備員が恐怖の滲む声色で訴える。これでは話にならないと気付いたシロナはその胸倉を掴み上げて、死山血河も辞さない旨を告げる。  
「わ、判りました! ……ミクリさん! 鬼姫です! 北の鬼が攻めて来ました!」  
 慌てた警備員は転びそうになりながらも何とか床を這って内線の受話器を取ると、それを使って話の判る奴を呼び出す。  
「ええいっ!」  
 しかし、今のシロナにはそんな行動すら目障りだったので警備員の横を通過すると四天王の部屋へ続くドアを思いっきり蹴り付けた。  
「ああ、勝手に!? もう少しお待ちを! 今、チャンプが来ますのでもう少しお待ちを!」  
「悠長過ぎんのよ!」  
 電話中の警備員が懇願する様に情けない声を上げるが、シロナは喋る事すら億劫だった。開いたドアに大股で歩を進め、シロナは中に入った。  
 
「おーおー。随分、鼻息荒いねえ。美人が台無しだぞ」  
「アンタは四天王?」  
 踏み入った部屋には男が一人。お洒落な服装をして、モヒカンとは違うが何とも個性的な髪型をしていた。  
 喧嘩しに来たのでは無いので、シロナは相手に敵意が無い事をアピールした。  
「ああ。悪使いのカゲツだ。北に住まう美しき鬼……お前さんがシロナか。ダイゴから聞いてるぜ」  
「何か知ってそうね。ダイゴは何処?」  
 どうやら、ダイゴ伝手に自分の事を知っているらしい。何らかの情報が期待出来ると踏んだシロナは最も知りたいダイゴの居場所をカゲツに尋ねる。  
「此処には居ねえ。って言うか、ぶっちゃけ音信不通だ」  
「そんな……」  
 期待していた情報とは違い、シロナは落胆する。頑張って南の僻地に辿り着いたのに屑みたいな情報しか得られないと言うのは骨折り損にしか思えなかった。  
「突然だったぜ。一寸前にいきなり辞表出して、俺達の前から消えて、その矢先の事件だった。……まあ、思い当たる節は多々あったがな」  
「それは」  
「おっと、それは全員から聞いた方が良いな。丁度来たみたいだしな」  
 しかし、居場所以外の情報については色々持っているらしい。シロナはそれを尋ねようとしたが、その直前に部屋に数人の人間が入って来た。カゲツはそれを顎で指し示すと、シロナは渋々頷いた。  
 
「ホウエンリーグへようこそ。私が現チャンプのミクリだ」  
 四天王を後ろに引き連れたチャンピオン。珍しい形のベレー帽を被り、ホウエンの頂点の証である白いマントを羽織っている。  
 嘗ての水のアーティスト。現在の異名は海神(わだつみ)。  
 ミクリは帽子を取ってシロナに挨拶してきた。  
「シロナよ。シンオウチャンプの。……確か、貴方はダイゴの」  
「ああ。親友を名乗らせて貰っている。……尤も、今回の件で自信を無くしたがね」  
「・・・」  
 シロナも同じ様に軽く会釈する。ミクリについて、シロナはダイゴから聞いて既に知っていた。十年来の付き合いで曰く、腐れ縁だとか何とか。  
 そんなミクリはダイゴの自称親友を気取っているらしい。だが、例の騒動で何も出来なかったのか、少しだけミクリは悲しそうな顔をする。シロナは何も言えなかった。  
「それよりも今回はあいつが申し訳無い事をした。何かやらかすだろうと踏んでいたが、まさかシンオウリーグでアクシデントとは」  
「謝罪は良いわ。それよりもあたしが此処に来たのは」  
「判っている。だが、何処に居るかは本当に判らない。足取りさえ掴めない状況だ」  
「そう。……判らないならどうしようもないわね。……一寸聞くけど、アイツは何時辞めたの?」  
シロナが本当に知りたいのはダイゴの行方のみ。しかし、それはミクリも知らない事だった。  
 良く考えれば、チャンプを辞めた人間がリーグに居るのはおかしいし、足跡が不明と言う事は故意に人目を避けていると言う事も考えられる。これでは恐らく誰に聞いても直接の足取りを掴むのは難しいとシロナは考えた。  
 しかし、折角来て何も得られる物が無いと言うのは堪らないので、シロナはダイゴについて判っている情報だけでも訊きたかった。  
 先ずはジャブからスタート。あんまり重要とは言えない質問だが、出方を伺うには丁度良かった。  
「年度末だから、三月の半ばだ。きっちり仕事は収めてくれていったぜ?」  
「同じ頃、ルネジムに突然現れて、チャンプ辞めるから引継ぎを頼むと言われたよ」  
「ふーん。ちゃんと仕事はしてた訳ね、アイツ」  
 カゲツ達の話を聞くと、ダイゴは仕事を中途半端に放り出した訳では無いらしい。ちゃんとミクリに後釜を頼んだ辺りしっかりチャンプの勤めは全うした様だ。尚更ダイゴが辞める理由が判らないシロナだった。  
「……それで、アイツに何があったの? せめて、それだけでも教えて」  
 これ以上細かい話を聞く気は失せた。改めてシロナは核心に付いて訊く。  
「それは」  
「「「・・・」」」  
 ミクリは何かを語ろうとしたが、途中で沈黙してしまった。語るのを戸惑っている様なミクリに様子に、カゲツ以下四天王の三人が視線で会話している。只一人だけ、最年長と思われる厳ついご老体だけは腕を組んで背中を壁に預けていた。  
 
「一言で言えば、絶望した……と言う事です」  
「プリム……それは」  
「間違いでは無いでしょう。元々彼にはそう言う面があった」  
 氷使いのプリムが沈黙を破る。その余りの直球振りにミクリも流石に動揺したが、結局次の言葉に何も言えなくなる。ダイゴについて良く知っているミクリだからこそ、口を噤まざるを得なかった。  
「確かにねえ。ダイゴさん、人間嫌いだったもんね」  
「フヨウ迄……」  
 そうして、ゴースト使いのフヨウが追い討ちを掛けた。人間嫌い。ダイゴを象徴するのにこれ以上ピッタリな言葉は存在しない。悲しい事にそれは自称親友であるミクリでも擁護出来ない事だった。  
「? どう言う事?」  
「……聞いた通りだ。ダイゴは人間に、世界に絶望した。もう誰も信じられない程に」  
 話がどうも見えない。人間嫌いとか言われても、ダイゴがそうであるとはとても信じられないし、一体それが何で今回の事に繋がるかシロナには判らなかった。  
 そして、ミクリの言葉がシロナには殊更信じられなかった。  
「そんな……大袈裟でしょう」  
「そう思うよな。だが、あいつの場合、それが在り得るんだ。Youもダイゴから聞いていないか? どうやって彼が今迄歩んで来たのか」  
「大雑把な来歴は知っているけど、どんな風にって……」  
 何かの間違いである事を願って言葉を選んだが、ミクリの顔からするに恐らくそれは真実であるとシロナには判った。  
 そして、ダイゴの過去に付いてシロナは掻い摘んだ説明は本人から受けていたが、正直言って知らない部分が多かった。だから、言葉に詰まった。  
「あー、そっか。お前さんは聞いてないのか。あいつも付き合ってる女には喋りたくなかったのかもな」  
「ダイゴの過去? それが原因?」  
 合点が行った様にカゲツが頷く。確かに、ダイゴにとっては恥になる話だし、余計な心配を掛けたくないと言うダイゴなりの気遣いであったのかも知れないとカゲツは思った。  
 シロナの知らないダイゴの過去。予想外に根が深そうな事象にシロナは無性に知りたい気持ちに駆られる。仮にも付き合っているのだ。相手を知るのは重要な事だった。  
「原因ってか、まあ根っ子だな。俺等もミクリから聞く迄は知らなかったけどよ」  
「何? 勿体付けずに教えて」  
「ダイゴは常に肩書きに縛られていたという話さ」  
 意味深に言うカゲツに痺れを切らしたシロナは答えをせっつく。  
 仕方が無いと言った感じにミクリは重い口を開いた。  
 
 

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