X:結実  
 
 
――トクサネシティ ダイゴ宅  
「ちょ、ど、どうなったんすか! 続き! 早く続きをば!」  
「落ち着きなよユウキ君。血走ってるよ」  
 興奮気味にユウキが叫ぶ。良い場面で話がぶった切られた事に鼻息を荒くして、その続きをせがむ。そんなユウキの様子にダイゴは苦笑を禁じ得ない。  
「そりゃ、血走りもしますわ! ……しっかし、意外ですね。てっきりダイゴさんがあの手この手で誑し込んだと思ってたのに……」  
「どう言う意味さ、それは」  
 何を考えてる? 若干、顔をヒク付かせたダイゴ。セクシャルな事象に疎かった嘗てのシロナにがっつり調教を施す程、彼だって鬼畜じゃあない。  
 ……まあ、あくまでその時はの話であって、時を経るに連れてその度合いは増して行くが、それは未だ語るに早い事だった。  
「いえ、別に。……そうか。シロナさんの方が先に参っちゃったんですか」  
「ああ。未だに判んないんだけどね。惚れるに当たる詳しい理由がさ」  
 ダイゴにその気は無かった。しかし、結果としてシロナの興味はダイゴに移った。一体何が原因だったのかシロナは杳としてその時の心境を語ろうとしない。男であるダイゴがシロナの女心を解するのは些か無理があった。  
「……案外、最初の出会いがあって、ダイゴさんがシロナさんの中で美化されたのでは?」  
「それはありそうだけど……体を許すって言うのは突飛過ぎる気がさ」  
 ユウキが思いを口にする。思い出補正でダイゴの存在が曲解されて、憧れやら逢いたい欲求が恋心と混同された結果ではないのか、と言う事らしい。  
 一理あるユウキの発言にダイゴは半分だけ同意した。だが、それにしたって自分なんぞに容易く股を開くと言うのは勇者を通り越して愚の骨頂だとダイゴは思っていた。  
 どう考えてもシロナのそれは自分の安売り以外の何物でも無い愚行だと今ならば断言出来た。しかし、考え様によっては、それはとても失礼な物言いだった。  
「初恋って言うのなら、それを引張ってでも成就させたかったんですよ。まあ、それは本人にしか判らない事でしょうが」  
「それだけ精神的に苦しかったって事かねえ」  
 だが、所詮それはダイゴの頭の中での事。その時のシロナの精神状態は判らないが、そうするだけの価値があると踏んだから、彼女はそうしたに決まっている。  
 抱かれても良いと思った男だからこそ、体を開いた。多分それだけの事だろう。後になっての意味付けは何にもならない事だった。  
「で……頂いてしまった訳ですよね、ダイゴさんは」  
「ご明察。美味かったよ」  
 本題は此処からだ。シロナがダイゴを誘い、ダイゴはそれを受けてシロナを喰った。そんな事実が確かに存在するのだ。  
「二十歳前のシロナさんを、かあ。……すげえ気になる」  
「はは。下卑た話だから詳しくは語らないけどね」  
 その様子を想像してユウキがぐびっと唾を飲んだ。ユウキとてチェリーでは無いが、あれ程の美貌を誇る女(しかも今より若い)に如何わしい事を施すと言うのはそれだけで下半身が元気になりそうだった。  
 だが、それをやった益荒男であるダイゴはそれを語りたくないらしい。……確かに、自分の彼女との初合体の場面を嬉々として語る様な奴は余り居ないだろう。  
「そんな! 此処迄来て生殺しは酷いですって!」  
「そうかい? ん〜、それじゃあ、少しだけね」  
 此処で話を切られたら行き場の無いリビドーが制御を失う。拝み倒すみたいにユウキはダイゴに話の続きを強請る。  
 熱意に負けた様にダイゴは頷く。それは話を引張った責任を感じての事だったのかも知れない。  
 
 
 軽々しくオーケーしちゃったけど、ホテルに着く迄はかなり困惑してたよ。  
 抱く事に不安があった訳じゃない。選択を焦り過ぎたって自責があったのさ。  
 でも、いざその時になったらそんなモノは吹っ飛んだよ。……何故かって?  
 そりゃあ据え膳喰わぬはって奴だよ。それだけに集中したかったんだなあ。  
 
 
――コトブキシティ ビジネスホテル  
 シロナの手を引き、ダイゴは安ホテルのダブルの部屋を手配した。明日の朝、出発の時間が来る迄はこの密室で二人っきり。邪魔は入らないし、やるべき事も決まっている。  
「あの」  
「・・・」  
 うら若い男女が個室で二人だけ。セクシャルな流れになるのは或る意味自然の成り行きだ。車の中ではずっとそうだったのに、今迄そうならなかったのが逆におかしい位なのかも知れない。  
 そして、ダイゴだって今回は逃げるつもりは無い。シロナの挑戦を真っ向から受け止める気だった。心配げに見てくるシロナにダイゴは何も言わなかった。  
「しゃ、シャワー浴びて来ますね」  
 沈黙が痛かったのか、シロナがシャワールームへ行こうとする。事に及ぶ前に身体を綺麗にしたいのだろう。温泉宿からこっち、シャワーを浴びた記憶は二人には無い。相当に汚れてしまっているのは間違い無かった。  
「不要」  
「きゃっ! ぁんん……ふっ……んっ」  
 ダイゴがそれを阻止する。腕を引張って引き寄せると、シロナは成す術無くダイゴに捕まり、その唇を奪われた。  
 先ずはご挨拶の軽めのキス。お互いが喫煙者であるので、その味はほろ苦い。少しだけむずかる素振りを見せたシロナだが、ダイゴが唇を吸うと力が抜けた様に大人しくなった。  
「前に言ったろう。汗臭いのは嫌いじゃないって」  
「でも、そんなの恥ずかしい……」  
 抱き締めた時点で判る。煙草臭さに混じり、シロナの汗と体臭が混じった芳醇な匂いが鼻腔を擽る。局部は更に蒸れて豪い具合になっているだろう事は想像に難くない。だが、やはりシロナは女としてそれが恥ずかしいらしかった。  
「何故恥ずかしがるね? 寧ろ、君の全部を堪能する義務があるんだけどな、僕には」  
「それは……う、ううぅ」  
 シロナの生の匂いに興味津々な辺り、ダイゴはかなりマニアックだ。シロナとて肌を晒して受け入れる位の覚悟はあったが、まさかそんな事を要求してくるとは思わなかったらしい。  
 自分の中の恥じらいと格闘している彼女の顔はダイゴにとても可愛らしく見えた。  
「観念しなよ。数日風呂に入らない位で人間死にゃあしないさ」  
「うぅ〜、わ、判りました。……でも、少し待って下さい」  
「うん?」  
 口元に僅かな笑みを引きつつ、念を押す様に言うとシロナは諦めた。  
 が、シロナはダイゴの腕の拘束をするりと抜けると、自分の荷物の前に立ち、中身を漁り始めた。何をしたいのか判らなかったダイゴは怪訝な表情をしながらもそれを見守ってやった。  
「逃げる訳じゃないです。これが必要だから」  
 そうして、目当ての物を探し出したシロナの手には黒っぽい何かが握られていた。封が空いていないそれを見るに下着の類だろうか。ダイゴには余り興味が無い。  
「良く判らんが……好きにしてくれ」  
「ええ」  
 まあ、本人がそう言っているのだから必要なのだろう。それを止める気は無いのでダイゴはシロナの好きにさせる。すると、シロナは決意に満ちた表情で頷くとダイゴの目の前で服を脱ぎ始めた。  
 
「「・・・」」  
 お互いに言葉は無い。ダイゴは感情の無い表情でシロナを見詰め、シロナは全身を赤くして全裸になると、手に持っていたそれを着用し始めた。そして、凡そ一分。  
「お待たせ、しました」  
「――へえ」  
 ダイゴの前に立ったシロナの姿に彼は少しだけ表情を柔化させる。馬子にも衣装、と言うのはおかしいが、その姿はかなり扇情的だった。  
「随分気合を入れたな。それが君の裃かい?」  
「勝負下着、です」  
 黒いストッキングにガーターベルト。布の面積が殆ど無い黒のブラと以前に見た事のあるローレグのTバック。ちゃんと脱げる様にパンツを最後に履いている辺りは好印象だ。  
「ふむ」  
「お気に召しませんか?」  
 何時の間にこんなセクシーランジェリーを揃えていたのか判らないが、そんな物で勝負を挑む辺り、シロナは本気なのだろう。  
 だが、それを見てダイゴの顔がまた硬いモノに戻った。その心意気は買うが……  
「いや、至極どうでも良い」  
「え」  
 その理由は言葉の通り。興味がそそられない。たったそれだけ。そのダイゴの言葉にシロナの目が点になった。  
「高が布切れ数枚でどうにかなるモンじゃないさ。少なくとも僕はね」  
「ちょ、一寸待って下さい……自分が馬鹿らしくなって来たんですけど」  
 勇気ある女性のトライをそんな失礼な言葉で済ませるとはどれだけダイゴの意思は固い……否、枯れているのだろう。一世一代の女の花道を否定された気がしたシロナは涙目だった。  
「流石に僕も其処迄は言えないさ。僕も、ガーターベルトはエロくて好きだよ」  
「な、なら!」  
 ダイゴもコキ下ろしてばかりじゃあない。相手の良い部分は褒めるし、フォローも忘れない。交渉事にとってはかなり重要なテクニックだ。  
 シロナの艶姿。並の男なら蹲って動けなくなる強烈なセクシャリティを発揮するそれにはダイゴだって全くの無反応である筈が無いのだ。実際、かなりエロい。  
 
「しかし! 今、僕は無性に君を裸に引ん剥きたい気分だ! 例えそれが動物的行為と謗られようとも君の一糸纏わぬ姿に魅了されたい! 人間だって動物だ! 美しい女性の裸体に性的興奮を感じて何が悪いっ!!」  
 
 だが、ダイゴには確たる欲求が存在し、それに肖る限りはこの程度の色香に惑わされる事は絶対に無い。  
 どうやら、御曹司の意思の固さは特筆モノである様だ。……そのベクトルは別にして。  
「・・・」  
 一気に捲くし立てられたその言葉。まるで固有結界が発動した様に感じられたシロナはパンツの裾に手を掛けた。  
「脱ぎますか? これ」  
「いや、結構。効果があると踏んで着ているんだろ? なら、それに肖ってみなよ」  
 どうも乗り気じゃないダイゴの様子に、いっそ全裸になって、その状態で挑んでやろうかと思ったのだ。  
 だが、ダイゴはそれを止めた。シロナの頑張りを自分の我侭で無に帰すのは忍びなかったのだ。そして、シロナの腕を取ると再び自分の方に引張った。  
「きゃあ!?」  
 小さな悲鳴と共にまたダイゴの胸の中にすっぽり納まるシロナ。  
「あっ――」  
 その状態でダイゴを見ると、シロナはそれ以外の言葉を忘れてしまった。  
「僕に任せてくれる?」  
 ダイゴは淡く微笑んでいた。そんな顔で言われては誰だってその身の全てを相手に委ねたくなってしまう。勿論、シロナとて例外ではない。  
「は、はい……お願い、します//////」  
 やはり、シロナはそう答える。それが開幕のベルに聞こえたダイゴはそのスレンダーな身体を一瞬だけ強く抱いた。  
 
 シロナに勝負を挑まれた!  
 
「じゃあ、どうしようかねえ」  
 十分では無いが時間はある。プレイ内容について熟考するのもこの場合、吝かではない。普段は使わない頭の引き出しを漁り、ダイゴがエロの知識を脳内に巡らせる。  
「あの」  
 そうして、少しの間考えていると、借りて来た猫宜しく大人しかったシロナが恐る恐る呟いた。  
「や、優しくお願いしますね……?」  
 しっかり上目遣いで言ってくるシロナの姿はいじらしく、ダイゴの中のサディスティックな欲求を煽る様だった。  
「そんな事は判ってるって。君、初めてだろ?」  
「……判りますか?」  
 だが、その思いは封殺する。その初々しいシロナの様子を見る限り、男慣れしていない事はダイゴにだって判る。そんなお嬢さん相手に身勝手な男の欲望を押し付ける真似はダイゴの男のプライドとエゴが許さない。  
「まあね。僕も初めてなんだよね」  
「ええ!?」  
 ダイゴの次の言葉にシロナが吃驚した。そんなまさかダイゴに限ってそんな……  
 初めて同士の対決は上手く行く保障が何処にも無い事位シロナだって知っている。道中の始まったばかりだと言うに、シロナの胸は途端に不安に支配された。  
「いやいや。童貞って事じゃないよ。初物を相手にするのがって事。慎重にならないといけないだろ?」  
「は、はあ、良かった。……経験豊富なんですね、ダイゴさんって」  
 だが、ダイゴが言いたいのはそうじゃない。何か誤解しているシロナの疑念を晴らす為に説明を付け加えてやった。すると、シロナは自分の勘違いだと判った様で安堵の溜め息を吐く。出来るならシロナは全行程をダイゴにリードされたかったのだ。  
「そうでも無いさ。大学入る迄チェリーだった、と言って置くよ」  
 意外かも知れないがダイゴは性的な事象に於いて、臆病な一面があった。だが、大学に入ると彼はその苦手意識を克服する為に色々と手を尽した。  
 書物や映像で知識を磨き、それだけでは足らずに風俗をも使って実地に励み腕を上げた。未だに極め尽くさぬ身なれど、ダイゴの女の扱いは二十歳前の小僧にしてはかなりの腕前を誇っていた。  
 そんなダイゴではあるが、処女喰いは未知の領域。この状況は己の腕が何処まで通用するのかを問われている様であったのだ。  
 
「んっ」  
「中々大きいね。肩凝らない?」  
 喋ってばかりでは先に進まない。ダイゴは背後から抱き抱える形でシロナの大きなおっぱいを丁寧な手付きで触り始める。  
 触れれば指が食い込む様な柔らかさ。しっとり汗ばんでいるので掌が吸い付きそうな肌触り。加えて、ずっしりと両手に掛かる肉の重圧感。恐らくは90以上あるに違い無かった。  
「凝りますよそりゃ……はぅ……ぁ、あっても邪魔、です」  
「僕には無いから判らない世界だね。……こっちは、どうかねえ?」  
 そんな重荷を絶えず背負うシロナ本人はこの脂肪細胞の無駄遣いを快く思っていないらしい。そして、残念ながらダイゴもおっぱい星人では無いので興味を向ける事は無い。  
 乳弄りもそこそこにダイゴは片手の指をシロナのショーツのクロッチ部分に伸ばす。そして、爪でカリッと芯を持つ突起部分を引っ掻くとシロナが鳴いた。  
「ふきゅううううぅぅ!!」  
「――おや?」  
 今迄聞いた事の無い可愛い泣き声。何が起こったのか少しの間、呆然とするもダイゴは全てを理解し、顔面全体に極悪な笑みを張り付かせた。  
「――あ」  
 自分自身、こんな声を出せるのかと口元を急いで覆うも、もう遅い。弱点が露呈してしまった以上、ダイゴがシロナの其処を愛でない道理は無い。  
「ふ、ひ、ひひひひひひ……っ!」  
「ひぃ」  
 不気味な笑いにシロナが引き攣った声を漏らす。ダイゴの女の趣味。それはクリトリスが大きくて敏感な女。正にシロナはその趣味を満たすのに打って付けの相手だった。  
「成る程ね。其処が、ツボか。……黄金のお触ラーの腕前、とくと見よ!」  
「ぁ、や――」  
 ゴキゴキと十本の指を鳴らし、ダイゴが敵陣地の攻略に乗り出す。戦略爆撃に晒される塹壕の中の歩兵みたいに、シロナはその時が過ぎるのを今は堪えるしかない。  
 
「堪らないね、こいつは。自分でも随分と弄ってるな?」  
「しっ、知らない……! 知りませんよぅ……!」  
 布地を横にずらして露出したそれを丁寧に弄る。顔を出したシロナの豆は包皮が捲れ上がった状態で天井を向いて屹立していた。  
 シロナは元来、自分で慰める時には外性器の刺激を当てにしていた。だが、去年のテレビ報道以来、その回数は爆発的に増加し、散々自分の手で開発されたその部分は小豆並みの大きさになってしまっている。  
 シロナとしても少し気にしていた部分であり、何だかそれを詰られた気がして顔を恥ずかしそうに左右に振った。  
「実に僕好みだよ。涎が出そうだ……!」  
「っ……んんっ、ふう、ふぅ……気に入った、んですかぁ?」  
 だが、ダイゴはシロナを苛めたい訳ではない。小指第一関節の大きさのシロナのクリトリス。弄る度に腕の中で震えるシロナが年齢以上に幼く見えて、もっともっと喘がせて見たくなる。  
「こんなデカい豆、自重しろって方が無理だよ。もっと弄れば更に大きく育つかなあ?」  
「やだ! やだぁ! 弄っちゃ駄目ですよぅ! あ、んんんぅ……!」  
 封殺したと思っていたダイゴの欲望が鎌首を擡げる。実に自分好みの身体をしているシロナを好きに開発し、開拓してやりたいと言う衝動を抑え切れなくなりつつある。  
 指の腹でもどかしい位の速さで円を描く様にくりくりと突起を転がしてやるといやいやと頭を振りながらシロナは甘い喘ぎを漏らした。  
「あー、糞。布が邪魔だ。脱げ」  
「え……」  
 とうとう苛立った様にダイゴが零した。クロッチ部分を脇に押さえるのが面倒臭くなったのだ。シロナにその旨を催促すると、彼女は戸惑った。  
「もうとっくに洪水だろ。再利用考えるならそれが良いと思うけど?」  
「そうですけど……!」  
 割れ目から滲む透明な汁はかなりの量でベッドシーツに暗い染みを残している。当然、シロナのショーツもその被害を受けていて、放置すればお釈迦になってしまう程の濡れ具合だった。  
 だから、観念してとっとと脱げと理論的に降伏勧告をするも、シロナの羞恥心がその受諾を容易にさせなかった。  
「ええい、先に進まん。脱がすよ」  
「ああっ!? ちょ……」  
 流石に業を煮やしたダイゴが往生際の悪いシロナに止めを刺すべく、その黒い布地を引っぺがし、序にブラのホックも外して殆ど裸の状態に引ん剥いてやった。  
 
「……おお」  
「うう……(涙)」  
 ストッキングとガーターのみになったシロナの姿にダイゴが嘆息する。己の美意識を刺激して已まない女性の艶姿に目を奪われてしまう。  
 そんな状態にされたシロナは両手で胸を覆って、涙目の恨めしい視線をダイゴに向ける事しか出来ない。  
「綺麗なモンじゃないの。恥じ入る事は無いさ」  
「ううぅ……ダイゴさんのえっちぃ……!」  
 パッと見、スレンダーだが、出る部分はしっかり出ていてグラマラス。俗に言うモデル体型と言う奴なのか、そんなシロナの朱の差す白い肌にアクセントの様に映えるガーターの黒がとてもエロい。  
 そして、取り分け目を奪われるのが、室内の光を照り返す彼女の下半身。そこには髪色と同じ黄金色の薄いアンダーヘアが生えていて、その直下にはそんな美しさとは対極に当たる様なピンク色の大きな肉芽が顔を覗かせている。  
 劣情以外の感情をダイゴの内部に呼び起こす様な光景だった。シロナは尚も涙目でダイゴを睨むが、その視線がダイゴのスイッチを押した。  
「男がスケベで何が悪い!」  
「あひいいんんんっっ!!」  
 ダイゴがシロナを押し倒し、勃起した肉の塊を抓み上げると、力の限り捻り上げる。そして、そのまま乱暴に上下に至極とシロナは歓喜とも苦痛とも付かない悲鳴を喉から搾り出した。  
「弄り倒して君のスケベ成分を引き出してやるよ」  
「あっ! あっ! あんっ! あんっ! んああああ……っ!!」  
 チュコチュコシコシコ。クリ豆を苛めるダイゴは耳障りの良いシロナの可愛い喘ぎ声を聞きながら、シロナの耳元で囁く。その顔は愉悦に歪み、恐ろしさを感じさせる暗く冷たい微笑が張り付いていた。  
 
 
――数十分経過  
「ひっ、ひう、ぅ……んくっ、ふぐう……ぅ、うああ……」  
 言葉を忘れてしまった様に泣き喘ぐシロナ。腰は完全に浮いていて、開脚した脚もビクビクと痙攣している。  
「良い匂いだね。ほんと堪らねえ。味も絶妙だし……」  
「はああああ……ふはあああああ……♪」  
 頬に流れる涙の筋。口の端からだらしなく零れた涎。天国を垣間見ているであろうシロナを他所に、ダイゴはシロナの下の口にキスをしている真っ最中だ。  
 塩味の中に混じる酸味。どろっとした白濁した桂冠粘液は彼女が本気で感じている証だろう。肺を満たす穀物が醗酵した臭いとチーズ臭のブレンドはシロナのそこがかなりの上物であるようにダイゴには感じられた。  
「…………ふむ」  
 口元を伝う生臭い汁を拭わずにシロナの様子を見るダイゴ。  
 荒い息を付き、時折痙攣しては喘ぎ声を漏らし、尻の穴を開いたり窄めたりしながら、白色の本気汁を滾々と溢れさせている。弄り倒された彼女のクリははち切れんばかりに充血して赤黒い姿を見せている。  
 ……誰から見ても大分出来上がっている状態。これはもう本丸に挑む条件を満たしたのでは、と踏んだダイゴは確かめてみる事にした。  
「どれどれ」  
「あう」  
 にゅぷぷ。人差し指を割れ目に差し込んでみた。少しだけシロナが声を上げたがたったそれだけ。特に窮屈さや違和感は得られず、ダイゴの指は容易くシロナの女に飲み込まれる。  
 今度はもう一本指を増やして半分程埋めてみたが、今度は反応すら返って来なかった。  
 ダイゴはシロナに対し、気付けを行う事にした。  
「それ! お目覚めの時間だよ!」  
――ガリッ  
「ひぎゃあ!?」  
 ビンビンに滾ったシロナの小豆をダイゴは軽くだが噛み潰してやった。その激痛を伴う刺激に死んでいたシロナが絶叫と共に復活を果たす。  
「がっ、ぁ、あひぁあああああ――――っっ!!!!」  
 ダイゴは止まらない。高速で指を抜き差しし、グレフェンバーグと思しき場所を指の腹で擦り捲る。同時に、クリを極限まで吸引してその裏筋を舌先で左右にブラッシングしてやった。  
 暴れ馬の如く脚や腰をバタ付かせ、悲鳴に近い声を撒き散らすシロナ。割れ目からピュッと噴出した何かの液体がダイゴの顔を汚す。ダイゴは最初それを小便かと思ったが、アンモニアの臭いは無かった。  
「んむっ……気付いたかい? 誘ったのは君なんだからもっとしっかりしなよ」  
「や、めっ! もう止めてえええええええっ!!」  
 口を勃起クリから離して、それでもGスポットへの愛撫を止めないダイゴは顔を拭いながらシロナに向けて笑い掛ける。  
 涙を零しながら中断を懇願するシロナは全身をガクガク震わせて潮をシーツの上にブチ撒いていた。  
「え、そう? ……残念」  
「はっ、あっ……はああ……ぅ、あっ……」  
 少し、弄り過ぎた。顔には出さないがそう思ったダイゴは言われた通りにしてやると、シロナはピタリとは行かない迄も、大分落ち着きを取り戻した様だった。  
 少しの間だけ、身体の震えが止まらなかったが、それもほんの僅かの事だった。  
 
「んじゃ、名残惜しいけどそろそろ本番と行こうかね」  
「……っ//////」  
 これ以上、どれだけ弄った所で変わりは無い。そう判断したダイゴは封印していた一物を解き放つ決心をした。  
 その手初めとして、上に来ていた胸元の開いたセクシーなシャツを脱ぐ。  
 すると、シロナの視線はダイゴの半裸の上半身に向けられ、魅了された様に目が離せなくなった。  
 腕の太さから言ってそれ程体格が良い訳では無いと勝手に思っていた。だが、目の前に存在する男の鋼の肉体には女である自分ですら嫉妬する色気が満ちている。  
 完全な逆三角形で、腹筋は綺麗に割れている。胸筋や背筋ははっきりと見える形でその存在を浮き彫りにし、触れば適度に柔らかそうな印象すら与えて来る。  
 まるでボクサーの様に絞られた身体の基礎はきっと趣味の石収集の過程で勝手に形成されたモノなのだろう。だが、ダイゴの肉体はシロナを以ってしても目に毒だった。それ程の危険な色気を放っていた。  
「? ――――っッッ!!?」  
――ジジィー……ぶるるんっ!  
 そして、ジッパーから飛び出したそれを見てしまったシロナ。今しがた頭に思い浮かべた女の劣情の綺麗に吹き飛ばして戦慄し、今度こそ目を奪われた。  
「何だい? 何か珍しいものでも?」  
「あ、ぁ……ぅ、嘘……」  
 それはペニスと言うには余りに太くて無骨、そして長くて大き過ぎた。天を摩す峨々たる怒張。  
――それは正に肉塊だった  
「嘘じゃないんだなあ。君にはこいつを根元迄喰って貰う訳だ」  
「む、無理です!! そんなの絶対……!」  
 ハガネール。シロナの頭に自然と単語が湧き上がった。  
 太さ、長さ、雁の高さ。どれを取って見ても規格外の一物。成人男性の平均的なそれについてシロナは知っていたが、目に映るそれはどう見てもその範疇には収まらない。  
 子供の腕位は楽にあるそれ。細身のスプレー缶と言った佇まいの肉の槍は青筋を走らせ、ビクビクと透明な先走りを先端から漏らして泣いている。  
 そんな対戦車ライフルが挿入る訳が無い。シロナは恐怖で涙目だった。  
――ピクッ  
 そんなシロナの反応が癇に障ったのか、ダイゴがまるで親の仇を見る様な凄まじい形相でシロナを睨んだ。  
「あー、煩せえ女郎だなあ。そっからは赤ん坊だって出て来んだよ。貴様が責任持って気合で咥え込めや」  
「や、止めて……! お、お願いですダイゴさん! 怖いよう……!」  
 若さ故の過ちか否か。どうにもダイゴは感情が昂ぶると素の自分を晒してしまう弱点があるらしい。平時であるならばこんな戯けた間違いは早々犯さないが、ダイゴだって若いのだ。化け物を見る様な視線を向けられればこうもなってしまう。  
 前に温泉宿で垣間見た恐ろしいダイゴが降臨してしまった。挿入られる事も勿論だが、そんな怖いダイゴを見るのはもっと嫌だった。  
 だから、シロナはゆっくりと迫って来るダイゴに、早く自分の知っている優しい姿に戻って欲しくて、頬に涙の筋を伝わせて訴えた。  
 
「…………大丈夫。その為に余計に弄ったんだ。君ならきっとやれるさ! 頑張るんだシロナ!」  
「ダイゴさん……」  
 それにハッと気付いてダイゴが平常心を取り戻す。  
 いかんいかん、変身していた。不用意に相手を怯えさせるのは趣味じゃない。  
 ダイゴは本丸への門を力尽くでこじ開けるのではなく、シロナ本人に訴えて自分から開けさせる道を選んだ。  
 ダイゴ自身、自分の竿の大きさについては理解しているのだ。無理矢理やってしまえば、それは禍根を残す結果となる。それだけは決して犯してならないこの場に於けるタブーだった。  
「此処で止めても良い。でも、それで後悔は無いのか? 本懐遂げるんだろ? なら、君の女気で俺を魅了してくれよシロナ!」  
「!」  
 何時もの様に君付けで呼ぶ事を放棄し、しかも一人称が僕ではなく俺。  
 その事がダイゴの心に一歩踏み込んだ証の様に感じられて、シロナは途端に嬉しくなった。  
「そう、ですね」  
 真剣に見据えてくるダイゴの白銀の瞳。  
 ……一体、何を恐れていたのか。こうする事が当初の望みで、それはもう後一歩の所で叶うのだ。為らば、こんな所で足踏みはしては居られない。必要なのはほんの一握りの勇気と覚悟。たったそれだけ。  
「お願いしま……ううん」  
 蝦夷っ娘として、女として、生きた証を立てさせて貰う!  
「来て、ダイゴ!」  
「よっしゃあ! もっこすの気概を見せたるけんのう!」  
 シロナは腹を括り、両腕と両足を開き、ダイゴを招く様にその身体を開く。極上の笑みを浮かべながら。  
 敬語とさん付けが無くなった事にシロナの想いの深さを知ったダイゴは火の国の漢の魂を刻み付ける為に己の分身をシロナの淫裂に宛がった。  
 ……彼が熊本人かどうかは甚だ怪しいが、それは気にしたら負けだ。  
 
「んんぅっ!」  
 先端が進入して来た。引っ掛かりや痛みは無く、多少の圧迫感だけであっさりあの巨大なモノの先を飲み込んだ事はシロナ自身としても予想外。女体の神秘と言う奴だった。  
 そうして、ダイゴは少し進んで膜と思しき抵抗がある場所で一端止まる。  
 ゆっくり行きたい所だが、それはシロナの苦痛を長引かせる事でもある。介錯を引き受けたならば、情は交えずに一撃で首を落としてやるのが武士の情け。  
 ……そして、この場に於ける男の優しさと言う奴だ。  
 ダイゴはシロナの黄金の瞳を一度見て、微かに微笑んだ。  
「せーの、新・日・暮里♂っ!」  
「んん――――っっッッ!!」  
 一端腰を引いて、シロナの腰骨を掴み、強いストロークを叩き込む。  
――プツッ  
 先端に纏わり付く膜の障害を一気に引き千切り、ダイゴのフェアリーエクスプレスがシロナの最奥へと到達した。  
「っ、ぐ……貫通、おめでとう」  
「は、ぁ、あ……あ、かはっ……」  
 到達の瞬間からもうシロナの中は熱烈歓迎をダイゴに見舞って来た。その歓迎会に少しだけ呻き、ダイゴはシロナを見る。  
 涙を零れさせ、大きく息を吸って足りない酸素を体中に行き渡らせている様なシロナの姿。少しだけ胸にきゅんと来たのでダイゴはその労を労う事にした。  
「そしてようこそ」  
『大人の世界(性的な意味で)へ』  
「んっ……♪」  
――ちゅっ  
 シロナの呼吸を阻害する様にダイゴは唇をシロナのそれに覆い被せる。すると、シロナは両手両足全部でダイゴを掻き抱き、嬉しそうに舌をダイゴの口へ差し入れる。  
 積極的なシロナに多少驚いたが、ダイゴは憚る事はせず、同じ様に自分の舌をシロナのそれに絡み付かせ、唾液を啜ってやった。  
 感極まった様にシロナの目から大粒の涙が一つ零れた。  
 
「相当キツイだろう事は判るよ。やっぱり、痛いかい?」  
「い、いえ……っ、痛みは大丈夫……けど、お腹が、苦しい……」  
 体面座位の格好でダイゴはシロナを抱き締めていた。苦しげに息を吐くシロナは辛そうに顔を顰めている。  
 規格外のダイゴのハガネールを咥え込んだシロナは文字通り気合でそれを成したと言っても過言ではない。裂けて血が出ていない事が不思議な位だった。  
 無論、ダイゴによる入念な前戯がそれに一役買ったのは間違い無いが、未だに男を知らないシロナにダイゴのそれは矢張り大き過ぎた。  
 膣の伸縮限界に迫る様な容積の肉の柱は子宮を押し潰し、他の内蔵を上に押し上げている。それ故の圧迫感だった。  
「そりゃあ慣れて貰うしかないかな。……で」  
「あぐっ! くっ……」  
 破瓜の痛みが和らいだのならば、それで御の字。しつこい位ねちっこく弄った甲斐があったと言うモノだ。しかし、生本番と言うのは只嵌めて終わりではない。嵌めて、その果てにある絶頂目指して駆け抜けなければならない。  
 試しに、ほんの少しだけダイゴがシロナの身体を竿を中心に揺さぶってやると、彼女の顔には明瞭な苦悶が浮かび、何かを耐える呻きも口から漏れた。  
「駄目、か。慣らす必要があるなこれは」  
 初めて男を受け入れたのならそれも頷ける。男を喰い締めて奥の深い部分で快楽を得るにはシロナの性感は未だに幼いのだ。直ぐによがり狂えと注文を付けてもそう簡単に順応出切る筈が無い。  
 ダイゴはゆっくり頷くと、本丸の攻略を一端休止する事にした。これ以上を望むならば、シロナが心と身体を開いてくれなければどうにもならないからだ。  
 
「ダイゴ……あたしの事は良いから、動いてくれても」  
「そいつは却下。君ばっか苦しい思いをするなんて僕のプライドが許さないんでね。きっちり中逝きを経験して貰うよ」  
 自分の事は無視して好きにやってくれとシロナが誘惑する。だが、断固としてダイゴは首を縦に振らない。実際、挿入ているだけでも気持ち良いし、動かさない限りは萎える事はあっても暴発は絶対に無い。  
 何よりもこの場で真っ先に気遣わないとならない事はシロナの状態である。それをおくびにも出さず、ナチュラルにやってのけるダイゴは天然の誑しである可能性が高い。  
「気遣ってくれてるの? ……優しいんだ、ダイゴ」  
「そいつは勘違いだよ。優しくなんて無い。只の我侭さ」  
 女の初めては後々迄記憶される重大なメモリアルに成り得るイベント。そんな初めてのシロナの性体験を歪なモノにする事は男として出来ない。  
 それがダイゴの抱える優しさの正体。本人はどうもそれを認めたくないらしい。  
「うん。ずっとあたしの中で勘違いのままにしておくね」  
「……好きにしてよ」  
 そんなダイゴの漢気にきゅんきゅん来たシロナは苦痛を忘れて嬉しそうにダイゴに体を擦り付けた。  
 フェミニストを気取る気は更々無いダイゴはシロナの好きな様にさせる。シロナの嬉しさを象徴するみたいに、膣肉が蠢動してハガネールも分厚い装甲を削り出す。だが、ダイゴの鋼の装甲はその程度でびくともしない。  
 逆に、胸板に密着するおっぱいの圧力の方が苦しい程だった。  
 
 
――凡そ小一時間経過  
「はあ、はあ、ハア、はぁ……はー……っ」  
「こう言うのだよな、君が求めていたのは」  
 シロナを点す為に我慢強くダイゴは粘り続けた。差し入れた一物を萎えさせない様に、細心の注意を払いつつ、愛でる様にシロナを触り、時にはキスをし、ある時は甘い言葉を耳元で囁き続けた。  
 女のエクスタシーはメンタルな部分に占める割合が多い。やろうとすれば困難極まるそれを見事にやってのけるダイゴは相当な手錬である事は疑い様が無い。  
「ん……んぅ……そう、なのかな……」  
 心満たされれば、自然と身体が開く。シロナの心に訴え続けたダイゴの作戦勝ちだ。  
 望みは既に叶ったが、本当は一体どう言う風に愛されたかったのかシロナの頭には漠然としたイメージしかない。だが、ダイゴによって施されるそれが何に勝って心地良い事は確かだった。  
「実際、塩梅はどうなのさ。さっきからナニが熱持ってる感じがね。放っといたら君に溶かされそうだよ」  
 最初は緊張して頑なだったシロナの女は今では蕩ける程に泥濘み、結合部から白い粘液が溢れ出ている。孕んだ熱が一物を焼く様で満足に動けないダイゴはかなり窮屈な思いをしていた。  
「凄く、ぁ、熱くて……お、お腹が切ないの……! きゅんきゅんって勝手に反応して、疼くの……」  
 ワナワナと閉じた瞳を震えさせ、シロナは熱い吐息混じりに漏らす。意思を無視するみたいに膣壁と襞がダイゴを奥に誘おうと蠢動している。  
 簡単に要約すると、もう辛抱堪りませんって所だろう。  
「えーと、つまりそれは……」  
 シロナの言いたい事が何と無く判ったダイゴは先程そうした様に軽くシロナの奥を小突いて揺すってやる。  
「ふああああ……♪」  
 その声と表情が全てを物語る。作戦再開のゴーサインは既に出ていた。  
「解れたって解釈させて貰うよ」  
 だからと言っていきなりがっつく様な真似をしては、それは変態紳士としては二流。最早、落城は時間の問題だと理解したダイゴは最後の仕事に取り掛かる様にゆっくりと腰を動かし始めた。  
 
「んあっ♪ あはっ♪ ふは♪ っあ♪ あはぁ♪」  
「良い感じだね。此処迄引張った甲斐があったってもんさ」  
 トン、トンとリズムを刻む感じで奥側を軽く突く。それに反応してシロナの小気味良い喘ぎ声がダイゴの耳に抜ける。何故か楽器を演奏している気分になるダイゴだった。  
「な、なんれ……あらひっ! は、初めてらのに、き、気持ひ良いよぅ……♪」  
「そう言う風に誘導したからさ。いや、初めての試みだったけど成功したみたいだ」  
 惚けて呂律が回っていないシロナ。その顔はだらしなく緩み、涎が口の端から滴っていた。その様子はとても先程迄処女であったとは信じられない痴態だった。  
 そして、何故かと問われれば、それこそがダイゴの手腕だった。嵌めたまま動かず、緊張が解れるのを待ち、愛撫や言葉でシロナの心に火を点けて、身体がその気になる様に燃えさせた。  
 ポリネシアンセックスに通じるやり方が実を結んだ結果であり、シロナが経験の無い女でも例に漏れなかったのだ。  
「んんふぅ……ふっ、んん♪ くぅうんん……ンッ♪ ンッ♪」  
「あー、しょうがないなあ。一気に攻め落とすか」  
 完全に頭の螺子が跳んでいる様なシロナは最早人語を解す段階に無いらしい。会話がもう成立しない事に呆れる様にダイゴは腰を抜ける寸前迄引張り、渾身のコメットパンチをシロナのパルシェンにお見舞いしてやった。  
――ぶぢゅうっ!  
「ッッ――!!?? ぁ、ああ……!」  
 タイプ相性的に水と氷が相殺し合って、鋼攻撃は等倍計算。しかし、今のシロナはダイゴの計らいで物理防御が裸同然迄下がっている。加えて、この瞬間の為に力を溜め込んで来たダイゴのハガネール。  
「ふああああああああああああ――――っッッっ!!!!」  
 当然、耐え切れる道理は無い。シロナはカッと目を見開き、身体を弓形に仰け反らせ、経験した事の無い激しい絶頂に襲われた。  
 
「喜んでくれてる様で何よりだね」  
「まっ、ちょ、と、止まってえええええ! あらひ、今逝っ! 逝ってるのぉ!!」  
 ダイゴの口調と顔は柔らかいが、腰の動きは極悪。うねうねと左右にグラインドさせ、上下に竿を操って膣を擦り上げるワイリングをも織り交ぜる。コンボ数は500を軽く突破しているのでボーナスは15万は最低保障される。  
 絶頂を迎えている最中にそんな派手に動かれては何時迄経っても波が収まらない。エクスタシーの大波に精神を浚われそうになっているシロナは涙を流しながら中断を懇願する。  
「結構。その調子で今度は僕を導いてくれ。じゃなきゃ何時迄経っても終わらないよ?」  
 だが、ダイゴがそれを聞く理由は無い。寧ろこれ位狂った譜面配置の方がダイゴには心地良いので、自分の快楽を優先して腰を高速でピストンさせた。  
「あーっ! あーっ!! んああああああーっ!!」  
「……話、聞いてる?」  
 衝かれる度にダイゴの高い雁首が敏感な部分を擦り、全身に電気を走らせて、思考を白く塗り潰す。涎と涙で化粧したシロナの顔は随分と魅力的にダイゴには映る。  
 しかし、それはあくまで意思疎通が可能と言う前提を経たモノであって、再び言葉を忘れて牝に成り下がってしまったシロナにダイゴが感じ入るモノはそれ以上無かった。  
「あ、ぁ……っはあ…………♪」  
「返答無し、ね。義理は果たしたから勝手にさせて貰うよ」  
 一端ピストンを止め、ぺしぺしとシロナの頬を張ってやるも、人間らしい反応は返って来ない。そんな相手に掛ける情けは既に無いと、死刑執行を告げる様にダイゴがフルパワーを発揮する。  
「んひぃ……! んぃいいいいいいいいっっ!!」  
 両手両足の爪でシーツを掻き毟り、びゅるびゅる潮を噴く。普段は綺麗な姉ちゃんなのにこんなケダモノじみた咆哮と姿を晒しては全てが台無しと言うモノだ。既にホテルの個室全体がシロナの放つ生臭い獣臭に満たされていた。  
 
 其処から更に数十分経過。ダイゴのハガネールはその質量は圧倒的だが、高い物理耐久が仇となり絶頂迄の道程が果てしなく遠い。もうカウントする事も億劫な程快楽地獄を経験させられたシロナは本当に壊れてしまいそうだった。  
「またぁ……! ま、また来ちゃう……来ちゃうよおぅ……!」  
「はっ、はっ……あ、後一歩! だけど、そいつが遠いな、糞」  
 シロナが掠れ果てた声で何とか呟く。身体はもう殆ど動かずにダイゴにされるがまま。  
 全身汗でびっしょりのダイゴはやっとゲージが点滅した事を悟った。これでもかと言う程シロナの秘洞を掘削し、耕すダイゴは或る意味鬼だった。  
 
「ダ、イゴぉ……♪」  
「し、シロナ」  
 生まれて初めての目交いがこんなにも濃厚で、心を亡くす程に激しい。もうシロナの魂にダイゴの存在は嫌って位に刻み込まれ、トロトロのメロメロだ。他の男の存在を挟み込む余地が無くなる程に。  
 牝として服従した事を示す様に、がっちり既成事実固めをお見舞いするシロナは最後の力を振り絞っていた。絶頂に際し迸る男のリキッドを全て飲む為に。  
 その行動がダイゴの背筋をゾクゾク震わせ、一物の耐久力が一気に削られた。  
「で、出ちゃう? 精液出ちゃう? あっつい赤ちゃん汁シロナの中に射精しちゃうの?」  
「ああ、そのつもりだ。僕のポリシーだから」  
 ビクビク震えるダイゴ自身の戦慄きを察知したシロナが涙顔で問うと、ダイゴは頷いた。  
 是非も無い事だ。抱いた以上は生で膣内射精しこそがダイゴの信念。それは相手が誰だろうと変わる事は無い。だから、ダイゴはシロナに対しそうするのだ。  
「妊娠……赤ちゃん……お、お嫁さ、んっ! んんんぅうううううぅ――!!!!」  
 ダイゴの本気が知れたシロナは種付けされる自身を思い浮かべ、一際大きな絶頂に達する。泣き叫びながら天辺に昇り詰めたシロナは図らずもダイゴの最後のスイッチを押してしまった。  
――ガブッ  
「ぐっ!? つ……く、ぅ……っ」  
 肩口に鋭い痛みが走り、その痛みの中でダイゴは渦巻いていた男の白い欲望全てを解き放つ。  
 
 ダイゴのラスターカノン! 急所に当たった! シロナは潮噴いて倒れた!  
 
 その量は凄まじく、子宮の吸い込みを超えて吐き出される精液が本気汁と混じって結合部から泡と共に溢れ出した。  
「ふー、んふーっ、ふぅー……♪」  
「……こいつは、可愛いジョニーの分、ってね」  
 ダイゴの肩に噛み付いたシロナの口からは鮮血が滴っていた。それを啜り、本能的に腰をくねらせる。子宮にびゅるびゅる注がれるゼラチンの様な硬さを持った熱い奔流にシロナは内部から焼かれた。  
 マーキングされた精液の味と匂いを子宮に覚え込ませる様に深くて長い絶頂をぽろぽろ涙を零しつつ甘受する。  
 ダイゴはシロナの犬歯が肉を裂いた事による肩の痛みが癖になりそうな程に気持ち良くて、普段よりも余計に精液を吐き出していた。  
 長い射精の最中、ダイゴは頑張ったシロナを褒める様に噛み付いたままの頭を撫でてやると、彼女は嬉しそうに身を捩り、彼の一物をぎゅっと抱き締めた。  
 
「シーツが一寸汚れたか。まあ、許容範囲かな」  
「くすん……すん、ぐすん……」  
 シロナと言う城の攻略を終え、ダイゴが埋まっていた破城鎚を抜き放つと、その幹には赤黒い血がべっとりとこびり付いていた。  
 同時に割れ目からトロトロと溢れ出す少しだけピンク色をしたザー汁とマン汁、破瓜の血のカクテル。それをティッシュで拭いながらベッドに目をやると、少量の赤い染みがシーツの表面に刻まれていた。  
 これだけ派手にやってこの程度で済んだのなら、十分過ぎる結果だ。実際、それ以外の汁による被害が甚大なのでシーツは引っぺがさないとならないが、それに触れる気はダイゴには無い。  
 どうしてかは判らないがシロナは洟を啜って泣いていた。  
「あー……えっと」  
「ゴメン……ゴメンねダイゴ……血が……」  
 後始末に追われていたダイゴがその手を止めてシロナに注目した。少し待っていると、シロナが辛そうに言葉を搾り出す。無論それは血で汚れたシーツの事ではない。ダイゴの肩にある歯型の事だった。  
「え? ああ、気にしないでよ。結構、気持ち良かったから。って言うか、怪我人って意味じゃ、君の方が重症だろ?」  
「でも……」  
 肩の傷についてダイゴは何も言う気は無いし、恨んだりも怒ったりもしない。寧ろ、シロナの経験した痛みを少しでも共有出来た気がして逆に誇らしい気分だった。  
 だが、シロナは大好きなダイゴを図らずも傷付けてしまった事に大きなショックを受けている様だ。瞳に夕焼けが差す程に泣き腫らしたその色はオレンジ色だった。  
「気にし過ぎだ。シロナが満足してくれたなら、それで良いよ。……どうしても気が済まないって言うなら」  
「っ?」  
 後始末を放り出して、ダイゴは小さくなっているシロナの身体を強く抱いてやった。弱々しく泣いている女が目の前に居るのだ。此処で包んでやらにゃ漢が廃る。  
 そして、ダイゴは戸惑っているシロナの茜差す目を見ながら言った。  
「キスの一つでもくれよ。僕はそれで良い」  
「そんな事で、許してくれるの?」  
 要求はたったそれだけ。難しい事は何一つ無い。シロナの中の蟠りを解消するには一番良い方法だとダイゴはそう思った。  
 実際、それはシロナにとっても簡単な事。だが、その程度で自分の愚行を水に流してくれるダイゴの真意が良く判らない様で、相変わらず不安げな瞳をダイゴに向けた。  
「許す許さないじゃ無くて……まあ、そう思いたいならそれで良いよ」  
 最初から怒っていないのだからこれ以上気にされてもダイゴとしては困る。だから、その辺の解釈はシロナに任せる事にした。  
「……欲しいんだよね。心からの君のキスがあれば、傷も直ぐに塞がるさ」  
「……うん♪」  
 納得させる様に付け加えたダイゴの言葉に、やっとシロナは得心が行った様だった。  
ダイゴは怒っていない。それ所か、こちらに気を遣ってくれている。底抜けに優しいダイゴに身も心も全てがときめいた。  
 もうシロナは自分の気持ちを抑えられなくなり、心にある言葉を素直に口走るとダイゴの唇にむしゃぶり付いた。  
「ダイゴ……好き……♪」  
「シロナ……」  
 情熱的なキスが連続で降り注ぐ。だが、ダイゴにとってそんな事は瑣事だ。  
『ダイゴが好き』  
 初めて聞いたシロナの明確な好意。その言葉に呪縛された様にダイゴは動けず、シロナの気が済む迄唇を犯され続けた。  
 
「僕の何処が気に入ったの?」  
「さあ? 自分でも判らない。気付いたら、もうどうにもならなくなってた」  
 後始末を終えて、タオルケットを被って横になる。ダイゴに密着して、その腕を枕にしているシロナ。ピロートークの御題はシロナがどうしてダイゴに執着するのか。  
 しかし、残念ながらそれはシロナ本人にも皆目検討が付かない事だった。一目惚れとは違う。だが、逢いたいと言う感情は去年からあって、手掛かりを掴んでからそれは変質し、この十日前後で完全に恋慕に変わった。  
 ……だから、さっぱり訳が判らなかった。  
「君、絶対男見る目無いよね」  
「ふざけないで。あたしが好きになった貴方がそんな悲しい事言わないでよ」  
 起点となった感情の正体は判らなかったが、それでもダイゴはシロナが見る目無しだと言う事を信じて疑わない。自分の様な人間の塵芥、ストーンファッカーに心と身体を許す等、並みのチャレンジャーに出来る事では無いからだ。  
 だが、そんなダイゴの発言にシロナが真っ向から噛み付く。ダイゴが自分の品位を下げる様な事を言えば、そのダイゴに惚れた己の立場が無くなる。抱いた思いを汚される様な言葉は例えダイゴだとしても許せなかった。  
「そ、だね。……悪い」  
「んもう」  
 失言に気付いたダイゴが謝罪するも、それに怒ったシロナはプイッと顔を背け、ダイゴに背中を向けてしまった。何と言うか、そのシロナの姿はとても可愛かった。  
「……離れたくないなあ」  
 背中を向けたままシロナが零す。怒りの感情は直ぐに沈静化し、今度はその隙間に寂しさが滑り込んで来た。それを無視する事は出来ない。  
「一緒に居たい……」  
 もう半日もすれば、目の前からこの男は居なくなってしまう。引き止めるのが無理だと判っていても、そんな甘い希望に縋りたい。  
 願いを叶えて、心と身体で繋がった。それで良いと思っていたのに、今はそれだけでは足りなくなっていた。  
 愛欲と言う奴は求め始めればキリが無い。例え強欲と罵られ様ともその味を知ってしまったシロナが我慢何て出来る筈が無かった。  
「もっと長く……もう少しだけ……」  
「そんなに、僕が好きなの?」  
 シロナの顔は見えない。だが、それでも彼女が涙を必死に堪えているだろう事は予測が付く。だから、ダイゴは訊いた。シロナの自分に懸ける思いを。  
「うん……好き。大好き」  
 飾る言葉が一切無いシンプルな回答。だが、それに滲む女の情念は筆舌に尽し難い。そいつを聞いてしまったダイゴに撤退の二文字は最早存在しなかった。  
 だから、ダイゴはシロナの思いに対する自分なりの答えを提示してやった。  
 
「そっか。なら、いっそ付き合うかい?」  
 
「うん…………え?」  
 シロナは内容を確かめず反射的に頷く。そして、何を言われ、何に同意したのか後になって気付いて目が点になった。  
「責任云々を言うつもりは無い。順序が逆な気もするけど、それだけ思われて心を動かされないのも如何かと思うんだよね」  
「は、はいぃっ!? あたし、とダイゴ? 付き合うって、こ、恋、人?」  
 ダイゴの言葉は半分以上耳から向こう側に抜けてしまった。只判るのはダイゴと自分の関係が一段階深くなりそうだと言う事。  
 こんな神展開はシロナにとっては大誤算。まったく予想だにしていなかった。  
「ああ。君が望むって言うなら僕もそれ相応な覚悟で当たらせて貰おうかな、と」  
「・・・」  
 一寸だけ落ち着いて、気持ちが整理出来る余裕が出来た。確かにダイゴの言う通り、真っ当な順序を踏むなら、ファックと告白は逆でなければならない。  
 それを早々に終わらせた今のシロナに怖いモノは無いし、この場で望めばダイゴの恋人と言う地位を確保出来る。  
 全ては自分の気持ち次第。とんとん拍子に流れる展開に作為的な何かを感じたシロナは警戒したのか、その一言が中々言い出せなかった。  
「厭なら聞かなかった事にしてよ。その気が無いのに無理強いしたってね」  
 何時まで経っても次の言葉が無いので脈が無いとダイゴは感じたのだろう。少しだけ気落ちした声色で残念がる。  
「あ、あの」  
 このままでは時間切れになってしまう。シロナは起き上がると姿勢を正し、正座の格好でダイゴに立ち向かう。  
「何?」  
 その様子が普通じゃないと感じたダイゴもまた、姿勢を崩したまま起き上がった。そして、ベッドの上で二人はお互いを見合う。  
「ふ、不束者ですが、よろ、宜しくお願いします……//////」  
「……あはは、こちらこそね」  
 紅葉を散らしたどたどしく言ったシロナは今にも三つ指を付きそうだった。流石に其処迄はして欲しくないダイゴは代わりにぎゅっとシロナを抱き締めてやった。  
 
 
――翌日 シンオウ空港  
 やや早い時間に起きてシャワーを浴びて身支度を整えた。チェックアウトを終えて寝床を引き払い、電車に乗って一時間弱で空港に辿り着く。  
 ホウエンへの土産を幾つか見繕い、大きな荷物と一緒に宅配業者に預け、身軽になったダイゴはその時が来るのを出発ゲート前でじっと待っていた。  
 隣を見れば、其処には昨日結ばれた恋人の姿。見送りは別れが辛くなるので遠慮したい所だったがシロナはそうすると言って聞かないので結局ダイゴが折れるしかなかった。  
「お別れね」  
「ああ。寂しいね」  
 刻々とその時が近付いている。もうシロナはそれを嘆く真似はしない。只、その刻の到来を遅らせたくて、ぎゅっとダイゴの手を握り締めていた。  
「ええ」  
「でも、僕にも向こうでの生活があるんだ。君がそうな様に」  
 ダイゴにもその気持ちが痛い程判る。自分も同じ気持ちを抱えているのだ。交際を決めた翌日にさよならしなければならないのは、酷過ぎる。付き合ったのならば色々とやりたい事は山積みだし、伝え切れていない思いも沢山あるのだ。  
 だが、それでもダイゴは行かねばならない。シンオウでは無くてホウエンが彼の生活の中心である故に。  
 こんな事ならば、出会いの初日からそうして置けば良かったと悔いる真似はみっともない事だった。寧ろ、あの下積みがあってこその今の自分達なので、その時の自分達の気持ちを無かった事にはしたく無かった。  
「きっと、ダイゴは向こうでもモテるんでしょうね」  
「え? ……いや? そう言うのは無いよ。有ってもお断りしてるしね」  
 遠距離恋愛の初めに付き纏う懸念事項。ダイゴのイケメン具合はシロナ自身がその身を以って確かめた。離れ離れになれば当然、彼に付く悪い虫の存在が気になる。  
 そんなダイゴは正直な所を言ってやる。自分が石好きの物好きと言う事はキャンパス内でも知れ渡っているし、その趣味を理解して言い寄る女は居ない。  
 偶にそれを無視して交際を申し込む輩が居るが、それはダイゴの持つ御曹司と言う肩書きが目当てでダイゴ本人を見ようとしない。ダイゴはそう言った連中は問答無用に突っ撥ねていた。  
「やっぱり、モテてる……」  
「シロナが心配する事じゃ……それよりも君はどうなのさ」  
 ダイゴの胸中を判らないシロナは少なくとも確かにそう言う女が居る事に嫉妬心を抱いたのか頬を膨らませる。ダイゴはお前も同じではないのかとシロナに訊くと、シロナは胸を張ってそれに答える。  
「そいつは御心配無く」  
「本当かよ」  
 少しだけ意外。そして何と無くだが悲しい胸の張り方だとダイゴは苦笑する  
 シロナは自分がモテる方ではないと知っているので自分自身を引き合いには出さない。ヤニ臭くてタッパのデカイ女だから寄って来る男は今迄では粗皆無だった。  
「うん、だからね」  
「……何?」  
 こっちについては安心しろ。シロナはそう言いたいらしかった。  
不意に、シロナの顔に影が差した気がしてダイゴは眉を顰める。そして語られた次の言葉にダイゴの眉が釣り上がった。  
 
「あたしは側に居れないから。だから、浮気を咎めるつもりは無いわ。そうなったら多分、あたしもするでしょうし」  
「何だそりゃ」  
 ……お前は何を言ってるんだ? そして、何を考えてる? 嘗めるな小娘。  
 シロナの胸中に全く理解が及ばないダイゴはあからさまにムッとした顔でシロナを睨んだ。  
「何ってそれは」  
「試してるつもりかよ。監視の目が無いから自由に不貞を働けって」  
 明確な敵意を放つ白銀の瞳。それに萎縮したシロナは身を硬くする。随分安く見られたモノだと大仰に両手で失望感をアピールするダイゴ。その目は笑っていなかった。  
「い、いや、だって」  
「……冗談じゃないよ。そして、感心出来ん言葉だね」  
 慌てて取り繕う発言をするも、上手く口が回ってくれない。ダイゴの機嫌を損ねる様な発言はそれだけで命取りなのに、またやってしまった。学習能力の無い己の脳味噌を抉り出したい気分に駆られる。  
 ダイゴは大きく溜め息を吐くと、悲しそうに目を伏せた。  
「――」  
そして、再びシロナの瞳を見遣るダイゴ。その輝きにシロナは瞬間、呼吸を忘れた。  
 
「君と付き合うって決めた。だから絶対浮気はしねえ。君もそんな事言うな」  
 
――そんな事になったらお互いに傷付いて、拗れるだけ。お前の選んだ男を信じろ  
「……うん。ごめん。少し弱気になってたわ」  
 ダイゴの漢気が発露し、シロナの胸中の不安を全て吹き飛ばした。  
「たださ」  
「……え?」  
 しかし、ダイゴの話には続きがあった。思わぬ増援にシロナが軽く身構える。  
「それを実現するには君の協力が要るんだよね」  
「な、何?」  
 何やら、雲行きが怪しい。そして、とても悪い予感もする。どんな要求をされるのか、全く想像が付かないシロナは生唾を飲み込む。  
 そして、語られたダイゴの要望は以下。  
 
「パンツくれ」  
 
 ……実にシンプルで判り易いお願いだった。  
 
「パ!? あ、ええっ!?」  
 予想の遥か斜め上を行った言葉にシロナは混乱した。  
「昨日、汁塗れで汚れたあれが良いな。僕に頂戴よ」  
「なななな! 何に使う気よ、一体!」  
 しかも、態々昨日の残り香が交じる半分お釈迦になったアレを所望するとはかなり高レベルだ。女の下着をどうするかなど訊かなくても判る事だろうに、シロナはお約束の様にやっぱり訊いてしまう。  
「逢えない時に君を思い出す。額縁にでも入れて壁に飾ろうかな」  
「・・・」  
 スーハースーハークンカクンカ。  
 使い道としては間違い(?)じゃない。後は履くか、被るか、それとも染みの濃い部分をしゃぶる位か。  
 少なくとも絵画の様に壁に飾るのは大きな間違いな気がしてシロナが絶句する。  
 そんな碌でも無い使い道をされると判っている相手には渡したくない。女物の下着は結構値段が高いのだ。  
「無論、只じゃないよ。僕の昨日から履いてるトランクスと交換だ。……それ以外の汚れ物はもう洗濯して送っちゃったからさ」  
 シロナが渋い反応を示す事は予想済み。だからダイゴも交換条件を引張って来る。それに心の天秤をガクッと揺らしたシロナは抗えない欲望に身を焼かれる。  
「だ、ダイゴの……パンツ……(ごくり)」  
 昨日から着用と言う事はアレか? 行為の最中ずっと履きっぱで、我慢汁やら汗やらその他諸々のダイゴ成分が凝縮されたレア物か!? ……ヤバイ。凄え欲しい。  
 ……以上、シロナの心の声。  
「悪い取引じゃないと思うけど?」  
 天使の顔をした悪魔が右手を差し出す。要求を呑むなら手を取れと誘惑する。  
「――」  
――ガシッ!  
 そんなモノに抗える訳が無い。シロナはダイゴの手を両手で握り締めた。  
 
「毎度あり。……生装備は落ち着かないね、やっぱ」  
「そうなんだ。へえ……」  
 お互いのパンツ交換を終えた。ダイゴはシロナが荷物から取り出したそれをビニール袋に入れてカーゴパンツのポケットの一つに丸めて捻じ込んだ。  
 対してシロナは、ダイゴがトイレで脱いで来たそれを直接手渡された。遠目にはハンカチにしか見えない四つに畳まれたそれに興味津々だ。  
 生装備のダイゴも気になるが、人肌の温もりが残る脱ぎたてホカホカのそれを眺めていると無性に匂いを嗅ぎたい衝動に駆られた。  
 ……だが、残念。其処で時間切れだった。  
 ダイゴが乗る飛行機の機内案内のアナウンスが聞こえて来た。直ぐに搭乗ゲートに向かわなければ乗り遅れてしまう。ダイゴは至極当然、シロナに背中を向けた。  
「さてと、僕はもう行くよ」  
「あ――」  
 時間はもう無い。そして最早、お互い出来る事は幾らも無い。ダイゴは今度こそシロナに二度目の別れを告げる。  
「これが今生の別れじゃない。寧ろ始まりだろ?」  
 一度だけ振り向き、そう伝えた。  
 今回は是迄。だが、付き合いを続ける限り、二人の仲は連綿と続いて行く。ダイゴはそう信じたかったのだ。  
「ダイゴ」  
「え?」  
 シロナがダイゴの胸に顔を埋め、潤んだ瞳でダイゴのそれを見た。交差する二つの輝き。  
――ちゅっ  
 白銀の虹彩を網膜に焼き付けながら、シロナがダイゴの唇に軽く口付けした。  
「……シロナ」  
 黄金の瞳は揺れて、零れる涙の粒が別れの悲しみを象徴する。ダイゴはそれを拭ってやろうとは思わない。自分だけに向けられる惜別の情。もう少しだけ見ていたかった。  
 
そして、刻は来た。北と南に分かれて暮らす刻が。  
「寂しくなったら、何時でも電話するわ。だから、ちゃんと構ってね?」  
「勿論さ。密に連絡を取り合おう。それが長続きの秘訣さね」  
 お互いに電話番号は交換し合った、後はどれだけ長く続けていくか次第。だが、それについての心配は最早しない。きっと、長い付き合いになる。そんな予感を二人共抱いていたのだ。  
「こっちも換えのパンツが必要になったら言うからさ!」  
「うん! 何時でも言ってね!」  
 出発ゲートに消えていくダイゴが最後にそんな戯けた事をのたまう。シロナも手に四つ折したトランクスを握り締めて、涙の混じる笑顔で手を振って背中を見送った。  
 
 ……それから数時間後。別れの余韻を引き摺るシロナは自宅へ戻って来ていた。  
 
 あたし 恋に落ちてゆく 焦げるような視線 冷たい唇〜♪  
 
「!」  
 突如、シロナの携帯電話が鳴る。着信音は例のアレ。発信者を確認すると、直ぐに手に取り通話を開始した。  
「も、もしもし? ダイゴ!?」  
『そ、僕だよ。早速掛けてみたけど、ちゃんと繋がるんだね」  
 先程別れた男からの電話だった。時刻的にカントーに着いた辺りだろうか。きっと接続便を待っているに違い無かった。  
「う、うん。それで……どう、したの?」  
『ああ、言い忘れた事があってさ』』  
 こんなに早くまた声を聞けた事がシロナには嬉しかった。直接会えないのは寂しいが、それでも恋人の生声を聞けばそれだけで元気になりそうだった。  
 だが、一体何の用件で電話を掛けて来たのかがシロナには気になる。用が無いのなら別に構わないが、どうにもそれと違う様な気がした。事実、ダイゴには態々電話で言う程の用件があったのだ。  
「何、かしら」  
『うん、それはね……』  
 シロナは緊張した面持ちでダイゴの言うそれを聞いた。  
「!!? ――マジで?//////」  
『大マジだよ。……用件は以上。次に逢う時を楽しみにしてるよ、ハニー』  
――ピッ ツー、ツー……  
 言いたい用件を終えて、ダイゴはさっさと電話を切ってしまった。  
「……ダイゴの、馬鹿//////」  
 そして、赤面したシロナが小さく呟く。  
 ……一体、ダイゴは何を言ったのか? それが後々に意味を持ってくる事は何と無くだがその時のシロナ自身も予想出来た。  
 
 
 

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