第一話  
「食事」  
 
 
――どこかボクにいけないとこあるのかな…? ♂だからダメなの?――  
 
――……ごめん――  
 
受信。  
暗い部屋。  
ベッドの上でケータイを握り、光る液晶を眺める幼いマグマラシ。  
メールの返事を書くために慣れた手つきでボタンを押す。  
ボタンを押される度に揺れる光が、整ったマグマラシの容貌を這い、赤い瞳を闇に煌めかせ瞳孔を狭くさせる。  
作成。  
 
――でも…一番愛してる、誰よりも君の事愛してるって言える。女の子じゃなくても、妊娠とか出来なくても、どんな人よりも君の事を一番愛してるって言える……。  
お願い……ばくぅ…大好きなの…本当に――  
 
送信。  
その全ての工程を無表情で終えたマグマラシは、ケータイを閉じて横になる。  
時間を確認するため、一分置きにケータイを開く。  
画面の向こうの彼がメールを返すには5分もかからない。だが、こういう話の時は10分から20分かかる。  
受信。  
 
――嬉しいけどごめん。やっぱり男と付き合うのは無理かな。本当にごめんね――  
 
――うん分かった。こっちこそごめんね、でもずっと大好きで愛してるのは変わらないから…――  
 
――ごめん、そろそろバイトにいくね――  
 
携帯を閉じる。  
マグマラシは泣かなかった。  
仰向けで天井を見上げるマグマラシの顔は、何も感じていないように見えた。  
 
バイト……外に出るよね。  
外は寒いからコートとか持っていってあげなくていいの?  
一つ浮かんだ疑問にマグマラシは慌てた。寒いと風邪とか引いちゃうよね……。そんなことも気遣えなくて何が一番愛してるだ、そんなんだからダメなんだよ。  
それにさっきのメールも自分勝手過ぎた。恋は成就しなかったけど、愛ってそんなもんじゃないよね。ボクは彼が幸せならそれでいいの。とりあえずさっきのことは気にしないでとメールで送っておこう。  
ぶかぶかなコートを前足で器用に着る。亡くなったお父さんの香りがする。  
テレビからコマーシャルが流れる。白いカップの中を回る白とピンクのストロベリーティー。  
早く行かないと間に合わない。  
愛に満ち溢れた少年は、夜の道を目を輝かせて走った。  
 
彼のバイト先に到着するが、その近くにある良くカップル達が待ち合わせする場所に、綺麗な白い人がいるのを少年は確認した。  
アブソルさんだ。  
彼と同じ大学に通い、おしとやかで清楚で、頼まれれば嫌とは言えない性格の大人しい人。ふわふわなニット帽を頭にちょこんと乗せ、優しい茶色のマフラーを口が見えないように巻いており、頬を紅潮させて誰かを待っている。  
アブソルが待っているその相手はしばらくすると現れ、アブソルは嬉しそうな笑みを浮かべる。  
 
「待たせた? ごめんヤボ用があって遅れてさ。」  
「待ってないですよ、こんばんはバクさん。寒くないですか? マフラー貸しましょうか?」  
「いや大丈夫、くっついてれば暖かいしさ」  
「そう……ですねっ。えと、行きましょう? あっちの方です、本当に美味しいんですよ? きゃっ」  
「そりゃ楽しみ」  
 
バクフーンはアブソルを抱き上げるとそのもちっとした頬に口づけた。アブソルは恥ずかしそうに俯きながらも、誰に見られるわけでもないのに幸せそうな笑みを浮かべた。  
バクフーンはその後、予定通りにアブソルの勧めた店へと向かい、彼女と一緒に食事をとった。  
イタリア料理のお店で、バクフーンは緑と白のクリームソーススパゲティと牛肉のカルパッチョを注文し、アブソルはイカ墨パスタとフォアグラソテーを注文した。  
バクフーンはこういう場所で食事をした事は無かったが、その酸味や塩気の効いた味は嫌いでは無かった。  
 
「バクさん割り勘で良いですよ!」  
「良いって」  
 
食事を終え、酒は入っていないものの二人の気分は高揚していた。  
それは料理が美味だったのもあるが、雄と雌だから当然のこと。  
勘定を済まし外へ出ると、店とは違い外は肌寒く感じられた。  
 
「今日はもう遅いから泊まっていけよ」  
「良いんですか? それならお言葉に甘えますけど、変なことはしないでくださいねっ」  
「分かってるって」  
 
二人して茶化し合うように会話をしながら、バクフーンの家へと辿りついた。  
彼が玄関の鍵を開け、戸をガラガラと開け中に入り、明かりをつける。  
現代的で一般的な日本家屋で、彼は彼女を二階へと連れて行くと、そこで二次会でもやるようにテレビを見つつお酒や裂けるチーズ等のつまみを食べる。  
テレビから流れるコマーシャルも、今は面白く感じられた。  
 
時間が流れ、二人は一旦別々の布団に入ったが、程なくバクフーンの方がアブソルの布団へと潜り込んだ。  
 
「もう、変な事しないって言ったじゃないですか」  
「良いだろ……?」  
「んー……、……。」  
 
アブソルの返事は誤魔化すようなものだが、誘うようでもあった。  
暗がりの中、バクフーンがアブソルの肢体を指でなぞる。腹から胸、胸から首へと何かを探るようにゆっくりと、でも何を探すわけでもなく舐めるように指を這わせる。  
小さく呻き始めた彼女に興奮した彼は、彼女の首筋にキスをした。  
 
「はあ、バクさん……。」  
 
アブソルは彼に全てを任せ、仰向けになる。  
自分が触れても見てもいないのに、体を触られ、貪られ、嬲られる。彼は自分のことを求めているのだ。それが彼女にとって堪らなく快感であり、それが体だけであろうとなかろうと関係無いのかもしれない。  
自分が使われている。その事実が彼女の被虐欲を満たし、自尊心を潤わせていく。  
 
「すっげぇ濡れてる」  
「や……だめ……」  
「ダメじゃないだろ?」  
「あ、ぁ」  
 
大きな彼の指が、彼女の秘裂に軽く身を埋める。指が肉厚な割れ目に挟まり筋に沿ってゆるゆる動く度に、指の腹でクリトリスや陰唇、膣穴が擦れ粘着質な音が鳴る。  
それによる快感に小さなクリトリスがひくつき勃起してしまい、彼がそれを感じ取ったのか指で摘んでコリコリとソレを軽く潰す。  
 
「ひっ……ぃいっ」  
 
体に比べて小さな局所を攻められているだけなのに、アブソルの大腿や腹、爪先まで瞬間瞬間跳ね、愛汁を垂らす。  
表面を攻めるだけだった指も、いつのまにか膣の中へと潜り込み、肉粒がびっしりと生えた膣の天井を荒らしていく。  
その度に切なそうに、時には助けを求めるような鳴き声を上げ、アブソルは熟れた雌に成っていく。  
 
「行くぞ」  
「ふえ、あぁ、バク……ぅう、ひゃ、あぁんっ」  
 
雌から溢れさせた粘液を、自分の猛った雄へと塗り付けて彼女を俯せにさせる。  
後ろからのしかかり尻穴を経由した後、ペニスは雌穴へと潜っていく。  
興奮で反り立ち、触ってもいないのに我慢汁を垂らしていたペニスは、彼女の秘肉を掻き分け、肉粒や肉襞を一つ一つ丁寧に蹂躙しつつ奥へと掘り進んでいく。  
彼女も体の正面を布団へと押し付けられ、四つん這いとは違う後背位に戸惑いつつも興奮し、悦を感じてゆく。  
打ち付けられるのとはまた違う、ゆっくりとしたストロークで腹の中を内側から味わわれ、布団の柔らかさを頬に感じながら、彼女は涎を垂らして悶えた。  
彼に身を身で押さえ付けられ、暴れようとしてもただ後ろ足をぱたぱたとさせるしか出来ない。  
声を上げようにも上手く声が出せず、呼吸をするだけで精一杯で、布団を涎で汚しながら彼女はひゅうひゅうと息をした。  
 
「これすっげぇ締まって気持ちィ」  
「あ、はひ……ひぅっ、ふうっ、ふーっ」  
「ンッ、もっと奥まで行くぞ……ッ」  
「はあ、はっ、ああっ、あー……!」  
 
彼の尖ったペニスの先端が子宮口へとキスし、アブソルが間抜けた声をあげながら涙を滲ませもがく。  
その様子に興奮したバクフーンが、抵抗できない彼女を更に攻め立てる。  
 
「うぁ、あ、あぁ……はっ、あはあぁっ」  
「尻も太もももムチってしてるのに、奥までぷりっとしてるんだなあアブソルは」  
「うぅああ、はあ、は、ぁやめ、あ、ぁんっ!」  
 
子宮口をグリグリとほじくられ、強烈な刺激と鈍痛のような鈍い感覚が子宮を襲う。  
針のような刺激が子袋から脊髄を駆け回り、脳へと届くと出口を探そうと必死に後頭部の内側をはいずり回るような感覚がして、体を捩り凶悪な刺激から逃げようと暴れる。  
しかしべったりと自分に覆いかぶさったバクフーンがそれを許さず、更に奥へ奥へとペニスを打ち込む。  
 
「あぁっ、やあ、やあぁああっ! あぐぅううふうぅうっ! ふぃっふいぃっ!? やめっだめだめだめだめ……――ッ!」  
「ぐうぅっ締まる……ッ!」  
 
子宮口が急にキツく締まり蠕動し始めたせいで、ペニスの先端から根本まで嬲られる。  
自分のペニスの内側から下腹部の中心の臓に刺激が走るような感覚に、バクフーンが唸り声を漏らして脈動し始めたペニスを埋めたまま彼女の胎内へと吐精する。  
直に子宮の中へと精虫を流し込まれたアブソルは、子宮内を満たされ恍惚とした表情を浮かべつつ絶頂を迎える  
激しい絶頂にアブソルは硬直と痙攣を繰り返し、深い呼吸と浅い呼吸を繰り返し、子宮の中に出来てしまった精虫の海で卵子が輪されるのを想像し、感じ、下腹部を熱くさせた。  
 
しばらくの間二人で余韻を味わった後、バクフーンが彼女の中からペニスを引き抜き、彼女を抱きしめる。  
完全に胎内へと出されたため、愛液に濡れた秘裂からは精液が垂れず、愛液の糸を股に引かせていた。  
 
「ふう……大丈夫か?」  
「ん……うん……」  
「愛してるぞ……」  
「うん……」  
 
バクフーンが彼女の口に愛しげに口を重ねると、彼女も疲弊してはいるもののそれに応えて目を閉じ、口を開く。  
開いた彼女の口へとバクフーンが舌を滑り込ませ、ナカを味わっていく。  
絡まり合った二つの舌が、お互いの唾液を身に纏い、音を立てて睦み合った。  
朝が来たのか遠くで烏や小鳥の声がする。  
完全に闇だった世界も朝を迎えて薄く明るくなっていった。  
闇に紛れていた鈍い赤い煌めきは、カーテンから漏れた太陽の光を受けて瞳孔を狭くした。  
 

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