湿った狭い洞窟の中、一匹の雌のダイケンキが体を丸め、蹲っていた。
体中に凍傷を負い、手足には太い杭で射抜かれたような痛々しい傷が有り、額の角は根元から折れていた。
ほんの一日前にダイケンキ達が治めていた縄張りはトドゼルガ達に奪われた。
群れを率いていたのは雌と雄の夫婦のダイケンキ。二匹は最後まで戦ったが、夫はその牙に命を落とし、
残された妻も体が凍りつき、その身を捕らわれ、洞窟の奥深くに閉じ込められ、今こうしている。
この体ではもう二度と戦う事は出来ない。何故あの時同じように死ねなかったのか。
「…!」
ずるずると引きずるような音を立てて何かが近づいてくる。反射的に立ち上がろうとするが、
手足に激痛が走り、立つ事が出来なかった。
「ふん、何とか生きておるようだな」
忘れようとも忘れる事の出来ない、忌々しい声。あの時、夫を殺したトドゼルガの群れの首領。
牙を剥き出しに威嚇するも、トドゼルガはまるで意に介さない。
「そう殺気立つな。どうだ体の加減は」
「貴様と話す事など何も無い」
「可愛げの無い」
「…殺せ」
そう言い捨ててダイケンキは顔を背けた。
群れも散り散りになり、何もかも全て失った。これ以上生き恥を晒して何になる。
「何を言う」
トドゼルガはダイケンキに近づき、その耳元で囁く。
「捕らえられた雌がどうなるのか解らぬのか」
「貴様、まさか…!」
手足の傷が痛むのも忘れ、とっさにそこから逃げようとするが、動く間もなくトドゼルガの前足に抑えつけられる。
「往生際の悪い。その手足では得意の刀も使えまいよ。観念するのだな」
「あぁぐぅッ!離せ!穢らわしい!私に触れるなっ!」
何とか力を込めて逃れようとするが、トドゼルガの巨体を押しのけられるだけの力は残っておらず、
力を込める度に傷口から血が流れるだけだった。
そんなダイケンキを見下ろしながらトドゼルガは鼻で笑う。
「抵抗出来る立場だと思っておるのか?お前次第なのだぞ」
「な、何がだ?」
今更抵抗したとして自分が殺されるだけだ。それなら辱めを受けるより殺された方がましだった。
それなのに一体どういう事なのだろう。まさか、
「お前、あれとの間に卵を設けていただろう。卵はな、無事だ」
隠していた卵。愛する伴侶と成した卵。それがまだ、潰されずに残っていた?
「…本当に?」
「ああ、無論だ。お前の目の前に持って来てもよいぞ。お前も自分の卵が解らぬほど愚かではないのだろう?」
間違える筈が無い。模様、匂い、形、全てで判断できる。
「ただし、お前次第だ。お前が大人しく体を差し出せば、卵は丁重に扱ってやろう」
絶望的だった心の中に一筋の光が差す。答えを考える事も無い。
「解った…」
刃を持たない雌には、どうせそれしか出来ないのだから。
「ひっ、やぁ…」
無理矢理ダイケンキの後ろ足を立たせ、トドゼルガはその秘所に舌を這わせる。
細かく青い体毛に覆われている体の表面と違い、捲れた肉襞の内側は桃色をしていた。
表面の筋と陰核を丹念に上下に舐め、内側に長く肉厚な舌を軽くねじ込むと、トドゼルガの唾液ではない、
塩みのある粘ついた液体が絡みついてくる。
「ほう、憎い仇相手にこうも簡単に股を濡らすとは、あの世の亭主も泣いておるぞ」
「い、言うな…ひゃあんっ!」
舌をより深く挿入し、肉壁を舐めとりながら出し入れすると、ダイケンキの体はびくびくと跳ねる。
快楽など感じたくないというのに、雌の部分は勝手に着々と準備が出来てきたとでも言うかの如く、
愛液を流し続けて舌の凌辱に歓喜する。
「だめ、だっ!ひぃ、んああぁ!」
絶頂に達し、張り詰めていた糸が切れたように頭の中が真っ白になった。
膣口からは大量の愛液が噴出し、トドゼルガの髭に飛び散る。
「ぁ、あうっ…」
「これはこれは、御前様の潮噴きは盛大よのう」
嘲る言葉に心が折れそうになるが、大事な卵の為なら何とか耐えられる。
そう自分に言い聞かせるが、
「どれ、その物欲しげな所に喰わせてやろう」
体の上に乗り上がる異常な重さに血の気が引く。夫の仇に犯される。
「…や、嫌だ!それだけは許し―――」
「聞かぬわ」
「ひぎぁあ゛あぁッ!」
上から骨が軋む程の巨体に押しつけられ、体の中を広げられるような感覚に吐きそうになった。
膣内に脈打つ逸物が根元まで押し込まれている。
「ふむ、卵を産んだ身にしては生娘のように締まるではないか。悪くないぞ」
「うそ、こんな…ひぃ!」
夫の物とまるで違う、今まで経験した事の無い、大きくごつごつとした巨根がそこを埋め尽くす。
「どうだ。奥まで届いているのが解るだろう?」
「あぅ!や…っめ、止めてぇ!」
大きな亀頭を子宮口にぐりぐりと押しつけると、トドゼルガは律動を開始した。
交尾と出産のどちらとも違う初めての行為にダイケンキは怖ろしくなる。
けれど雌の部分は何とかそれを受け入れようと自然と解れてゆき、乱暴な肉棒にねっとりと絡みついていった。
「やあぁんっ!あひぃ!あ、貴方、助けて…っ!」
死んだ夫に助けを求めても洞窟内に木霊するだけで何処にも届かない。
犯されている恐怖と屈辱と快楽が混じり合い、ダイケンキの目からは涙が止め処無く零れた。
「ぁ、あぅ!もう許してっ…!あ、あぁん!や、はげし…!」
ただでさえ体が壊れてしまいそうになる程激しかった律動が更に激しくなる。
「っ、出すぞ!」
「ひぃっ!嫌だ、止めて!孕んでしまう!」
近い種同士では子が出来てしまう。夫を殺した雄の子種を植え付けられる。
泣きながら逃れようとするダイケンキに全体重を掛けてトドゼルガが押さえつける。
「何を言う。それだけの為に生かしてやってるのだぞ。ほら、子宮でたんと喰らえ!」
「ひぃ、いやあぁああぁ―――っ!」
子宮口に先端を咥えこませると、トドゼルガは直接子宮に精液を注ぎこんだ。
幾度か突き上げながら大量の白濁を胎内に吐きだしてゆく。
その衝撃に茫然としながらもダイケンキは絶頂に達し、膣内をびくびくと締め付けて雄の子種を呑みこむ。
ぐったりと動かなくなったダイケンキから逸物を抜くと、ごぽりと音を立てて精液と愛液の混ざった液体が溢れた。
その場から去ろうとするトドゼルガをダイケンキは呼びとめる。
「…私の卵…私達の卵、返して…」
「ああ、そうだったな」
トドゼルガは洞窟を出ると数分で卵を抱え戻ってきた。
ダイケンキには遠目でも解った。あれが自分の産んだ卵、愛する夫との卵だと。
「それ」
ふいにトドゼルガは卵を放ると、
「あっ」
それはダイケンキの目の前でぐちゃりと割れた。