「ん……ここは……?」
彼女が目を覚ますとそこには見知らぬ風景が広がっていた。
彼女の本来の住処である草原や森はどこにも見えず、
辺り一面がグレーに染まり、コンクリート製の壁や鉄格子などの無機質な人工物だけが並んでいた。
周りの異変に気づいたのもつかの間、彼女は自身の体に違和感を感じた。
「体が……動かない……これは?」
手足や首筋に伝わる冷たい感触、よく見れば枷を嵌められていた。
両腕は頭上で纏めるようにして天井に繋がれ、両脚はそれぞれの片脚に足枷が嵌められ、
壁から突き出した固定具のようなものに繋がれていた。
さらには金属製の首輪と腹部や太腿にも鎖が巻きつき、彼女を縛りつけていた。
一体誰が何のつもりでこんなことを…彼女の疑問は深まるばかりだった。
なんとかここを抜け出す方法はないかとしばらく考えた後、
彼女は全身に巻きついた鎖を引き千切ろうと四肢に力を込めはじめた。
「んんっ……ぐうっ……このぉ……っ……!!」
ぎりぎりと鎖が軋む音が辺りに響き渡る。前進して立ち上がろうとするも
ぴんと張った鎖に阻まれ、うまく立ち上がる事ができない。
格闘タイプの彼女であれば容易く引き千切れるはずの鎖が、まるでびくともしない。
それが駄目なら、と今度は炎で鎖を焼き切ろうと深く息を吸い込む。
しかし、彼女はすぐに自分の体の異変に気づいた。
(……? 技が、使えない…!?)
本来なら熱気や炎となって放出されるはずの彼女の息吹が、虚しく空気中に消える。
技を繰り出そうとしても体に力が入らない、不可解な現象にますます頭の中が混乱する。
何度も抵抗を繰り返した末、とうとう彼女は脱出を諦め床に崩れ落ちた。
体の自由が効かない事をもどかしく思いつつも、これ以上悪あがきをするのは体力の無駄だと悟り、
その場に座り込んで目を閉じた。
鎖の音が消え、再び辺りが静寂に包まれる。
暫くして、遠くから規則的なかち、かちという音が響いてくる。
足音だろうか?何かが近づいてくる気配を感じ、彼女はそっと目を開いた。