「こういうのって、ここに来て良かったんですかね?」
「はい、大丈夫ですよ。」
「なんかポケモンセンターは病気や怪我を治療するところってイメージがあって…」
「当センターはポケモンの心身を治療するところなの…だから…」
ちょうど受付を終えたところのようで、カウンターそばの待合室のソファーの上に一人の青年と可愛らしい装いをした一匹の小さなポケモンが腰を下ろした。
此処は街のポケモンセンター。
その施設は比較的新しい外観を有しており、また、小奇麗な内装からは近代的な設備が整っていることが容易に推測できる。
ポケモンセンターを見ればその街の規模が分かるとはよくいったもので、この街は大都市とまではいかなくても、そこそこの規模を持った中核都市であった。
「………さん、………さん。」
「あっ!はいっ…」
「こちらにどうぞ。」
今しがた受付を終えたばかりの青年と一匹のポケモンは案内役の看護師に呼ばれ、別室へと誘導される。
「こちらがカウンセリング室になります。」
案内役の看護師はコンコンとドアをノックした後、
「どうぞ。」
彼とそのポケモンを部屋の中に招き入れた。
「失礼します。」
青年が礼儀正しく挨拶をする。
「どうぞおかけください…、早速ですけど、その仔が…?」
「…はい、そうなんです…」
彼の応対をするものは…便宜上なのかどうかは分からないが、ポケモンセラピストという名札をつけていた。
そして、そのセラピストは先刻青年に記入させた問診表を横目に彼に質問を続ける。
「種族はリオル…可愛い格好してるけど、オトコの仔ですよね…?」
「はい…」
「リオルは気難しいところがあるんですよね…特にオトコの仔はプライドが高くて…」
「そうなんですか…?」
「あとは人間と直接会話ができちゃう種族だから、そういうところもね…?」
「ああ…やっぱり…」
「何か思い当たることが有りますか?」
彼は静かに頷いた。
「じゃあちょっと、健康状態をチェックさせてもらいたいから、リオル君だけ診察室に行ってもらいますね。」
セラピストの合図でそばにいたラッキーが彼のポケモン、リオルの手を引いて部屋から出て行った。
「それじゃあ詳しいお話をしましょうか……」
「じゃあつまり今まで人間の子どもと同じように接してきたってことですね?」
「はい、たぶん…」
「それでいて、他のポケモンや人間の子どもとの干渉もあまりしてこなかったってことですねぇ…、なるほど…」
「そうなんです…」
「でも都会に暮らすポケモンにはわりと多いんですよ…特に人間に近い動作ができるポケモンには…」
「…そうなんですか?」
「うーん、健康面には特に何も影響を及ぼすことは無いと思うので、別に治さなくてもよさそうなのですが…、やっぱりそういうわけにもいかないのですか…?」
「なんというか…もっと幼いポケモンらしいところがみたいというか…自分のせいでこうなったかと思うと…」
「わかりました。まあ今後バトルやコンテストに出場する機会があるかもしれないですしね…」
「すみません…」
「はい、それでは具体的な治療方法についてですが……」
青年が部屋を出るとラッキーに手をつながれたリオルの姿があった。
「どうしてもここで待つって聞かなくて…」
案内役の看護師が困った表情で彼にそう告げる。
「すみませんでした。」
彼はペコリと頭を下げてリオルの手を引いて待合室へと向かった…
「それでは、来週の月曜日から毎日夕方5時に来てくださいね。」
「わかりました…お世話になります。」
青年は受付からの指示を貰いポケモンセンターを後にする。
「冷たい飲み物でも買って帰る?」
彼の隣で頬を膨らしていたリオルの表情が変わった。
「ボク、あれがいいなっ!あのっ、いつものやつ…」
「はいはい…」
リオルをつれた青年は帰宅途中にあるコンビニに入り…、その後、小さな買い物袋をさげて帰路についた。
「リオル、お疲れ様、はい、これどうぞ。」
自宅に帰ると青年は買ってきたばかりのジュースをリオルに差し出す。
リオルは差し出されたジュースを両手で受け取ると、息もつかずに一気に飲み干した。
「そんなにあわてなくても…誰も取らないよ。」
リオルには彼のそんな声もお構い無しというようだった。
「やれやれ…、あっ、この時間は…何か面白い番組あたっけ?」
「いつも見てるのは…」
彼の言葉を聞いて、リオルは抱えていたジュースのパックを置き、テレビのリモコンを探し始める。
(こういうのがダメなのかな…?確かにずっと人間と同じ生活をしている気がする…)
青年の頭の中でさっきのセラピストとのやり取りが再生された。
(月曜日からはちゃんとしなくちゃ…)
彼は何かを決意したようであった。
休日をはさんで青年が治療の開始日を指定された月曜日になる。
ポケモンセンターは年中無休といっても、やはり週末は予定が組みにくいのか、リオルの最初の治療はこの週の月曜日から金曜日までとなっていた。
「タオルと…着替えぐらいでいいのかな…?まあ入院でもないし…」
青年が荷物を用意していると…、
「あれどこか行くの?」
リオルが不思議そうに彼に尋ねる。
「あっ…ちょうどいいところに…、いやあ何かお風呂が故障したみたいで水しか出ないんだけど…」
リオルが怪訝そうな顔をする。
「それで前に行ったセンターで入らしてもらおうかと…、前々から湯沸しの調子悪くてって、あの時にそういう話してたらどうぞってさ…」
「えっ…お風呂入りに行くの…?」
「…嫌?」
リオルが明らかに嫌そうな顔をする。
「でも汗かいたままだと気持ち悪いんじゃない?たまには大きなお風呂も気持ちいいと思うけどなあ…?」
リオルは口をへの字に結んだままムスッとした顔をしていた。
「じゃあリオルはひとりでお留守番してる…?あとでレストランでご飯食べてこようと思ってたんだけどなあ…?」
彼の言葉を聞いて、リオルの固く結んだ口もとが緩むのが分かったのか、彼は…
「よし、じゃあ一緒に行こうか。」
そう言ってリオルをつれてポケモンセンターへ向かった。
「お待ちしてました。」
ポケモンセンターの受付を済ませ、青年とリオルは案内係の看護師の後をついて行く。
「小さなポケモン用の浴場になるので少し浅いかもしれませんが…」
「たぶん大丈夫です、ありがとうございます。」
「あっ、こちらですね、ここから先はこのタブンネが案内いたします。」
脱衣所を前にして青年を案内するものがタブンネへと代わった。
直接会話は成り立たないが、青年にとって、タブンネの指示はジェスチャーだけで十分理解できるものであった。
「それじゃあ入ろうか…?」
「…う…うん」
「自分で脱げる?」
「…脱げるよ…」
彼に促されて、リオルが着衣を紐解く。
その可愛らしい衣装がするするっと地面に落ちると、中からリオルの青い裸体が飛び出した。
彼は何も言わずにリオルをつれて浴室へと続くドアを開いた。
「わぁ…思ってたよりずっと広いね。」
小さなポケモン用と聞かされていたためか、彼はそう呟いた。
「リオル、おいで…まずは身体を洗おう。」
彼はそう言うとリオルを抱き寄せ、その青い身体に直接石鹸を塗りこんだ。
短い体毛ではあるが石鹸はリオルの身体を包み込むほどの泡を生み出していた。
彼はその泡をさっと洗い流すと、
「はい、おしまい。」
そう言ってリオルを湯船の隅に座らせた。
「こっちも身体洗うから先に漬かっててくれる?」
リオルは軽く頷くが、湯船の隅に腰をかけたまま足をばた付かせお湯を蹴り上げる。
「楽しい?」
「…うん…」
どうやら大きなお風呂が珍しいのか、少しだけこの浴場を気に入った様子であった。
そんな中、浴室のドアが勢いよく開かれると、小さなポケモンが数匹浴室内に駆け込んできた。
湯船の隅に腰掛けていたリオルは反射的にお湯の中に身を隠した。
小さなポケモンたちは先客である青年を見るとニコリと笑いかける。
彼もニコリと微笑んで「こんにちは。」と一声挨拶をした。
「ねえ…まだぁ…?」
リオルはその小さなポケモンたちから距離をとるように湯船の端に移動した上、身体を深く沈めたまま、彼に問いかける。
彼は急いで身体を包む石鹸の泡を洗い流し、湯船に漬かると、リオルの横で寝そべるように身体を沈めるた。
「もうちょっと温まってからね…」
リオルは彼に身体を寄せて、安心したかのように深く息を吐き出した。
でもリオルの目はずっと遠くの小さなポケモンたちに向けられているようであった。
その1時間後、ファミレスのテーブル席に向かい合って座る青年とリオルの姿があった。
彼はリオルに急かされて入浴を切り上げ、足早にポケモンセンターを後にしていた。
そんな彼の目の前にはうれしそうな顔をしてデザートのチョコレートアイスをつつくリオルがいた。
「おいしい…?」
「うんっ!」
リオルの顔を見て青年の顔が自然と綻ぶ様子が一目で感じとれるようであった。
「うちのお風呂、治るまでしばらくかかるみたいだし…明日もさっきのところに行くけど…いいかな?」
彼は今が好機と判断したのか、笑顔を崩さないまま、そっとリオルに語りかけた。
「明日はイチゴのアイスもいいかもしれないね…」
「う…うん…」
モノで釣るような形ではあるが、しぶしぶながらもリオルの了承が得られたようであった。
次の日、昨日と同様に青年はリオルをつれてポケモンセンターを訪ねる。
受付に挨拶をすると、今日からは案内はつけないので一人でお願いしますとのことであった。
彼とリオルがそろって服を脱ぎ終え、浴室のドアを開けると、昨日のポケモンたちが泡まみれになり身体を洗っている最中だった。
「洗いっこか…可愛いね…」
その小さなポケモンたちはお互いの背中を流し合っているようであった。
「リオルも入れてもらえば?」
「えっ…」
青年の提案に対し、リオルは小さな声をあげると、恥ずかしそうに彼の後ろに周り、ポケモンたちを避けるように自身の身体を潜めた。
「恥ずかしいかな…まあいいや、おいで、リオル。」
彼はそういうとリオルを抱き上げ、ポケモンたちから少し距離をとった場所に腰掛ける。
そして昨日と同じように石鹸を泡立て、リオルの身体を洗い始めた。
浴室内には小さなポケモンの歓喜の声が響き渡っている…
(あの仔たち、昨日も来ていたよね…?)
浴室内ではしゃぐポケモンたちは、見たところリオルと同じぐらいの幼さであった。
そんな中ひと際熱心に他の幼いポケモンの身体を洗うポケモンがいた。
(あの仔だけ大きいのかな…?)
そのポケモンは大きな耳と大きな尻尾を持ち、一般的にキレイ好きな種族として知られる、チラーミィだった。
見ると幼い仲間の身体を洗ってあげているようであり、一通り身体を洗い終えた幼いポケモンがチラーミィの前に列を作る姿が微笑ましかった。
「ねぇ…早く…」
ポケモンたちの仲睦まじい様子に見とれていると、リオルが青年に早く身体を流すようにと催促した。
「ああっ…ごめんね…」
彼はそう言ってリオルの身体の泡を洗い流す。
そんなやり取りをしながらではあったが、彼はリオルの目がずっとポケモンたちのほうを向いていることに気が付いていた。
その1時間後、昨日と同じようにファミレスのテーブル席に向かい合って座る青年とリオルの姿があった。
彼の目の前には神妙な顔つきでデザートのストロベリーアイスをつつくリオルがいた。
「おいしくない…?」
「…う…ううん…」
リオルは慌てて作り笑いをする。
彼はそんなリオルを見て、ぷっと吹き出した。
「何か考え事してたんだね…」
リオルは彼から目をそらした。
「明日も…」
「…いいよ。」
彼の言葉を遮ってリオルがそう答えた。
「そう、よかった…、…明日のデザートは何にしようか?」
彼は優しく微笑みながらリオルに語りかけた。
次の日、一昨日、昨日と同じ時間に青年はリオルを連れてポケモンセンターを訪ねた。
彼は受付に一声かけると、すぐに浴場へ向かった。
脱衣所で青年がリオルの脱ぎ散らかした服を纏めていると、チラーミィに先導された小さなポケモンたちがぞろぞろと浴室へと入っていくのが見えた。
そんなポケモンたちの後を追うように彼はリオルをつれて浴室へと足を踏み入れる。
浴室内ではすでに昨日と同じような光景が展開されていた。
彼は昨日と違い浴室の入り口付近、そのポケモンたちと比較的近い位置に腰を下ろし、リオルに問いかける…
「楽しそうだね…やっぱりリオルも入れてもらえば?」
「えっ…?…う……ん…」
リオルの中ではまだ決心が付かないようであった。
そんな折、小さいポケモンたちを率いていたチラーミィがトコトコとリオルに近づいてきた。
「こんにちは。」
その様子に気づいた彼はチラーミィに挨拶をする。
「…っ…こんにち…は…」
彼に続いてリオルがびくびくしながら声を発した。
チラーミィはぺこりと一回頭を下げると、彼の目の前で手に持った石鹸を泡立て始めた。
「あっ…この仔を洗ってくれるのかな?」
彼はチラーミィに問いかける。
チラーミィは首を大きく二回縦に振った。
「だってさ…リオルどうする?」
「…う……ん…」
折角のチラーミィの申し出にもかかわらず、リオルはまだ何かを決めかねているようであった。
そんなリオルの態度を見て…
「あっ…あれっ?」
青年は突然大きな声をあげた…、そして…
「今日、石鹸持って来てたよね?おかしいなあ…、じゃあそういうことで悪いけど洗ってあげてもらえるかな?」
そう言うと彼は、リオルを抱き上げ、チラーミィのそばに降ろした。
チラーミィはすばやくリオルの背後に回りこみ、リオルの背中に石鹸の泡を擦り付ける。
あたりに石鹸のにおいが立ち込めたかと思うと、たちまち、リオルの背面は細やかな泡で包まれていた。
そして、チラーミィはくるんとリオルの前方に回りこみ、足の指の間から入念にリオルの身体を洗い上げようとしていた。
しかしながら、リオルの両足を洗い終えた瞬間チラーミィの手がばったりと止まってしまう…
「ああ…、そんなことしてたらこれ以上は洗ってもらえないって…」
リオルは何かを隠すように両手で自分の足の付け根をしっかりと押さえ、そのままの姿勢で固まっていた。
「ねえ、リオル、ここはお風呂だからみんなはだかんぼでいいんだよ…?それにチラーミィもオトコの仔だし…」
彼がそういうと、何かを察したのかリオルの目の前でチラーミィが大きく腰を突き出した。
チラーミィの足の付け根には小さな可愛らしい突起物が見える…それはチラーミィが♂のポケモンであるという証であった。
「ほら、オトコの仔同士だったら恥ずかしくないでしょ?リオルも見せてあげなくちゃっ…」
青年はそう言って、リオルの手を払いのけた…
チラーミィの大きな瞳の前でリオルの可愛らしい♂の仔の証がぷるんと弾けた。
そこから先のチラーミィの行動は素早かった。
リオルの♂の仔の証に手を添えたかと思うと、片手を根元に、もう一方を先端に当て、幼い茎を優しく包み込む外皮を剥きおろそうとする。
そしてリオルの幼い茎がまだ芽すら出ていない状態であるということを確認すると、今度は石鹸を泡立てた両手で優しく揉み解すような行為を始めた。
当のリオルは何をされているか分からないのか、心此処にあらずという状態でぽかんと口を明けたまま、チラーミィにその身体を委ねていた。
チラーミィがぽんぽんとリオルのひざを叩くと、リオルはその場にペタンと座り込む…
チラーミィはそんなリオルの首、脇、耳の裏と細かい部分まできっちりとそして手早く石鹸を滑らせる。
青年はチラーミィのあまりの手際のよさに、呆気にとられて、ただその行為を見守るだけであった。
「あ…ああ…っと…ありがとう…」
チラーミィが彼に終了の合図を送るまで、彼の目はその行為に釘付けであった。
彼のお礼の言葉を聞くとチラーミィはすぐに他のポケモンたちのそばに戻っていく…
「どう…気持ちよかった…?」
「…うん…」
青年は未だ放心状態にあるリオルに話しかける。
「おちんちん…見えてるよ…?」
「…うん…」
いつもの恥ずかしがり屋のリオルはまだ、此処には戻ってきていないようであった。
彼はリオルの頭を優しくなでながら、チラーミィが他のポケモンを洗い上げる様子を眺めていた。
その1時間半後、昨日と同じようにファミレスのテーブル席に向かい合って座る青年とリオルの姿があった。
彼の目の前には火照った顔をしながら、カットフルーツをちびちびと齧るリオルがいた。
「さっきから…大丈夫…?」
彼は心配そうにリオルに問いかける。
「明日はやめておこうか?」
「…行く…」
そういうと、リオルはお皿に残っていたフルーツを平らげて、そばにあったオレンジジュースを一息に飲み干した。
次の日もいつもと同じ時間、青年とリオルはポケモンセンターの浴場にいた。
しかし、この日はいつもとは少し違い、青年は浴室内で同じぐらいの年齢のポケモンたちと仲良く身体を洗いっこするリオルの姿を見ていた。
同じ格闘タイプとして馬が合うのか、さっきからずっと一匹のコジョフーとリオルがじゃれあっている。
そして彼の隣にはいつものチラーミィの姿があった。
「キミはいつもこんなことしてるの?」
青年がチラーミィに尋ねると、チラーミィはにっこりと笑ってうなづいた。
「大変そうだなあ…、やっぱりこの施設のポケモンなの?」
彼のこの質問は判断に迷う部分があったのか、チラーミィは首をかしげる。
(あっ、分かりにくかったかな…チラーミィはたぶん此処の仔なんだろうけど、彼が連れている仔はいったい…?)
(みたところ怪我や病気もしてなさそうだし、幼い仔ばっかりだし…)
青年の疑問は深まるばかりであったが…
「そうそう、キミがつれてくるのは、みんなオトコの仔なの?」
彼のこの問いに対して、チラーミィはすんなりと大きく首を縦に振る。
昨日のチラーミィが他のポケモンを洗う様子を観察していて、彼は質問する前から大体の見当が付いていたようであった。
(やっぱり同性のほうが何かと都合がいいのかな…?)
青年とチラーミィがそんなやりとりをしていると、いつのまにか身体を洗い終えたポケモンがチラーミィのそばに集まっていた。
「あっ、お仕事の邪魔してごめんね…」
青年がそういうと、チラーミィは石鹸を泡立て、手近にいたポケモンを自分の前に立たせる。
そこから先は鮮やかな手捌きで、次々とポケモンたちの首筋、脇の下、手足の間接、指の間…
また尻尾の付け根に、♂の仔の大切な部分まで、無駄なく手際よく洗い上げる。
ポケモンたちはチラーミィに身体を洗われることに対して、まったく嫌がるそぶりを見せずに、幼いポケモン特有の歓喜の混じった声を上げる。
(されてるほうも、きっと気持ちいいんだろうな…)
青年は昨日のリオルのことを思い出しながら、チラーミィの華麗な手つきを眺めていた。
(それにしても、まったく恥ずかしがる様子もないし…この年代の仔は本当はこういう反応するんだ…)
彼の見つめる先で幼いポケモンがチラーミィの前に立ち、大きく腰を突き出している。
その光景はまるで自身の♂の仔の部分をチラーミィに差し出しているかのようであった。
チラーミィはそれを解してか、どのポケモンに対しても、その一部分だけど念入りに洗い上げているのではないか?
彼がそんなことを考え付くぐらい、♂の仔の部分に対するチラーミィの扱いは丁寧なものであった。
身体の成長がそれぞれに異なるのと同じように♂の仔の部分も身体の成長とは別に、その成長度合いが存在する。
種族による形状の違いも伴うが、リオルのように哺乳類に近いポケモンは、柔らかい中身を保護する外皮を持つ。
この外皮の先端部分には穴が開いており、♂の仔の中身の成長に伴い、先端の穴から反転するように外皮が剥き下ろされることとなる。
成長途上にある場合は外皮を下ろす際、激しい痛みを伴い、場合によっては出血することがある。
しかしながら、外皮の中には汚れがたまりやすいと言われ、このことは常に幼い♂ポケモンを持つものの衛生面に関する悩みの種となっている。
チラーミィの場合は♂の仔の部分の成長に合わせて、剥けるところまで外皮を剥き下ろすという至ってシンプルな処置を講じている。
理屈で考えるのは簡単であるが、成長度合いの見極めに力加減といったバランスが重要であるということは言うまでもない。
(あっ…そうだ…今後のためにも…)
青年はチラーミィの仕事が一区切り付いたところを見計らい…
「ねぇ…ちょっと僕にもキミのテクニックを教えてくれないかな…?」
そう言って、チラーミィにその技術の教えを請うた。
チラーミィは彼の願いに対し、ふたつ返事のタイミングで首を縦に振ると、遠くでじゃれあうコジョフーと、彼のポケモンであるリオルを呼び寄せる。
そして、自分に背を向けるようにしてコジョフーを座らせた。
青年もチラーミィに倣って、自分の前にリオルを座らせる。
準備が整ったことを確認すると、チラーミィはコジョフーの首筋、耳の裏、脇の下と、幼い子どもが洗うのを苦手とする箇所を順に手を這わせる。
青年はチラーミィの動作を横目で見ながら、チラーミィに習い、リオルの首筋、耳の裏、脇の下と順番に石鹸の泡を擦り付ける。
チラーミィほど手際よくは行かないようであったが、今まで洗ったことが有る部位に関しては、彼はそんなに苦労はしていないようであった。
次にチラーミィはコジョフーを立たせて、その身体の向きを半回転させる。
青年もチラーミィと同じようにリオルを立たせて、その身体を彼と向かい合うよう正面に向けさせた。
不意にリオルが足の付け根を両手で覆おうとしたが、彼はリオルの手を掴み、その手を身体の側面に固定するように指示を出す。
その一連の流れが注目を集め、チラーミィとコジョフーが揃ってリオルの股間を見つめる。
その視線に気づいたのか、リオルが自身の♂の仔の証を隠そうと身体を捻った。
「リオル、大丈夫…みんなオトコの仔なんだし恥ずかしくないよ?」
青年がリオルに声をかけると、そばにいた二匹も同時にうなづいた。
リオルが二匹の持つ♂の仔の証をそれぞれ順に目で追っていたのがわかった。
チラーミィは一歩前に出ると、リオルとコジョフーの足の付け根を指差し、何かを伝えようとしていた。
リオルがコジョフーと顔を見合わせた後、しぶしぶとうなづいたように見えた。
その動作はこれから行われることに対してのリオルの了承の意であることがうかがえる。
そしてチラーミィはコジョフーの足の付け根に存在する可愛らしい突起物を手に取った。
青年も慌てて、リオルの幼い♂の仔の部分に手を伸ばす。
チラーミィは昨日リオルに対してやったことと同じように、コジョフーの♂の仔の部分を優しく両手で揉み解した後、その幼い突起物の根元と先端部分にそれぞれ手を添える。
彼もチラーミィに倣い、両手を合わせてリオルの幼い突起物を手の内に収める。
その後右手の親指と人差し指、左手の親指と人差し指で挟み込むように、それぞれの指をリオルの幼い突起物の根元と先端部分に当てた。
チラーミィは突起物の先端に添えた手を根元のほうに何度か繰り返し上下させた。
しかしながら、コジョフーの幼い茎を包み込む外皮が剥ける気配は無かった。
青年もチラーミィと同じ動作を試みるがリオルの幼い茎もコジョフーと同様に、分厚い外皮に包まれたままであった。
チラーミィには決して力をこめている印象も無く、最初から外皮を剥き下ろすことは考えていないようであった。
(これって剥けるようになるための過程なんだ…?)
青年はすぐにその状況に気づいた。
何度か皮を剥く動作を繰り返した後、チラーミィは石鹸を泡立てなおして、コジョフーの♂の仔の部分を両手で包み込む。
そして、両手を揉み込む様に手の内で優しく転がした。
彼もチラーミィに続いて、リオルの幼い突起物を両手で包み込むと揉み込む様に手の内で転がす。
彼の手の内に幼い♂の仔が持つ柔らかくふにふにとした感触が伝わった。
一方の洗浄行為を受けている二匹のポケモンは、自分と相手の股の間を交互に覗き見ていた。
そして、指の間からぷるぷると震える自分たちの♂の仔の証が目に付くと、お互いに顔を見合わせて微笑む。
青年はそんな二匹の姿を見て、胸のつかえがとれた様で安堵の表情を浮かべていた。
「チラーミィ、ありがとう。」
脱衣所に戻り、入浴のために脱いだ服を着なおした青年は、チラーミィに深々と感謝の意を告げる。
そしてそばにいたコジョフーの頭を撫でながらこう言った。
「コジョフーもリオルと仲良くしてくれてありがとう。」
そして、彼がリオルの身体を乾かそうとポケモン用のドライヤーに手をかけたとき…
タブンネが何か言いたそうに彼に近寄ってきた。
そして、タブンネは青年の手を引いて、彼を脱衣所から連れ出した。
「ちょっと待って、リオルがまだ…」
「大丈夫ですよ。リオル君はその仔に任せてください。」
以前に青年を彼を浴場まで案内した看護師が彼に向かって言った。
「ちょっと今からカウンセリング室に来ていただいてもいいですか?」
看護師は彼にそう告げると、彼に自分について来る様にと指示を出した。
その看護師はコンコンとドアをノックする。
「どうぞ。」
中から声が聞こえたと同時に、彼女は青年を部屋の中に招き入れた。
「急にごめんなさい。」
先日のセラピストはそう言って、青年に会釈をした。
「あっ、どうも…」
そう言って、彼は軽く頭を下げる。
「早速なんですけど、リオル君どうですか?」
セラピストの質問に対して青年は今週の出来事を順に伝える。
「はい、そうですか…。」
セラピストは青年の話にメモを取りながら相槌を入れる。
そして…
「きっともう大丈夫と思うのですが、明日以降はどうなされますか?」
「えっ…?」
「そうですね、じゃあちょっと場所を変えてお話しましょう。付いてきていただけますか?」
そう言うと、セラピストはすっと席を立ち、彼を連れてある空間を訪れる。
「キッズルーム?」
青年はプレートに書かれた部屋の名前を読み上げる。
そこは柔らかいマット張りの空間で、内部にはさまざまな遊具が置いてある。
そんな部屋の中を先ほどの看護師が見つめていた。
彼女は青年の姿を見ると彼に駆け寄りこう告げる…
「リオル君、もう大丈夫みたいですよ。この仔たちからも教えてもらいました。」
彼女のそばには浴室内で幼いポケモンの世話をしていたチラーミィと、先ほど脱衣所から彼を連れ出したタブンネの姿があった。
「あっキミたちは…?」
彼は看護師に尋ねる。
「その仔たちってこの施設のポケモンなんですか?」
彼女は首を横に振って答える。
「この仔たちは私のポケモンなんです。えーっと…」
「彼女はこのセンターの看護師ではなくて、ポケモンブリーダーなんです。」
そばにいたセラピストが二人の会話を聞いて、彼女の代わりに答えた。
「えっ…?」
「彼女はセンターから要請を受けて、センター内で幼いポケモンの一時預かりをしているんですよ。」
「ええ、そうなんです。」
青年が今まで看護師と思っていた人物は、実際はポケモンセンターに所属する看護師ではなく、他の場所から派遣されたポケモンブリーダーであった。
「じゃあ、いつもチラーミィがつれてきていた仔たちが…?」
彼の中途半端な問いかけに対して、ブリーダーの彼女はこう言った。
「そうですよ、ちょうどあの仔たちもお風呂の時間だったから…」
「でもオトコの仔しか…?」
「あっ、オンナの仔のお風呂は別の人が入れてますので…」
「それで、リオル君は中に?」
セラピストが二人の話を遮って、元の話に戻そうとした。
「はい、見てあげてください。」
ブリーダーの彼女はそう言ってキッズルームのドアを開き、青年を中へ招きいれた。
キッズルームでは先ほどのポケモンたちがはしゃぎ回っている。
そんな中にリオルとさっきのコジョフーの姿があった。
格闘タイプらしく、二匹は積み上げたクッションに向かって跳び蹴りの練習をしているようであった。
青年はそんなリオルを見て呆然とする。
「リオル…服は…?」
「あっ、ここです。」
ブリーダーの彼女がそういうと、タブンネが彼に小さな紙袋を一つ手渡した。
「お持ちになられたタオルとかも一緒に入れてあるので、確認していただけますか?」
彼女の指示を聞いた彼はすぐに紙袋の中身を確認する。
「ありがとうございます。大丈夫みたいです。」
紙袋の中には膨らんだビニール袋が二つ、ひとつは濡れたタオルであり、もうひとつはリオルの履いていた下着であった。
彼はビニール袋に包まれたリオルの下着を見て苦笑いを浮かべながら呟いた…
「何かもう本当に大丈夫みたいですね…」
「まあリオル君の場合はてれやの性格的なものもあったかもしれませんが…、これぐらいの仔は一度経験してしまえば…」
セラピストがそう続けて言った。
青年の視線の先にはリオルとコジョフーの姿がある。
二匹はポケモンのあるがままの姿ではしゃいでいた。
その足の付け根に付着する♂の仔特有の小さな突起物は、足を大きく蹴り上げるたびに、ぷるんと大きく揺れる。
二匹の動きにあわせてぷるぷると小刻みに振動する。
また、動き疲れるとペタンと足を投げ出して座るため、ちょうどその部分だけがぴょこんと飛び出た状態になる。
二匹はそれをお互いに指差して幼いポケモン特有の歓喜の声を上げる。
青年がそんな様子に見入っていると…
「明日からの予定はどうしますか?」
ブリーダーの彼女が彼にそう尋ねた。
「別にもう来てもらわなくても大丈夫ですよ。」
セラピストと彼女は同意見のようであった。
「ちょっとあの仔に聞いてみてもいいですか?」
青年はそういうと、手を振ってリオルを呼び寄せる。
リオルはコジョフーと一緒に彼の元に駆けて来た。
「リオル、明日になったら家のお風呂直りそうなんだけど…どうしようか?」
「えっ…?」
彼の急な質問に、リオルは残念そうな表情を浮かべる。
そしてそばにいるコジョフーの顔を見つめて…その後うつむいた。
「じゃあとりあえず治療は明日までって事にしましょう。その後は結果観測ってことで定期的に来てもらいますね。」
セラピストがそう言うと、
「こちら定期健診のご案内です。特に来月のこの日は、オトコの仔の日なので絶対に来てくださいね。」
ブリーダーの彼女がチラシを指差して言った。
「コジョフーもお友達が増えて喜んでます…」
その2時間後、昨日よりさらに遅い時間、ファミレスのテーブル席に向かい合って座る青年とリオルの姿があった。
彼の目の前には上着だけを羽織ったリオルが満面の笑みを浮かべながら、デザートのプリンの上にのった生クリームをスプーンですくっていた。
「おいしい…?」
「うんっ!」
そんなリオルの姿を見て、青年はそっと目を閉じて自然と綻ぶ顔を取り繕う。
そして、テーブルの向こう側に手を伸ばして、リオルの頬についた生クリームをそっと指で拭った。
「明日のデザートは何にしようか…?」
fin.