今日はコンテスト当日。私がカントーに来てから初めての舞台。  
 
ここはヤマブキシティ、活気に溢れる大きな街。  
ハルカはこれから張り切って大会に臨もうというところだ。  
前回悔しい思いをした分、かなり気合が入っていた。  
 
受付も済まし、人ごみの中控え室で順番を待つのはいつもの四人。  
「ハルカ、ポケモンの調子はどうなんだ?」  
「バッチリよ!優勝しちゃうかも」  
自信満々の顔つきで返す声も弾んでいる。さすがに雰囲気にも慣れた様子だ。  
「それにしても人多いね…」  
キョロキョロ辺りを見回すマサト。  
時計の長針が一回り以上しても、なかなか出番が回ってこない。  
「ところでお姉ちゃん、さっきから飲みすぎじゃないの?」  
「だってぇ…暑いんだもん」  
人の多さと夏の熱気に、服をぱたぱたと煽ぐハルカ。むしょうに喉が渇く。  
気分を落ち着けるということもあり、手に持ったペットボトルのジュースを次々に口に流し込む。  
既に相当の水分と摂っているようだ。  
「まだかな〜…」  
 
待つ間じゅうそうしていたのがいけなかったのかもしれない。  
体の中では、すでに悲劇の準備が始まっていたのだった…  
 
「次は41番、ハルカさんです!」  
司会の声が聞こえる…やっと私の番が来た!準備は万全。  
(よ〜し…!)  
意気込み溢れる顔で、元気よくステージに飛び出すハルカ。  
「ワカシャモ…ステージオン!」  
いつもの振りと決め台詞と同時に、手に握られたボールからワカシャモが勢いよく放たれた。  
火の粉の雨が会場を照らし出し、繰り出される技の数々――  
その華麗なパフォーマンスは観客を圧倒し、魅了した。  
演技は完璧。一次はほぼ確実に突破できる点数。  
(ふぅ…これならいけるかも)  
手で汗を拭い、控え室に戻る。  
「ワカシャモ、よく頑張ってくれたわね」  
他の参加者の様子を見ながら、笑顔でパートナーを褒めるその姿にも余裕がありそうだ。  
次のバトルの準備にかかろうと席を立とうとした、その時…  
 
(あぅ…)  
一瞬顔がひきつった。  
なんだかお腹が急に重くなったみたい。  
慌てて座りなおし、もう一度立ち上がろうとしても同じだ。  
まさか、もしかして…  
おそるおそる手で触って、押してみる。  
(うそ!トイレ行きたくなっちゃった…)  
下腹部にズンと重さがのしかかった。さっき飲んだ分の水分が一気に押し寄せてきたようだった。  
朝に一回行ったきりで、今日の分は全てお腹の中に溜まっている。  
さらに、この時はタイミングが悪かった。  
「一次審査通過者はこの8名です!」  
アナウンスと同時にモニターに表示される、自分の顔と名前。  
しかもバトルの順番は一番最初だ。  
(あ〜んもう行ってる暇ないかも…)  
迷いはしたけど、さすがに試合に遅れたくもない。  
まだ大丈夫、と自分に言い聞かせ、彼女は再びステージへと向かった。  
 
一回戦は難なくハルカが制した。  
相手がハッサムとタイプ相性もあり、制限時間内にKOできたのである。  
感じていた尿意も少し収まり、安心感からか余裕を取り戻す。  
 
二次審査は順調に進み、準決勝戦に進む。  
他の人のバトルに見入ってしまい、いまだトイレには行っていなかった。  
「炎の渦!」  
次の試合もタイプ的には有利。  
「シャァーッ!!」  
けたたましい雄叫びと共に、ワカシャモの口から吐き出された螺旋状の熱風がステージを貫く。  
(いける…!)  
この調子でいけばすぐ決められる、そう踏んでいた。それが甘かった。  
わぁっと場内が沸く。  
「おーっと、ワタッコの痺れ粉が決まりました!ワカシャモ動けない、さらに日本晴れから光合成で体力を回復!見た目も美しい!」  
「わ、ワカシャモ!」  
突然の反撃。直接攻撃を喰らってはいないものの、大幅にポイントが削られた。  
通常のバトル以上に、補助技も警戒しないと途端に状況は悪くなる。コンテストバトルの特色だ。  
ピリピリと静電気がワカシャモの体を走り、その動きを鈍らせる。  
(ど、どうしよ…)  
状況をひっくり返され、一気に焦りが出てしまいそうになった。  
 
「落ち着け、ハルカ!!」  
緊張した場面でいつも頼りになるのは、仲間の声だ。すぐに冷静さを取り戻させてくれる。  
(し、集中しないと…そうだ!)  
フィールドを照らす明るい光。やるしかない!  
「ギガドレイン!」  
指示を受けたワタッコが猛スピードで接近する。  
「ワカシャモ、電光石火から火炎放射!」  
麻痺に苦しめられながらも、攻撃を素早くかわすワカシャモ。連続で放った炎は、日本晴れによって威力が増大している。  
燃え盛る炎の直撃を受けたワタッコに、もはや成す術は無かった。  
 
バトルを終えほっと一息つくやいなや、ハルカは忘れかけていた感覚を思い出してしまった。  
(あぁっ…ちょっ……やばいかも…)  
再び激しい尿意が彼女に襲いかかってきた。  
緊張していた分もあって、余計に膀胱に溜まっている気がする。  
ズンと重くなる下腹部を抱え、ふらふらとステージの裏に戻る。  
 
「やったな、ハルカ!」  
「次は決勝だね、頑張ってねお姉ちゃん!」  
すぐに彼女のもとに集まってくる、普段は有難い仲間の応援も、今は聞く余裕がない。  
(あ〜トイレ行きたい…)  
心の中ではそんなことを思っていても、恥ずかしくてなかなか口にできない。  
なんとか愛想笑いを返すので精一杯だ。  
 
少しでも落ち着かせようと、椅子に座り太腿をぴったり閉じてうつむく。足がトントンと早いリズムを刻む。  
人のいる場所ではやりたくはないけど仕方ない。壁の方を向いて、あの部分をぎゅっと押さえ込んだ…  
「ハルカ…?大丈夫か?」  
「お腹痛いの?」  
さすがにこの様子を変だと思ったのか、サトシたちが声をかける。  
「う、ん…だい…じょぶ…」  
小さく途切れ途切れに返す。声を出すのさえ結構つらかった。  
残り一戦の流れが速かったため、ゆっくり歩いて用を足しに行くこともできなかった。  
 
 
結局膨れてきている膀胱を抱えたまま、決勝戦が始まってしまった。  
相手コーディネーターのポケモンはサイドン。  
序盤から猛攻を受け、早くも不利な状況に立たされる。  
 
(ん…はやく……おしっこいかせて…)  
しかしハルカはというと、どうしても我慢する方にばかり力が入り、バトルに集中できない。  
しかも技を指示するたびに下半身に響く。大衆の面前ではあるが、もう普通に振舞ってはいられなかった。  
内股になり、少しでも出口を塞ごうと足をもじもじと摺り合わせる…  
顔中に汗が流れ、歯を噛み締める表情にも耐えていることがはっきりと出てしまっている。  
その様子に観客の一部が騒ぎ出した。  
怪訝そうに彼女の方を向き、ひそひそと声を立てている人までいる。  
 
我慢してるの、バレちゃってるのかな?  
すごい恥ずかしい…  
でも、こうでもしないともっと恥ずかしいことになっちゃう。  
 
なんとかぎりぎりの所で耐え、パートナーに指示を出そうとする。  
相手は強い。ここで負けてしまえば、すぐにでもトイレに行ける。苦しみからも解放されるのだ。  
でもそれは彼女の意志が許さなかった。  
どうすれば勝てるか…そのことにばかり頭が働く。  
 
(はぁ、はぁ…どうすればいいの…あぁだめ出ちゃう…)  
もはや余裕はほとんど無かった。思わず女の子の部分を両手で押さえ付ける。  
その出口では、今か今かとその時を待ちわびるように濁流が渦巻いていた。  
客席のどよめきが聞こえる。一歩でも動くと決壊してしまいそうだが、このまま動かなくてもいずれ限界が来る。  
 
「ワ…カシャモ……」  
パートナーに届くほどの声を出そうとすれば、お腹に込める力が緩んでしまう。  
下半身の感覚がほとんどない。もしかしたら、既に少しちびってしまったかもしれない…  
それでも最後まで諦めたくなかった。  
「ほのお…の…うずっ……」  
冷や汗をかきながらも、震える声で命令を出すハルカ。  
幸運にもこれが見事に命中、相手を怯ませる。隙ができた。  
 
今しかない!  
チャンスと見ると、一瞬自分の状況も忘れて声をあげる。  
「でんこ…う…せっか…!」  
(あ…んっ!)  
ジュン、と一瞬パンツが暖かくなった感じがした。さらにそれから、ツツー…と足をわずかに水滴が伝う。  
(あ…あぁ…出ないで……)  
思い切り手に力をこめて最後の抵抗をするハルカ。だが無情にも、チョロチョロと液体は滲み出してくる。  
押さえていた手袋にまで黄色い染みができてしまった…  
「ハルカさん、どうしました!?」  
体ががくがく震え、こんな格好で汗を流して苦しそうな顔をすれば当然のことだ。司会者が急いで駆け寄ってくる。  
でももうこれ以上我慢を続けることはできなかった。  
 
(もう…だめ)  
「ワカシャモ…スカイアッパー…っ!!」  
妙に落ち着いた声で、ハルカは最後の技を叫んだ。頬を流れる涙。そして…  
 
みるみるうちにスパッツが濡れていくのが、はっきりと観客全員の目に映った。  
 
生暖かい感触がお尻から股間にかけて伝わる。  
滝のように足を流れ落ち、また出口を押さえていた手からこぼれ落ちる雫。  
(はあぁぁ……)  
シュワアァァ…とくぐもった音を立て、その液体は股間から容赦なくほとばしる。  
ピチャ、ピチャと会場に響き渡る恥ずかしい音。  
たくさんの視線が注がれる中、彼女は激しい羞恥心と、開放感の気持ちよさに包まれていった。  
 
 
数分にも感じられるぐらい、長いお漏らしを終え水溜りの上に泣き崩れるハルカ。  
今となってはコンテストで優勝したことなどどうでもよかった。  
後に残ったのは、彼女の周りに漂うツンとしたおしっこの匂いだけだった…  
 

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