カメラモンスターの逆襲の逆襲!  
 
 緊急呼出をうけたももこが研究所に着くと、みやことかおるが緊張の面持ちで  
ソファに座っていた。  
「……揃いましたね」  
 ソファの前で、同じく緊張したようすのケンが口を開いた。  
「ユートニウム博士から、重大発表があります。博士、どうぞ」  
「深刻な事件が発生しました」  
 ケンにうながされ、重々しく言葉を発する博士。ただならぬ雰囲気に五人の空気が  
一気に張り詰めた。  
「ここに被害者を呼んでいます。この人です」  
 博士が階段の方を向き、ももこたちもそれにならった。視線の先には、よろよろと  
ミス・ベラムの助けを借りて階段を降りてくるメイヤー市長の姿があった。  
「メイヤー市長?」  
 意外な人物が登場したのと、一見してどこに被害をうけているのかわからなくて、  
三人は首をかしげた。  
 しかし、市長が階段を降りて目の前に立ち、正面を向き直った時、すぐにその姿が  
異常であることがわかり、三人は悲鳴をあげた。  
 向かって左半分――つまり、市長の右半身が、裸になっているのだ。  
 左半身はいつもの、趣味の悪いスーツと蝶ネクタイ。しかし右半身だけが見事に  
削げ落ちて、たるんだ肌があらわになっているのだ。これは相当に異常である。  
「パワパフガールズZの諸君、私がなぜこんな姿になってしまったか説明しよう」  
 部屋中の視線をひとりじめしながら、市長が情けない声を出した。  
 ――しかし、もはや説明は不要である。  
 ついこの間、自分が捨てたカメラがモンスター化して襲われ、右半身を白黒にした  
ばかりなのだ。せっかくモンスターを倒したというのに……  
「またカメラ捨てちゃったの?」  
 ももこが呆れたようすで聞いた。  
「だって、やっぱりデジカメのほうが便利なんだもん」  
 子供のような言い訳をする市長。姿が姿だけにいっそう不気味だ。  
 場の空気が急速に冷えてきたのを感じて、ケンがひとつ咳ばらいをした。  
「おそらく、以前倒したカメラモンスターがパワーアップしたものと思われます」  
「被写体を裸にする能力……これはみんなも十分気をつけてくれ」  
 博士の言葉を、ももこがさえぎった。  
「あのーすいません、その前にその、粗末なものを直してほしいんですけど」  
 言いながら、市長の股間からだらしなくはみ出しているモノを指さした。  
 流しの三角コーナーを見る時の目でジトリと睨む三人の少女たち。  
「おぉ、すまない。直しても直しても出てきてしまうんだ。右曲がりなもので」  
 あわてて市長は、それを左半身のパンツ部分にごそごそとしまった。  
「パワパフガールズZの諸君、たのむ、一刻も早く私の右半身の服を奪ったあいつを  
もう一度倒してくれ。このままじゃ、私は次の選挙に勝てないっ」  
 たしかに、ハミチンしてるオッサンに投票する市民は誰ひとりいないだろう。  
「出動してくれパワパフZ!」  
 市長のことはどうでもいいが、他の被害者が出るのは食い止めなくてはならない。  
 三人はため息をつきながらピーチの声を聞いた。  
 
「ガシャー! ガシャー!」  
 街ではすでに、復活したカメラモンスターが所かまわずストロボを炊いていた。  
あわれスッ裸にされた市民たちが、悲鳴をあげて散り散りに避難している。  
「……あれはやっかいね」  
 上空で様子をうかがいながら、ブロッサムがつぶやいた。  
「むうっ、パワパフZ! また邪魔する気か!」  
 三人に気づくや否や、カメラモンスターが顔から光線を発射させた。それを間一髪、  
かわしたと思った三人だったが、いた場所が悪かった。背後にあったビルの窓に光が  
反射して、一瞬のうちにバブルスに襲いかかったのである。  
「バブルス!」  
 ブロッサムとバターカップが同時に叫ぶ。  
 強い光にくらんでいた視界があかるくなり、二人の目に映ったのは、一糸まとわぬ  
姿となってしまったバブルスだった。  
「いや〜ん」  
 まいっちんぐ女教師のごとく、なまめかしい声をあげて身をよじるバブルス。  
 胸を寄せる格好になって、真ん中にちいさな谷間ができた。  
 その時である。怒号にも似た歓声が、三人の足の下から一斉に沸きあがった。  
「全裸だ!」  
「うわっマジ!? マジ全裸!? マジ!?」  
「すげえ! 女子中学生のリアル全裸だ!」  
「お、俺、生きててよかった……」  
 パワパフファンとおぼしき市民たちが、この戦いの行方を見守っていたのである。  
 ちょっと体脂肪率の高い十数人の男衆が、この戦いに「何か」を期待してひそかに  
見守っていたのである。すでに自らも全裸となりながら。  
 しかして彼らの期待通りの展開になったわけである。  
「こ、こら! てめーら! なに見てんだよっ」  
 ヌルリと熱気を帯びた男どもの視線がバブルスの白い肌に無遠慮に突き刺さって  
いるのに気づき、バターカップが激しく叫んだ。ブロッサムもそれに続く。  
「あっち行きなさーい!」  
 しかし当然、エロ屈強な猛者たちはそのくらいでひるむものではない。  
 むしろ全勃起の勢いで、バブルスのあらわな肢体を視姦しつづけるのだった。  
 
「やだあ、どうしましょう……」  
 バブルスがあわあわと、しかし彼女らしいゆるりとした動きで、なんとか裸体を  
隠そうとするものの、片手にロッドを持っているのでどうしても多くを隠せない。  
 チラと右に動くと、その動きをまばたきもせず網膜に焼き付けている奴らが、  
「ちっちくび! 乳首みえたああああ」  
 左に動くと、  
「うわああああ今すじ見えたよ! バブすじ! バブすじ!」  
「かわいいよ! バブルスのちっちゃいお尻かわいいよおおおおお」  
 といちいち絶叫をあげる。何人かは物凄い勢いで男根をこすっているようだ。  
「バブルス! とりあえずこれ着ろ!」  
 醜い男どもの慰み者にされている恥辱に慄然としながら、バターカップが自分の  
ジャケットを脱いでバブルスに手渡した。  
 しかしこれはまったくの逆効果であった。  
 全裸にジャケットのみ。この絶妙スタイルは、彼らをより喜ばせてしまった。  
「素晴らしい、緑のアクセントによりバブルスの真っ白なお肌がより映える!」  
「そしてジャケットからチラ見えるピンクの乳首……神々しくすらあるね」  
「バタカグッジョブ!」  
「バタカグッジョブ!」  
「バ・タ・カ! バ・タ・カ!」  
 期せずして沸きおこるバタカコール。言われたバタカは戸惑って、  
「くっそう変態どもめ……うるせーっ! ぶっとばすぞてめーら!」  
 とドスをきかせて叫ぶものの、これもまた逆効果。  
「ぶっとばしてくれーっ」  
「もっと罵ってくれーっ」  
「バタカになら殺されてもいいよおおおお」  
 とめどなくヒートアップをつづける男たちの本能を抑えられるはずもない。  
「そうだわ、泡で服をつくれば……」  
 バブルスがロッドからシャボンを出し、それでモコモコと自分の体を覆った。  
「……ふう。これでなんとか隠せましたわ」  
 胸と股間を泡で隠した格好は、お風呂のグラビア写真みたいでじゅうぶん淫猥だが、  
とりあえず丸出しよりはマシだ。  
 眼下の男どもにも、不満そうな顔はしているものの「これはこれで」的な、ある種  
納得の空気が流れており、ひとまず安心するバブルスなのであった。  
 
「おまえらぁ! 相手は俺だガシャ!」  
 しびれを切らしたカメラモンスターが声を張りあげた……と同時に光線の第ニ射が、  
うなりをあげてガールズを襲った。  
 ブロッサムはかわした。バブルスもかわした。バターカップは、いっこうに去る  
気配をみせない全裸紳士たちにギャーギャー罵声を浴びせていて、一瞬、それに  
気がつくのが遅れてしまった。  
「あぶないっ!」  
 次の瞬間、バターカップに迫りくる光に割って入るブロッサムの姿。  
 光を浴びたのは、ブロッサムだった。  
「ブロッサム!」  
 バターカップが叫び、下の群集からもどよめきが起こった。  
「いやぁ〜ん」  
 バブルスの真似をして、なまめかしい声をあげて身をよじるブロッサム。  
 しかし彼女が感じたのは、時が止まったかのように凍りついた周りの空気だった。  
「ぎゃああああああああああああ」  
 目の前のバターカップが、地平線までとどろく悲鳴をあげた。  
「え!? なに!? なに!?」  
「ちっ近づくな! おれに近づくなああああ」  
 予想外のリアクションに思わずうろたえるブロッサム。  
 光線を浴びたブロッサムは、衣服どころか皮膚まで透過させられて、筋肉や内臓が  
丸見えの状態になっていた。一口に言うと理科室の人体模型。あれにブロッサムの  
髪の毛とリボンがくっついているのだ。たしかに彼女のカラーは赤だが、これは  
いくらなんでもクリムゾンすぎる。完全にスプラッタである。  
 しかし本人は、自らの身に起こった悲劇にまったく気づいていない。  
「ちょっ、ちょっとお! 私の裸はそんなにダメなの!?」  
 あまりに反応のない男どもを見て、ちょっぴりバブルスへの嫉妬心が芽生えた。  
「ちちち違うんだ。違うんだ。なんつーか裸のレベルが違うんだ」  
 あたふたと首を振るバターカップに、ムキ出しの血管をピクピク震わせながら  
ブロッサムが詰め寄る。  
「そりゃー私はバブルスみたいに美人じゃないですよ。明るいだけが取り柄ですよ。  
だけど自分ではさ、けっこう愛嬌あるしそこそこいけるんじゃない? なーんて  
思っちゃったりしてたわけ。だってカワイイのは笑顔が一番でしょ?」  
 まぶたが無いせいで、もともと大きな眼球がありえないほど巨大に見える。今にも  
こぼれ落ちそうなその目玉でギロリと睨まれて、バターカップは気絶しそうになった。  
「なのにそこまでイヤがられるとさぁ、さすがにちょっと傷ついちゃうのよね」  
「……ガハハ、光線がまたパワーアップしたみたいガシャ! この調子でにっくき  
この街をバイオハザードにしてやるガシャア!」  
 落ち込むブロッサムの向こうで、カメラモンスターが勝ち誇るように高笑いをした。  
 しかし、その時である。  
「イヤがってなんかないぞっ!」  
 群衆の中から叫び声が聞こえて、ブロッサムがハッと顔をあげた。  
 
 それは、男たちの魂の叫びだった。  
「ビックリしたけど、よく見たら中身もキュートだぜーっ」  
「心臓が一生懸命バクバク動いてるのが健気でいい!」  
「なんて健康的なピンクの胃袋なんだ! モツ煮込みにして食わしてくれーっ」  
「脳ミソが見えねーぞ! ツルツルの脳ミソ見せろーっ」  
 マニアというものはどんな方向にも対応可能なのだ。性のオールアラウンダーの  
実力を垣間見たバターカップは、その凄さと恐ろしさに思わず身を震わせた。  
「やーやーどうもどうも。ありがとーありがとー」  
 その横でブロッサムが能天気に、両手をあげて声援に応えている。  
 弱りきったバターカップがバブルスのほうを見ると、バブルスは唇に人差し指を  
立てて首を振った。「言わないほうがいいですわ」という意味だ。  
 まぁ、たしかに、こんなに喜んでるんだし真相を告げるのは野暮というものか。  
 もしかしたら、ただ裸になっていたよりも反響が強いかもしれない。  
「あぁーそのヌチヌチしてる小腸の真ん中に突っ込みてえ!」  
「俺、生マンコも見た事ないのに生子宮見ちゃったよ……感動だよ」  
「かわいいよ、ブロッサムの子宮かわいいよ!」  
「そこに俺の子を宿してくれーっ! 卵巣に直接ぶっかけてやるぜーっ」  
「ブロッサム! ブロッサム! ブロッサム!」  
 血管の脈動、筋肉の収縮、内臓の光沢……リアルな「生」を前にしての畏怖の念が、  
すべて性的昂奮へと昇華する。人体の不思議展がそのまま動いているようなその姿に、  
人々はただ息をのみ、感嘆と敬意をもって賛辞の声をあげる。  
 皮膚という仮面を取っ払い、すべてをさらけ出したブロッサムの姿が、美しく、  
神々しく、圧倒的な存在感をもって見る者を惹きつけるのは、ごく自然なことだった。  
「そうよ、やっぱりヒロインはこうでなくっちゃいけないわ! えへへ」  
「あのーブロッサム、悪いけどさ……満足したらビルの陰に隠れといてくれ」  
 しかし、間近で見ているバターカップにとっては、ただのグロッサムなのであった。  
 
「おまえらぁ! 相手は俺だっつってんだろーガシャ!」  
 バブルスは、身を包む泡がもろいので派手に動けない。ブロッサムは、できれば  
あまり動いてほしくない。――動けるのは自分だけだ。  
 一気に勝負をつけようと、カメラモンスターに突っ込んだのがいけなかった。  
ハンマーを振りかぶったその一瞬の隙に、光線の第三射をうけてしまったのである。  
「しまったっ!」  
「バターカップ!」  
 バブルスと群衆は固唾をのんでバターカップの姿をうかがった。全裸になるのか、  
はたまた内臓モロ出しか。もし、また光線がパワーアップしていたら……?  
 一方ブロッサムは余裕で、全裸になったであろうバターカップをさてどんなふうに  
いじってやろうかな、などと考えていた。  
「やっぱ、カワイイって言いまくって照れさせるのが王道かな……」  
 そんなブロッサムの目の前に突然、ガイコツのバケモノがおどり出たもんだから、  
「きゃああああああああああああ」  
 月までとどろく悲鳴をあげて、逆にガイコツが驚いた。  
 ガイコツとはもちろん、バターカップの変わり果てた姿である。  
 光線を浴びたバターカップは、衣服や皮膚どころか肉や内臓まで透過させられて、  
骨が残るのみになっていた。一口に言うと理科室の骨格標本。あれにバターカップの  
髪の毛がボサボサとくっついているのだ。少女と人体模型と骨格標本の夢のトリオが  
今ここに誕生したのである。夢といっても悪夢だが。  
「うわっ、やっぱりか!? おれ、やっぱりか!?」  
 ブロッサムのリアクションに、わたわたと自分の体を確かめるバターカップ。  
 何か言うたびにアゴ骨がカタカタ鳴ってしまう。  
「ええ、見事なホネになっちゃいました……」  
 ホネホネロックの動きであせりまくるバターカップに、バブルスがため息をついた。  
 一方の群衆は、またしても大騒ぎである。  
「すげー! かっこいいぞーっバタカー!」  
「おまえは骨のある女だと思ってたぜ俺はよおー!」  
「あぁバタカ、恥骨丸見えだよバタカ!」  
「中身なんにもないぞー! 寒くないかーっ」  
 たしかに胸も腹もスカスカだ。首をさわってみると異様に細い。頭がぐらぐらする。  
脚も腕もおそろしく細いし、目もカラッポだから指を入れてみたら鼻から出た。  
 
「でっ、出たわねモンスターっ!」  
 そんなバターカップに、ブロッサムがヨーヨー片手に飛びかかってきた。  
「ち、違う! おれだ! おれおれ!」  
「今時オレオレ詐欺なんてひっかからないわよ! 覚悟しなさいモンスター!」  
 てめーの姿はどうなんだ! というのはとりあえずおいといて、今は同士討ちなど  
してる場合ではない。一刻も早く元の姿を取り戻さないとシャレにならない。  
「待ってブロッサム! そのモンスターはバターカップなの!」  
 と、いいタイミングでバブルスがフォローを入れてくれた。言い方が微妙だが。  
 はてなマークのブロッサムに、バブルスが状況を説明している間、眼下では例に  
よって男どもの狂騒がくりひろげられていた。  
「うおーバタカー! 骨まで愛してー!」  
「無機質であることが逆にエロい。……新たな境地が拓けたぜ」  
「橈骨と尺骨の間でハサんでしごいてくれーっ」  
「いやいや、そのたくましい大腿骨で俺のケツを突いてくれーっ」  
「ダシ取らせてくれーっ! ふたりで行列のできるラーメン屋を開こうーっ」  
 彼らの強い想いは決してくじけない。  
 そんな歓声ひびくなか、説明を受けたブロッサムがうなずいた。  
「なるほど。光線がパワーアップして、こんな風になっちゃったってことね」  
「ええ。とにかく早くカメラモンスターを倒さなきゃ。私、このメンバーでガールズ  
やるのはちょっと……」  
「同感だぜ」  
「そうね、かわいそうなバターカップを元に戻してあげなきゃ!」  
 三人がキッとカメラモンスターを見据えた。バブルスの瞳には怒りの力が満ち、  
ブロッサムの目玉はこぼれ落ちそうで、バターカップには眼球自体なかった。  
「ガシャガシャガシャ、いい格好になったガシャ! さぁ仕上げガシャア!」  
 カメラモンスターから光線の第四射が放たれた。  
 それは三人に向けてではなく、はるか山手の研究所へまっすぐに進んだ。  
「研究所もろとも! この世から消し去ってやるガシャアッ!」  
 
「ケン! 反射板ではねかえしてっ」  
 通信機に叫ぶブロッサム。しかしケンの悲痛な声が返ってくる。  
「だめですっ、光が大きすぎる!」  
 建物を丸呑みしそうな太さの光線が研究所を襲う。さらにパワーアップした光線  
ならば、今度は骨も残るまい。文字通り消え去ってしまうだろう。  
 研究所のみんなが消えてしまう!  
「やめろーっ!」  
 バターカップが叫んだ、その時である。  
 研究所の屋上に立っているひとりの男が声を張りあげた。  
「やめるんだカメラモンスター!」  
 市長である。市長が全裸になって、屋上で仁王立ちしているのである。  
「そのフラッシュにより、君はにっくき私を消し去ることができるだろう! しかし、  
いま研究所を写せば、私のこの姿が永遠に君のフィルムに焼き付くことになるぞ!」  
 力を限りに市長が叫んだ。股間のモノが、風に揺れるほどの大きさがなかったので、  
力を入れるたびにプルプル控えめに震えた。  
「い……い……嫌だガシャアー!」  
 カメラモンスターが思わず身をよじり、光線は軌道を変えて間一髪、研究所の  
はしっこをかすめて走り去った。  
「今だっ!」  
 すかさず三人が攻撃をたたみかけて、ついにモンスターを撃破したのであった。  
 
「いやー、ヒドイ目にあったぜ」  
 すっかり肉付きのよくなったホッペを撫でながらかおるがつぶやいた。  
「ほんと、かおるの格好のスゴイことスゴイこと。鏡があればよかったのに」  
 ニヤニヤしながらからかうももこに、  
「あーそうだね」  
 と、かおるが棒読みで応えた。我関せずのバブルスがウフフと笑う。  
 三人は研究所のソファで、今回の戦いが無事に済んだことを喜び、くつろいでいた。  
「やあ諸君、御苦労だったね」  
 そこに全裸の市長が現れたもんだから、ももこは思わず紅茶を噴いた。  
「なっなっなんで全裸!? またカメラ捨てちゃったの!?」  
「違う違う。実は今回の一件で、露出の悦びに目覚めてしまってね」  
 よく見ると全裸ではあるものの、趣味の悪い蝶ネクタイはつけており、靴下と靴は  
履いている。単に服を着ていないだけだ。三人は深いため息をついた。  
「市長再選のあかつきには、市民全裸デー条例を出そうと思うんだ」  
 そう言って満面の笑みを浮かべる市長。  
 こりゃ落ちるわ……三人が思ったその時、研究所の外からにわかに騒ぎ声がした。  
「し・ちょ・お! し・ちょ・お!」  
「げえっ!」  
 外を確かめたかおるが声をあげた。  
 先の戦いを見守っていた全裸紳士たちが再び集い、市長コールをしているのだった。  
 
(おわり)  
 

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