〜くりこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
某月某日   
 
 その日あたしは借りていた本を返しにお姉ちゃんの部屋に行った。  
 そしたらお姉ちゃんは珍しく悩んでいた。いや、本当に珍しい。  
 というかその格好は悩みを聞いて欲しいのかと突っこみたい格好だ。  
「お姉ちゃんどうしたの?その”THE 悩みポーズ”は?」  
「あ〜〜〜、ちょっと悩んでるのよ〜」  
 いや、それは見ればわかるわよ。  
「どんなこと〜?」  
「いや〜同級生の友達二人がね〜・・・」  
「それっていつも一緒にいる紫と黄色の髪のお姉ちゃんたち?」  
「うん。その二人が最近ね〜何というか〜その〜、妙〜な空気を作ってるのよ。」  
「妙な空気〜?」  
「不安と好意と期待が混ざったみたいな曖昧な空間・・・みたいな?」  
「は?」  
「ピンク色と紫色が混ざり合ったオーラを纏っている?感じ」  
 ようするに二人が変な空間を作ってるってことよね?それってつまり・・・  
 
「それはきっとズカ症候群よ!!通称”お姉さま症候群”!!!」  
 
〜ももこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
「お姉さま症候群〜〜〜!?」  
 なにそれ聞いたことないわよ?てゆうか通称のほうが長いわよ!?  
「ふ、ふ、ふ、お姉さま症候群、それは宝塚の女同士の”お姉さま〜”な感じの人達よ。」  
 とりあえず私は宝塚〜な感じのかおるとみやこを想像してみた。  
 
「かおるお姉さま!」  
 ドレスを着て目がキラキラして縦ロールが凄い大きさになってるみやこ。  
 少し動くだけで縦ロールがびよんびよんと跳ねる。  
「なんだい、みやこ?」  
 白いスーツを着て目がキラキラで歯がキラーンなかおる。  
 ついでにカールしたヒゲもつけてみた。  
「わたし、かおるお姉さまのこと大好きです」  
 縦ロールがびよんびよん跳ねるみやこ。  
「なんと!?うれしいよ、みやこ」  
 ヒゲがピーンと伸び歯をキラーンと輝かせ微笑むかおる。  
「ああ、幸せ・・・」  
 びよよ〜ん  
「ふ、かわいいやつめ」  
 キラーン  
「ああ、時が止まればいいのに」  
 びよよ〜ん  
「ふふふ」  
 キラーン  
 
ここで私の思考は中断した。ていうか無理!  
 続ければ私の腹筋は崩壊してしまう。  
「ぷ、ああはは歯ははっはは破は、はははっははは、HAHAHAH、AHAHAは  
 ひひひHI非ひひひひ、ひひひHI〜ひ〜ひ〜〜〜〜ははは〜、は〜、は〜・・・」  
「・・・何を想像したのお姉ちゃん?」  
「ひ〜ひひひ、くりこあんた私を笑い殺す気!?あはは、は〜ははは・・・」  
「まったくお姉ちゃんは想像の仕方が間違っているわ。いい?こういう場合は・・・」  
 くりこは身振りをつけながら演技を始めた。  
 止せばいいのに私はまたさっきの服装に変換して想像した。  
 
「かおるさん!わたしもう我慢できません!」  
 びよんびよん  
「だめだ!俺たち女同士じゃないか!」  
 キラーン  
「それがなんなんですか!?愛に性別なんて関係ありません!」  
 びよよ〜ん  
「みやこ・・・」  
 キラーン  
「結婚して・・・」  
 びよ〜んびよ〜んびよ〜ん  
「ああ・・・」  
 キラーン  
 
〜くりこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
「そしてここでお姉ちゃんが乱入して・・・ってお姉ちゃん!?」  
 お姉ちゃんは無言で床を叩きながら腹を抱えながら悶絶している。  
 どうも直撃だったらしい。  
「FU・・ひ、ひひ、ちょっ、ちょっと待ってもう無理、無理。もうだめ・・・」  
「ふ〜このロマンがわからないから恋人ができないんだよ〜」  
 お姉ちゃんはこの一言で急に醒めたのかムッとして怒り出した。  
「なによ〜そんなの関係ないでしょ!」  
「そんなんじゃあたしが先に恋人つくっちゃうよ」  
「なんか私に遠慮してつくってないみたいな言い方してない?」  
 ・・・それはある意味当たってるかも・・・  
「まあいいや、これで悩みも解決できたでしょ?じゃあお休み〜」  
「解決できたのかな〜?まあお休み〜」  
 
 お姉ちゃんに遠慮している。それは当たってる。だってあたしたち毎日会うんだよ。  
 一緒に住んでるんだよ。何かあったら気まずいじゃん。もしあたしがお姉ちゃんと・・・  
「くりこ〜ももこ〜お父さんが寿司を買ってきたわよー食べる〜?」  
「食べる食べる!あたしイクラ取〜った!」  
 すぐさまお姉ちゃんが反論してきた。  
「くりこ!あんた前もイクラ食べたでしょ!?」  
「へ〜んだ。早いもの勝ちだよ〜!」  
 
 
某月某日の次の日  
 
 あたしは友達と遊んでいたが昨日お姉ちゃんが言ってた二人のお姉ちゃんが  
 いたから用があると抜け出し後を付けてみることにした。  
 公園のベンチで誰かを待っているみたい。近くの茂みに身を隠して様子を見ることにする。  
 なんか探偵みたいね。腕時計もメガネも蝶ネクタイも持ってないけど。  
 それにしても”お姉さま〜”なことをするのかな?楽しみ〜?  
 
〜かおる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
 俺は女の子同士の付き合いというのが苦手だ。  
 が、ももこやみやこと一緒にいるならそういうことも多々ある。  
 一緒にお菓子を食べたり、一緒に買い物に行ったり、家でお喋りをしたり、手を繋いだり、  
 着替えている時にじゃれ合ったり、一緒に風呂に入ったり、ほっぺにキスしたりと様々あった。  
 二人は普通だと言ってるがやはりどうも苦手だ。  
 
 今日は三人でどこか遊びに行く予定だったんだが案の定ももこが遅刻。  
 今、少し不安だ。ももこの事ではなくみやこと二人きりということ。  
 女の子同士のスキンシップはみやこのほうが圧倒的に過激だからな〜。  
「ももこさん遅いですね〜」  
「ああ、そうだな」  
「ところでかおるさん、性処理のほうはいつもどうしていますか?」  
「は?整理処理?何だそれ?」  
「まあ、やっていないのですか?じゃあ今度一緒にしましょう!」  
 とても嬉しそうなしそうな顔でみやこが言う。なんかとんでもなく嫌な予感がする。  
「ああ・・・。ところでそれは一体どんなことをするんだ?」  
「え?ええとーそれはですね〜」  
 みやこがますます嬉しそうな顔をして赤くなってる。まずい。この上なくまずいと俺の  
 第六感がいっている。ピキーンと頭に来た!  
「い、いやいい。言わなくていい」  
「まあまあそう言わずに・・・」  
 言うが早いかみやこは俺の服の中に手を入れていた。いや、全然見えなかったぞ!?  
 マンガで目の前のボクサーが消えたというのを現実で体験した気分だ。  
「え?ちょ!?え”〜!?」  
「だからこうして胸を弄ったり〜・・・」  
「ひゃん!?」  
「こちらも少々弄ったり〜」  
「え?そこは・・・」  
 みやこは俺のズボンの中。正確にはおしっこをする所の少し後ろ辺りを触り始める。  
 でもそこは小学校では赤ちゃんが生まれて来る所であまり触らないでと言われた。  
「みやこ・・・そこは触っちゃいけないって先生が・・・」  
「まあまあ、別に少しくらい〜?」  
 とろんとした目でみやこが言う。はっきり言ってこの表情は絵的にやばい!!  
 もし他人がこんな顔をして誰かに迫ってたらすぐ通報してるよ俺は!?  
「だから止めろって!」  
「それじゃ続きは今度ということで」  
 もういつものみやこの顔に戻ってる。いや、だから戻るの早すぎだろ!?  
 やっぱからかわれているのか!?普通のスキンシップなのか!?  
「!」  
 ?、なんかみやこがちらっと茂みを見て笑いこう言った。  
「今度はももこさんも混ぜてやりましょうね?」  
 
〜くりこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
 目が合った!  
   
 心音が1オクターブ跳ね上がった気がした。  
 いやもうすでに心臓はバクバクいってる。  
 よくは解からないけどHなことをしているのは解かった。  
「今度はももこさんも混ぜてやりましょうね?」  
 さらに心音が跳ね上がる。  
 お姉ちゃんが・・・!?あの人達と!?・・・Hなことを!?!?  
 今度は胸を締め付けるような感覚。手足から血が引いていくような感じ。よく解からない。  
 
「ごめ〜ん、待った〜?」  
「お、遅すぎだ!何やってたんだよ!?」  
「まあまあ、待ち時間をそれなりに楽しんだじゃありませんか〜?」  
「む!?・・・まあいいや行こうぜ!」  
「うん!」  
 
 お姉ちゃん達が遠くへ行ったのを確認してあたしは茂みから出た。  
 そのあとお姉ちゃん達が行った方向を少し見ていた。  
 ・・・・・・・・・やっぱここままじゃまずいよね。  
 
〜ももこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
 某月某日の次の日の夜  
 
 いや〜今日は楽しかったな〜。でも、なんか時々かおるが考え事をしていたような?  
「お姉ちゃんいる?」  
「いるわよー」  
 入ってきたくりこはなにか真剣な顔をしている。こっちは少しきょとんとしてしまった。  
「どうしたの、くりこ?」  
「ねえ、お姉ちゃんはHなことをしたことある?」  
「ぷっ!?へ、は〜?なに言ってんの!?」  
 何か飲んでたら間違いなく吹いていただろう。まさにコーヒー返せって感じだ。  
「ないの?」  
「そ、そりゃ〜八人を曜日替えで〜・・・」  
 また咄嗟に嘘をついてしまった。だがくりこは気にせず続ける。  
「じゃあキスしたことある?」  
 ・・・言えない。まさかカエルとファーストキスをしたなどとorn  
 くりこはいつも”ボ〜ケ〜ガ〜エ〜ル〜!”とか言ってるし。  
「言っとくけどあたしとのはなしだよ?」  
「え?・・・・・・あ〜〜」  
 昔くりこが幼稚園のころキスの真似〜みたいなことをして遊んでいたら足場が  
 崩れ私に倒れてきた時に抱きとめる形でしてしまった事があった。  
 結構派手な倒れ方だったから周りのみんなは怪我の方を気にしてくれ  
 気が付かなかったのが幸いだった。  
 ていうか私は頭を打ってかなり痛かったんだけど〜。  
 
「よく覚えてたわね〜そんなこと」  
「で、どうなの!?」  
 いや、あれをファーストキスにしたらまだ人類ということでカエルよりはマシかも。  
 でも初めてが実の妹・・・それも終わってる。う〜んどうしよ〜?ん〜〜〜  
「・・・そう!あんたとのが初めてだったのよ!あんた以外とはしていないわ!」  
「え・・・?」  
 くりこは意外そうな顔をした。私が嘘をつくと思って何か考えていたのかな?  
「じゃ、じゃああたしともう一度しない?」  
「な、何でそうなるのよ!?」  
「だって一度も二度も同じでしょ?やってないなら別にいいじゃん?」  
「む、・・・いいわよ」  
 なんか引くに引けなくなった気がする。少しでも嘘をつくとろくな事が無いかも?  
「じゃあいくわよ・・・」  
「う、うん」  
 なんか急にくりこがしおらしくなった・・・。何故かとてもかわいらしく思える。  
「ん・・・・・・」  
 くりこは目を閉じ私が来るのを待っている。私もそれに唇を合わせる。  
「ん、んん」  
 昔や少し前のような事故ではなくしっかりとしたキス。一瞬ではなく確かな感触。  
 粘液が混ざるような感覚。これがケンのいっていた微生物の交換なのかな?  
 大人のキスは舌も入れるんだっけ?でも、もっと入れないと無理じゃないの?  
 色々考えながら私は唇を離す。  
「・・・・・・」  
「・・・・・・」  
 少し糸を引いていた。くりこは私をぼ〜っと見ている。  
「・・・くりこイチゴみたいに真っ赤だよ。あ、キスも甘酸っぱいって言うよね。  
 じゃあくりこは野原にキラリ輝く一粒のイチゴさんだね」  
「は、恥ずかしい台詞禁止・・・」  
「・・・・・・」  
「・・・ねぇ、ついでにHもしない?」  
「な、なんでそんなことまで・・・」  
 私は弱気に反論する。雰囲気的にやってもいいって気分になってるのかな?  
「いいじゃない、えい!!」  
「え!?ちょっと!?」  
 くりこは急に飛びついて来て胸を揉もうとする。   
 が、慣れてない手つきで無理やりしようとするから・・・  
「あ、あはははHAHA、ひは、ふは、ははっはあははひひひ、ははは、AAははは  
 ふひははは、ちょっ、止めなさい!!」  
 雰囲気も何も吹っ飛んだ。まさにフラグブレイカーだ。  
「もう、何で急にこんなこと言い出したの?」  
「・・・だって、あたしずっと昔からお姉ちゃんのこと。  
 それに早くしないとあのお姉ちゃんたちが・・・」  
「???・・・よく解からないけどあんたそんなにしたいなら今度しないでもないわよ」  
 女の子同士、しかも妹なら数に入らない。今後カエル事件のような事があった時の  
 ための保険にすれば・・・。正直今のくりこはかわいいし、私も少し興味がある。  
「お姉ちゃん・・・?」  
「でも私もあまりHなことは知らないのよね。明日みやこにでも聞いてみようかしら?」  
 それを聞いたくりこが表情を変えた。  
「そ、それじゃあたしも一緒に聞きに行く!」  
「え、なんで?」  
「どうしてもよ!」  
「うーん、ま、いっか。でも恥ずかしいから黙っておくのよ!私たちがやるって」  
「うん。わかった」  
 
〜みやこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 
 某月某日の二日後  
 
「なあ、昨日言ってたのは本気だったのか?」  
「ええ、もちろん。もしかしたらもう一人増えるかもしれませんけど・・・」  
「?どういう・・・ってみやこ!?」  
 私は少しその場を離れる。  
 
 加害者にも被害者にもならず自分は朝のごみ分け程度の事しかしないというのが  
 信条の私にしては昨日ははしゃぎ過ぎたかもしれませんね〜。  
 でも、良い方向に転がりましたね。順番がバラバラになりましたが結果として  
 うまくいきそうです。今晩が楽しみです?  
 
                                              おわり  
 
 

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