病院の病室でみやことタカアキが楽しげに話してるのを見ていて
俺は妙な感情が生まれていることに気付く。
別に彼氏が出来たみやこを羨ましがってるわけじゃない。
このよく解からない感情は・・・例えるなら失恋が一番近い。
もちろんみやこに恋していたわけでも、ましてやタカアキにしてたわけでもない。
ただ少し憧れていたんだと思う。
自分と違い清楚で可憐で女の子らしいみやこに。
そうなりたかったわけじゃない。ただ単純に憧れていただけ。
そのみやこが遠い存在になってしまったような気がした。
だから失恋が一番近いと思う。
そんなことを思いながら一人、屋上で待っていた。
「あ、かおる。ここにいたんだ〜」
ももこが上がって来た。覗きに飽きたのか?
「もう見なくてもいいのか?」
「うん、何かあそこまでラヴラヴだと見てて飽きるわね〜」
他人事だと言うな〜。いつもはああなりたいと思ってるくせに。
「ねえ、みやこのこと考えてたでしょ?」
「な・・・!?」
何で解かったんだ!?
「あ、やっぱり〜!うんうん、先を越されちゃったもんね〜」
「・・・そんなんじゃねーよ」
まったく驚かせやがって。まあ、ももこならそんなもんか。
「じゃあ、みやこと今までどおりにいかないんじゃないかと思ってた?」
「!」
「やっぱり〜。もう、かおるらしいわね〜」
してやったりの顔でももこが笑ってる。最初の質問は油断させるための!?
「みやこは今までと変わらないよ。だってみやこだもん」
笑顔ではっきりと言うやつだ。
全く根拠を言ってないようで絶対的な根拠を言われたような気がした。
「・・・まったくお前と話してると調子狂うな〜」
「そう?でもウジウジ考えてるよりはいいんじゃない?」
確かにその通りだった。だがそう考えてたのが馬鹿らしくなった。
「誰がウジウジ考えてたんだよ!?」
「だってそうじゃない!屋上まで来て空を見てたそがれながら!」
む〜っと、にらめっこする羽目になったがそれがとても心地良く感じる。
「・・・やっぱりお前と他愛の無い会話をしてるのはいいな〜」
「な、何よ!?その憧れてた先輩がいなくなって初めて幼馴染の
優しさを知ったみたいな台詞は!?」
少し赤くなったももこが戸惑いながら言う。
だがその表現は妙に的を得ていて何か複雑な気分だ。
「ふん、もしお前とそういう幼馴染なら俺は毎朝お前を起こしにいく役だな」
「む〜、なら私はドリルミルキーパンチで返り討ちにしてやるから〜!」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ふ」
「・・・・・・ふふふ」
「「あははははははははははははははは」」
そうだな何も考える必要は無かった。今まで通り今までの関係が続く。
それは少しは変わだろうが大事なところは変わらない。
「行こっか?そろそろラヴラヴ空間も落ち着いてるかもよ?」
「ラヴラヴ空間って・・・まあいっか。行くか」
二人で階段を降り始めた。
上がって来たときと違い足取りがとても軽かった。
・・・まあ、下りだからな。と、自分で少し突っ込んで笑った。