恋はいつも唐突である。
私、赤堤ももこはそう思う。
「止まらないわ〜!は〜いて〜んしょ〜ん〜!」
私はいつものように鼻歌まじりで学校に登校していた。
が、いつもの曲がり角を曲がったところで、
ドン!
「きゃ!?・・・すいませっ・・・・・ん!?」
「ウホ?」
変態がいた
そこにいた人は上半身はYシャツのみで半開き。
下半身はGパンだがチャック全開で腰で履いてる感じ。
どう見ても変体にしか見えない。
いや、待つのよももこ。見かけで判断しちゃいけないわ。
この人なりファッションかもしれないじゃない!
「ちょっとお嬢さん、いいかな?」
「あ、はい。何でしょう?」
「この辺でいい男がいる公園はどこかな?」
やっぱ変態だわこの人
ここは全力で見逃せ!いや、全力全開で逃げるべき!?
「とう!」
あれ、かおるの声がした。と思ったら目の前の変体が・・・
消えた
正確には私の視界の右からかおるが入ってきて左に飛んでった。
慌てて左を向いたら変態が仰向けに尻を上げて倒れている。ちなみに半ケツ状態。
まさに”変態オブジイヤーです〜”って感じ。
どうやら、かおるはおろおろしてる私を見て助けてくれたみたい。
相手はどう見ても変態だし。
「大丈夫か?」
そう言ってかおるは私のほうを向く。
輝いて見えた。かっこ良かった。
助けられたことをとてもうれしく思えた。
「うん・・・あ、ありがと」
動揺してると思う。何だろ?変な気持ち。
「それは恋ですわ」
「へ〜これが恋か〜・・・って恋〜〜〜!?」
みやこはあっけらかんに答えた。漫画なら”あっけらかん〜”という擬音が出ていただろう。
ちなみに私はその後、学校でみやこに相談していた。
「え!?だってかおるは女の子だよ〜?」
「そういう恋もあるんですよ。私もかおるさんのこと好きですし〜」
「はいいいいぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜!?」
待って下さいみやこさん?それはつまり・・・
「ライクじゃなくてラヴ?」
「ラヴです?」
・・・どうしよう!?衝撃の事実だわ。もし私のこの気持ちがかおるへの
恋とするとみやこのも含めて三角関係成立!?きゃ〜?
そしてガールズ解散の危機!?
いや、もう少し想像してみましょう。
焦点の合わない目で空の鍋をかき回すみやこ。
「かおるさんは私の物なの!それ以外はいらないの!だからお願い・・・消えて・・・」
・・・怖!?!?怖すぎるよみやこ!?解散どころか殺されちゃうよ私!?
どうしよう〜〜!?え〜と?、え〜と!?
「えっと、さ、さっきのは私の思い違いで・・・」
「それにしても、ももこさんやりますわね〜」
「へ?」
な、何のことを言ってるの・・・?
「手も繋いでて、一緒にお風呂にも入ってて、一緒に抱き合って
寝た仲のカップルの中学生はなかなかいませんわ。ももこさんのエ、ッ、チ?」
「い、いや!?私とかおるはそんなんじゃなくって、ていうか
付き合う前のことで・・・!いやまだ付き合うかどうかは決めてないわけだし。」
ちょっと待って!?これは顔で笑って心で怒ってる!?
「え〜っと、だからね?ここはかおるの事は先に好きだったみやこに譲るということで・・・」
「そうですか?でもそれじゃなんなので放課後あの森で話し合いませんか?」
「え、あ、うん・・・」
何だろう?何か言葉の重圧のようなものを感じてつい答えてしまった。
譲るって言ってるのに話し合う必要はない気がするのに。
放課後みやこの後を追って森に入った。
かおるには用事があると言って先に研究所に行ってもらった。
でも何か森に連れ込むって猟奇殺人事件みたいじゃない!?
「さ、ここら辺でいいですわね」
周りは木の枝などはなく平らで休憩などにはいい場所みたいね。
「え〜っと、みやこ?話し合いといっても私は譲るって・・・」
「も・も・こ・さ〜ん?」
バサッッ・・・
急にみやこが飛んで抱きついてきたのでその場に倒れてしまった。
「え!?ちょ、みやこ!?何!?」
「あ〜ん、やっぱりぷにぷにのほっぺ〜〜?」
そう言いながら自分のほっぺで頬擦りしてくる。
ぷにぷにぷにぷに
「実は私ももこさんも好きなんです。ああ、ぷにぷにのほっぺ。長い髪。包容力のある体。
純真無垢な瞳。ちょっとお馬鹿な行動。元気いっぱいに走り回る様。
何度失敗しても諦めない心。その全てが大好きです〜?」
・・・さりげなくお馬鹿なって言ってなかった?
「え?じゃあかおるのことは嘘?」
「いえ、かおるさんも大好きです〜。つやつやのほっぺ。ボーイッシュな格好。締まりのある体。
鋭い眼光。スポーツ万能で気は荒いけど本当はとてもやさしい心。友のピンチには我が身を
省みず飛び込む自己犠牲心。そしてうぶな所も全て大好きです。
あ、くりこさんも好きですよ〜。ももこさんと同じでぷにぷにのほっぺ。長い髪。そして
好奇心旺盛な瞳と真っ直ぐな性格。姉妹一緒に遊んでいる微笑ましい光景。
本当は姉妹丼で頂きたかったんですがまあ順々ということで。」
この間わずか十二、三秒・・・。話すどころか考える間さえないよ。
と言いつつみやこは私の服の中に手を入れてるし。
「ちょ!?みやこ!?」
「ももこさんは私のこと嫌いですか〜?」
うぅ、うるうる顔がかわいい。
「え?いや嫌いじゃないけど・・・」
「じゃあ、いいじゃないですか〜」
「ちょ!?あ〜れ〜〜〜〜」
十数分後・・・
「あーもう最高でしたわももこさん?」
ぷにぷにぷにぷに
き、気持ちよかった・・・。みやこってテクニシャン・・・。
でも始めから野外って飛ばしすぎなんじゃ・・・
「あれ?ももこさんもしかして物足りなかったんですか?」
「へ?いやそんなんじゃなくて・・・」
「すいません、自分ばかり気持ちよくなって。じゃあもう一回しましょうか?」
「え?ちょ!?あ〜れ〜〜〜〜」
数分後・・・
「あ〜ん、ももこさん良過ぎですわ〜?」
ぷにぷにぷにぷに
「うぅ〜」
連続だとさすがに体力的に辛いかも〜。
それにしても殆ど服着てない状態ね。なぜか靴や靴下は脱がさないで
下だけ脱がされたけど。髪も少しほどいた方がいいかな?
ばさぁ
「も、ももこさん!」
「へ、どうしたのみやこ?」
みやこの目がハートマークになっているような・・・?
私は今殆ど何も着ていなくて長い髪をばさぁって広げて・・・
って、もしかして私が誘ってるように見えた!?
「ももこさ〜ん?」
「あ〜れ〜〜〜〜」
数分後・・・
「・・・・・・」
返事がない。ただの屍のようだ。って気分。
「もう〜ももこさんったら大胆ですわね〜?」
ぷにぷにぷにぷに
一方、みやこの方は某多重人格大家さんみたいに”てかてか”になってる。
「うぅ・・・ねえ、ちょっと肩貸してくれない?」
「あれ?もしかして足に力が入らないんですか?」
みやこは本当に驚いているみたい。意外とタフなんだ。
とりあえず服を着てみやこに肩を借り森を出ることにした。
その帰り道私は少し気になってることをみやこに聞いた。
「・・・ねえ、私たちってああいう事ことしたから恋人同士なのかな?」
「ええ、そうですね」
みやこは笑って答えた。
ということはみやこが彼女か〜。いや私も女だし・・・?
なんというかイマイチ実感がわかないな〜。
「ところでかおるさんにはいつ告白するんですか?」
「え!?だってもう私たち恋人同士なんでしょ?」
「恋人は何人いてもいいじゃないですか?
まあ男女間なら色々問題がありますが私たちなら問題はないでしょ?」
私とみやこは恋人で私とみやこはかおるが好き。
・・・確かに。この場合は二人とも付き合っても別に問題はないんじゃない?
「・・・すごいね、みやこは。そんな考え方が出来るなんて」
解散とか友情破綻とか考えてた私が馬鹿みたい。
さっきのは私を後押しするためでもあったんだ。
「いえ私はただみんなが幸せになればいいな〜って思ってるだけですわ〜」
そう言い夕日を浴び笑っているみやこは綺麗だった。かわいかった。
思わず顔を赤らめてしまう。このとき初めて恋人になったという実感が沸いてきた。
「あれ?どうしましたももこさん?」
みやこは意地悪そうに笑ってる。
「な、何でもないわよ」
あれ、あのゲーセンから出てきた人ってかおるじゃない?
「ん?何だ、お前らケンカでもしたのか?ていうかみやこが勝ったのか!?」
どうやら肩を借りてる私を見てそう思ったらしい。
少しみやこの方を見る。みやこも私を見てる。どうやら同じ意見らしい。
「かおる、今朝はありがとう!私、かおるのこと大好きだよ!」
「私もかおるさんのこと大好きですわ!」
「な、何だよ二人とも。照れるじゃねえか」
恋はいつでも唐突である。
今日私は二人に恋をした。
運命的な出会いがあったわけじゃない。
ずっと前から知ってる二人に。
昨日まで親友だった二人に。
おわり