パワパフ寓話シリーズ あかずきん
赤頭巾 豪徳寺みやこ
狼 松原かおる
猟師 赤堤ももこ
狼 「さーてと、あとはこのベッドの中で赤頭巾を待ち構えて、と……お、来た来た」
赤頭巾「お婆様、孫の赤頭巾ですわ〜。お見舞いに来ました〜」
狼 「おう、入ってくれ」
赤頭巾「お邪魔しま〜す。あら、お婆様、何て大きな腕なんでしょう〜」
狼 「それはお前をしっかりと掴むためだぜ」
赤頭巾「それに、何て大きなおめめ」
狼 「それはお前がよく見えるようにさ」
赤頭巾「それにそれにお婆様、とっても大きなお口ですわ〜」
狼 「それは――お前を食べるためだぁ!」
赤頭巾「きゃあ〜、あ〜れ〜」
狼 「……」
赤頭巾「……」
狼 「……あのー、なぁ?」
赤頭巾「はい?」
狼 「いやぁ、その…逃げないの?」
赤頭巾「どうしてわたしが逃げるんですか〜?」
狼 「いやホラ、今からお前をこう、ガブーっとやろうとしてるわけで」
赤頭巾「はい、どうぞ」
狼 「……どうぞッてお前、食われちまうんだぞ? 普通はさぁ、逃げるとか何とか…」
赤頭巾「わたし、狼さんに身も心も捧げますわ〜」
狼 「え? 食われてもいいの!?」
赤頭巾「はい〜」
狼 「……本気?」
赤頭巾「はい〜、それで狼さんとひとつになれますから〜」
狼 「……な、何か、お前……まあ、アレだ、今日はいいや。実はそんなに腹減ってねェし。じゃあ、俺帰るから」
赤頭巾「まあまあ、お待ちになって下さい。せっかくこうしてベッドの中でわたしを待っていてくれたんですから〜」
狼 「ちょ、ちょっと、おい! 何で俺の手ェ握ってんだよ!?」
赤頭巾「それは狼さんを逃がさないためですわ〜」
狼 「な、何でそんなに顔近付けてンだよ!?」
赤頭巾「それは狼さんのお顔をよ〜く見るためですわ〜」
狼 「ちょ、お前、その舌なめずりは何なンだよッ!?」
赤頭巾「それはぁ…狼さんの唇を……」
狼 「あ、バカ、やめ――」
猟師 「そこまでよ! 純真可憐な女の子をつけ狙う悪い狼の野望を打ち砕くため! 愛と正義のサイエンス猟師!
ただいま参…上……って、あれ?」
狼 「……」
赤頭巾「……」
猟師 「あ、えーと…別に困ってないみたいね…? じゃ、あたしはこれで」
狼 「おいッ! 待てよッ! 見捨てンなよッ!? 今めちゃくちゃ困ってンの見りゃわかンだろッ!」
猟師 「えー、でもそういうの、ジャマしちゃうのも良くないし。っていうか、あたし帰ってお菓子食べなきゃ。じゃあね」
狼 「お、おいッ!」
赤頭巾「…帰っちゃいましたね」
狼 「う、うん。俺も帰――あッ?」
赤頭巾「さ、狼さん。これであなたとわたしの二人っきりですわ〜」
狼 「あ…」
赤頭巾「狼さんの、唇……」
狼 「ちょ、やッ……だ、誰かッ、助け――ンむッ!?」