7月7日のお話。  
 東京シティのいろんな場所で笹の葉が揺れている中、ももこたちの通う学校でも七夕の  
イベントが行われていた。  
「はぁい、じゃあ願い事が書けた人はどんどん結んでってねー」  
 キーン先生の間延びした声とともに、色とりどりの短冊を手に持った生徒たちがワイワイ  
笹に群がる。その中心に白金姫子がいた。いつにもまして得意げな顔である。  
「おーっほっほっ、わが白金家が本場中国から取り寄せた最高級の笹よっ」  
 しかし例によって、彼女の言うことに耳を貸す者は取り巻きのふたり以外にはいない。  
 姫子は近くで短冊を結んでいるももこを捕まえた。  
「ちょっと、聞いてるの赤堤さん」  
「あっゴメン、葉っぱちぎっちゃった」  
「ちょっと!?」  
「いきなり話しかけるからぁ。アハハ」笑ってごまかすももこ。  
 ホワン、ホワン、ホワン――その時、カン高い機械音がももこの耳に飛び込んできた。  
 毎度おなじみパワパフZ緊急出動のコールサインである。  
「せんせーっ、笹の葉食べたらおなかこわしましたー」  
 ももこがすかさず手をあげて、みやことかおるもそれに続く。  
「私は笹の葉で指切っちゃいましたー」  
「おれは枝がササっちまったー」  
「あらあら大変、サッサと保健室へ行ってらっしゃい」  
 あっさりと先生のお許しをもらって、三人が教室を飛び出した。  
「え? 私の出番はこれだけですの!?」  
 あわれ放置された姫子がぷりぷり地団駄を踏んだ。  
 
「どうしたの?」  
 屋上に出て変身完了したブロッサムが通信機に唇を寄せた。ほどなくケンの声が返ってくる。  
「大変です、今夜は大雨になりそうなんです」  
「はぁ?」モンスターのモの字もない答えに思わず声をあげるブロッサム。  
「それがどうしたの?」  
「今夜は七夕ですよ、雨になると――」  
「あっ」隣のバブルスが口を開く。「天の川の水があふれて、彦星さんと織姫さんが会えません」  
「あーそっか……それは一大事ね」  
 眉をひそめるブロッサムに、横からバターカップが口をはさんだ。  
「今年はガマンしてもらうってのはダメなのか?」  
「ダメよ、会ってもらわなきゃ願い事が叶わない」  
 はるか星空を流れる天の川。その広い広い両岸に位置する星にそれぞれ住んでいる  
彦星と織姫、恋人同士である彼らの一年に一度の逢瀬。そのラブパワーで地上の人々の  
願いを叶える日、それが七夕なのである。  
「――時間がありませんから、手分けして事にあたってください。彦星さんに事情を説明しに  
 行くのがひとり。同じく織姫さんの所に行くのがひとり。もうひとりは天の川で待機して  
 ふたりが会うのをサポートします」  
「はいはーいっ、あたし彦星さんのとこ行きたーいっ」  
 真っ先に手をあげるブロッサム。向こうからケンのため息が聞こえる。  
「いえ、変な気を起こされては面倒なので、ブロッサムは天の川を担当してください」  
「えーっなんでよ、イケメン見たーいっ」  
「いいですか、増水した川での作業は非常に危険です。これはリーダーにしか任せられない  
 仕事なんです」  
「えっ……そ、そお? ならしょうがないなぁ」  
「うまい」はにかむブロッサムを見てバターカップがつぶやいた。  
「あー、じゃあ、おれが彦星さんとこに」  
「私が織姫さんですね」  
 話がついてケンとの通信を切ると、すぐさま三人は空へと飛び立った。  
 ただようブ厚い雲が、この先の荒れる展開を予想させた。  
 
「ねえバターカップ、願い事なんて書いたの?」  
「ん? ま、いいだろなんでも」  
「なによぅ教えなさいよぅ」  
「いいよ、なんか照れる。バブルスに聞けよ」  
「バブルスはー?」  
「ひみつです」  
「なによーもう」  
「なんかこういうのって、言わない方が願いが叶うような気がしませんか?」  
「そういうもんかなぁ」  
「そういうおまえは何書いたんだよ」  
「じゃああたしも言わない」  
「なんだそりゃ」  
「お返しよお返し」  
「ふふふ。叶うといいですね、みんなのお願い」  
 と、おしゃべりしている間にも三人は宇宙をかっ飛んで、目的地付近までやって来た。  
「じゃあ、天の川で会いましょう」  
 それを合い言葉に、それぞれの星へ向かうのだった。  
 
 バターカップが彦星の住むアルタイルに到着すると、彼はケータイ片手にキーを打っていた。  
メールだろうか、一心不乱にただひたすら打っている。  
「あのー、彦星さんですか」  
「ん? ああ、そうだよ」打つスピードを落とさぬままチラとバターカップに目をやった。  
 マジメな青年と聞いていたが、あごひげにピアスとどう見てもチャラ男である。  
「何?」  
「あ、えっと、織姫さんのことで――」  
「織姫!」  
 その名前を聞いて彦星の顔色が変わった。  
「それなんだけど」  
「はい」  
「実はさ、新しい彼女作っちゃったんだよね。やっぱさぁ、一年に一回しか会えないっ  
 てのはさぁ、ナシでしょ。限界だよね、正直。もったほうだよ俺ら」  
「はぁ……」  
 どうやらメールはその新しい彼女あてのものらしい。情熱が違う。  
「だからさ、君、俺のかわりにあいつのとこ行って言ってくんないかなぁ。もう会えないって」  
「会ってくれないと困るんだけどなあ」  
「何なら君が彼女を慰めてやればいいよ、性的な意味で」  
「おれは女だっ」  
「アハハ、またまた。とにかく俺は今の彼女とデートの予定入れちゃったから、頼むよ」  
 彦星は手短に言うとまたケータイとにらめっこしはじめた。まるでお話にならない。  
 どうしたものかとバターカップは頭をかいた。  
 
 バブルスが織姫の住むベガに到着すると、彼女はポテチ片手にテレビに夢中になっていた。  
 慎ましやかな美女と聞いていたが、ソファに寝っころがるその姿はどう見ても昼下がりの  
メロドラマを楽しむ中年主婦である。  
「あのぅ、織姫さんですか。彦星さんのことでお話が――」  
「彦星!」  
 その名前を聞いて織姫の顔色が変わった。  
「それなんだけど」  
「はい」  
「実はね、テレビ見るのに忙しくって会いに行けそうもないのよね。ちょうど雨だっていうし、  
今年はナシってことにしてくれないかな」  
「会ってもらわないと困ります」  
「じゃあ、あなたがかわりに行ってくれる? 適当にイチャイチャしてればいいから」  
「そ、そんな……」  
「ほら、私の服とか着てっていいから、お願い」  
 織姫は手短に言うとまたテレビとにらめっこしはじめた。  
 どうしましょうとバブルスは弱り顔をみせた。  
 
「――さて、そろそろね」  
 天の川のほとりでブロッサムがつぶやいた。  
 急に降り出した雨で川の流れは速く強く、どうどう唸りをあげている。このままでは  
とてもふたりが出会うことなどできない。  
「来た!」跳ね飛ぶしぶきでびしょびしょになりながら、ブロッサムは川の両岸に現れた  
ふたつの人影を見た。  
 一方は素朴な上着にショートパンツの青年。もう一方はあでやかな羽衣に身を包んだ女性だ。  
きっと彦星と織姫である。  
「待っててね、すぐ会わせてあげる! リーダーに不可能はなぁーいっ」  
 大仰にヨーヨーを構えて、思い切り夜空へと射出する。  
「ミルキーチュロス・シュート!」  
 超スピードで進むヨーヨーは川の中の小さな星を引っぱって集め、自らの幅を太くしながら  
川の上に弧を描いてゆく。それはやがてキラキラ乳色に光り輝く橋となってふたりを繋いだ。  
「さあふたりとも、この上を渡って! そしてラブラブしなさい!」  
 ブロッサムの声に、ふたつの人影がおそるおそる、橋の両端から近づいてくる。  
 そして満天の星の中、橋の中央でついに愛するふたりは出会ったのである。  
 一年ぶりに会って照れているのか、なかなか次の動きをみせないふたり。それを見かねて  
ブロッサムがはやしたてる。  
「ちょっとちょっとお、あんたたちー! 抱き合うぐらいしたらどうなのー!」  
 その声に押されるように、ふたりはおずおずとお互いの身を寄せた。  
「織姫って、いいにおいするなぁ……」  
「彦星さまって、思ったよりぷにぷにの体で……まるで女の子みたい」  
「――あっ!?」ふたりが同時に声をあげた。  
「バブルス!」  
「バターカップ!」  
 
「な、なんでっ」  
 あわててバブルスの体を引きはがすバターカップ。  
「あの、織姫さんがどうしても来られないというので……」  
「なんだよそりゃ、こっちもだよ」  
「はぁ……」  
 目を丸くしていたバブルスが、あらためてバターカップを見てふふふと笑った。彦星の  
格好にまったく違和感がないのだ。  
「よく似合ってます」  
「あいつ、服まで着せやがって」  
「私もです」  
 そう言って自分も織姫の格好を見せつけた。白を基調とした羽衣は川の流れのような  
曲線をつくって星の光を反射している。  
 その幻想的な美しさに、バターカップは思わず目を奪われた。  
「――似合ってますか?」  
「え? あ、ああ。まあまあじゃねえの」  
「あのぅ、私、彦星さまとイチャイチャしてきなさいって頼まれたんですけど」  
「彦星……おれとかよ」  
「いやですか?」  
 ささやくようにしゃべるバブルスの声が妙な色をおびている。羽衣の不思議な力だろうか。  
彼女に惹かれている自分に気づいて、バターカップはぶんぶん首を振った。  
「決まってるだろっ」  
「でも、バターカップも頼まれたんじゃないんですか」  
「それは……」  
「このまま別れたらせっかく会わせてくれたブロッサムに悪いです。みんなの願い事も  
 叶いませんよ」  
「うう……わ、わかったよ。好きにしろ」  
 はやくも顔を赤くしているバターカップに、バブルスがまた笑った。  
「ふふっ、それは女の子のセリフですわ」  
「んなこと言われたって、おれ、どうすりゃいいのか……」  
「それじゃ、口づけをしてください」  
「くち……っ」  
 
 バブルスが静かに目を閉じて、唇をバターカップに向けた。心臓がいっそう激しく鼓動  
しはじめる。やり方なんてわからない、わかるわけがない。  
 意を決して、バターカップはバブルスの肩を手でつかむと、目の前の恋人に顔を近づけた。  
透き通るように白く見えたその頬が、すこし紅潮している。バブルスもドキドキしているのだ。  
それが伝わって、いっそうバターカップの鼓動が早くなる。  
 バブルスのピンクにうるおう唇を目でとらえて、ゆっくりと顔を近づけてゆく。彼女の  
香りが脳をつっついてくらくらする。吐息のかかる距離。時間が止まったかのように、  
ふたりだけがこの宇宙にたゆたっている。  
 永遠とも感じた距離が、ゼロになる。  
「ん……、……っ」  
 バブルスの唇は、その薄さからは思いもつかないほど柔らかくて、くっつけた自分の唇が  
あっというまにとろけていくのがわかる。  
 それでいて、同時にびりびり電気みたいな刺激が全身を駆けめぐって体という体に熱を  
運んでゆく。頭がグツグツしてなんにも考えられなくなる。  
「はあ……っ」  
 息が苦しくなって、バターカップが唇を離そうとした。するとその動きに合わせて、  
吸いつくように、今度はバブルスが唇を押し当ててきた。  
「んんっ」バターカップの息がもれる。  
 バブルスはそれに構わず、腕を恋人の背中に回しながら夢中で唇を動かした。  
 くっつけているだけだったバターカップのとは違う、情熱的な口づけ。唾液のぬめる  
舌を出して彼女の健康的な唇の味を確かめる。すこし汗の味。閉じられた唇と唇の間に  
やさしく、ねっとりと舌を這わせていると、やがて緊張がほだされ彼女の体が中への侵入を  
許してくれる。  
「んっ、ん、……は、あ」  
 舌先がエナメル質に触れるたびバターカップがぴくりと体をふるわせる。それがかわいくて、  
バブルスはさらに深く舌を挿入させた。  
 舌と舌が触れて、絡んで、唾液の味が口いっぱいに広がる。それは想像していたより  
ずっと甘くて、バブルスの興奮がさらに高まる。  
「はー……はぁー……っ」  
「んむ、ふぅ、ふぅっ」  
 体液に濡れた粘膜どうしが重なり合う音はすぐさま激しく流れる川にかき消されて、  
本人たち以外にそれを聞く者はなかった。  
 
 バブルスがようやく顔を離すと、どちらのとも知れぬ体液がふたりの唇に橋をかけた。  
 ふたりとも恍惚として、恋人同士の口づけの味に酔っているようだった。  
「お、……終わ、り……?」  
 肩で大きく息をつきながらバターカップがつぶやいた。足もとがおぼつかない。立って  
いるのもやっとなのだろう。  
「終わりに……しますか?」  
 そんな彼女を見て、バブルスが笑みを浮かべた。バターカップはそれに答えず、うつむいた。  
「もっと、ですか……?」  
 バターカップは答えない。  
「言ってくれないと、わかりませんよ?」  
「っ……、と……」  
「ん?」  
「もっと……」  
 消え入りそうな声だった。顔をまっ赤にして、いつもの勇ましい面影はどこにも見えない。  
 バブルスはほほえんで、バターカップをぎゅっと抱きしめた。  
「私にもたれかかってもかまいませんよ」  
 そう耳もとでささやくと、背中に回していた手を彼女の下半身へとのばした。  
「っひ!」尻の谷間にバブルスの指先を感じて、バターカップがびくんと脚を硬直させる。  
「ふふっ、びっくりしちゃいましたね」  
 ゆったりしたショートパンツの裾に指を這わせて、引き締まった内ももの弾力を楽しむ。  
たっぷり汗をかいているそこは吸いつくように、バブルスの指を包み込み押し戻す。  
 やがて指は裾から中に、彼女の核心部を目指して歩を進める。  
「はっ……あ、あ、あ」  
 その歩みを敏感に感じ取って、バターカップの声がしだいに高くなってゆく。  
「っひぁ! あ、あ、ぁあっ!」  
 やわらかな肉の谷にうずまっている、快感を受けるためにある小さな器官。クリトリスに  
触れると、ひときわ高い声をあげた。  
「なっなにこれっ……っあ、あは、はあぁ」  
「気持ち、いいでしょう? 私もいつもこうやって……」  
 厚い包皮の上からグニグニ押したり、クリクリこねたり……自慰する時を思い出しながら  
愛撫する。すぐ近くの別の場所から体液があふれ出て手のひらをヌルヌル濡らすので、  
それを潤滑剤にしてさらに執拗にいじくってやる。  
「う、う……なんだよこれぇ……っ、ヘンにっ、ヘンに……なっちまううっ」  
「ヘンなんかじゃありません、女の子はみーんな気持ちいいんですよ」  
「うっ、うぅあ、あー」  
 バブルスの体にしがみついて、打ち寄せる快楽の波に懸命に耐えるバターカップ。  
寄りかかる彼女の重みのすべてがバブルスの快感であり、幸福であった。  
「なっ……なんかやばっ、やばい、おれっなんかやばいぅっ」  
 切ない声をあげるバターカップに、バブルスが再び唇を重ねた。  
「んんっ、ふ……んう、う、うぅぅっ!」  
 バブルスを強く抱きしめながら、バターカップは快楽のてっぺんへ駆け上がった。  
「ふっ、う……はー……はーっ」  
 ふたりはそのまま、しばらく動くことができなかった。  
 やがてバブルスの手が股間から抜かれた。しずくがひとつ指先から垂れて、夜空に流れた。  
 
「あーっ、みんな、流れ星よっ!」  
 満天の星空を見上げていたキーン先生が叫ぶと、生徒たちも一斉に歓声をあげた。  
 校庭ではみんなの短冊をつけた笹が、もうもうと煙を上げて燃えている。  
 赤の短冊に『立派なリーダーになれますように』  
 緑の短冊に『健康第一!』  
 青の短冊に『ずっと一緒にいられますように』  
 と、書かれたものもすぐに炎に包まれ、空に昇っていった。  
「みんなの願い事、きっと叶いますよーっ」  
 先生が嬉しそうに笑った。  
 
(おわり)  
 

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