「こんにちは〜。あら?みんなまだ来ていないのね」  
休日の早朝、かれんがナッツハウスを訪れると、のぞみ達はまだ来ておらず、  
ナッツハウスの住人だけが店の掃除をしていた。  
 
「ああ、まだだ」  
ナッツはかれんに一度視線を送ると、覇気なく応え、掃除を再開する。  
かれんはいつもよりナッツハウスの空気が重いような気がして、室内を見渡して気が  
ついた。  
華やかさがないのも無理はない。一人足りないのだ。  
それも一番元気で明るい子が。  
 
「あら?そう言えばくるみは?」  
「部屋にいるよ」  
だがそう問いかけるかれんに、シロップもナッツと同じようにぶっきらぼうに  
応えるだけだった。  
かれんはそんな二人の態度に違和感を漢字、もう一度室内を見渡してみるとココまで暗い  
顔をしているのに気がついた。  
 
「ココ、何かあったの?みんな元気ないようだけれど。くるみは?」  
ココはその問いかけにはっとかおをあげると、一つため息をついて、話始めた。  
 
「実は、くるみが今朝から部屋に閉じこもったきりで、出てこないんだ」  
「部屋に?」  
「ああ、何度僕達が声をかけても一人にしてくれって……」  
「ったく、こっちは心配してんのによ〜。  
泣くぐらい悩んでるなら話してくれればいいのに」  
「泣く?」  
「ああ、声かけると止まるんだけど、ずっと泣き声は聞こえててさ」  
「なにかくるみの力になれればいいんだが……」  
シロップとナッツも会話に参加したが、すぐ言葉を失い、うつむいてしまう。  
 
「そう、分かったわ。私が様子を見てくるわ」  
そう言うと、かれんはくるみの部屋へと向かった。  
 
◆  
 
「……っぅ……ぐすん……」  
かれんがくるみの部屋の前まで来ると、シロップの言うとおり、部屋の中からすすり泣く  
声が聞こえてくる。  
いつもは気丈で、自分達にさへめったに弱さを見せない子なのに、ここまでおちこんで  
いるのはどうしたことだろう?  
かれんはそう考え、そんな弱ったくるみの心に触れるかのように、そっと2回ノックした。  
 
「……ご心配かけて申し訳ありません……すみませんが一人にさせておいてください」  
ノックから数秒後、普段のくるみからは想像もつかない弱弱しい声が返ってきた。  
 
「くるみ、わたしよ」  
「……かれん?」  
「入ってもいいかしら?」  
「…………」  
返事のないのを了承ととったかれんはそっとドアを開けた。  
 
ドアを開けると、カーテンも締め切ったままの薄暗い部屋の片隅で、くるみは自分の膝にかおをうずめ、座り込んでいた。  
くるみはかれんが入ってきても顔も上げず、肩だけを震わせていた。  
 
「どうしたの?カーテンも開けないで」  
かれんはわざと明るく振舞いながらカーテンと窓を開け、朝のさわやかな日差しと風を  
入れる。  
そしてくるみの隣にしゃがみこむと手をとり、優しく離しかけた。  
 
「どうしたのくるみ。みんな心配してたわよ」  
「…………」  
だがくるみはかれんの手を強く握り返すだけで何も応えない。  
いや、肩の古江が激しくなっているので、応えようにも応えられないのかもしれない。  
たとえ今口を開いたにせよ、こらえている涙が嗚咽となるだけだろう。  
かれんはそんなくるみの感情を落ち着かせるように、そっとくるみの頭を抱き寄せ、  
優しくなで続けた。  
 
「……かれん」  
しばらくたって落ち着いたのか、くるみが泣きはらした真っ赤な瞳でしっかりかれんを  
見つめる。  
 
「私、かれんにお願いがあるの」  
それは先ほどまでの弱弱しいくるみと違い、ミルキィローズの時のような強い意志を  
感じさせるものだった。  
 
「かれん、これからもココ様とナッツ様をお願い!  
お二人をお助けして。  
そしてローズパクトを守ってみんなでキュアローズガーデンへ!」  
そう叫ぶとぐっと葉を食いしばり、かれんを見つめる瞳から再び涙があふれ始めた。  
 
「ちょっとくるみ、どうしたのいきなり?」  
かれんは狼狽を隠せなかった。  
くるみの言葉や様子から、くるみに起きた出来事の応えは一つの答えしか  
かれんには導き出せなかった。  
 
「私……私……」  
大粒の涙をこぼしながらくるみは言葉を続けようとする。  
かれん自身、その続きを聞くことが怖くてたまらなかったが、  
それより今はくるみの力になりたかった。  
 
「私……もうココ様とナッツ様の……お役に立てないかも知れない」  
「役に立てないって?」  
「私……もう……死んでしまうかも知れないの!」  
そう叫ぶとばっとかれんにしがみつき顔を胸にうずめた。  
 
「し、死ぬってどうして……体のどこかおかしいの?」  
問いかけるかれんの胸のなかで、くるみは小さくうなずいた。  
 
「どんな風におかしいの?話してみて、何か役に立てるかもしれないわ」  
再び落ち着くのを待って、髪をなでながら、かれんは諭すように問いかける。  
 
「今朝からなの、体の調子がおかしいのは」  
くるみはかれんの胸に顔をうずめたまま、ぽつぽつと話し始めた。  
 
◆  
「ぅ〜ん」  
朝、くるみはベッドの上で気だるそうに手を伸ばし、目覚まし時計を手にとって見る。  
タイムリミットは後5分もない。  
体の異様な気だるさから、目が覚めてから起き上がれずにいるが、もう時間は  
あまり残されてはいないようだ。  
今日は休日だからココや自分の弁当は作らなくてもいいが、みんなの朝食、  
ナッツハウスの掃除、洗濯など、仕事は多く休日とはいえ決して寝坊はできない。  
 
「よしっ!」  
気合を入れ、ベッドから羽起きたが、そのとき布団に妙な感触を覚えた。  
そして恐る恐る振り返った先を見つめたくるみは、膝をわなわな震わせ  
その場にしゃがみこんでしまった。  
 
   ◆  
 
「いっぱい血が……ついてたの……」  
くるみはその光景を思い出したのか、かれんにしがみつき震えだした。  
 
「どんなことしても出血が止まらなくって……私このまま……  
だから、だからかれんにココ様とナッツ様の」  
感情を爆発させたくるみと裏腹に、話を聞いていたかれんは呆けた顔で問い返した。  
 
「くるみ?それって生理じゃ?」  
「せいり?」  
そんなかれんの様子に毒気を抜かれたのか、くるみも呆けたように問い返す。  
 
「くるみ、生理知らないの?」  
「…………」  
「女の子は誰でもそうなるのよ?」  
「???」  
安心して微笑むカレントはうらはらに、くるみは呆けたまま顔に疑問符を浮かべる。  
 
「女の子の体は渡した血ぐらいの年になると、赤ちゃんを産む準備を始めるの。  
そして、赤ちゃんができなかったらだいたい1ヶ月に1度、準備をやり直すの。  
そのときに出血するのよ。  
そしてそのとき個人差はあるんだけれど、お腹や腰が痛くなったり、体がだるくなる人は  
結構多いのよ」  
「……そう、なの?」  
「もしかして、パルミエの女の子には生理ないの?」  
「そんなのないわ、だってパルミエ王国では怪我以外で出血するなんて死に至る病気しか  
ないもの」  
「だからあんなに取り乱してたのね」  
「あっ」  
「恥ずかしがることはないわ。知らなかったんですもの」  
「でも……」  
なんでもないことで取り乱していたことが恥ずかしかったのか、真っ赤になってくるみは  
うつむいてしまう。  
 
「それより私達こそ謝らなきゃ」  
「え?」  
「人間の体のこときちんと教えてあげてれば、くるみがこんなに苦しむことは  
なかったんだもの。  
自分たちには当たり前のことだったから気づかなかったのね、ごめんなさい」  
「……かれん」  
くるみは瞳を潤ませ、かれんに抱きつき頬を寄せる。  
 
「ほんとうにかれんはいつも人のことを一番に考えてくれるのね。  
ありがとう三店…かれん……大好き」  
その瞬間、かれんの鼓動が大きく跳ねた。  
 
(え?今の葉何?私はなぜドキドキしたの?  
くるみが暖かいから?  
くるみの髪の香りが甘いから?  
くるみの頬が柔らかいから?  
耳をくすぐるくるみの声が心地いいから?  
それとも……)  
 
「かれん?」  
様子がおかしい可憐に気がついたのか、くるみが訝しげに顔を覗き込む。  
 
「いえ、なんでもないわ」  
「ほんとう?」  
「本当よ」  
「よかった」  
微笑むかれんに、くるみも無邪気な笑顔を返す。  
 
(やっぱり私のくるみはこうでなくっちゃ。  
え?……今私)  
「かれん、あのね」  
かれんの脱線しかけた思考をくるみが呼び戻す。  
 
「なあに?」  
「あのぉ……このことはココ様やナッツ様には……」  
「ええ、もちろん、秘密よ」  
くるみの思いを察し、かれんが応える。  
 
「のぞみやりんにも」  
「ええ、このことは二人っきりの秘密ね」  
「うん」  
くるみもやっと安心したのか、元気にうなずいた。  
 
「それよりみんな心配しているわ、着替えて下に行きましょう」  
「でも出血したままだし……」  
「大丈夫よ、ちゃんとそのための道具があるの。  
私も持ってるから分けてあげるわ」  
「ありがとう」  
「でも自分で持ってなきゃ困るから後で買いに行きましょうね」  
「じゃあ二人っきりでいきましょう」  
「二人っきり?」  
「だって、のぞみたちがついてくるとうるさくて買い物に集中できないし、  
たまにはかれんと二人でゆっくりお出かけしたいわ」  
「そうね、じゃあ二人っきりで」  
二人は微笑みアウト小指を絡め、約束を交わした。  
 
    ◆  
 
「こんにちは〜、あら?まだみんな来ていないのね」  
次の週の早朝、かれんがナッツハウスを訪れると、やはりのぞみ達はまだ来ておらず、  
回転準備を終えたナッツハウスの住人だけがくつろいでいた。  
 
「ああ、まだナツ」  
ナッツはかれんに一度視線を送ると、おいしそうに豆大福を頬張る。  
 
「あら?そう言えばくるみは?」  
「部屋にいるロプ」  
問いかけるかれんにシロップもナッツと同じように応えると、目の前のホットケーキに  
かぶりつく。  
 
「まさか、また何かあったんじゃ」  
みんなの落ち着いた様子から心配ないのは分かるのだが、やはり先週のこともあり、  
かれんは気になりシュークリームをすごい勢いで頬張るココに問いかけた。  
 
「大丈夫ココ〜、くるみは部屋で勉強してるココ」  
「勉強?」  
「なんだかこの前本をたくさん買って来て、ずっと読んでるみたいココ」  
「あんなに勉強しなくてもいいと思うロプ」  
「何言ってるナツ、本をたくさん読んで知識を得ることは大事ナツ」  
「まあ、シロップはパルミエ王国への手紙が減って助かってるロプ〜」  
「うふっ、そう、じゃあ私、様子を見てこようかしら?  
くるみの好きなチョコレートも持ってきたし」  
他愛ない言い争いをするナッツ達に微笑むと、かれんはくるみの部屋へと向かった。  
 
    ◆  
 
「くるみ?」  
「かれん!?」  
かれんがくるみの部屋のドアを軽やかにノックすると、さらに軽やかな足音が内側から  
近づき、くるみが無邪気な笑顔をのぞかせた。  
 
「くるみ、朝から勉強してるんですって?」  
「ええ、この前あんなことがあったでしょ?」  
くるみはやはり先週の失態が恥ずかしかったのか、少し顔を赤らめながら続けた。  
 
「だからいろいろ人間の体について勉強しておこうと思って。  
ほら、ココ様やナッツ様がご病気になった時にも役に立つじゃない?」  
かれんが机を見ると、大量の本が左右に山積みになっていた。  
かれんが一際大きな山から数冊手にとって見ると、子供向けの性教育の本から家庭の医学、  
本格的な解剖学や生理学の本など多岐に渡っていた。  
 
「すごいわねくるみ、これ全部読むの?」  
「ええそうよ。いろいろ知っておかなければお世話役として役に立たないもの」  
「本当にくるみはえらいわ……えっ?」  
かれんはくるみと会話しながら、山の中から1冊1冊本を手にとって眺めていたが、  
ある1冊の本を取って固まってしまった。  
 
「どうしたのかれん?」  
そんなかれんの様子に、くるみはかれんの手元を覗き込む。  
 
「ああそれね、それ、よく分からなかったの」  
くるみはかれんが凝視したまま固まっている表紙を見て無邪気に微笑んだ。  
 
「く、くるみ、これどうしたの?」  
かれんは狼狽したまま、やっとそれだけを問い返す。  
 
「どうしたって、買ったのよ?」  
だが、なぜそんなことを聞かれるのか分からないくるみはこともなげに応える。  
 
「買ったって……この本を?」  
かれんが狼狽するのも無理はなかった。  
なぜならそれは、本来中学生には売られるはずのない、卑猥な本であった。  
しかもそれは女の子同士が絡み合う漫画であったのだから。  
 
「あ、あのね、くるみ?なんでこの本選んだの?」  
何を聞いていいか分からず、かれんはとりあえずそんなことを聞いてみた。  
 
「絵もあった方が分かりやすいと思って。  
ちょっと中見てみたら女の子いっぱい出てるし、人間の体についてよくわかるかなあって  
思ったの」  
そのくるみの応えに、かれんは軽い眩暈を感じた。  
なんと言うことだろう。  
くるみが本屋でこのような破廉恥な本を立ち読みをし、購入までするとは。  
店員はどう思ったのだろうか?  
なぜとめてくれなかったのだろうか?  
大量の本に埋もれて気づかなかったのだろうか?  
 
「でもね」  
そんなかれんの思いに気づかずくるみは続ける。  
 
「でもね、これよく分からないの」  
「……分からないって何が?」  
とりあえず少しでも同様を抑えようと、かれんはくるみに応える。  
 
「これは何をしているの?」  
かれんは自分の軽率さを恨んだ。率直なくるみのことだ、このようなことを訊かれるのは  
想像できた事なのに。  
かれんは悩んだ。なんと応えればいいのだろうか?  
嘘をつくわけにもいかない。  
かと言って真実をありのままに伝えるのもはばかられる。  
そしてしばらく悩んだかれんの出した答えは  
 
「こ、これは……スキンシップ!そうよ、スキンシップをとってるの!」  
「スキンシップ?」  
「そ、そうよ、人間の仲のいい女の子はこうやってスキンシップをとることがあるの」  
「へ〜、そうなのねえ」  
くるみはかれんの手から本を抜き取り、まじまじと眺める。  
 
「人間の姉妹はこうやってスキンシップ取ったりするのね。  
こまちとまどかさんもしてるのかしら?」  
その言葉に一瞬、こまちとまどかが絡み合っているシーンを思い浮かべてしまった  
かれんは、あわててそのイメージを振り払い、くるみに問い返した。  
 
「し、姉妹って、なんで?」  
「え?だってほら、お姉様って」  
言われてくるみの指差す先を見てみると、少し幼い少女が、年上と思われる女性に甘えて  
いるようなページが開かれていた。  
 
「あ、あのねくるみ、別にこれは姉妹ってわけじゃないのよ」  
「そうなの?」  
「……年下の女の子が年上の女の子に好意を表すためにそう呼んでるの」  
「そうなのね〜」  
いろいろ疑問が解決されたのか、くるみは笑顔でうなずいた。  
そんなくるみの様子を見て、かれんは安堵した。  
なんとなくくるみにはまだこう言う事は知ってほしくない気がしていた。  
だが、くるみの無邪気さは、再びかれんを追い詰め始めた。  
 
「ねえ、かれん、私達したことないわよね」  
「え、な、なにを」  
「スキンシップ」  
「え、ええ、そうね」  
「してみない?」  
「な、なに、いきなり?」  
「だって仲のいい女の子同士のスキンシップなんでしょ?」  
「そ、そうよ」  
「それにこの本見てるとなんだかドキドキするの。  
だからかれんと同じことしてみたいなって」  
くるみは楽しげにそう言うと、かれんの手をとった。  
 
「だめ!」  
だがかれんは、思わずくるみのその手を振り払い、数歩後退ってしまった。  
 
「かれん?……どうして?」  
そんなかれんに、くるみは落胆し、呆然とした瞳を向ける。  
 
「あ、ごめんなさい」  
かれんは即座に謝ったが、くるみの表情は見る見るうちに曇って言った。  
 
「ごめんな」  
「かれんは……」  
再び謝罪を口にしようとしたかれんの言葉をくるみがさえぎる。  
 
「かれんは私のこと嫌いなのね」  
「そんなこと」  
「そうじゃない、私とはスキンシップしたくないんでしょ」  
かれんは口ごもるしかなかった。  
スキンシップと言う野はまったくの嘘ではないが、明らかに説明不足ではある。  
くるみは純粋に友情を拒まれたと思っているのだ。  
くるみが怒るのも無理はない。自分のエゴからあえてきちんと説明しなかったかれんに  
非がある。  
やはり、きちんと説明しなければいけないと、かれんは腹をくくった。  
 
「くるみ」  
かれんの呼びかけにくるみは寂しそうな瞳を返す。  
 
「くるみ、さっきこれはスキンシップって言ったじゃない?」  
「……ええ」  
「でもこれはただのスキンシップじゃないの」  
「……どう言うこと?」  
「これはね、女の子同士のセックスなの」  
「…………」  
「だからね、その……」  
 
「ふ〜ん分かった」  
言いよどんだかれんの言葉の続きを、くるみが引き継いだ。  
 
「だから恋人とか夫婦とか、大切なパートナーとしかできないってわけね。」  
「分かってくれたのね?」  
「ええ、よく分かったわ。だからもう出ていって!」  
安堵したかれんに、くるみの激しい言葉が投げつけられた。  
 
「くるみ?」  
「何も知らないと思って馬鹿にしないで!  
この一週間、一生懸命勉強したのよ!  
セックスって男の人と女の人が赤ちゃん作る行為じゃないの!  
私が嫌いなら嫌いって言ってくれればいいじゃない!  
変な言い訳しないで!」  
そう言うとくるみは机に突っ伏して泣き出してしまった。  
 
「くるみ」  
「もうほっといて!」  
かれんがいくらなだめようとしてもくるみは感情的になり聞いてくれない。  
やはり最初からきちんと説明しておくべきだった。  
かれんはどうすることもできず、くるみのそばでただ後悔し続けるしかなかった。  
 
   ◆  
 
「くるみ?」  
しばらく泣いた後、くるみはおもむろに立ち上がり、部屋を出て行こうとする。  
 
「くるみ、どこにいくの?」  
「お店のお手伝いに決まってるじゃない」  
くるみは振り向きもせずに、つぶやくように応えると、そのままドアノブに手をかけた。  
 
「待ってくるみ」  
「話して!かれんには関係ないでしょ!」  
後ろから抱きとめたかれんの腕の中で胡桃が激しく暴れる。  
 
「関係ない分けないじゃない!大切なくるみのことだもの!」  
その叫びを聞いたくるみは、ぴたりと動きを止めた。  
 
「大切なくるみに誤解されたままだなんて悲しいもの」  
そんなくるみの耳元でかれんはやさしく囁いた。  
 
 
「ごめんなさい、最初からきちんと説明しなかった私が悪いの」  
席に戻った二人は静かに話し始めた。  
 
「まずあれは本当にセックスなの」  
「……でも」  
「そう、本来はくるみの言うとおり、男の人と女の人が赤ちゃんを作るために行う行為よ」  
「じゃあ」  
「でも、人間は赤ちゃんを作ってもいいと思うぐらい大好きな相手とは、  
スキンシップとしてセックスを楽しんだりするの」  
「…………」  
「そして人間は男女だけでなく、男の人同士、女の人同士でもそれほど相手を好きに  
なってしまうことがあるの」  
「じゃああれは女の人同士の恋……ってこと?」  
「そうよ」  
「……そうなの」  
くるみはその説明を聞いて納得したらしく、安堵したような寂しそうな複雑な笑みを  
浮かべた。  
 
「また私勘違いしちゃったのね」  
「しかたないわ。知らなかったんですもの」  
「あ〜あ、でも本当に馬鹿みたい。  
一人で怒って一人で泣いて」  
くるみはその場の雰囲気を和らげるように背伸びをする。  
 
「でもくるみがあんなに怒るなんて思わなかったわ」  
かれんもそんなくるみにつられ、小さく微笑んだ。  
 
「かれんがいけないんですからねっ!  
だって……」  
かれんがくるみを見つめると、くるみは恥ずかしそうに視線を逸らして続けた。  
 
「だってあんな説明するんだもの  
……のぞみやこまちやみんなとはして、私とだけしてくれないと思ったんだから」  
そうやって少し頬を膨らませたくるみを見ていると、かれんの胸に何か、  
こみ上げてくるものがあった。  
 
「そんな、みんな大切な友達だけれど、くるみは1番大切よ」  
「かれん、本当に!?」  
突然、くるみがかれんに飛びついた。  
 
「ええ、本当よ」  
「よかった」  
頬を重ねたくるみが囁いた瞬間、再びかれんの鼓動が大きく跳ねた。  
 
(え?また、私……なぜ私はドキドキしているの?  
くるみが暖かいから?  
くるみの髪の香りが甘いから?  
くるみの頬が柔らかいから?  
耳をくすぐるくるみの声が心地いいから?  
それとも……)  
かれんは先週も感じた衝動に困惑を覚えた。  
先週はうまくくるみがその意識を逸らしてくれたのだが、今回は違った。  
 
「私も1番大切なのはかれんよ」  
そのくるみの言葉を聞いたとたん、かれんは自らを失った。  
 
「……かれん……今?」  
かれんが自我を取り戻すと、くるみがきょとんとこちらを見つめていた。  
 
(え?今私何か?)  
「かれん……今したのって恋人同士がするキスって言うんじゃ……」  
そう言われてかれんに思考が戻ってきた。  
確かに体を離そうとしたくるみを抱き寄せ自分は唇を。  
 
「ご、ごめんなさい」  
無意識とは言え、くるみの唇を奪ってしまったことにとっさに謝った。  
 
「どうして謝るの?」  
「え?」  
だがくるみは穏やかに問い返した。  
 
「かれんは私のことが好きだからキスしたんじゃないの?」  
「あ、あの」  
くるみの言うとおりなのだろうか?  
本当に自分はくるみに友情以上の感情を持っているのだろうか?  
 
「私、かれんならいいわよ」  
そう言うとくるみは自分の唇をかれんの唇に一瞬重ねた。  
 
「くるみ……本当にいいの?」  
かれんは自分の言葉に耳を疑った。  
私は何を言っているのだろう?  
だがそんな戸惑いを他所に、小さくうなずいたくるみが瞳を閉じるのを見ると、自然に  
体が動き、唇を重ねる。  
最初は、自身の冷静な部分で、何とか思い止まろうとしていたかれんだったが、くるみの  
やわらかく甘い唇に触れるたび、その冷静な部分が、どこかに追いやられていく恐怖を  
感じた。  
そしてかれんは、その僅かに残った冷静な部分でくる身に確かめた。  
 
「くるみ、本当にいいの?」  
「ええ、もちろん」  
くるみは微笑んで応えるが、かれんの持つ不安の全ては解消されなかった。  
 
「……くるみはココのことが好きだったんじゃ……」  
かれんは意を決し、密かにずっと抱いていた懸念をぶつけた。  
 
「もちろん、ココ様は大好きよ」  
そのくるみの言葉にかれんは自分が予想していた以上に傷ついていた。  
なんと言うことだろう。自分はくるみのことをこれほどまでに愛していたのだろうか。  
そんな思いにとらわれていると、くるみが言葉を続けた。  
 
「でもね、それはココ様が立派なお方で、パルミエ王国の王様になられるお方だからよ」  
「え?どういうこと?」  
「ココ様に対する思いはパルミエ王国のみんなが持つ思いなの」  
「それって……」  
「もう、分かってくれないんだからあ。  
……かれんに対する思いとは違うって言ってるんじゃない」  
くるみはすねたように頬を膨らましたかと思うと、そのままかれんの胸に顔をうずめた。  
 
「くるみ」  
かれんはもう自分の衝動を抑えることができなかった。  
胸にこみ上げる愛おしさのまま、くるみを強く抱きしめる。  
 
「かれん」  
そして、応えるくるみの唇を自らの唇でふさいだ。  
かれんは角度を変え、何度も何度も唇を重ね、唇をはさみ、そして、薄く開いたくるみの  
唇の隙間絵舌を差し込んでいく。  
くるみもかれんに応えるように舌を絡め、背中に回した両腕に力を込めた。  
 
「……ぅっ、ぅ〜……ぁっ」  
二人の唇からは切なげな吐息が漏れ、より激しく唇を求め合った。  
 
「かれん……」  
しばらく唇を求め合った後、上気したくるみが口を開く。  
 
「なんだか私すごくドキドキするの。変なのかしら?」  
「大丈夫よ、私もそうだから。  
……ほら」  
かれんはくるみの左胸に手を当てるとそう言い、くるみの右手を取り自分の左胸に当てる。  
 
「本当。かれんもドキドキしてるのね」  
くるみはかれんの鼓動を感じながら、安心したように微笑む。  
二人の中で先ほどの情熱的な愛情とは異なる、優しさに満ちた幸福感が広がっていく。  
 
「えいっ」  
「きゃっ」  
しばらくそうしていたかと思うと、いきなりくるみがかれんの乳房を鷲掴みにした。  
 
「くるみぃ!」  
「えへへ」  
くるみはいたずらっぽく笑うと、身を翻しベッドに飛び乗り、仰向けに横たわる。  
 
「くるみぃ」  
かれんは微笑むと、そっとベッドに近づき、  
 
「いたずらする子にはおしおきしなくっちゃね」  
身をかがめ、口付けをする。  
 
「優しくしてねお姉様」  
かれんは少し苦笑した。  
先ほどの本にそんな台詞でもあったのだろうか?  
 
「お姉さまはやめてほしいわ。  
くるみには名前で呼んでもらいたいの」  
「じゃあ、優しくしてね……かれん」  
かれんは微笑むとくるみの頬に手を当て、唇を重ねる。  
そして舌を絡めながら、ゆっくりとくるみの服を脱がせていく。  
 
「かれん、あんまり見ないで」  
すべての衣服を取り去られたくるみが恥ずかしそうにつぶやく。  
 
「ごめんなさい、くるみがとってもかわいかったから」  
「もう……」  
くるみは真っ赤になりながら、恥ずかしさを紛らわすように続けた。  
「かれんだけ服着てるのはずるいわ」  
「そうね」  
「私が脱がせてあげる」  
かれんが微笑み自分の衣服に手をかけると、くるみが跳ね起きかれんの衣服を脱がせて  
いく。  
 
「かれん、綺麗……」  
衣服を脱がせ終わるとくるみはかれんに見入り、嘆息をもらす。  
 
「くるみだって見てるじゃない?」  
「えへへ」  
かれんが指摘すると、くるみは照れたように笑い、かれんに抱きつく。  
 
「かれん、すべすべしてあったかくってきもちいい」  
「くるみこそ」  
そう言うと二人はもつれるようにベッドに倒れこみ唇を重ねる。  
 
「……ぅっ……あっ……はぁ〜」  
二人は激しく唇を求め合い、髪に指を通し、脚を深く絡めあう。  
 
「はぁ……あぁ……かれん……」  
かれんの唇が頬をなぞり、首筋を降りていくと、くるみは切なげな声を上げる。  
 
「はぁ……あっ……あん」  
かれんの唇は鎖骨を通り、なだらかな胸のふくらみへ降りていく。  
 
「くるみ、もうここ硬くなってる……」  
「いや、あん、あぁ」  
かれんの唇が、小さな丘の上のつぼみを捉えると、くるみは上半身を小さくはねさせる。  
 
「くるみ、気持ちいいのね」  
「……よく分からないわ……でも」  
「でも?」  
「でも、なんだか嬉しいわ」  
「嬉しい?」  
「ええ、なんだかいっぱいしてもらいたくなっちゃう」  
かれんはそんなくるみの無邪気な答えに、少し意地悪をしたい衝動に駆られた。  
 
「ふふっ、くるみはエッチなのね」  
「エッチ?」  
「セックスが大好きなはしたない娘のことよ」  
「そんな、あん」  
かれんは恥ずかしそうに否定しようとするくるみに微笑み、再びくるみの敏感奈つぼみを  
口に含んだ。  
 
「あっ、あん……かれん!」  
くるみはその刺激に上半身をのけぞらせ嬌声をあげる。  
かれんは自分の愛撫に反応し、甘い声をあげ、喜ぶくるみに愛おしさを覚え、夢中で唇と  
舌で愛撫を続ける。  
 
「あ、あ、あ、あ、……だめぇ……い・いやあ」  
くるみはかなり敏感らしく、かれんの胸へのつたない愛撫だけでも激しくもだえ、身を  
くねらせる。  
 
「い、いや、だめ、……か、かれん・……激しすぎるぅ……」  
くるみのその声を聞いてはっとしたかれんは、愛撫の手を休め、そっとくるみの顔を見る。  
くるみは上気した額に玉のような汗をいっぱいに浮かべ、肩で息をしていた。  
 
「もう……優しくしてって言ったじゃない……」  
くるみはとろんとした瞳でかれんを睨み付け、頬を膨らませる。  
「ごめんなさい……感じているくるみがとてもかわいくって」  
「…………」  
だがかれんがそう言うと、くるみは視線を逸らしうつむいてしまう。  
そんなくるみの態度がたまらなく愛しくなったかれんは、再び胸への愛撫を再開する。  
だが今度はそっと両手でくるみの乳房を包み、柔らかく愛撫して行く。  
 
「…ぁっ……はぁん……」  
かれんの手の中で、その控えめなやわらかいふくらみが形を変えるたびに、くるみは  
小さな吐息を漏らす。  
 
「くるみ。これならいいでしょう?」  
「……はぁ……うん……ぁっ」  
かれんに聞かれ、くるみは幸福そうに応える。  
その答えを聞くと、かれんは再びそっと胸のつぼみへと舌を伸ばした。  
だが、今度は敏感なつぼみに触れないように、その周りだけに舌を這わせていく。  
 
「……はぁ、かれん……」  
だがそんなことを続けていると、やがてくるみがもどかしそうに身をよじらせ始めた。  
 
「どうしたのくるみ?」  
「……かれん……」  
「なあに?」  
「…………」  
だが問い返しても、もじもじと身をよじらせるだけで、くるみは応えない。  
 
「どうしたのくるみ?」  
再び問い返しても、やはり身をよじらせかれんを呼ぶだけでくるみは応えない。  
 
「言ってくれなければ分からないわ」  
「かれん……」  
くるみは少し恨めしそうにかれんを見やると、小さく続けた。  
 
「……お願い」  
かれんはそれでやっとくるみが言わんとすることに気がついた。  
だが、そんなくるみを見ていると、愛おしさと共に、先ほどから燻っている別の感情が  
わき上がってきてしまう。  
いや、別の感情ではない。  
そんなくるみが愛しいからこそ、もっと見たくなってしまうのだろう。  
だって決して自分以外には見せないくるみの姿なのだから。  
 
「お願いって何?」  
かれんのその言葉を聞くと、くるみは法度かれんを見やり、すぐ瞳を逸らす。  
 
「はっきり言ってくれなければ分からないわ」  
そう言ってかれんは再び、くるみの乳房に舌を伸ばす。  
だがもちろん、つぼみには触れずにぎりぎりのところまで言っては引き返して行く。  
 
「……かれん……はぁ……ぁん」  
くるみは恥ずかしいのか意地なのか、なかなかお願いの内容は口にしない。  
だが、そんなかれんの意地悪な舌使いに、くるみはすぐに追い詰められていった。  
 
「……かれん……お願い……」  
「ふふ、だからなに?」  
「……ぁん、……さっきみたいに……」  
「でも、優しい方がいいのよね?」  
「……そうじゃなくって……ぁん、さっきみたいに……先の方も……」  
「先の方ってどこ?」  
「……かれん……許して……」  
自分はこんなにサディストだったのだろうか?  
恥ずかしそうに懇願するくるみを見ながらかれんは思った。  
だがやはりかれんの口から続けて出た言葉は、くるみに追い討ちをかけていく物だった。  
 
「きちんと勉強したんでしょ?どこ?」  
「……そ、そんな……ぁっ」  
「どこをどうして欲しいか言わないと分からないわよ」  
くるみはもう限界なのか、観念したように口を開いた。  
 
「……かれん、お願い……ち、乳首……なめて」  
かれんはくるみのその応えに満足し、微笑むと待ちかねたように硬くなっているつぼみを  
口に含み、ゆっくり舌で転がし始める。  
 
「あっ、あん……かれんいいっ」  
くるみはやっともたらされた快感に喚起の声をあげ、かれんの頭を抱き寄せた。  
 
「あっ、あん……かれん……あぁ」  
しばらくくるみのつぼみを堪能したかれんの唇は、やがてくる見のわき腹をなぞり、  
骨盤を通り、太ももへと降りていく。  
 
「ぁん、かれん……」  
かれんはいったん膝まで降りて行くと、その白い彫刻のような、美しい太腿をゆっくり  
なめ上げていく。  
 
「ぅっ、はぁ、……」  
そして腿の付け根にマーキングするように口付けをすると、くるみにそっと言った。  
 
「くるみ、脚を開いてくるみの一番大事な部分を見せて」  
「え?」  
くるみは驚いたような声をあげかれんを見つめたが、かれんが優しく微笑みかけると、  
恥ずかしそうにゆっくりと脚を開いていく。  
 
「くるみ、それじゃあ見えないわ。膝を立ててもっと大きく開いて」  
くるみは相当恥ずかしいのか、ためらいながらもかれんの指示通り、ゆっくり脚を開いて  
いく。  
 
「くるみ、くるみのバラ、すごく綺麗よ……」  
目の前の蜜をたっぷりと含んだくるみのバラを見て、かれんが嘆息を漏らす。  
 
「……そんなにじっくり見ないで……恥ずかしいわ」  
「ふふ、でも、本当に綺麗よ、くるみのバラ」  
「……ぃゃ」  
くるみが小さくつぶやくと、バラから新たな蜜があふれ出した。  
 
「くるみ、どうしてここがこんな風にぬれちゃうか知ってる?」  
「それは……セックスの時に、傷つかないようにするために……」  
「ふふ、そうね。確かにそのために出るんだけれど」  
「あん」  
かれんは花弁から蜜を指で掬い取ると続けた。  
 
「こんなにいっぱいぬれちゃうのはくるみがエッチないけない娘だからよ」  
「そんなっ、あん」  
そう言うと、かれんはくるみの講義を無視して、花弁に唇をつけ、その甘い蜜を  
なめ始めた。  
 
「あん、あぁ、あん、かれん……」  
「ふふ、気持ちいでしょ」  
「あ、あん……うん、き、ああ、気持ちいい」  
「じゃあここは」  
かれんは花弁に隠れた雌蕊を露にし、舌先で転がす。  
 
「ひゃあぁぁ……あん、あぁ……そこっ、だめぇ……あっいいっ」  
くるみはその今まで以上の快感に嬌声をあげる。  
 
「くるみ、どこ?どこがいいの?」  
「あ、あん、ああ、ク、クリトリス〜、クリトリスっ、い、いい〜」  
熱っぽく問い返すかれんに、くるみも恥ずかしさを忘れ応える。  
 
「ね、ねえかれん」  
激しい息遣いの中、くるみがかれんを呼ぶ。  
 
「なあに?」  
「ね、わ、私も、あんっ……かれんに……あぁ」  
「私に?」  
「か、れんのぉ……かれんの、なめたいのぉ……あん」  
「何を?」  
「あん、あぁ、クリトリス〜、かれんの、あん、あー  
……かれんのクリトリス、なめさせてぇ」  
くるみのその言葉を聞くと、かれんは体制を入れ替え、くるみの口元に自らの花弁を  
近づけていった。  
 
「あん、かれん……」  
くるみは嬉しそうにつぶやくと、かれんの腰に腕を回し、夢中で花弁にしゃぶりつく。  
 
「あん、くるみ……ああ」  
くるみははじめての経験の上、興奮しきっているため、その舌の動きはおぼつかないが、時々はっとするような  
快感をかれんにもたらす。  
 
「あん、くるみ……いい、いいわ」  
かれんも再び、くるみの花弁に下を這わせ、雌蕊を転がす。  
そして、くるみの真紅のバラの中にそのしなやかな細い指をうずめていく。  
 
「うぅっ」  
くるみのくぐもった声が聞こえたが、苦痛ではないらしく、引き続きかれんの雌蕊に舌を  
這わせて、即座に自分も同じようにかれんの花弁に指を沈めていった。  
 
「うぅっ、あん、あぁ」  
しばらくの間、部屋には二人の少女のくぐもった喘ぎ声と、ぴちゃぴちゃと言う淫猥な  
音だけが響いていたが、やがて変化が訪れた。  
 
「はぁ、かれん!」  
かれんが指を増やし、雌蕊への愛撫を激しくすると、くるみは思わずかれんの花弁から  
唇を離してしまった。  
 
「あん、かれん〜……ああぁ!」  
くるみはなんとかかれんの花弁に舌を伸ばそうとするが、押し寄せる快感に身を  
のけぞらせてしまう。  
 
「あん、ああ、かれん、変なのぉ!」  
「くるみ、いっていいのよ」  
くるみの絶頂が近づいた事を悟ったかれんは、優しく語りかける。  
 
「だ、だめぇ、いや、いやぁ!……」  
「いって、くるみ」  
「い、いやぁ、かれんやめてぇ、いや、〜!」  
「大丈夫よくるみ」  
かれんが安心させるように声をかけるが、くるみは叫び続けた。  
 
「お願い!いや!、かれんおねがいー!やめてぇ!怖いのぉ!!!」  
その言葉に驚いてかれんがくる身を見ると、くるみの顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。  
 
「くるみ?」  
かれんが慌てて抱きしめると、くるみは無言でかれんの胸に顔をうずめる。  
 
「くるみ、どうしたの?」  
しばらく立ってかれんがそう問いかけると、くるみは涙の残る瞳をあげ、つぶやいた。  
 
「……怖かったの」  
「怖かった?」  
「……なんだかすごいものに飲み込まれてしまうような気がして……」  
「そう……でもあれはオルガズムと言って……」  
「……そう……あれがオルガズムなのねぇ……でも」  
くるみは再びかれんの胸に顔をうずめる。  
 
「独りぼっちになりそうで怖かったの……  
かれんと一緒なのに私だけどこかいっちゃうような気がしたの」  
「くるみ……」  
かれんはくるみを抱きしめ髪をなでる。  
 
「心配いらないわ。私とくるみはいつも一緒よ」  
「……かれん」  
「くるみ一人をどこかに行かせたりなんかしないわ」  
「かれん!」  
くるみはかれんを強く抱きしめ、胸元に口付けをする。  
 
「くるみ、大好きよ」  
かれんはそっとくるみの顔を上げさせると、優しく唇を重ねる。  
 
「うぅ」  
何度か唇を合わせなおした後、くるみがそっと舌を絡めた。  
 
「かれん」  
唇を離し、かれんがくるみを抱き寄せると、かれんの胸の中からくるみが囁いた。  
 
「もう一度してくれる?」  
「え?大丈夫なの?」  
くるみの意外な申し出にかれんが問い返すと、くるみは微笑んで応えた。  
 
「かれんが一緒だもの」  
「くるみ」  
その健気な言葉に感極まったかれんは再び唇を重ねる。  
 
「ぅっ、ぁん、」  
そして唇を重ねたまま、くるみのバラに手を伸ばし、そっと雌蕊に触れる。  
 
「ぅっ、うぅ、あん」  
くるみも同じようにかれんのバラに手を伸ばす。  
 
「はぁ、かれん……」  
「くるみ……」  
二人は言葉を、唇を交わしながら、ゆっくりと上り詰めていく。  
 
「はぁ、はぁ、かれん……」  
くるみは愛おしそうにかれんの胸に頬を寄せる。  
 
「くるみ」  
かれんは応えると、一度強く抱きしめ、体勢を入れ替え、不二人の花弁を合わせた。  
 
「あん、かれん……はぁ」  
「くるみ……あん」  
かれんがゆっくり動き始めると、二人の唇から甘い吐息が漏はじめる。  
 
「あん、かれん、気持ちいい……あぁ」  
「くるみ、私もよ」  
「ねぇ、あっ、かれん……もっと」  
「くるみ……」  
くるみの言葉に応えるようにかれんは動きを早めていく。  
 
「あん、あ、あ、あぁ、かれん、いいっ」  
「くるみ、あん、くるみぃ」  
「か、かれん、あっ、……さっきの、あん、……来そうなの……」  
「大丈夫よくるみ、あぁ……私も一緒よ」  
「かれん……うん……」  
二人は微笑み合うと、より強く激しくお互いを求めていった。  
「あ、あん、あぁ、もうだめ、かれん、かれん〜」  
「くるみ、あぁ、くるみ、一緒にぃ」  
「ああ、あん、か、かれん……大好きぃ!!!」  
「くるみー!!!」  
二人の絶叫が重なり、やがて部屋には静寂が訪れた。  
 
   ◆  
 
「くるみ、大丈夫?」  
数分後、未だ息の整わないくるみの髪をなでていた手を止め、かれんが問いかける。  
 
「ええ、でもちょっとつかれ」  
そうとう疲れていたらしく、言葉の途中でシュポンと言う音と共に、くるみはミルクへと  
戻ってしまった。  
 
「ミ、ミルク」  
「ミルゥ」  
少し驚いたかれんだったが、いたずらっぽい微笑みを浮かべると続けた。  
 
「うふっ、いっぱい感じて疲れちゃったのね」  
「……さっきからかれんは意地悪ミル。  
……かれんがこんなに意地悪だなんて思わなかったミル」  
微笑むかれんにミルクは頬を膨らます。  
 
「いやだった?」  
「いやじゃないけど……」  
「本当はよかったの?」  
「しっ、知らないミル!」  
図星だったのか、真っ赤になったミルクはそう言って背中を向けてしまう。  
 
「ミルク」  
かれんがそっと抱き寄せると、ミルクの耳がふわっとかれんの手に添えられる。  
 
「ミルク、大好きよ」  
「ミルクも……かれんのことが……大、好き……ミ・ル」  
ミルクはなんとかそこまで言うと、穏やかな寝息を立て始めた。  
 
「本当に疲れていたのね……おやすみなさい、ミルク」  
かれんがそう囁いたとき、どたどたとけたたましい足音が階下から近づいてきた。  
 
「くるみぃ!かれんさぁん!」  
そのけたたましい足音の主は、ノックもせずにがばっとドアを開けると、かれんと  
ミルクの姿を見て、きょとんとしている。  
 
「の、のぞみ、これはね」  
かれんが、未だ状況を理解していない突然の来訪者に言い訳をしようとしたとたん、  
新たな声がした。  
 
「のぞみぃ、人の部屋に入るときはノックぐらい……」  
「り、りん」  
「……ほーらね、こう言うことになっちゃうんだからぁ」  
こちらは瞬時に状況を理解したらしく、気まずそうだが、どこか嬉しそうに先に来訪した  
親友をたしなめる。  
 
「こ、こう言うことって」  
「え、なになにぃ?りんちゃぁん、どういうことぉ?  
どうしてかれんさんははだかんぼうなのぉ?」  
「まぁ後で説明してあげるから」  
「説明しなくて言い!」  
「みなさん、大声上げてどうされ……」  
「まぁ」  
下手に騒いでしまったせいか、さらに状況が悪化してしまった。  
 
「うふっ、かれんってそう言う趣味だったのね」  
「こまち、どういう意味?」  
「種族も性別も超えた愛、素敵です!」  
「うららぁ!」  
「ねぇねぇ、みんなどう言うこと?  
どうしてはだかんぼうのかれんさんとミルクが一緒に寝ているのぉ?」  
「だからぁ、かれんさんはミルクとね」  
「やっちゃったのよね」  
「りん!こまちー!べつに私はミルクと」  
「はいはい、くるみですよね」  
「うっ」  
「図星みたいです」  
「ねぇねぇだからなぁに?なんのことぉ?  
それってかれんさんがはだかんぼうなのと関係あるのぉ?」  
「もういいから出て行って!」  
かれんが叫ぶと、口々に疑問や激励、感想めいたものを残して4人は階下へ降りていった。  
 
   ◆  
 
みんなが去った部屋でかれんは一人途方にくれていた。  
女の子同士の恋と言うだけならまだしも、こんなことをしたことをみんなに  
知られてしまうだなんて、この後、どんな顔をしてみんなと会えばいいのか分からない。  
 
「もう、みんなったらあ」  
そんな困惑をみんなへの不満に代えつぶやくと、腕の中のミルクがもぞもぞと動き、  
ぼんやりと薄目を開ける。  
 
「かれん……何かあったミル?」  
「なんでもないわ」  
「本当ミル?」  
「ええ、だから気にせずゆっくり眠って。こうしていてあげるから」  
「ミルゥ」  
そんなミルクとの他愛のないやり取りだけで、かれんはすっと心が軽くなっていくのを  
感じた。  
 
きっと大丈夫。  
少しは冷やかされるだろうけど、きっとみんなは何事もなかったように受け入れてくれる。  
そう思い直したかれんは、少しミルクと共に休むことにして、ミルクの額のリボンに  
口付けをすると、そっと瞳を閉じた。  
 
   FIN  
 
 

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