穏やかな日曜日の午後。ナッツハウスに集まったのぞみ達は、他愛もないお喋りをしながら穏やかな時間を過ごしていた。
「ココ達、遅いね」
背伸びをしながら、そう呟くのぞみ。
今、ココ達男性陣はジャンケンに負けて、お菓子とジュースの買出しに出かけており、ナッツハウスにいるのは、のぞみ、りん、うらら、こまち、かれん、くるみの6人だけだ。
「そろそろ帰ってくるんじゃないの?」
のぞみの声にりんがそう答えると同時に開くナッツハウスのドア。女性陣の目が一斉にそちらへ向いた。
「お帰り!コ…」
途中で途切れるのぞみの声。何故なら、全身傷だらけの夏とシローがドアから入ってきたから…。
「て、敵に襲われた…」
「ココが…ココが攫わ…れた…」
そう言うと同時に倒れ、ナッツとシロップの姿に戻ってしまう2人。
「ナッツさん!」
「シロップ!」
すぐに2人へ駆け寄る6人。
これが、全ての始まりだった。
のぞみは海沿いの道を走りながら、ココを探していた。
『今までに見た事の無い怪物が現れて、自分達を散々痛めつけた後、ココを攫っていった』
ボロボロのナッツとシロップから聞き出せた情報はこれだけ。手がかりは0と言って良い。
その為、かれんの発案でナッツハウスを起点に、全員がバラバラになって捜索を行う事にしたのだ。
相手がココ達の正体を知っていた以上、只者でない事は間違いない為、少しでも異変を察知したら仲間に連絡する事を確認し、皆と別れてから早30分。
ひたすら走り続けていたのぞみは、ようやく足を止め、額に流れる汗を手で拭いながら、乱れた呼吸を整え始めた。その時―
「あれは…」
のぞみの目に飛び込んできたのは、今はもう使われていない廃倉庫。のぞみの脳裏に直感が走った。
一目散に倉庫へ走り、息を潜めて中の様子を伺う。すると―
「(ココ!)」
のぞみの直感は的中した。倉庫の床には縛られ、口に猿轡を嵌められたココが転がされていた。その横にはブンビーの姿もある。
「(ココを攫ったのはエターナルだったの?でも、ナッツは見たことも無い怪物に襲われたって言ってたし…)」
状況が飲み込めず、一瞬考え込むのぞみ。だが、すぐに考え直し、仲間に連絡を取ろうと、携帯を手に取った。だが―
「(あれ?連絡が…出来ない)」
何故か、携帯は通じなかった。これでは仲間と連絡を取る事が出来ない。
「(連絡を取る為にここを離れたら…逃げられちゃうかも…)」
一瞬の思考の後、のぞみは決心した。1人でココを救出する事を!!
「(皆、ごめんね)プリキュア!メタモルフォーゼ!!」
派手な音と共に穴が開く倉庫の壁。驚いたブンビーが視線を走らせるのと、キュアドリームが倉庫へ侵入するのはほぼ同時だった。
「キュ、キュアドリーム!?こんなに早く来るとは!?」
驚くブンビーを尻目に、キュアドリームは先手必勝と言わんばかりに必殺技の体勢に入った。
「夢見る乙女の底力!受けてみなさい!」
「プリキュア!ドリームアタック!」
ブンビー目掛けて放たれる光の蝶、それはブンビーに命中した瞬間、大爆発を起こした。
「く、くそう。覚えていろー!!」
爆発が収まり、よろよろと立ち上がったブンビーは、キュアドリームに背を向けて一目散に逃げていった。
「うーうーうー」
「あっ、ココ」
ドリームはココを縛る縄を解き、口の猿轡もはずした。
「ありがとう、ドリーム」
ココの言葉に笑顔を見せるドリーム。
「さ、帰ろう。ココ」
そう言ってココに背を向けたその時、いきなりココはドリームに組み付いた。
「あっ、何をするの、ココ!」
ココは左手でドリームの胸を撫で回し、右手はスカートの中に入れて、スパッツに包まれたドリームの急所をまさぐりはじめた。
「やめて、ココ!」
思いもしないココの行動に、ドリームは混乱し、なされるがままになっていた。
「フフフ、どうだキュアドリーム、気持ちがいいだろう?」
「ココどうしたの。早くこの手を、は、はなして…」
ココの左手は、胸を強く揉み始めた。右手も急所をとらえ、2本の指が侵入し始める。
「あ、あ、やめ、やめ、やめてー」
「こんな気持ちの良い事、辞められる訳がないだろう?」
「な、何を言ってるの…ココ…」
「フフフ、それにお前も気持ちよくなっているんだろう?」
「気持ち良くなんてない!早く、早く、この手をどけて、ココ!」
「まだ俺をココだと思っているのか」
「えっ…」
直後立ち上る白い煙。ドリームが後ろを見ると、そこにはココとは似ても似つかない醜悪な怪物が立っていた。
「フフフ、どうだこの攻撃は」
「あ、ああ…貴方はだ、誰なの!」
「俺か、俺の名前などどうでもいい。俺はお前を滅茶苦茶にする為に生み出されたのだからな」
「な、なんですって」
「キュアドリーム、お前の事は全て把握している。この攻撃は、男を知らないお前には一際きついだろう」
怪物の右手の動きが一気に速くなった。
「あ、あぁ、いやぁ、やめてぇ」
ドリームはその場に立ちすくんだ。気が動転し、今までに味わったことのない感触で頭が一杯になる。
「フフフ…」
左手の胸をもむ力が更に激しくなった。
「あ、あああ、だめ、こんなの駄目ぇ!」
「フフフ、もっと面白くしてやろう、これを使ってな!」
次の瞬間、怪物の背中から、無数の触手が生え出した。触手は白く粘々した粘液に包まれている。
「な、なに、なんなの!?」
「ククク、お前を気持ちよくしてくれるのさ、ククク…」
怪物の声と共に、ドリームの右太腿に3本の触手が絡みついた。左太腿にも2本の触手が絡みつく。
「きゃぁぁぁ!!」
両手に合わせて8本、首にも1本、触手が絡みつく。
「フフフ…さあ、俺の分身たちよ。キュアドリームに優しくしてあげるんだ」
触手は一斉にドリームの体を這い回り始めた。ドリームはそのうちの2本を掴んで体から引き剥がそうとするが、触手はガッシリと絡み付いている上に、粘液で滑り上手くいかない。
「あ、あああ、こ、こんな、こんなの…あああ…(もう、なにがなんだかわからないよ…)」
「どうだ、気持ちが良いだろう?」
「…き、気持ちよくなんて…(うう、耐えなきゃ、耐えなきゃ…)」
そう心で思っても体は勝手に反応している。全身を攻められるこの感覚は、キュアドリームを確実に追い詰めていた。
「どうだキュアドリーム、そろそろ限界だろう?」
「あ、あああ、ああ、あああ…(耐えなきゃ…絶対に耐えなきゃ…)」
必死に耐えるドリーム。だが、怪物は非常な宣告を下した。
「さて、遊びは終わりだ。最大パワーで攻めるとしよう!」
宣告と同時に今までの数倍の力でドリームを攻める怪物。
「や、やめてぇー!(も、もうだめ…)」)
限界を迎えるドリーム。そして―
「あぁぁぁぁぁっ!!………」
キュアドリームは、ガクリと膝を落とし、気を失った。
「ククク、第1ラウンドは俺の勝ちだな、キュアドリーム」
怪物は触手を己の背中へ戻し、気絶したドリームを抱えると異空間へと転移した。
異空間へ転移してから暫くして、ドリームが意識を取り戻した。
「ここは…どこ……」
「ここはお前の調教部屋さ。キュアドリーム」
「貴方は…一体何者なの!」
立ち上がると同時に怪物と距離を取り、ファイティングポーズを取るドリーム。だが、怪物はそんなドリームを嘲笑うような口調で―
「さっきも言っただろう?俺はお前を滅茶苦茶にする存在だと…聞いてなかったのか?」
と嘲った。
「私を滅茶苦茶に…って、どういう意味なの!」
「そのままの意味さ、お前を抵抗できなくなるまで痛めつけて、その後は頭の天辺から足の先まで貪り尽くして、お前の身も心も滅茶苦茶にしてやるのさ!!」
そう言って、邪悪な笑みを浮かべる怪物。その姿に言いようのない恐怖を感じ、数歩後ずさるドリーム。
「ククク…さあ、ジッとしてるとイヤらしい事をされちゃうぞ!!」
その声と同時にドリームへ飛びかかる怪物。ドリームも弾かれるように動き出す。戦いが始まった。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
気合の入った声と共にドリームの攻撃が放たれる。突きのラッシュに体重を乗せた回転蹴り。
普通の相手なら瞬く間にノックアウト出来るだけの攻撃が矢継ぎ早に放たれる。だが―
「無駄無駄無駄ぁ!!」
その攻撃を事も無げに避け続ける怪物。その動きには明らかな余裕が見える。
「さっきも言っただろう!俺はお前の全てを知っていると!パワー、スピード、攻撃のモーションに動きの癖、何もかも知っている!」
怪物の声に悔しげな表情を浮かべるドリーム。再度、怪物と距離を取り―
「プリキュア!ドリームアタック!」
怪物目掛けて光の蝶を放った。それは怪物に命中した瞬間、大爆発を起こす。だが―
「効かないなぁ〜」
爆発が収まった時、そこには無傷の怪物が立っていた。
「くっ…これならどう!」
一瞬で動揺を抑えたドリームは、取り出したドリームトーチを振るい―
「夢見る乙女の底力!受けてみなさい!」
「プリキュア!クリスタルシュート!!」
ピンク色の結晶で構成された光線を怪物へ放った。すると怪物は―
「無駄な抵抗だな!」
右手を掲げ、黒い結晶で構成された光線を放った。それはドリームのクリスタルシュートを全て吸収し、そのままドリームへ襲いかかった。
「きゃぁぁぁぁぁっ!!」
自身の攻撃と怪物の攻撃、その2重攻撃をまともに喰らい、天高く吹き飛ばされるドリーム。そのまま、受身も取れずに地面に叩きつけられた。
「う、うう…」
何とか立ち上がるが、ドリームのコスチュームは所々破れ、体には無数の痣が出来、額からは血も流れている。
「ククク…俺との実力差がわかったか?もう諦めろ、大人しくしていれば、優しくしてやる」
「諦める事なんて…諦める事なんて出来ないよ!貴方を倒して、皆の元に、ココの元に帰る!」
そう言うとドリームは最後の力を振り絞って、天に舞った。
「(りんちゃん、うらら、こまちさん、かれんさん、くるみ、シロップ、ナッツ……ココ、私に力を貸して!)プリキュア!シューティングスター!」
全身にエネルギーを纏い、文字通り流星のように怪物へ一直線に向かっていく。
「馬鹿が…」
それを見た怪物もその体を宙に浮かべると、全身にエネルギーを纏い、漆黒の流星となってドリームを迎撃した。
2つの力の激突は、あっさりと決着がついた。まるでトラックに撥ねられた子猫のように、宙を舞い、再度地面に叩きつけられるドリーム。
「………」
「第2ラウンドも俺の勝ちだな。キュアドリーム」
完全に意識を失ったのか、ピクリとも動かないドリームを足蹴にして、そう宣言する怪物。
「お楽しみはこれからだ!」