蒼乃美希は悩んでいた。  
 ラブ、祈里の前には姿をあらわしたピックルンが、自分にだけやってこない。  
 新しい力を手に入れたピーチやパインがキュアスティックを振りかざし、ナケワメーケを  
華麗に撃退するのを眺めていることしかできない――いまだ最初の技しか持たないベリーが、  
プリキュアとして足を引っぱっているのは明らかだった。  
「そんなことないよ!」きっとそう言うだろう、ラブたちにこのことを話せば。  
 真剣に、懸命になって自分をなぐさめてくれるだろう。わかっている。  
 しかし、どんな言葉も気休めにしかならないこともまた、わかっている。  
 今の美希にとってそういう優しさは、すこし辛かった。  
 
「ほらほら、こぼしちゃだぁめ」  
「口のまわりについたでしょ、もう」  
 ラブの部屋。かいがいしくシフォンにチョコケーキを食べさせる祈里とラブを見ながら、  
美希は深いため息をついた。  
「どうしたの、美希ちゃん」  
 それに気づいた祈里が声をかけると、ラブがすかさず、  
「ドーナツ食べないんなら、かわりに食べてあげようか?」  
「ピーチはんは食べすぎやがな。さっきからもう3個も食べてんのわい見てたで」  
 脇からタルトがつっこむと、ラブは口をとがらせてプイと横を向いた。  
 そんなやりとりとは対照的に、美希は憂いの顔でうつむいていた。  
「どうして私だけ……出てこないのかな……」  
「美希たん」ラブの表情がすこし真剣になる。「……出てこないの?」  
「うん」  
「いつから出てないの?」  
「知ってるじゃない、この前ブッキーのところにキルンが来てからよ」  
「大変じゃない!」  
 ラブが血相を変えて立ち上がった。  
「なんで今まで黙ってたの?」  
「黙ってた、って……知ってるでしょ?」  
「知らないよ、ねえブッキー」  
 話を振られて祈里もウンウンうなづいた。  
「美希ちゃんだいじょうぶ? 気持ち悪くない?」  
「お水もっと飲む? お薬持ってこようか?」  
「いやあの、なんか話が……」  
 予想外の反応に戸惑う美希をよそに、ラブがグッと拳を握りしめて叫んだ。  
「まさか、美希たんが便秘に悩まされてたなんてっ!」  
「へっ?」美希の声が思わず裏返る。「べっ、便……」  
「だいじょうぶ、がんばればきっと出るよ! 私たちも協力するからっ」  
「ちょっと、違うってば。あのね……」  
「ブッキー!」  
「はいっ」純白のゴム手袋を装着する音が部屋にパチンと響いた。  
「こんなこともあるかと思って!」  
 祈里の細い指が獲物を求めてうごめく。美希はいっそう青ざめた。  
「ぶっブッキー、ちょっと、ちょっと待って」  
「美希ちゃん、便秘を甘く見てはいけないわ。亡くなった人だっているのよ」  
「違うのっ、便秘なんかじゃないのっ」  
「怖くないよ、人間だって動物なんだから私にまかせて」  
「そうだよブッキーを信じて、美希たん!」  
「プリプ〜! プリプリ!」  
「ほらシフォンも応援してるよ! プリプリゲットだよ!」  
 まったくありがたくない声援をバックに迫る祈里の両手。  
 これからわが身に降りかかる出来事を想像して美希は思わず息をのんだ。  
 
(う、動けない……っ)  
 とりあえず祈里の手を止めて、それから話をしようと考えた美希だったが、どんなに  
力を入れても体が動かせない。いや、力を入れてるつもりが全然入れられない。  
 水中をゆらゆら漂っているような奇妙な感覚に、いつのまにか支配されていた。  
(シフォン……!)  
 視界の端にいるシフォンはプリプリ声をあげながら、ほのかに発光している。  
 超能力で自分の体の動きを封じているのだ。  
 祈里たちを手伝っているつもりなのだろうか。もしそうなら、その効果は絶大である。  
 いとも簡単に、なすすべなく、ごろんと横にされてしまったのだから。  
「はぁい、そのまま〜おとなしくしましょうね〜」  
 動物に向かうときの言葉づかいで、祈里が手早くパンツを脱がしにかかった。  
 脚にタイトにフィットしているパンツも、美希が動けなければひとたまりもない。  
ホックをはずされファスナーをおろされ、するすると足先の方に引っぱられてゆく。  
すぐに美希の細く白く伸びる脚が、淡いブルーの下着とともにあらわになってしまった。  
「わ〜美希たん、脚きれい〜」  
 ラブがうらやましそうに声をあげる。親友とはいえ、こんな姿を見られたことなんて  
美希の記憶にはない。なめるようなラブの視線が敏感な肌をねっとりと刺激する。  
「ちょっと……さわってもいいかな?」  
「ラブちゃんっ」  
 手を伸ばそうとするラブを祈里がいさめた。  
「あはっゴメン、邪魔だよね」  
「ラブちゃんは、後ろに回って上半身をささえてあげて」  
「了解っ」  
 言いつけどおり、ラブが美希の上半身を起こして後ろから抱える格好になった。  
「なんでこうするの?」  
「体を起こした方が腹筋に力が入るし、出てくるところもよく見えるの」  
「へぇ〜そうなんだぁ」  
 出てくるところをよく見る必要があるのか? というか腹筋に力入らないし、いやいや  
そもそも出ないから。今朝だってしてきたんだし出ないから!  
 グルグル頭を回る思考も、暴走するふたりに伝えることはできない。舌と唇が動かない  
せいで、何かしゃべろうとしても「アー」になってしまう。猿ぐつわなんてされた経験は  
ないが、それとよく似た状態に違いない。  
「なんかちょっとエッチだね、美希たん」  
「アー、アー」  
「そうだねぇ〜ドキドキするねぇ〜」  
 美希のすべての返答が相手の都合の良いように解釈されてしまうのだ。  
「はぁい、じゃあ下着を脱がしますからね〜じっとしててね〜」  
「っ……!」  
 祈里が美希の尻を持ちあげ、下着に手をかけ、取り去ろうとする。その動きは動けない  
美希の目にはひどくなめらかに映った。白い手は躊躇なく、無慈悲に、ただ奥に隠された  
秘密の、とても恥ずかしい場所を蛍光灯の元にさらそうと求めているのだった。  
(待って、待って、待って待って待って待って待って)  
 美希は心のかぎり叫んだ。しかし、最後の砦はあっけなく壊された。  
「アー……アー……」  
 生ぬるい空気が中を通って、美希はぞくりと身をふるわせた。  
 
 脚から抜いた小さな下着を丁寧にたたむと、祈里はカバンから取り出した特大おしめを  
敷いて、その上に美希の尻を置いた。  
 尻がふんわり優しい感触に包まれる。ほのかな心地よさはまた、親友の前で情けなく  
尻を出しているという事実を美希に突きつけた。  
(あたしっ……脱が……脱がされちゃってる……。全部……見られてる……っ)  
 泣きそうになっているのを尻目に、祈里がさらに美希の脚を広げて膝を立てる。  
 完全に「大股開き」の体勢である。  
「うわぁ〜出産みたい」ラブが声をあげた。「丸見えだねぇ〜」  
(丸見え……、こんな……こんなかっこ……、あたし……)  
 全身が紅潮する。恥ずかしくて身をよじろうとしてもどうともできず、見せたくない  
ところに集中する祈里の視線を浴びるよりほかにない。  
 息が乱れ、ドキドキして、しかし、体に力は入らない。その浮遊感、高揚感は美希に  
とってまったく未知のものであった。  
(見ないで、おねがい見ないでっ)  
 懸命に訴える美希。しかし祈里は目標をしっかり見据えながらワセリンとローションの  
ボトルを開けていた。  
「ふふっ……じゃあ、ほじほじしていきますからね〜」  
 ――じつは祈里はシフォンの一件以来、すっかり「ほじほじ」のとりこになっていた。  
 お尻からちょっと顔を出してるカチカチのものをほぐして、ほじって、えぐり出して。  
いっぱい出てきた時は相手もすっきり、自分もすっきり。「いっぱい出たね」って思わず  
顔もほころぶ。もっともっと出したくなってしまう。自分が便秘になった時にこれ幸いと  
ほじったこともある。いっぱいいっぱい、もっと出したい――。  
 彼女自身は知らないが、その爽快感と達成感は射精によるそれに似ていた。  
「ブッキー、なんか楽しそう」  
「えっ、そうかなぁ」  
 ラブに言われて、祈里は自分のゆるんでいる頬に手を当てた。  
「まさか、美希ちゃんのお尻をほじれるなんて思ってなかったから」  
 そのまま表情を崩さず、ほほ笑みを美希に向ける。  
「美希ちゃん、いっしょに気持ちよくなろうねっ」  
「アー、アー!」  
「よろしくおねがいしまーす、だって」  
 ラブが通訳すると、ふたりが笑った。もちろん通訳はでたらめだ。  
(気持ちいいわけないでしょお……!)  
 しかしここでも美希の本心は届かず、工程は無情に続く。  
 祈里がワセリンをすくって二三、指先でこねた。すこし粘性が足りないが、腸内に  
入れれば体温でトロトロになる。  
「じゃあ……力、抜いてね。深呼吸して……」  
 優しくささやくと、いよいよ美希に体を寄せた。  
 
 うっとりと中空を見つめる美希を見て、祈里はほほ笑んだ。  
「美希ちゃん、気持ちいいの?」  
「わかん……はぁっ、わかんない……よ……」  
「でも、上のほうから気持ちいいの、出てきちゃってるよ」  
「上……っ」  
 言われて美希は、いつのまにか濡らしてしまっていることを悟った。  
「ブッキーブッキー、私にも見せてっ」  
 背中のラブが辛抱たまらないといった顔で言うと、祈里はうなづいて小さく手招きした。  
 招かれるままエサにがっつく犬のような動きで正面へと回り込み、股の間を覗きこむ。  
「わはっ、すっごい」  
 はしたなく開かれた脚の付け根に、美希の秘部があられもなくさらされていた。  
「子供のころ以来だねぇ、美希たんのこんなとこ見るの」  
 もう子供とは呼べないくらい発達した上のほうは、祈里の言ったとおり薄くうるおって  
いて、女としての快楽を受ける準備を整えている。しかしそのすぐ下では、小さな穴に、  
出すために存在するはずの穴に、まっ白な指が突き入れられている。  
 ラブは思わず唾を飲みこんだ。  
「ね、感じちゃってるの?」  
「そんなっ、そんなことない……いぎっ」  
 祈里がまた指を進めて、美希の言葉をさえぎった。  
「お尻ほじほじされるの、気持ちいいでしょお? ほぉら……」  
「あはっ、や、あ、あぁっ」  
 いたずらっぽく笑みをうかべて指を引いたり、また入れたりする。  
「おねがい……ブッキー、もぅ、やめて……」  
 かすれた声で弱々しく言う美希に、ラブが顔を近づけた。  
「美希たん、気づいてないの?」  
「えっ……」  
「もうシフォンの超能力は解けてるんだよ?」  
「えっ」  
 反射的にシフォンを見る美希。ベッドの上ですやすや寝息をたてる姿がそこにあった。  
 そういえばいつのまにか声が出ている。ラブが体をささえなくても自分で、自分の力で  
この体勢を保てているではないか。  
「もうとっくに体動かせるんだよ?」  
「…………」  
「逃げようと思ったら逃げられるのに、感じちゃってたんだよ?」  
「そんな……あたし……あたしっ」  
 ラブの言葉を振り払うように、美希が大きくかぶりを振った。  
「どうする? 今から逃げる?」  
 ラブが美希の膝に手をおいて、言葉をつづけた。  
「そのままでいてくれるんなら……上のほうも私が感じさせてあげるよ?」  
「…………」  
 それに対して美希は何も言えず、何も動けなかった。  
 ラブがゆっくりと股間に手をのばす。また祈里の指が動きはじめた。  
 
 ラブの指が空いているほうの穴の入り口をなぞる。ぬめった液が指を濡らして、細い  
糸をひいて垂れる。ラブはそのまま指を上に、はしっこの小さな突起ににあてがった。  
「んぁあっ!」  
「このヌルヌルで撫でてあげるね」  
 包皮の中の過敏な肉芽をいじられて、美希は声をあげた。  
「ちょっラブ激し……あぁあっ」  
 指の腹を押しつけたり、そのまま円を描いたり、指先で軽くつまんだりして反応を  
楽しむラブ。その顔は上気して幸せそのものだ。  
「美希たんが気持ちよくなってくれたら、私も気持ちいいよぅ」  
「ああっあっ、あっ、こするの……強すぎぃっ」  
「あとはちゃんと出てくれれば完璧だねっ。ブッキー、どう?」  
 そう言って下の、詰まっているほうの穴を見た。  
「……う〜ん、まだ当たらないなぁ」  
 祈里が、ほとんど根元までくわえ込まれている自分の指を見ながらつぶやいた。  
 もう直腸の大部分を探索したが、目的のものはいまだ見つかっていない。  
「もっと奥で詰まってるのかなぁ……」  
 首をかしげる一方、今までにない症例にすこし胸をはずませている自分がいる。  
「だからっ、それは……」たまりかねて美希が言うとラブが口をはさんだ。  
「拡げて中をよく見てみたら?」  
「拡げっ……!?」  
 美希がまた青ざめる。祈里は真剣な面持ちで口を開いた。  
「そうね」  
「そうね!?」  
「美希ちゃん、ちょっとがまんしてね。えいっ」  
 かけ声とともに右手の中指、左手のひとさし指と中指を尻穴にねじ込んだ。  
「あっ、あはあぁあうっ」  
 今までの行為でいくらほぐれているといっても指4本である。全身に響くような  
ギチギチとした感覚に、美希は叫ばずにはいられなかった。  
「ブッキーっ、それっ、はぁあ、それだめっ、だめっ、だめえっ」  
「ローションもたっぷりつけたからだいじょうぶ、すぐ慣れるからっ」  
「ひろ、ひろがっちゃう、ひろがっちゃうからぁあ」  
 上の穴から液があふれて垂れて、祈里の指をさらに濡らす。それをラブがぬぐって、  
あきれたような顔で美希の内ももにこすりつける。  
「もう〜、もっといっぱいヌルヌル出てきたよ? 気持ちいいんだねぇ」  
「き、きもちいいっ、きもちいいのっ、おしりがっきもちいいの!」  
「じゃあ、もう……いっちゃっていいよ!」  
 そう言うと、あざやかなピンクに充血した突起をグイとつまみ上げた。  
「はっ、あ……んんっ……っあっ…………っ!」  
 それをスイッチにして、美希は体をふるわせて快楽の高みへと跳躍した。  
 
 ――本当に力が抜けてだらしなく横たわる美希の尻穴を、祈里は調べつづけていた。  
「……あれ〜? おかしいなぁ」  
「どしたのブッキー」  
「やっぱり何も詰まってないみたいなの。もっと奥のほうなのかも……」  
「重症だ……」  
 暗い顔をするラブに、美希がようやく口を開いた。  
「……ねえラブ、ちょっとあたしの話を聞いてくれる?」  
「なあに、美希たん」  
「今回の件なんだけどね」  
「うん」  
「便秘っていうのは勘違いで」  
「うんうん」  
「あたしは、ピックルンが出てこないって言ったの」  
「ピックルンが?」  
「そう」  
「出てこないの?」  
「そう!」  
「大変じゃない!!」  
 ラブが血相を変えて立ち上がった。  
「まさか、美希たんのお尻にピックルンが詰まってたなんてっ!!」  
「へっ」美希の声が思わず裏返る。  
「ブッキー!」  
「はいっ」祈里がカバンから極太キュアスティックを取り出した。  
「今度はこれでほじほじするから! だいじょうぶよ美希ちゃんっ」  
「そ、そんな太いので……っ」  
 美希がうるんだ瞳でスティックを見つめ、頬を染めた。すぐにハッとして、  
「い、いやいや無理! 無理無理無理無理無理ーっ!」  
 と、ぶんぶん首を振った。  
 一方タルトは序盤のあたりで鼻血を噴いて気絶していた。  
 
(おわり)  
 

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