「や ら な い か」
食堂のテーブルで読書をしていた*****が突如目的語の抜けた文章を放った。
#####はとりあえず冷静に聞き返した。
「何をよ。」
「何って、ナニに決まってるじゃないか。」
「専門の店に行きなさいよ。ラビリンスとは少しシステムが違うけど、ここにもあるんでしょ。」
#####が嫌悪感を滲ませつつ言い放つと、*****は顔をしかめて首を横に振った。
「本で読んだら、ここのはいろいろ面倒らしい。
やたら高い装飾品を買い与えるよう迫られるとか。
契約に少し反しただけで責任を取れと押しかけて来られたり。
それに…君だってそろそろしたいんじゃないかな?」
「自分一人でするわよ。」
#####はヒールを鳴らして扉のほうへ歩き出した。
「一人でやるときより、ずっと効率的にしてあげるよ。」
脇をすりぬけざまに、剥き出しの白い肩をそっと撫でた。
「スイッチov「なぜそうなる。」」
着替えをしようとするイースをサウラーは押し止めた。
「このままやったら、服が汚れるじゃない。だから脱ぐのよ。何かおかしい?」
「脱がす楽しみというのをわかっていないね……。
まあ普通ならそれでもいいかもしれないけど、今日はやりたいことがあってね。
面白い学説を見つけたんだ。」
サウラーはどこからか一冊の漫画本を取り出して広げた。
その中では一人の少年が「服は脱がしても靴下は脱がすな!」などとのたまっていた。
「彼いわく、…我々ホモサピエンスと猿との違いとは服を纏っているか否かである。
故に、徒に服を脱いだり脱がせたりする人間は猿に等しいそうだ。
というわけで、今日は脱がずに行ってみよう。」
イースは騙されたという表情でいたが、僅かな逡巡ののち頷いた。
彼女も衣服に関する新しい解釈に興味深々なのだろう。
寝台に横たわると、形だけでも主導権を取ろうとしてかイースが上に乗った。
緑色のシャツの上から左手で胸を引っ掻いてきたので、同じ動作を返す。
黒い布地を掴んで手を前後左右に動かすと、弾力のある胸が形を変えた。
右手を上着の隙間から差し込むと、衣とは対照的に白いふとももに滑らせる。
きめ細やかな表面が手袋越しなせいで堪能できないのをサウラーは惜しく思った。
まだ幼さの残る筋肉をさわさわと揉み、ショートパンツと皮膚の間に忍び込んだ。
その間にイースは顔を胸板へと落とし、たっぷりと唾液を分泌しながら甘噛みを始めた。
奉仕者然とした仕草にサウラーは気をよくして、下着のクロッチ部分にまで潜り込む。
着衣に阻まれ、自然と焦らすような深さになり中の色がどうなっているのかもサウラーにはわからない。
それでも人差し指で狭間をくすぐるようにすると、そこはもう熱を帯び始めていた。
淡い茂みを掻き分け、外の花びらを一枚ずつ愛撫すると、じゅくじゅくと愛液が漏れてきた。
「澄ました顔をして、もうこんなになっているとはね。」
「…っうるさい。余計な口を叩くな。」
「君もね。」
イースが紅潮した顔を上げて反論したが、サウラーは左手で背中を押して再び胸板に突っ伏せさせた。
肋骨の辺りの筋肉の上で、身長の割に豊かな乳房が押し潰されるのを感じた。
「気持ちよくしてあげるから。」
脇から背中側に手を入れ、下着の金具を手早く外した。
緩んで動いた布地が胸の先端に擦れ、イースは意図せず息を漏らした。
「そういう声以外は、出してはいけないよ。」
「…んっ…」
ぬるりとした右の指をしゃぶらせると、サウラーは軽く歯を立て、男を睨みつけた。
まだ叱られたいのか、と口角を上げたサウラーの背に痺れが走った。
僅かな隙に自由だった左腕を押さえられる。
見れば、イースの左の膝が、ほとんど踏みつけるようにして股間で動いている。
潤んだ紅い眼が挑発するように細まり、サウラーはぞくぞくと興奮が高まるのを感じた。
このまま達するまでなぶられようかという考えを自制して、彼は行動に出た。
「気持ちいいけど、僕には踏まれて喜ぶ性癖はないんだよ。」
両脚でイースの身体を挟み、横に転がした。寝台が軋み、体勢が逆になる。
黒い手袋を嵌めた手首をまとめると、サウラーはショートパンツの前を開き、下着ごと引き下ろす。
それから唾液にまみれた指を、いきなり三本、深く挿入した。
「うあっ…あ…」
「痛いのかい?」
少女が身をよじって啼く姿を愉しみつつ、サウラーは呟いた。
気遣う言葉とは裏腹に、指は熱くて狭い肉の中を遠慮なく蹂躙してゆく。
そればかりでなく、外にある突起を親指でぐりぐりとこねた。
「…はあっ…はっ…」
手袋の粗い生地の感触がイースを苛んだ。
「聞こえないかな?」
細い手首を引いて、身体ごと横を向けさせた。
「どう?」
「…そっ…な…」
生理的な涙を流しつつ、イースは声を絞り出した。
「遊ぶな…っ」
きゅうと中が締まって少女の身体が弛緩し、シーツに沈んだ。白かった肌はもうどこも桃色に上気して、汗に光っていた。
サウラーは満足気にその痴態を見下ろすと、脚による摩擦で高ぶった自身を取り出し、入口に押し当てた。
「お望み通り遊びは終わりだよ。」
達して敏感になった膣内は痛い程に男根を締め付けたが、構うことなく奥まで進んだ。
イースは淫らに荒い呼吸を繰り返していたが、声を出すまいとしてか、唇を噛み締めていた。
そのくせ相手の動きに合わせて腰を揺らすものだから、もはや和姦なのか強姦なのか端から見てもわからない状況だった。
ただ快楽を求め、二人は互いの痴態を貪り、高め合った。
強い衝撃が同時に訪れた。
「あっ…んん……ああぁっ!」
「くっ…」
甲高い声を上げたあと、イースは小さい痙攣を数回繰り返した。
二度の絶頂を迎えてもイースの躯は熱いままで、サウラーは名残惜しいような心持ちで男性器を引き抜いた。
その拍子に中の液体が溢れ出し、脱がせたあと下敷きになっていた衣類を汚した。
「ひどい恰好だね」
「そっちこそ」
二人の黒衣はすっかり崩れていた。
上着も靴も手袋も汗やその他の液体で汚れており、下半身は剥き出しだった。
普段の冷たく整った姿との差に、二人は嗜虐心と再びの情欲が生まれるのを感じた。
「着衣で、というのも悪くないようだ」
「ええ」
皮肉な口元だけはいつもと同じに、異界人たちは微笑みあった。
了