夜、とある家の一室で少女が目を覚ました。
「………。」
彼女-ーーーせつなが愁眉を寄せて半身を起こすと、夜色の髪が白い肌に散る。
と思えば、それはみるみる朱色に染まった。
「どうして…」
せつなは寝間着のズボンを引っ張り、自分の秘部を覗き込む。
赤いカーテンの間からの光は十分とは言えなかったが、本人にはそこが濡れているのがよくわかった。
せつなは先程まで見ていた夢のことを思い出す。それはつい最近までの日常の夢だった。
街外れの洋館で起き、人に化け、不幸の種を探す。占い師として稼ぎを得る。そして夜はーーーー同僚の性欲を満たす。
そこまで回想して、また蜜があふれ出す。その感触に、せつなは身体を震わせた。
そう、さっきは『どうして』と自分に問い掛けなどしたが、本当は体の疼きの原因を理解していた。
そして、それを収める方法も。
「ごめんなさい、ラブ…。」
何故か隣室で眠る友に後ろめたく思いつつ、彼女はボタンをひとつ外した。
期待で荒くなる呼吸が右の手の平に伝わる。細い指先がそろそろと肌を這い、乳房に沈み込んだ。
「ああっ、わ、私・・・」
まるで自分の意思ではないように、手が指が自分の乳房を這いずりまわる。
初めは乳房全体を撫で回していたが、次第に力を加え、緩急をつけながら揉みしだいていった。
不意に、せつなを毎晩のように犯していた男たちの手が、自分の手と重なった。
「どうして、あんなやつのことなんか・・・ああっ!」
せつなは過去に同僚と毎日のように行為に及んでいたが、彼らに対して情欲を感じたことはなかった。
というのも、その行為は彼女の意思に関係なく強制されたものであったし、同僚たちにも愛着を感じていたわけでもなかったからだ。
せつなにとってそれは自分の仕事の延長線上にすぎなかったのだ。
だが、せつなの体は今、確かにその男たちとの情事を欲していた。
「ん……くうっ」
快感を得るにつれて、乳房全体が高揚し、乳頭が徐々に膨れ上がる。
「はぁ…はぁ……」
呼吸は乱れ、表情が崩れていく。
せつなは、ためらいなく残りのボタンをはずし、ズボンを脱いだ。
そして、左手で左胸を揉みながら、下着の下にある秘密の園に手を忍ばせていった。
下腹部の薄い肉の上を手が滑り、ふっくらとした恥丘の狭間を探し当てる。
薄い、と笑われたこともある恥毛が指に絡みついたが、それも自らを慰める手を止めることはできない。
「はあっ…あ…」
どろどろに蕩けたそこは、まるで誘うように脈動していた。
かたちのよい爪の先がそっと陰唇をめくると、そのままつぷりと音をたてて中指が侵入する。
くにくにと指を動かすと、開いた膣口から愛液が漏れる。それを親指で掬い上げ、上にある突起に持っていく。
「ひあっ」
既に勃ちあがりかけていた陰核に触れた途端、今まで以上の性感が走った。思わずはしたない声が上がり、せつなの身がすくむ。
壁の向こうで眠る友のことがまたもや脳裏に浮かび、彼女は桜色の唇を噛み締めた。
「んんっ…」
それでも指は勝手に中の本数を増やし、少女を攻め立てる。
じゅぷじゅぷという水音に聴覚が犯されていき、彼女はもう気をやることに全力を注ぐしかなかった。
人差し指、中指が内壁の粘膜に爪を立て、親指は胸をこね回す左手に合わせて赤く膨れた陰核を擦る。
「んっ…くぅ…っ…」
唇から血が滲み、鉄の味がする。
嬌声となって噴出しようとする快楽に耐えかね、せつなは腿で手を挟み込み、股間に押し付けた。
指を包む肉が体の奥からの波を伝える。くる、と思った瞬間に、熱い潮が手を汚した。
「ああ…」
情欲の波が去ってから、せつなは自分の頬に流れるものに気付いた。
のろのろと手を上げてそれを拭おうとすると、右手には既に蜜の潤んだ感触があった。
「わたしは…いつまで…」
こんなことをしているんだろう。
少女のか細い呟きは、聞くものもなく夜に溶けていった。