+世界迷作劇場・桃太郎+  
 
むかしむかしあるところにおばあさんと女の子と中トロが住んでいました。  
おばあさんは山へフリーザを倒しに、中トロはTV局へテニプリの収録に、  
そして女の子、ほのかは川へ水質調査にいきました。  
川の水をビーカーで掬い取っていると、川上から大きな桃が  
ブッチャケアリエナ〜イ、ブッチャケアリエナ〜イと流れてきます。  
これは良い実験材料になると思ったほのかは川に飛びこみその桃を拾い上げました。  
すると、桃だと思っていたそれはほのかと同じくらいの年頃の女の子のお尻でした。  
「助けてくれてありがとう、私はなぎさといいます。本当に助かりました。」  
その女の子、なぎさはほのかに抱き上げられたままお礼を言います。  
その時のなぎさの純粋無垢な笑顔に、ほのかはつい鼻血を吹き出しました。  
「大丈夫ですか?」  
「ええ、大丈夫よ」  
ほのかの体調を気遣う優しいなぎさ。でもそんな可愛いなぎさを心配させたくなくて  
ほのかはついつい強がってしまうのでした。  
 
「私、助けてもらって、お礼をしたいのです…でも」  
なぎさは暫くもじもじとした後、言葉を続けます。  
「私、全財産18円しかなくて…」  
「いいのよ、お礼なんてそんな」  
泣きそうになるなぎさの背中を、優しく撫でてあげるほのか。  
その時、つい声を出してしまいます。  
「ウホッ!」  
なぎさの背中はすべすべとしていて最高の触りごこちだったのです。  
何故か川上から流れてきたなぎさは、何故か裸でした。  
まあ裸じゃなければお尻を桃と見間違える筈もありませんから。  
「どうかしましたか?」  
ほのかの発した声を気にするなぎさ。  
「いえ!なんでも、なんでもないの!」  
その理由を告げられるはずも無く、極上の笑顔でごまかすほのか。  
笑顔と涙は女の最高の武器だと言う事を、ほのかはちゃんと心得ていました。  
なんていったって若い頃は村一番の美女とうたわれたさなえおばあちゃまの孫ですから。  
「それより体がびしょぬれだわ、服も無いようだしこのままじゃ風邪をひいてしまう」  
そう言いながらなぎさの濡れて顔に貼りついた前髪を優しくどけてあげます。  
よく見ると、なぎさは頬を赤く染めさせ目はとろんとしていました。  
既に風邪をひいてしまっていたようです…が、なんとも色っぽい表情。  
ほのかはついつい喉を鳴らして唾を飲みます。  
 
「そうだわ、私の服を貸してあげるからついてきて!」  
なぎさの手をぎゅっと握り、実験器具もそのままに招待(誘拐とも言う)しようとするほのか。  
「でも、悪いです」  
「ここで出会ったのもなにかのえんよ、それに困った時はお互い様だわ」  
遠慮するなぎさにもっともらしく慈悲に満ちた言葉を投げかけ、更に笑顔を優しくする。  
すると人を疑う事を知らないのか、なぎさは喜んでひょこひょこついてきました。  
「タオルと着替えをもってくるから、このお蔵に隠れていて」  
ほのかは庭に聳える蔵の中でなぎさに隠れているように支持します。  
なぎさは裸なので、当然人目にはつきたくありません。  
だから暗いお蔵はとっても恐かったけど勇気を出して一人で入りました。  
「一歩も出ちゃ駄目よ」  
ほのかはなぎさに念を押し、さらに外側から蔵にかんぬきをかけて自室に向かいました。  
「さて、これからどうしようかしら」  
どうやら素直に事を済ましてあげようとは思っていないみたいです。  
 
「寒いよ…暗いよ…」  
なぎさは一人、お蔵の中で震えていました。足も裸足だったので石づくりのお蔵の中を歩くだけで  
足の裏からひんやりと寒気が伝わってきてゾクゾクします。  
しかもこのお蔵、あやしいお薬のビンがあちこちのたなの上に乗っていてとっても不気味。  
一人ではとても居たくない場所でした。  
「なぎさ」  
ほのかの声に振り向くなぎさ。  
ついつい嬉しさに涙が浮かんで来てしまいます。  
「ああ、泣かないでなぎさ。可愛い子ね」  
ついつい最後の方で本音がぽろっと零れてしまうほのかでしたが、なぎさは気付きません。  
ほのかの手にはふかふかの石鹸の香りのするタオルと、  
綺麗なパステルカラーの可愛らしい洋服が抱きかかえられていました。  
「本当に、本当に有難う御座います、えっと…」  
「ほのかよ」  
「ほのかさん、有難う御座います!」  
頭を下げるなぎさ。微笑むほのか。  
でも、ほのかは無言で立ったままタオルを渡してくれない。  
濡れた体はどんどん体温を奪われて行く。  
「あのー、ほのかさん…」  
「ほのかでいいわ、なぎさ」  
「ほのかさ…ほのか、えっとタオル…」  
「タオル?」  
言いづらそうに、でも言い出したなぎさにわざとらしく聞き返すほのか。  
「寒くて…」  
「体をふきたい?」  
無言で頷くなぎさ。  
その様子にほのかは満足そうに微笑む。  
「じゃあ私がふいてあげるから、後ろを向いて座って」  
 
「でも…」  
幾らもう裸を見られてしまった相手といえど人に体をふいてもらうのには恥かしいらしく  
明らかに抵抗の色を見せるなぎさ。  
しかしほのかはここで妥協するほど根性の無い女の子ではありません。  
とことんねばって、でもあくまで無理矢理はせずに相手の気持ちをいかに自分に向けるか…  
そのいろはもおばあちゃまから毎晩寝る前、時代遅れの夢物語のかわりに聞されていました。  
「ねぇ、でも自分では見えない所もあるでしょう?ちゃんとふいてあげるから私に任せて。  
それとも…私の事、やっぱり信じられないかな?」  
ほのかの声音が小さくなります。  
「え?」  
「そうだよね、たった今さっきあったばかりの私なんか信じられないよね……ごめんね」  
ごめんね、ではらりはらりと涙を流すほのか。  
なぎさはそれを見てぎょっとします。  
ほのかが涙を女優なみに自由に操れるという事を、当然知りませんでしたから。  
「そんな事無い、です…じゃあ、お願いします」  
してやったり。  
にやりと心の中でだけ微笑み、ほのかは手の甲で涙を少しずつふいた。  
 

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