『くるみの泉、光る宝石』
「くるみ、おかえり」
「あれ、ココ様、どうして私より先に帰っていらっしゃるんですか?」
「どうも熱っぽくてね。早退させてもらったんだ」
「それはいけません。寝ていなくちゃ!」
「いや、少し寝たら良くなったんだ。それより、お茶を入れておいたよ」
「え、ココ様が?」
「いつもお世話になっているからね」
くるみがお茶を飲み終えたのを見届けて、ココが何かをポケットから出した。
「これを付けてくれないか?」
「え?アイマスク?どうしてですか?」
「いいからいいから」
少女は従順に従った。
「よし、付けたね。じゃあこっちに来て」
ココはくるみの手を取って別室に連れて行った。
「あ、な、何をするんですか!?……あ、痛い!」
くるみはいきなり柱に縛り付けられたのだった。上半身を肩から腰まで、縄でぐるぐる巻きにされた。
ココは彼女の質問には一切答えなかった。
「そろそろだな」
ココは腕時計を見た。くるみを縛り上げてから1時間が経っていた。
「な、何がそろそろなんですか」
「くるみ。少し前から、落ち着かないね。しょっちゅう太ももをこすり合わせてる」
「わ、わからないんですか?」
ココは答えず、話題を変えた。
「ふふ、さっきのお茶だけどね」
くるみはピンときた。
「まさかっ!」
「よく効くんだなあ。30分で効果が出始めた」
ココは座って尿意に耐える少女を眺め続けた。
(くふふ、女子中学生のおもらし。しかも制服姿……)
ニヤニヤが止まらない。
「誰か!誰か助けてぇ!」
くるみは叫んだ。ココは口を開いた。
「かれんは生徒会、こまちは実家の手伝い、りんは部活、うららは仕事、のぞみは補習」
「ナッツ、ナッツ様は!?」
「うん、それだけが気がかりなんだよなあ」
とその時、ドアが開いた。
「おいココ!何をしてるんだ!」
噂の青年が叫びながら飛び込んできた。
「すぐに離してやれ!」
ココはニヤリとした。
「いやだね。もう少しなんだから」
ナッツは構わず、くるみのそばに駆け寄ろうとした。だがココが立ちはだかる。
「どけ!」
「どかないよ。計画をおじゃんにされてはたまらない」
「計画?」
「わからないのか。くるみのおもらしをこの目でじっくりと拝むのさ」
なぜ、というナッツの問いかけをさえぎり、ココは続けた。
「こいつのおせっかい過ぎるところが前から気に食わなかった」
「だからといってこんな……」
「ああっ!ンもうッ!」
突然目の前の捕らわれの少女が叫んだ。
「何でもいいから、早くこの縄をほどいてください!でないと、もう、あた……し……」
途中から声が小さくなり、口ごもった。
(ジュッ……、ジュッ……、ジワ〜……)
くるみは下着の股の部分が、ジワジワと濡れていくのを感じた。妙にあたたかい。
「あ……、あぁ……、ダ、ダメぇ!」
くるみは必死で耐えた。何とか決壊だけは防ごうとした。下着が濡れる程度で済まそうと頑張った。
果たして、決壊は起こらなかった。ココは狼狽した。
「バカなっ!限界を越えて漏れたおしっこを止められるわけがないっ!」
「バカはお前だ、ココ」
「バカとはなんだ、僕はパルミエ国王だぞ」
「国王だろうが、バカはバカ」
「まだ言うか、この」
「も、もうダメぇッ……」
(ビチャビチャビチャビチャ……)
ついにくるみは限界に達したのだった。細い二本の脚の奥の、スカートに覆われた部分から、
澄んだ液体が止めどもなく流れ出している。足元には水たまりができ、どんどん広がって行った。
その液体は、太ももや膝を伝っていくのではなく、直接足元の水たまりへと落下していた。
我慢している間は膝をこすり合わせていたというのに、決壊と同時に、両膝は自然と離れた。
そのために滝により勢いが付き、床に当たった時の音が大きい。
限りなく澄んだ黄色の液体は、ほのかに湯気を立てていた。
そこに西日が差しこみ、水たまりはまばゆいばかりに輝いた。
太ももに残った水滴の一つひとつは、まるで宝石のようであった。
ココとナッツは呼吸もまばたきも忘れて見入っていた。
その間も、この透明な液体は少女のスカートの奥から流れ続けていた。
もはや閉め忘れの水道のようではあったが、くるみの体は、なおも彼女に従わない。
チョロチョロという音が、間を置きつつ部屋中に響く。
ふと、我に返ったナッツが、視線はそのままに、叫んだ。
「こ、これほどまでとは……っ!」
取り憑かれたように、ヨロヨロとくるみに駆け寄った。くるみは放心状態である。
突然、ナッツはひざまずき、彼女の太ももを舐めた。
「どうだ、お味は?」
ココは不敵な笑みを浮かべながら歩み寄り、尋ねた。
「ふむ、ママの味だ」
「ミルキィだからな」
「それに、この香り」
「はじけるレモンの香りか?」
「いや、もっと高尚なものだ」
「どうもわかりにくいな」
「つまり、太ももの水滴は光る宝石、この液体は輝く命そのものだ」
「酔ってるのか、ナッツ?」
「そうかもしれんな。興奮のあまり、酩酊してしまったようだ」
(バシャッ!)
「コ、ココ!何をする!」
「酔いを醒ましてやろうとしたのさ」
ココは光輝く水たまりを両手ですくい、ナッツの顔に浴びせた。
「やったな!」
ナッツは応戦した。ふたりは女の子の泉から湧き出た黄金の液体で水掛けっこをした。
「いい加減に、この縄をほどいて下さい!」
くるみが業を煮やして叫んだ。
二人は液体そのものに興奮してしまって、それを外界に送り出した主を忘れていたのだった。
「ああ、すまなかった。でもくるみ、本当に素晴らしかったよ」
「いくらココ様でも、これは許せません!」
突然、ココはくるみの頬にキスをした。
「あ、ココ様……」
「これで許してくれないかい?」
くるみの頬は紅潮した。何か言い返そうとしたが、うろたえてしまって、言葉が出なかった。
「俺からも頼む。すまなかった」
今度はナッツが手の甲にキスをしてきた。
くるみはようやく口を開くことができた。
「も、もう!今度だけですからね!」
怒りながらそう言ったつもりだったのだが、頬が緩むのを抑えることができなかった。
ココもナッツもそれを見逃さなかった。