ベローネ学院ラクロス部恒例、夏の合宿が始まった。今年は、ほのか率いる科学部も  
参加し、体育会系と文科系の合同合宿という、訳の分からない事になっている。  
 
まあ、要するになぎさとほのかが部をまとめる立場を利用して、力ずくで合同合宿に持  
ち込んだのだが、各部員たちはそれに戸惑う事も無く、集合場所に集まっていた。ただ、  
約一名を除いて──だが。  
 
「美墨さんは、また遅刻なの?」  
今回、合宿の引率をする竹ノ内よし美は、呆れ顔で言った。集合時間を過ぎているのに、  
キャプテンを務めるなぎさが来ていないのである。すでに部員はチャーターしたバスに乗  
り込み、出発を待っているというのに、肝心かなめのお方が来ていらっしゃらないのだ。  
「なぎさらしいや」  
頭にバンダナを巻いた藤田アカネが笑った。彼女はラクロス部のOGとして、今回も合宿  
でコーチ役を任されている。その隣にはひかりもいた。アカネが連れて来たのである。  
 
「キャプテンが遅刻とは、団の面目丸つぶれ!クエッ、クエッ!」  
志穂が突然、花の応援団の決め台詞を放った。しかし、あまりにも懐かしすぎて、理解  
出来たのはよし美と、小田島友華を送ってきた運転手の室町さんだけ。ちなみに友華  
は、科学部の幽霊部員だった事を理由に、今回の合宿に参加していた。これも良く分か  
らない話である。  
 
「あッ、来たわ」  
校門を弾丸のように駆け抜けてくるなぎさを、一番に発見したのは、やっぱり親友の  
ほのかだった。なぎさは鬼のような形相で、ほのか目掛けて必死に駆けて来る。その  
姿を小田島友華は、切ない眼差しで追った。  
 
(美墨さん・・・)  
キュンと胸が痛む。実を言うと、このごろの友華はふとした瞬間に、なぎさの事ばかり  
を考えていた。中等部時代を懐かしむ、いや、愛しむように。  
(ずっと、あなたを好敵手と思っていたけど・・・)  
また胸が痛む。そして、下半身に熱い疼きが起こった。  
(ああ・・・なんて愛らしいのかしら)  
友華はなぎさのすべてが愛しくなっていた。少年のような顔立ちと、細く長い足。頭抜  
けたお調子者ぶりと、テレビチャンピオンもびっくりの食い気。何もかもが友華を惑わ  
せ魅了する。  
 
「ゴメーン!待ったあ?」  
ギリギリセーフと叫びながら、なぎさが集合場所に到着。猛ダッシュから急制動に入  
った時、スカートが捲れてショーツが露わになったが、本人は気にも留めぬ様子。し  
かし、それを見た友華は、恥ずかしながら下着を汚すほど興奮した。  
「ギリギリセーフじゃないでしょ!くらえ、ギリギリチョップ!」  
「いて!」  
よし美がなぎさの脳天に、B’Zも驚きの手刀を叩き込んだ。こうして、夏の合宿が始ま  
ったのである。  
 
合宿所に着いてすぐ、ラクロス部は練習へ。科学部は変態・・・じゃなくって、天体観測  
の用意を始めた。ちなみに友華はというと・・・  
「いっくよー!」  
と、叫びながらグラウンドを所狭しと駆け巡るなぎさを、ストーキングしていた。  
 
「・・・美墨さん」  
グラウンド脇にある雑木林の中から、なぎさを見つめる友華。汗を光らせながら球を追う  
なぎさの姿が、まぶしくて仕方がなかった。  
「なぎさって呼びたいな。あたしの事は、お姉さまって呼んで欲しい」  
胸に手を当て、密やかに想いを募らせる友華。はっきりとしたイメージは湧かないが、な  
ぎさを抱きしめ、キスくらいはしてみたい。そんな事を考えていた時──  
 
「なぎさ!」  
突然、莉奈が叫んだ。それにつられ、友華がグラウンドのなぎさを目で追う。すると、そこ  
には足をもつれさせ、地面に倒れるなぎさの姿があった。  
「美墨さん!」  
友華の顔が青ざめた。一体、彼女の身に何が起こったのか。思わず、部外者である事も  
忘れ、グラウンドへ駆け出す。しかし、なぎさを囲むラクロス部員たちに遮られ、近くには  
寄れない。  
 
「担ぐよ!志穂、手を貸して!」  
「ほいきた」  
莉奈、志穂の二人が、なぎさを合宿所の中へ運んで行くのを、友華は不安そうに見送  
った。心配だが、何もしてあげられない。そんなもどかしさが、自分を責めた。  
 
「小田島先輩、食が進んでませんね」  
夕食時、友華は対面に居た科学部の後輩にそう言われて、思わず苦笑いをした。  
「ダイレクトしてるの。皆には、内緒にしておいて」  
それはダイエットでは・・・と、訝る後輩をよそに、友華は善を下げた。なぎさはどうなった  
のだろう。そればかりが気になっていた。  
(ちょっと、様子を見に行こう)  
知らぬ仲ではない。別に自分がなぎさの元を訪ねても、少しも不自然ではない。友華は  
そう己に言い聞かせ、食堂を出た。  
 
「大事に至らなくて、良かったですね」  
なぎさが寝ているベッドの横で、ひかりが微笑んだ。隣にはほのかが居て、相棒の寝顔  
を優しく見守っている。  
「寝不足からきてるらしいから、しばらく眠ればいいそうよ。ひかりさん、驚いたでしょう」  
「ええ。でも、鬼のかくらんっていうか、元気だけが取り得のなぎささんらしくありませんね」  
言いたい放題のひかり。しかし、ほのかも同意見のようで、にこやかに頷いた。なぎさ一人、  
いい面の皮である。  
 
「失礼するわ」  
突然、小田島友華が部屋に入って来た。ほのかとひかりは何事かと、首を傾げている。  
「二人とも、夕食がまだでしょう?美墨さんはあたしが看てるから、召し上がってらっしゃ  
いよ」  
縦ロールの髪を手で梳きながら、友華は言った。なぎさと二人っきりになるために、彼女  
たちを追い出そうとしていると思われないか、不安だった。  
 
「そうですか、じゃあ・・・お願いします。行きましょう、ひかりさん」  
「はい」  
友華にそう言われては、断る理由が無い。ほのかとひかりは部屋を後にした。  
「美墨さん・・・良かった、大丈夫そうね」  
眠るなぎさの顔色は良くなっている。友華は一安心した。大口を開けていびきをかいて  
いるのは少々情けないが、そこいら辺はいかにもなぎさらしい。  
 
「うふふ・・・可愛い寝顔。男の子みたい」  
手をなぎさの額に当ててみる。前髪をすくって、生え際をなぞった。柔らかい髪の感触が  
指に心地良い。友華は自分の頬が熱くなるのを感じた。  
「この部屋、暑くないかしら・・・美墨さん、汗かいてたらいけないし・・・」  
友華の指がなぎさの布団を剥いだ。やましい事は何も無い。ただ、汗をかいてないか調べ  
るだけ・・・友華は呟きながら、そろそろと指を動かしていった。  
 
「あッ!」  
布団を剥いだ友華の体が凍りつく。なんと、なぎさはパジャマの上と、ショーツしか身に  
着けていなかった。なぎさを着替えさせたのはおそらく、莉奈か志穂。そのどちらも性格  
はがさつである。だから、なぎさは下半身を下着一枚にされたのだろうと、友華は推測  
した。それと同時に、どうもありがとうと心の中で叫ぶ。これが、本音である。  
 
「か、かわいい下着だわ・・・」  
ゴクリと生唾を飲む友華。細い腰のすぐ下からなぞられる、なぎさのビキニラインは艶か  
しかった。下着は白いありふれたジュニア用のショーツだったが、友華は異常な興奮に包  
まれていた。気がつけば体が前のめり、なぎさを跨ぐような姿勢を取っている。まるっきり、  
男が女を犯すような姿だった。  
 
「あ、汗を拭くだけよ・・・やましい事は、何も無いわ・・・」  
夢遊病者にでもなったかのように、友華はなぎさのパジャマを脱がしにかかった。ブラジ  
ャーをしていないのは、薄い寝巻き越しにはっきりと浮かび上がる、乳房の形で分かる。  
小さいが張りがある素晴らしい母性の象徴だった。  
「ああ・・・美墨さんの胸が!」  
パジャマのボタンを弾くと、真っ白い乳房が現れた。友華はなぎさが眠っているのをいい  
事に、軽くその先端にある苺のような乳首を指で摘んだ。  
 
「や、柔らかいのに弾力があって・・・なんて良い触り心地かしら。ゆ、指が離れなくなり  
そう・・・」  
薄桃に色づいた乳首を弄ぶ友華の精神は、興奮の坩堝にあった。その内、掌全体で乳  
房を揉むようになり、甘く乳首を噛んだ。それを口に含むだけで眩暈のような背徳感に襲  
われて、股間がシクシクと疼く。  
 
「美味しい!ああ、美味しいわ、なぎさのオッパイ・・・」  
右、左と絶え間なくなぎさの乳首を吸う友華。もちろん、味などしないのだが、愛しい者の  
胸を愛撫しているとなれば、そんな気がしても不思議ではない。すると友華は、更なる甘  
露を求めて、なぎさの股間にむしゃぶりついた。  
 
「起きないでね・・・なぎさ」  
白いジュニア用のショーツに指をかけ、そっと下ろしてみる。へその下から恥丘までショー  
ツを脱がすと、いきなり割れ目がお目見えした。なんと、なぎさは中学三年生にもなって、  
若草が生えていないのである。毛穴が無いので、剃った訳でもないようだ。  
「何もかも理想的よ、なぎさ・・・」  
花のつぼみのような女陰を指で開き、友華はなぎさのクリトリスの皮を剥いた。  
「まあ、きれい。ピンクの真珠みたいね」  
同性の陰部を弄る事が、こんなにも興奮するとは思わなかった友華。そして、気がつけば  
ほとんど無意識の内に、なぎさの肉真珠へ熱い口づけを捧げていた。  
 
翌朝、ラクロス部員と科学部員たちは、合宿所から出て行く小田島友華の姿を見送って  
いた。何か急用が出来たとかで、帰宅しなければならないらしい。皆、友華の帰宅を残念  
がったが、仕方がないという面持ちだった。  
「それでは、ごきげんよう」  
友華はにこやかに去っていった。特に、なぎさへは格別な思いがあるようで、何度も何度  
も熱い視線を送った。心なしか顔色が素晴らしく良い。昨夜の夕食時に見せた、沈んだ  
様子とは大違いである。  
 
「ねえ、なぎさ」  
「なあに、ほのか」  
わしわしと鼻クソをほじるなぎさを、ほのかは心配そうに見た。心配なのは体調のことでは  
なく、昨日、小田島友華と一緒になった時間のことだった。  
 
「昨日、何かされなかった?友華先輩に」  
「別に。あたし、ずっと寝てたし」  
人一倍寝つきの良いなぎさが、寝ている間に悪戯されたのでは、とほのかは睨んでいる。  
そうじゃなければ、友華のあの笑顔はないだろう。それと、妙に顔がつやつやしていたのも  
気になる。ごっつあんです。そう言わんばかりの血色の良さだった。  
 
「何か、無くなってる物は無い?ショーツとか」  
「そういえば、穿き古したパンツが一枚無くなってた。多分、莉奈か志穂が捨てたんじゃ  
ないかなあ。何か、色んなシミついてたし。アハハ、恥ずかしいな」  
それだ。と、ほのかが頭を抱えた。小田島友華はきっと、なぎさに悪戯した挙句、下着を  
失敬したに違いない。そう思うと、昨夜、なぎさの看病を代わった事が悔やまれる。  
 
「ところで、来週の予告なんだけど、ほのか」  
「ああ、来週はどこかへ涼みに行こうって話なんだけど」  
「だったら、湖でボートにでも乗って・・・」  
「ボーッとしましょうか」  
「ほのかが落した!ひえ〜、あり得ない!」  
 
ビックビジネス・イット・ドント・ライク・ユー。なぎさは仰天し、拳を振り上げた。奇しくもこの  
日、おねがいマイメロディで駄洒落パパこと雅彦さんが、同じギャグをかました事を追記  
し、おしまい。  
 

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