「お姉ちゃん、お父さんの名前、知ってる?」
ある休日の朝、亮太はなぎさに向かってこんな事を聞いた。亮太は小学五年生。まさか、
父親の名前を知らないとも思えないのだが、姉に向かって問いかけるその表情は真摯で、
ふざけているようには見えない。すると、
「岳(たけし)に決まってるでしょう。コマネチ!」
なぎさはがに股気味に足を開き、某大物芸人の持ちネタを披露した。父もそうだが、この
娘、駄洒落で他人をねじ伏せたがる性癖を持っている。それを知り得ている亮太は、もちろ
んノー・リアクション。姉のギャグにいちいち付き合っていたら、身が持たない事を彼は幼い
ながらに理解しているのだ。
「でも、プリキュア大百科1には、岳(がく)って書いてある」
絶賛発売中の児童書を手に、呟く亮太。確かに、家族紹介のページには、『がく』と称されて
いる。
「ホントだ・・・公式ホムペじゃ、たけしになってるのに・・・」
うむむ・・・と顔をしかめるなぎさ。今の今まで、父親の名を『たけし』と思っていたので、この
展開は慮外だった。
「でもね、プリキュア大百科2には、『たかし』って書いてあるんだ」
亮太は、これまた大好評発売中の児童書を持ち出し、なぎさへ詰め寄る。見れば、なるほど
父親の名は『たかし』と表記されている。
「この前発売になった、ビジュアル・ファンブックも、『たかし』になってる。いったい、どれが正
しいんだろうね、お姉ちゃん」
「うーん・・・」
事ここにきて、姉弟は行き詰ってしまった。駄洒落キングこと、美墨岳──その男の本当の
名は、誰も知らない──
「ええ〜っ!よし美先生が、結婚?」
竹ノ内よし美、電撃婚約──この一報が、ベローネ学院内を駆け抜けたのは、ある日の
早朝。なぎさはそれを校門前で耳にし、『シェー』のポーズを取りながら、上記のごとく
叫んだ。
「出来ちゃった結婚らしいわよ」
連れ立っていたほのかが、言葉を繋ぐ。どうやらよし美は教職にありながら、異性と婚前
交渉を持っていたらしい。地味なキャラクターだが、よし美は意外に発展家なのだ。
「父親は誰なの?ほのか」
「表向きはどこぞの男の人になってるけど、本当のところは男子部の生徒らしいわよ。嫁
き遅れをいい事に、手当たり次第に男子を食ってたから。多淫症の気があるらしいわ、よ
し美先生」
多淫な女教師──なにか、いい響きである。が、それはさて置く。
「それ、マジ?ありえない!」
顔を赤らめ、目を丸くするなぎさ。よし美婚約、妊娠の報を知り、大人の世界をちょっぴり
垣間見たような気がして、心が逸っているのだ。
「ねえ、ねえ、ほのか。先生に直接聞きに行こうよ。年増の色話なんて、華が無いとは思う
けど、後学のために」
「いいわよ」
なぎさとほのかは校門を抜けると、迷わず職員室へと向かった。興味本位である事はいう
までもないが、ようやく結婚へこぎつけた、よし美のはしゃぎっぷりが見たかったのである。
しかし──
「あらあ!もう、知れ渡っちゃったの?先生、まいっちんぐ!」
職員室へ出向いたふたりを迎えたのは、やたらとハイテンションなよし美の声であった。
その姿を見たなぎさとほのかは、一瞬にしてお腹がいっぱいとなる。そして、来るべきでは
無かったと心の中で、己の判断ミスを呪った。
「先生もね、もてないワケじゃ無かったの。ただ、結婚となると・・・ねえ?まあ、殿方とのお
付き合いはあったけど。うふふ・・・そうそう、先生と彼の出会いはね・・・」
頬に手を当て照れつつも、尋ねてもいないのに自ら婚約へのストーリーを話し出すよし美。
当然の如く、なぎさは心の中で、頼むからダイジェスト版にしてちゃぶだい、と願う。
それから、一時間後──
「先生はさあ・・・別に、結婚を焦ってたんじゃないのよ。教師っていう仕事が好きで、子供た
ちが大好きで・・・それでつい、婚期を逃しちゃってね・・・」
・・・よし美の話はまだ続いていた。なぎさとほのかは、もう、うんざりという表情を、隠すこと
なく見せていたが、よし美に容赦は無い。と、言うか、自分の気持ちだけを淡々と語り続けて
いるだけで、ふたりの事は眼中に無いようだった。
(ほのかの目に、殺気が宿ってる・・・)
なぎさがちらりと隣を見ると、不穏なオーラをまとったほのかが、自分を見ていることに気が
ついた。年増女の、こんな与太話に付き合わせやがって・・・親友の目は、そう語っている。
(マズイな・・・)
ふたなりプリキュアを結成している彼女たちだが、時としてその硬い絆にヒビが入ることだっ
てある。なぎさはそれを危惧した。そして、この女教師の話が早く終わってくれる事を願う。
が、しかし──
「はい。ここで、先生の結婚ヒストリー、『第一部』はおしまい。ここからは、いよいよ生臭い
お話になるわよ。替えのパンティは持ってる?」
よし美は嬉々として、そんな事を言い放った。もちろん、なぎさもほのかも鼻の穴を膨らませ
て、眉をつりあがらせた事は、言うまでも無い。
ベローネ学院男子部に、宵闇が迫っていた。時刻は午後十一時。学内に人影は無く、静寂
が辺りを包む。ただし、サッカー部の部室を除いて──だ。
「よし美もついに結婚か」
藤村省吾。通称、藤P。彼は今、サッカー部の部室内で寝転んだまま、よし美を己の股間へ
傅かせていた。男女の頭が互いの陰部にくっつく、いわゆるシックスナインと呼ばれる体勢で。
「ンッ・・・」
低くくぐもった声を漏らすよし美。結婚を間近に控えた女教師は、何故か藤村省吾の男根を
薄めの唇ですっぽりと咥え込み、舌による愛撫を捧げていた。しかも、身にはパンティが一枚
着けられているだけ。教師と生徒──その垣根を、二人は越えてしまっている。
「俺の子なんだよな、ここにいるのは」
省吾は己の上で四つんばいとなっている女教師の腹を、優しく撫でさすってやった。彼も、よし
美がここに生命を宿していることは、知っているらしい。
「ンンッ!」
へその辺りに省吾の指が来た時、よし美はくっと眉間に皺を寄せる。彼女は、子を宿したと知っ
てから、その辺りが敏感に反応するようになっていた。気がつくと、女陰がひきつれを起こした
ように疼き、パンティのクロッチに恥ずかしいシミを作ってしまう。
「あなたの子よ・・・間違いないわ」
省吾の男根を唇から離し、ふふっと笑うよし美。鈴口から唇まで引かれた糸を、舌でたぐりなが
らの、淫らな微笑であった。
「よく言うぜ。サッカー部全員のおもちゃだったクセに」
省吾は身を起こし、よし美を抱き寄せる。そして、細身の体には不釣合いなほどに実った、ふた
つの母性の象徴を、ゆっくりと揉みしだきはじめた。
「アーンッ・・・」
乳房は円を描くように揉まれ、乳首は指先で啄ばまれていた。よし美は、省吾から与えられ
ている甘美な快楽に酔い、混乱にも似た激しい性衝動を得る。
「おっぱいが張ってきたな」
懐妊後から、よし美は乳房が張り、乳首が敏感になっている。それを、省吾は知っていた。
そして、そこを執拗に責めると、女教師は歓喜にむせび泣くという事も──
「いやあ・・・」
ふんと鼻を鳴らし、仰け反るよし美。見ると、省吾の指が貪らんばかりに、乳肉へ食い込んで
いる。いささか乱暴に思えるが、よし美はそれを拒もうとはしていない。どころか、乳首が引き
ちぎられそうなほど強く抓まれても、うっとりと頬を紅く染める有り様だった。
「お願い・・・省吾・・・もう・・」
そう言って、自らパンティを脱ぐよし美。目はせつなく潤み、省吾の前に心が屈していた。その
上、よし美は己の指で陰部を掻き分け、先ほどまで口唇愛撫を捧げていた彼の男根を誘って、
腰をよじらせる。
「やれやれ、おねだりか」
「ウウン・・・意地悪しないでぇ・・・」
よし美は部室の床へ横になり、両足を開いて省吾をいざなう。その奥では恥部がぱっくりと裂け、
年齢に相応しいくすんだ色の生肉がお目見えしていた。
「入れるぜ」
省吾には、よし美ほどの感慨が無さそうだった。男根こそ勃起しているが、目下の女教師ほど、
気持ちが逸らない。両者の間には、確固たる主従の関係が、成されているようだった。
「ああーッ・・・」
膣口が省吾の男根でこじ開けられ、満たされる──よし美は、この瞬間が好きだった。
そこには、教師としての尊厳など微塵も無く、女の渇望を満たしてくれる男根の逞しさに
ただ酔い痴れる、一匹のメスが居るだけ・・・よし美は、犯される瞬間にそんな事を考える。
彼女の私生活は、男子部の少年たちと共にあった。多淫症──ひと言で表すのであれば、
よし美は間違いなく、それだった。
「ガキ孕むまで生徒とやりまくって・・・それでも、教師かよ」
省吾が、ずずっと腰を突き出しながら、よし美をあざ笑う。男根は深々と女教師の芯を穿ち、
肉穴の中で張り詰めていた。
「ああ・・・省吾・・」
目を閉じて、男根を女芯で味わうよし美は、夢心地だった。婚約中の身で、しかも妊婦。その
自分が、生徒と深夜に逢瀬を重ねているなどと、誰が思うだろう。そう考えるだけで、背徳感
が増し、セックスの快楽を更に高めてくれる。よし美は、教師と生徒という間柄に惹かれていた。
そして、結婚する事で人妻というキャリアを、追加しようと目論んだのである。
(人妻女教師──か。悪く無いわね。これでまた、生徒たちを誘惑できるわ)
これまでにもよし美は、多数の生徒と関係を結んでいる。最近はサッカー部専用の性欲処理
女として落ち着いてはいるが、またぞろ心の深層に潜む欲望が湧き上がっていた。
(調教されたいわ、生徒たちに。人妻でありながら、生徒の玩具になる女教師──ああ、ゾクゾ
クしちゃう!)
よし美はそんな事を考えながら、軽く達している。省吾の男根と己の女がこすれ合い、淫らな
肉音が奏される度に、彼女は崩落しかけた精神のバランスの中で、最高の愉悦を見出すので
あった・・・・・
時を同じくして、美墨家の子供部屋。そこでは、夜遅くにも関わらず、仲良く睦み合うなぎさ
とほのかの姿があった。今、ふたりはテーブルを差し挟み、互いの手酌でオレンジジュース
などを嗜んでいる。
「まいったね、年増の結婚話が長引いて」
「本当。もう、勘弁してって感じ」
なぎさの問いかけに、ほのかが苦笑い。結局二人は、よし美の結婚に至るサクセスストー
リーを第五部まで聞かされ、へとへとだった。その慰労を、なぎさとほのかは行っている。
「ほのかさん」
なぎさの自室に、亮太が突然やって来た。手に茶菓子を持ってはいるが、実の所、ほのかに
会いたいだけの話だ。彼は、ほのかが来宅した際には、何かにつけてここを訪れている。少年
が年上のお姉さんに抱く、淡い恋心とでもいおうか、まあ、そんな感じ。
「あら、亮太君。うふふ、こっちへいらっしゃいよ。おちんちんの皮、剥いてあげる」
「ちょ、ちょっと、ほのか!」
冗談とも本気とも取れないほのかの申し出に、なぎさは困惑した。小生意気ではあるが、可
愛い弟の性器の皮を、気安く剥かれてはかなわない。一応、これでもなぎさは姉であり、弟の
性器を一番に弄ぶ権利を有しているのだ。
「ほのかさん?おちんちん・・・?何するって?」
きょとんとする亮太。ほのかが言った事を、良く聞き取れなかったようだ。すると、ほのかは、
待ってましたの如く、身を乗り出した。
「あのね、亮太君のおちんちんの皮を、こう・・・キューッと剥くの・・・それでね、ほのかお姉さん
のアソコにね・・・」
身振り手振りで説明を始めるほのか。その上、自らはスカートの中へ手を突っ込み、亮太の
ちび筆をいざなう素振りを見せる。愛らしい少年の筆おろしをやってしまいたいという、欲望に
とり憑かれているようだった。
「ちょっと、やめてよ、ほのか」
「あら、いいじゃないの。何事も経験よ。もし、何だったら亮太君のお初は、なぎさに譲って
もいいわ」
亮太に対する淫行を、何とか止めようとするなぎさの心に、ほのかが楔を打った。弟の純潔
を譲る──その言葉が、姉の心の琴線を爪弾いたのだ。
「怖いだけじゃなくて、優しいお姉ちゃんって所も見せなきゃ」
ほのかがなぎさの背中を押す。何か、ダメ出しより背中押してって感じ。
「りょ・・・亮太」
「お姉ちゃん」
普段は仲が悪いように見える姉弟の間に、別の感情が燻り始める。そして気がつけば、姉と
弟は吸い寄せられるように抱き合っていた。
「亮太君、ズボンとパンツを脱いで。なぎさは・・・言わないでも分かってるわね?」
ほのかが姉弟を急かしつけ、自分もスカートの中へ手を入れる。もう、パンティの中はしっとり
とぬるみ、陰部からは淫臭を伴う粘液が溢れ出ていた。そうして、亮太もなぎさも、その上ほのか
も揃って下半身を曝け出し、まさに一触即発の事態となった、その時──
「おーい、なぎさ。お父さんの痔の薬知らないか?尻ません(知りません)なんちゃってな・・・」
駄洒落キングこと、美墨岳がなぎさの自室へやってきた。それも、当たり前のように駄洒落を
かましながらである。そして、岳は愛娘、愛息子、ならびに他所様のお嬢さんの下半身を見て、
こう結んだ。
「股、見てね」
おそまつ