「ひかり、ちょっと遊んでおいで」  
お世話になっている藤田アカネにそう言われ、五千円札を一枚渡されたひかり。別に  
外出の予定は無いのだが、家主の方に何やら予定があるらしい。ひかりは頭がいい  
子である。アカネの物言いに含みがある事を見抜き、頷いて見せた。  
「はい。じゃあ、しばらく遊んできます」  
今日はタコ焼きの路上販売も休みである。アカネの家を出ても、まだ不慣れなこの町  
に行くあてもなく、ひかりはすぐに手持ち無沙汰となった。  
 
「ふう・・・」  
いつもの公園まで来て、足が止まった。ひかりは家を出る時、立派な身なりの中年男性  
とすれ違っている。そして男は、そのままアカネの家へ入っていった。まだ無垢なひかり  
ではあるが、その後あの家で何が起こるのかは想像がつく。  
(女ひとりで生きるって、大変なんだな)  
タコ焼きワゴンリニューアルに伴う出費を、アカネがどのようにして調達したのかは、定  
かではない。ただ、あの若さでたやすくまとまった金を手に出来るとは思えない。と、な  
ると──  
(いやだな)  
思わず天を仰ぐひかり。汚れない人間はいない。それは分かっているが、どこか釈然と  
しない物がある。少女は生まれたての赤子のように純真だった。  
 
「今頃、アカネさんは・・・」  
ひかりの胸がきゅっと締めつけられる。アカネはあの男に抱かれている──嫌でもそれ  
が分かった。金のために──  
「こんなもの!」  
手渡された五千円札を握り締め、美しい顔を怒りで歪めるひかり。しかし、思い直したよ  
うに五千円札のしわを伸ばし、大事に折りたたんだ後、  
「これだって・・・アカネさんが流す汗と涙の結晶なんだ」  
おろそかには出来ないと、そっとジーンズのポケットへしまい込んだのであった。  
 
「なあ、アカネ。そろそろワシのものにならないか?」  
男は高級そうな装いを解きながら、アカネを口説き落としていた。年は五十代後半で、  
もう老醜の域に入っているといっていい風貌である。  
「それは、まだ先の話にしてください」  
アカネは物腰柔らかく、言った。彼女の華奢な体に衣服の類はなく、白い素肌は惜しみ  
も無く男の目にさらされている。その上、男に縋るようにその体を預けていた。いつもラク  
ロス部のOGとして、なぎさたちのお尻を叩く女傑にしては、少々ひかえめな態度である。  
 
「金の問題じゃなくて、お前をひとりの女としてワシの傍にはべらせたいんだ」  
男は股間をむき出しにしながら仁王立ちになり、照れもせずにこんな事を言う。だが、  
アカネはそれに頷くことなく、アップにしていた髪を静かに振り解いて、  
「今は、そんな野暮を言わないで・・・」  
ぐにゃりと頭を垂れた男の一物を手に取り、そこへ口づけを捧げたのである。  
「お・・・おお・・アカネ」  
触れただけで折れそうなほど細い指が己の分身に添えられ、形の良い唇がカリ首を這  
う。男はそれに歓喜し、下半身へ血を流し込んだ。  
 
「硬くなってきたわ、うふふ」  
アカネは嬉しそうに男のものを舐め、咥え込んでいく。その生々しい肉音は何とも表現  
し難く、淫らであった。  
「ベッドへ行こう。お前のも舐めたい」  
男の手にいざなわれ、アカネはベッドの上に四つんばいになった。男が下で、アカネが  
上になる、いわゆるシックスナインの形を取ったのだ。  
「もう、ジュースが出ているぞ。いやらしい体だな」  
「いや・・・そんな事をおっしゃっては・・・」  
男の指がアカネの女唇をくつろげ、鮮やかな生肉の品定めをする。あまり男を知らぬ  
女は形が崩れておらず、その造形は美しかった。女が好きな男であれば、誰もがかぶり  
つきたくなるような絶品の女である。  
 
一方、居候も増えてなんだか賑やかななぎさの自室では──  
「感じるポポ!」  
と、ポルンが叫んでいた。するとなぎさは、  
「イヤン、聞こえた?あたしのオナラ。すかしたつもりだったんだけどなあ」  
ポテトチップスをパリパリとやりながら言った。色気より食い気。この娘にはまだ、その  
言葉が良く似合う。  
 
「く、くさいメポ!なぎさのオナラは、ケミカルウェポン級にすごいメポ!」  
これはメップル。彼は不幸にもなぎさの風下にいたので、ガス爆弾の直撃を受けた。  
「なんというはしたない!こら、少女よ、もう少し慎みを持つのじゃ!」  
と、ウィズダムも続く。ちなみに長老はトイレ、妖精はお出かけ中だったので難を逃れる  
ことが出来た。  
「悪い、悪い。でも、まだ出るよ、それっ!」  
そう言いながら、二発目、三発目をかますなぎさ。そのせいか、部屋の中全体が微妙に  
黄ばむ。  
「くっさいポポ!ふざけるのも、いい加減にするポポ!」  
何か大事なことを言おうとしていたポルンも、なぎさが放った爆弾で忘れてしまったようで、  
顔を赤くして呆れ顔。げに恐ろしきは少女の放屁力というべきか。  
 
「おイモ食べてるんだから、しょうがないじゃーん!」  
皆がへこたれる中、なぎさひとりがいい調子である。他人を己が屁の力で屈服させた事が、  
何となく優越感をもたらせてくれたからだった。まったく、まだまだなぎさの精神は幼い。  
「今頃、ほのかどうしてるかなあ・・・」  
最近、なぎさはほのかと少し離れるだけで、心細くなるような気持ちになる。百合レベルが  
高まりつつあるのか、ふと気がつけばいつも思うのは共に戦う親友の事ばかり──  
(また、明日会えるんだけどね)  
その言葉はそっと胸にしまい込んだなぎさ。何せ、今は居候どもが大騒ぎ中なので、セン  
チメンタルな気分には浸れそうにない。  
 
薄闇が町に迫っていた。しかし、ひかりはまだ公園にいる。アカネの家に訪れてきた男は  
もう帰っているかもしれないが、男女が交じり合う際の生臭さが、まだ部屋の中に残って  
いるかもしれない──そう思うと、ひかりの足は家に向かなかった。  
 
(早く明日が来ればいいのに)  
いつもワゴンが止まっている場所を見ながらひかりは思う。一生懸命、商いに精を出すア  
カネと自分、そして賑わうワゴンと美味しいタコ焼きに頬を緩めるお客さん。そのすべてが  
少女にとっては宝物のようにまばゆい光を放っている。  
「アカネさん・・・」  
もらった五千円は、今もポケットの中。ひかりはそれで、何か美味しいお菓子でも買って  
帰ろうと思っていた。もちろん、食べるのはアカネと一緒に。  
「もう少ししたら、帰ろう・・・」  
ベンチの上で膝を抱え、ひかりは呟いた。その間に、ワゴンの足跡が三月の薫風にさらわ  
れ、小さくなっていく。まるで、お嬢さん早くお帰りよ、そう言ってるようだった。  
 
 
「話、考えておいてくれ」  
「・・・はい」  
アカネの自室のベッドの上には、使用済みのコンドームとティッシュが散乱していた。男は  
三度もアカネを抱き、本懐を遂げている。  
「帰る。見送りはいい」  
「ええ。もうじき、あの子も帰って来ますから、夕食の準備をしなきゃ」  
男に背広を着せながら、アカネが言う。もちろん、あの子とはひかりの事だ。  
「どういった関係なんだ?あの子は」  
「親戚なんです」  
「そうか、あんまり似てないな」  
男は別段、興味も持たない風でアカネに問うた。話の間を紡ぐために聞いたらしい。  
 
「これ」  
男が懐から分厚い封筒を差し出した。すると、  
「いつもすみません」  
アカネは押し頂くように、それを受け取った。服は着ていたが、乱れ髪が先ほどまでの  
荒淫の名残を見せている。  
「タクシーを呼びますね」  
そう言って、電話機に指をかけるアカネ。その姿を男は淀んだ目で見て、こう言った。  
 
「ああ。それじゃあタクシーが来る前に、もう一度・・・」  
ドン、と男はアカネをベッドへ突き倒した。そして、彼女のジーパンのベルトに手をかける。  
「いや、何をなさるの?」  
「黙って、ワシの言うとおりにしろ。お前はワシのものなんだ!」  
むずがるアカネの尻を張り手で打って男は命じた。更には、彼女のパンティをジーパンご  
と太ももの辺りまで下ろしてしまう。  
「無理やりはいや!やめて!」  
「黙れ!足を開け!」  
「ああ・・・」  
男に逆らえないアカネは、這い蹲りながら両足を出来るだけ開いた。獣のような姿勢で犯  
される──それだけは、彼女にも分かった。  
 
「お前はワシのものだ」  
男がアカネの中へ入ってきた。三度も果てたとは思えぬほど硬度を保った一物で──  
「いやあ・・・ああ・・ん」  
女穴を穿たれると、アカネの体から力が抜けた。こうなると、這い蹲って犯されている自分  
の惨めさなど、微塵も感じない。ただ甘美な疼きが、股間から全身へ波打っていくだけで  
ある。  
「コ、コンドームを・・・お願いします」  
「要らん。子供が出来たら、ワシが面倒をみてやる」  
「そ、そんな・・・ああ・・・」  
子種を胎内へ注がれる恐怖に怯えながら、アカネは犯される。女ひとりで身を立てようとする  
難しさを、彼女は文字通り体で味わっているのだ。  
 
(ひかり・・・あの子は、どうしているのかしら)  
外に出してから、ずいぶんと時間が経っている。もしかしたら、もう帰ってくるかもしれ  
ない。万が一、こんな姿を見られたら──気を揉むアカネ。  
「急に締まりが良くなったな。何を考えている」  
「な、何も・・・ああ!」  
「ワシはそろそろイクぞ」  
男の一物が絶頂の予兆を見せた。もちろん、そこから放たれる子種はすべて、彼女の  
膣内に注ぐつもりだ。  
 
「中出しはいやッ!お願い、外に出して!」  
「駄目だ!全部中へ・・・ウッ!」  
アカネの願いを無下にはねつけ、男は射精した。四度目にも関わらず、大量の白濁液  
が彼女の胎内へ注がれていく。  
「ああーッ!」  
五十男の子種を無理矢理受け止めさせられる──アカネはそう考えるだけで、絶望的  
な気持ちになった。シーツを握り締め、悔しさと情けなさに身を震わせている。  
 
「いいぞ、お前はワシのものだ!」  
男は醜くも射精し続けた。しかし、アカネは特に抗う事も無く、粛々と男の子種を受け止  
めていく。せめてもの救いといえば、ひかりにこのあさましい姿を見られなくてすんだ事  
だけであろうか。  
「ああ・・・たくさん出てる・・」  
ベッドに身を横たえ、アカネは呟いた。その大きなの瞳にたゆませた涙を、男に見られぬ  
よう。そして、ひかりが帰宅したら、何か美味しいものでも食べに行こうと思うのであった。  
 
おしまい  
 

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