古い作りの雪城邸。  
その地下には、その外観とは対照的な地下室が隠されていた。  
その一つが、この家の一人娘・雪城ほのかお気に入りの拷問部屋だ。  
 
 
 
+秘密の花園+  
 
 
 
「ドキドキしちゃうな〜、ほのかんちにお泊りなんて」  
「そんなに緊張しなくていいのよ、  
今日はおばあちゃまも温泉に行ってて私以外には中トロしか居ないから」  
静かで薄ぐらいほのかの自室で二人は仲良く寄添っていた。  
障子の外からは涼やかな虫の鳴き声が聞こえる。  
 
今日ははじめてのお泊り会。  
ほのかが「おばあちゃまも居ないと流石に私も寂しいから…」と  
なぎさを招いたのだ。  
ほのかの両親はいつも海外を飛びまわっていてなかなか家には  
帰ってこない。  
それも知っていたなぎさは断れなかった。  
それに、いつも自分が住んでいるマンションとは全く違った  
ほのかの家にお泊りできるなんて楽しそうだ。  
 
だが、そんな好奇心で来てしまった事をなぎさは深く  
後悔する事になってしまう…。  
 
「ミップルゥ〜」  
「メップルゥ〜」  
「ほらあんたたち、そろそろ寝る時間よ!  
ポルンはもう寝たっていうのにいつまでもうるさいんだからー」  
カードを探しながら叱りつけるなぎさを見て、  
ほのかがくすくす笑う。  
「どうしたの?」  
「ううん、なんか最近のなぎさってほんとお母さんが板に  
ついてきたなーって」  
「やっだ〜、やめてよお母さんなんて!」  
やだと言いつつまんざらでもないのか、  
なぎさは頭をかきながら嬉しそうに返す。  
その仕草に、ほのかが唾を飲んだのをなぎさは知らない。  
そしてなぎさは、遂にほのかの理性を吹き飛ばしてしまった。  
「私がお母さんなら、お父さんはほのかかな?」  
「なぎさ」  
「え?何?あー今のは冗談だからきにしないでね。  
それにほのかと夫婦にたとえるなら私がお父さんだもんね」  
「そうじゃなくて」  
ほのかの手がなぎさの手に重ねられる。  
「秘密なんだけど…家地下室あるの、見てみたくない?」  
いつも通りの優しい笑顔。  
それになぎさはまんまとひっかかる。  
「うん!見てみたい!っていうかほのかの家マジ凄〜い!」  
「じゃあ、行きましょう」  
 
「すっご…」  
地下室をまのあたりにしてなぎさの最初の言葉がそれだった。  
その広い空間が狭く見えるほど所狭しと並んでいるのは  
様々な拷問器具。  
まさに世界中から取り寄せた、といった感じだ。  
「こっちがギロチン、あっちの人型のはアイアンメイデンでー…」  
部屋に入りその器具一つ一つに降れながら淡々と説明するほのか。  
「どうしたの?なぎさ。いらっしゃいよ」  
「ってゆーかそれ本物でしょ?恐いよ…」  
入り口で震えるなぎさに、ほのかは自然に歩みよると  
その頬を両掌で優しく包んだ。  
「大丈夫。私がついてるわ」  
「ほのか…」  
そしてほのかに促されるまま、なぎさは遂に部屋に入った。  
ガチャン!  
「!」  
はっと後ろを振り向くと、扉は固く閉ざされその鍵を  
ほのかが閉めているところだった。  
「ほのか、一体何のつもり…」  
「なぎさ」  
「ほ、ほのかぁ〜…」  
ビシッ!  
「痛ぅ!」  
鋭い痛みと衝撃にしりもちをつくなぎさ。  
痛みを受けた腕を見るとみみずばれになっている。  
恐る恐る顔を上げると、そこには鞭を片手に悠然と立つ  
ほのかの姿があった。  
「ほのか…じゃないでしょ?女王様、でしょ?」  
 
なぎさはまだ事態を飲み込めていなかった。  
「ほのか、どうしちゃったの?」  
ビシッ!  
「きゃうっ!」  
今度は半ズボンから惜しげも無く伸びた素足に鞭が飛ぶ。  
「奴隷の分際で私の名前を軽々しく呼んでいいと思ってるの!」  
「ど、れい…?」  
「そうよなぎさ、貴方可愛いから私の奴隷にしてあげるの」  
嬉しいでしょ?と空いた左手で今鞭で打たれたばかりの  
なぎさの足を大事そうに愛撫する。  
「何言ってるの、今日のほのか変だよ!」  
「このっ…メスが!」  
ビシッ、ビシッ!  
今度は二回続けて鞭が飛ぶ。  
「あうっ!」  
「何度言えばわかるの…ほんと物分り悪いのね」  
「う…まさかドツクゾーンの奴らに操られて…」  
「ふ、あははははははは!」  
ほのかの高笑いが拷問部屋いっぱいに響く。  
四方八方から反響してくるその笑い声になぎさは耳をおさえた。  
「なぎさ、私なぎさが思ってるほど良い子じゃないわ。  
買かぶり過ぎなのよ…これが本当の私」  
「嘘!」  
即座に否定する。  
そして。  
ビシッ!  
「はぁぁぁっ!」  
「奴隷の意見は許さないわ…」  
体中の痛みに悶え転げまわるなぎさを見下ろし、  
顔にかかる長い黒髪を片手で払いながらほのかは冷酷に告げた。  
 
「ううう…」  
なぎさが眼を開く。  
と、自分が裸で何かに縛りつけられている事に気付いた。  
「何時の間に…あ、あぅ!」  
そして股間に食いこんでくる感触…。  
「なぎさったら気絶しちゃうんだもん…  
寝てる間に、木馬さんに座って貰ったの」  
「え、え!?」  
気付けば手は木馬に固定され、足も縛られている。  
「な…にこ…れ…」  
「いい加減受け入れなさい、そうしちゃった方が楽よ?」  
「ほのか!」  
ほのかは何時の間にか着替えていた。  
その幼い体を包むのはぴちぴちとしたボンテージスーツ。  
細く華奢な足には赤いハイヒール。  
そしてその顔にはパピヨン…もといSMマスク。  
 
「また名前で呼ぶ…女王様って言ってるでしょ!」  
ビシ!ビシ!ビシ!  
「ぎゃあ、ぎゃああああっ!」  
「女王様と呼ぶまでやめないわよ!」  
「ぉぅぅ、っじょ、じょ…女王様ぁっ!!!」  
なぎさが女王様、と口にすると、やっと鞭が止まった。  
「やっとわかったのね、いい子…ご褒美をあげるわ」  
そう言ってほのかが取り出したのは赤い…  
「…ア、メだ…ま…?」  
「そうよ、私の自慢のアメ」  
それはほのかが以前科学室でなぎさの目の前で作って  
見せてくれた赤いアメだまだった。  
ほのかはそれを自分の口に含むと、  
身動きの取れないなぎさに近より深く口付ける。  
「!むぐぅ、ん、んっ…!」  
ほのかの舌がなぎさの唇から割って入り、  
アメを含ませる。  
「甘いでしょ…さぁ、噛みなさい!」  
「ひゃ、は、はい!」  
鞭をしならせるほのかの姿に、  
なぎさはゴリゴリとアメを噛み砕いた。  
「うふふ、いい返事ね」  
 
それからどれくらいたっただろう。  
10分だろうか、それとももう何時間もたっているのだろうか。  
時計の無いこの部屋では確認できない。  
「ほの…じょ、じょおぉしゃま…らんか、かららがぴくぴくしれきたぁ…」  
なぎさの体はほんのりピンクに色づき、ぴくぴく痙攣していた。  
ちなみに、なぎさの舌がまわらないのは薬の副作用だ。  
「薬がきいてきたのね」  
「くしゅり…?」  
潤んだ眼で問う。  
「そうよ、順応な奴隷になってもらう為の、ね…」  
ビシッ!  
「ひゃあああああ!?」  
ほのかの鞭に打たれた瞬間、なぎさの体の中を何かが駆け巡る。  
それは、なぎさ自信はまだ知覚できない…  
でも体は既に反応した、リビドー。  
「ほら、嬉しいでしょ?私にぶってもらえて」  
ビシッビシッビシッ…  
「ひゃあ、ひゃんっ、やめ、ほ、じょお…っ!」  
「やめて欲しいの?ほんとに?」  
ほのかは素直に鞭を振るう手を止めた。  
 
しかし。  
それからなぎさを襲ったのは耐えがたい虚しさ。  
「あ…れ…?っと…」  
そうなる事を知っていたように…事実わかってやっているのだろうけど、  
ほのかはなぎさのそんな様子を楽しそうに眺めている。  
なぎさは鞭を求め始めていた。  
自分で確かに拒絶した筈の鞭を。  
―やだ、変態みたい…でも…―  
「なぎさ、コ・レ…欲しい?」  
なぎさの前でぷらぷら鞭を蠢かせるほのか。  
そして…なぎさは欲望に屈した。  
「ほ、ほしぃ!くらしゃい、じょおぉしゃまぁ!」  
「うふふ、正直な子は好きよ…なぎさ…」  
優しく微笑み鞭を振り上げるほのか。  
それを歓喜の眼で見詰めるなぎさ。  
が。  
鞭はなかなか振り下ろされない。  
「じょおぉしゃま…?」  
「なぎさ、でもお願いするときはそれじゃ駄目なの」  
そう言ってほのかはクスッと笑ってみせる。  
「このやらしいメスにどうぞ貴女の鞭を下さい…って、  
ちゃんとおねだりしたらぶってあげるわ」  
なぎさは一瞬固まる。  
固まる、が。  
「この…」  
もう彼女に理性は残っていなかった。  
「このやらしぃめすにどぉぞあにゃたろむちをくらさぃ!」  
「アッハッハッハ!いいこねなぎさ、なぎさはこれから私だけの奴隷よ!  
わかったわね!わかったわねえええぇぇぇぇぇ!」  
そしてほのかは狂った様に笑いながらなぎさを鞭で打つのだった。  
 

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