「ん……っ」  
 美希の声がした。一緒にドーナツでも、と彼女を探していたせつなはその声の元へ歩み寄った。  
 
「あれ……サウラー?」  
 だが、そこにはもう一人いた。せつなの同僚であるサウラー。  
そして、彼に寄り添っている蒼い影。  
 
(って、なんでプリキュアになってるのかしら)  
 
 美希は何故かキュアベリーの出で立ちだった。  
サウラーの背中で隠れているせいか、こちらには気付かない。  
「ぅ……むぁ……んちゅっ……」  
「え……え?」  
 
 声を掛けようとした瞬間、身体が凍りついた。  
 
 ぴったりとくっついていたふたりの、唇が重なっていたから。  
深く、絡みついているのが分かる。濡れた水音が、耳元で響いた。  
 
「ぁふ……ん、もう、いっつも突然なんだから……っ」  
「ご無沙汰だったからつい、ね。嫌だった?」  
 長いキスが終わって、それでも身体はくっつけ合ったまま。  
美希の口ぶりは怒っているように見えたが、首に回された腕は離れる様子がない。  
「そうじゃなくて、誰かに見られたらどうするのよ」  
「え?君はそっちの方が興奮するんじゃない?」  
 元々上気していた美希の顔が、ますます赤く染まっていった。  
せつなは、まだまだ氷の世界から抜け出せず、目も逸らせない。  
 
「やぁ……ほ、ほんとに来たら、どうするのよぉ……っ」  
 サウラーの手が、腰から下へ降りて行く。太ももを撫でて、その内側へ滑り込んだ。  
「ひゃぅっ……あ、んっ……さう、らぁ……」  
 ひちゃひちゃ、とまた水の音がした。  
いつもより高い、甘い美希の声に、何か得体の知れないものが背中を駆け巡っていく。  
 
 ふたつの影が、ひとつに重なった。  
せつなは、心臓がどくりと大きな音を立てたのを感じた。  
周囲にも聞こえそうなほどに、そう思うとふたりに見つからないように足が勝手に走り出していた。  
 
「……やっと行ったか」  
「え?何?」  
「んーん。じゃ、折角だし続きは部屋でゆっくり。ね?」  
「……仕方ないわね……」  
 
 さて、ここで選択肢です。  
あなたはホホエミーナ。さあこれからどうしますか?  
 
1:サウラーのお部屋を監視するミーナ(キリッ)>>337-343  
2:せっちゃんを追いかけてドーナツ食べたいミナ〜>>344-352  
 
 
問い:何で美希たんにキュアベリーの格好させたん?  
 
「だってこの格好ってすごくいやらしいから」  
「……あたし、帰る」  
 回れ右を、青年の手が押し留めた。  
 
「まーまーそう言わずに」  
「あなたって頭良さそうに見えるのに馬鹿でしょ!」  
 『馬鹿じゃないの?』と疑問を投げるのではなく、断言した。  
貶されても、彼が彼女に向ける温い笑みは変わらない。  
 
「だってさぁ。その格好、お腹は出てるし足のラインも綺麗だし?堪らないねぇ」  
「何よそれ……サウラーのえっち。へんたい、ロリコーンっ」  
 サウラーの年齢設定は存在しないのでロリコンかどうかは分からない。  
それはさておき。  
 
 
338 名前:南美希 投稿日:2010/02/18(木) 23:57:55 ID:qOJgD01b 
「好きな子の全部が欲しいのって、そんなに我がままと思うのかい?」  
 美希にはたくさん触れた。勿論、満足なんてしてはいないが。  
今回は、その独占欲の現われ。  
ベリーの姿で痴態を演じる彼女が欲しい、実に下らない理由。  
「何よ、それ。ずるい……」  
 そう、彼はずるい。聡明な彼が、こんなしょうもない我がままをぶつけてくるのは自分だけ。  
だから、そんな優越感が満たされてしまう限り、願いを叶えてしまう。  
 
「ずるいのは君。こっち散々煽っといて自覚なし?冗談じゃないね」  
 くびれた腰を抱くと、少女は驚きながらも言い返す。  
「あお……っ、し、知らないわよそんなの」  
「だから、これから身をもって知ってもらうんだよ。理解できたかい?」  
 柔らかな笑顔。中性的、とよく言われているが、冗談じゃない。  
ぎらついた視線は、間違いなく男のそれで。  
そして、そこに迷うことなく捕まりに行ってる辺り、自分も間違いなく女なんだろう。  
それが少しだけ、悔しくて。美希は誤魔化すように本日二度めのキスをした。  
 
「僕だってがっつくつもりなんてなかったんだよ?  
もっと優しくしたいし、そうするべきだって思ってる」  
 初めて関係を持った時。  
痛くて痛くて、嬉しかったのに流れた涙は苦痛しか訴えることが出来なかった。  
そして、彼の方も余裕がなかった。あの後、随分と謝られたっけ。  
 
それから、何度かこうして抱き締め合って眠る夜が増えて。  
今まで知り得なかった感覚を教えられ、刻まれた。  
彼は、これも生来の気質だろうか。割と無体な要求を通してくることが多かった。  
せつなではないが、精いっぱい応えた。応えたつもりだ。  
 
「だーってのにさぁ。君は男心ってものをまるで分かってないんだから」  
……あのね。痛いの……嫌いじゃないの。ちょっと痛い方が、ずっとずっと覚えてられるから……  
 先日、日が明けてもまともに身体が動かなくて、ぐったりした彼女が彼に掛けた言葉だった。  
「ってコレだよ!?そんなに苛めれたいとは聞いてなかったよ!」  
「ちが……っ、そういう意味じゃないもん!」  
 顔を真っ赤にして否定する。正直、彼に苛められるのが本気で嫌かと言えば、そうでもなく。  
だから、具体的な反論が出てこない。  
「じゃあどういう意味?」  
「……し、知らない」  
「意地っ張り」  
 サウラーは少女の髪を掬った。  
「意地悪」  
 ベリーは彼の髪を引っ張った。  
 
「まぁ、心配しなくてもいいさ。あんまり苛めすぎたら僕が萎える。申し訳なさ過ぎて」  
「何それ……言ってること矛盾してない?」  
 
「してない。好きだから苛めたいし、泣かせたくなるけど、やっぱり笑顔が一番好きなんだよ」  
 唇をなぞる手は、本当に優しくて。  
嘘が欠片もないことが分かってしまうから、彼を受け入れてしまうのだ。  
 
「にしても。本当、絶対防衛ラインって感じだなぁ」  
 短いスカートの中にみっちり詰まったパニエへの感想だった。  
「これ、下着とかどうなってんの?」  
「さぁ……少なくとも上は、って何言わせんのよ!」  
 
 サウラーの関心は相変わらず防御壁の中だった。  
「……んっ」  
「あ、このへんかぁ」  
 滑り込ませた指に触れたのは、慣れ親しんだ少女のもの。  
ゆっくりと撫で、擦る。  
 
「ぁ。あっ、……んはぁ」  
 艶かしい溜息。肩口に掛かる吐息を受けながら、彼は笑う。  
「もどかしい?」  
「んっ……るさい、ばか」  
「可愛いねぇ」  
 
 もう内部構造は全て掌握済みだが、敢えて焦らす。  
 
「ふぅ……はぁんっ」  
「美希……」  
「ぁっ!あ、ぅあ……!」  
 指が、濡れて。少女の身体が一際大きく震えて、くたりと力が抜ける。  
 
 それでも手を休めず、彼女の身体を弄り続けた。  
再び与えられた刺激に、彼女もまた熱に囚われていく。  
喘ぎながら、彼に哀願の眼差しを送ってきた。  
 
「は……早く」  
「どうして欲しいの?」  
 分からないフリをすれば、少女は切なげに目を細める。  
「……う。あぁ……」  
「教えて?キュアベリー……?」  
 耳朶を軽く食みながら、囁く。  
負けず嫌いな瞳が、こちらをじっと睨む。  
 
「……って」  
「何?」  
「はやく……中に、ちょうだい……っ」  
 悔しげな色に、ご満悦のサウラーだった。  
 
「いいよ」  
 
「んぁあっ……ぁっ、ふあ」  
 待望の瞬間、少女は強い快楽に酔う。  
そのまま腰を動かすと、更に悦びが身体を駆け巡った。  
抑えていたつもりの声も、もう止まらない。  
 
「ああっ、さうらぁっ!あん、もっとぉっ」  
「欲張らなくっても逃がしゃしないよ、っと」  
 奥へ、腰を落とす。敢えて角度を変えて。  
「ひっ、なか、で擦れてぇ、あっ」  
 
「こっちがいいんだよね」  
 今度は大きく突き上げる。  
「ふあぁっ、あくぅ……っ」  
 
「ん……そんなに締め付けないでくれるかな」  
「知らないわよっ……っあ、んん!」  
 にちゃ、ぐちゅっ。じゅぶん。  
 濁った水音が、耳に響く。こんなにいやらしいものだなんて、知らなかった。  
 
「ひぁっ、あっ、ぁああんっ」  
 そして、乱れた声。自分が出したとは思えない。毎度のことだが。  
「恥ずかしがらないでもいいのに、ホンットそういうとこ変わらないね」  
 そう言いながら、優しいあなたの手。繋がって、ひとつに溶けていく。  
 
「ぁ……ぁ、ああっ、もう、だめぇ……」  
 急速に、身体の奥を駆け上がる感覚。熱に溶ける瞬間。  
 
「っ……み、き」  
「あ――あ、ぁひあああっ……」  
 今日も、彼と共に。  
 
「あなたにコスプレ趣味があったとはね……」  
「こすぷれ?」  
「こういう……セーラー服とか、制服着せて喜ぶひとのことよっ」  
「へぇ。それはいいことを聞いたなぁ」  
「……やらないわよ?」  
「くすくす、そう」  
 
 
 
 キス。してた。サウラーと美希……いや、キュアベリー。  
いやいや、『いつも』ってことは美希の時だってしてる?  
 
分からない。そもそも何であのふたりが?  
「……?」  
分からない。キスって、恋人同士がするものよね。あと、結婚式の誓い。  
どっちもラビリンスにはなかった。  
「お……ど……」  
分からない。随分サウラーは手馴れていたし、美希も喜んでいたようだった。  
え?あのふたりってつまり……結婚式ってどっちでするのかなあ。  
 
「……い。おい、イース?」  
「え?きゃっ」  
 耳の傍で聞こえた声に、顔を上げると、かなりの至近距離でウエスターの顔があった。  
 
「っきゃあぁっ!!」  
 全力で退くと、彼はがっくりと肩を落とした。  
「お、おいおい、何だよいきなり」  
 確かに、心配してくれたのに、飛び退かれてはへこむだろう。  
慌てて彼に近寄った。但しパーソナルスペースを侵害しない程度に。  
 
「あ……ご、ごめんなさい、えと、考え事してて。ごめんね?」  
「いや、そいつは驚かせてこっちこそ悪かったな。つか、何そんなに考え込んでたんだ?」  
 会話の流れから質問が零れた。だが、そこで詰まる。  
 
「え……」  
「?」  
 自分でも分からないことを考えていた。説明しずらい。  
だが、ふと気になることができた。  
 
「ねぇ、ウエスター。聞きたいこと、あるんだけど」  
「んー?」  
 どうした?と身を屈める彼。視線が近くなったことに、少しだけ気後れしてしまう。  
 
「き……き……えっと」  
「き?」  
「き、キス、ってしたこと、ある?」  
 具体的に口にするのが憚られて、途切れ途切れになったがなんとか聞けた。  
 
「は?」  
 きょとん。彼の表情をひとことで表現するならそんな感じだった。  
もう一回聞きなおしたほうがいいだろうか。  
「えと……その」  
「きす、……あぁ、キスか。そりゃまぁ」  
 
「あるの!?」  
 彼の答えに、せつなはずいっ、と身を乗り出して彼に詰め寄った。  
「うぉっ?いや、えっと、はい」  
 彼女の勢いに押されたのか、つい敬語で応えるウエスター。  
「……そう」  
 肯定の言葉に、せつなは先程までの勢いが急速に衰えていくのを感じた。  
『何故』そうなるのかは分からなかったが。  
 
想定内の返事だった筈だ。彼は外見は文句なしに女性受けするし、中身だって。  
頭はそりゃあちょっとあれだけど、優しくて男らしい。  
自分より年かさな分、経験だって豊富なんだろう。  
むしろ、否定されたりはぐらかされるよりずっと良かった筈。  
きちんと応えてくれたのだから。  
なのに、胸の奥に何かが圧し掛かってくる気がして、息が苦しい。  
 
「どうした、イース。なんでそんなしょげた顔してるんだ?」  
 顔を上げれば、自分よりよほど困った表情の彼がいた。  
「ん……どして、かな。分かんない」  
 首を傾げると、彼はにかっと笑ってせつなの頬を撫でた。  
「俺はイースが笑ってる方が好きだぞ!」  
 そうやって、見せた笑顔に、せつなは胸の重しがすぅっと消えていくのを感じた。  
代わりに、ずっとずっと柔らかで、暖かな何かが胸を満たしていく。  
それは、私の大切なたからもの。まだ、鍵の掛かっているけれど。  
 
「……私も。ウエスターが笑ってると、幸せ……ゲット、だよ」  
 頬に当てられた手に、自分の手を重ねて、笑う。  
 
「で?なんでまたそんなこと言い出したんだ?」  
「あ、それは……あ」  
 事実を話すのは、憚られた。故意ではないにしろ、覗きであるわけだし。  
ならばどうすべきか、と考慮しながら言葉を捜した。  
 
「えっと、あ!そうだ、漫画よ。ラブが貸してくれたの、そこにね」  
 これは事実だった。漫画だけではない。  
あちらで見た、テレビドラマや映画。その多くが恋愛を主軸に据えたものだった。  
とは言え、それは彼女にとってあくまでフィクションの世界の話。  
だから、先程の光景の意味は分かっても、まさか自分の周囲で為されるとは思わなかったのだ。  
 
「ふうん、あっちの娯楽は色々あるもんなぁ」  
「う、うん」  
 どうにか納得してくれたらしい。……だが、話はまだ終わらない。  
 
「あの。あのね。お願いが、あるんだけど」  
 少女には、ある関心が芽生えていたからだ。  
「ん?何だ、俺に出来ることなら何でもやってやるぞ」  
「き……キス、してみたいの……」  
 せつなの言葉に、青年は一瞬固まる。そして、彼女の肩を掴んで叫んだ。  
「いやいやおいおいちょっと待てー?落ち着け、落ち着くんだイースゥゥウ!!」  
「う、ウエスターこそ落ち着きなさいよ」  
 
 突然話し出したせいか、ぜいぜいと肩で息をするウエスターに、せつなは困ったように眉を顰めた。  
「や、だってよ、お前自分がさっき何言ったか分かってるか?」  
「だ、だって他の男の人なんてできないじゃない」  
 
 ――俺とならいいって問題じゃないだろ!!!と、怒鳴りたかった。  
が、少女に言えるわけもない。  
 
「な、何よ……そんなに私とキスするのが嫌なわけ?」  
 しょんぼりと眉を八の字にした彼女に、言える筈がないのだ  
「え。いや、そうじゃ」  
「だって、そんなに嫌がるっていうことは、そうなんでしょ」  
 
「だから、俺は……あー、俺はさぁ、お前を大事にしてぇだけなんだって」  
 こっぱずかしい言葉を誤魔化すように頭を掻く。  
そんな男心を分かってくれないせつなが、ウエスターの言葉を反芻する。  
「大事って、私が?」  
「おう」  
 
「今までさ、お前のこといっぱい傷付けてきただろ?身体も、心も」  
 過去は、どうしたって変えられない。後悔は柄じゃない。  
「だから、これからは笑ってる顔ばっかりにしてやりてぇんだよ。お前が、大切だからさ」  
「ありがとう、ウエスター。……でも、それでなんでキスが駄目になるの?」  
 ウエスターはこけそうになる身体を、何とか支えた。  
 
「あのなぁ。……もし、な?これからそのー、お前が誰か好きな男でも出来たら後悔することになる、  
って言ってんだよ」  
「すきな、ひと?」  
 
 恋人とか、伴侶だとか。そういった存在。  
今の彼女にはいないけれど、いつかそんな相手が隣に立ってくれれば良い。  
自分である必要はない、ひとが。  
 
「でも、ね。ウエスター」  
 しばらく無言で何かを考えていた少女は、静かに青年に語った。  
「ん?」  
「きっとね?……あなたより私を好きでいてくれるひとはいないと思うの」  
「む……そうか?」  
「ん、それでね、多分。私、あなたに恋してる……と、思う」  
 ふわり、少女の頬に桜色が走った。  
 
「は、はぁ!?」  
「だって、私。こんなにキスしたいって思うのはあなただけだもの」  
 
 そして、少女の小さな顔が、青年に近付いて、ふにっと唇に何かが重なった。  
 
 うっわ……やぁらけー。なんだこれ。え?つか今何してんの?  
イースさっき何言った?あ。心臓やばい、爆発すんじゃね?  
 
「ウエスター?どうしたの?」  
「どう、ってお前……今」  
 無垢な少女の声に、思わず唇に目が行った。  
 
「あ……しちゃった」  
「しちゃった、って……」  
 唇をなぞる指が、仕草が艶めいた風に見えて、ウエスターに熱が篭っていく。  
BON-NOUゲージは振り切れた。  
 
「あのな、そういうことしてっと」  
「……え?」  
 
 噛み付かれた。  
そう錯覚するような、キス。  
呼吸も出来ず、耳に響くのは唇から零れる水の音だけ。  
舌も、歯も、全部触られて、支配されるような感覚に、せつなは酔う。  
 
「襲われても、知らねーぞ」  
「……いいよ」  
「おい!」  
「ウエスターは、私が嫌がるようなこと、できないから」  
 そうして、彼女は爆弾をどんどん落としていく。  
 
「いや、あのな」  
「さっきのも、吃驚したけど。やじゃ、なかったよ」  
 

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