「ねえ、なんでこの間黙って引き下がっちゃったのよ?」  
「なんでって…帰れって言われたら帰るしかないでしょ」  
「馬っ鹿ねえあんた、せっかくあいつの方からキスしてきたのよ?すごいチャンスじゃない。  
 あのまま押し倒しちゃえば良かったのに」  
「押し倒っ…!そういうのはイヤなの!!一緒にコロッケ作って、食べ終わってから  
 チョコ渡して、わたしの気持ちをちゃんと伝えて、って計画立ててたんだから!」  
「今更なに普通の女の子ぶってんのよ。腕舐められただけで濡れてたクセに」  
「ぬ……っ!!やめてってばそういうこと言うの!」  
「それにしても、なんであいつ途中でやめちゃったのかしらね?」  
「……前にテレビで見たでしょ。ドラマで、浮気した女の人が恋人に酷くなじられてたアレ。  
 わたしだって同じようなことしてたんだもの、きっと、彼、そういう女はイヤなんじゃないかしら…」  
「だからあれはあんたの意思でしてたことじゃないでしょう?あんたが悪いわけじゃないわ」  
「だって…っ!き、聞かれたりしたことあるじゃないの!あのとき、あなただって動揺してたでしょう!?」  
「…うん、まあ、それは認めるわ。今思えば、聞かれたくなかったからあんなに怒ったのよね私」  
「それに、ひょっとしたら彼、自分の言ったこと忘れてるかも…」  
「可能性は高いわね。あいつほんとに馬鹿だから。  
 でもさ、そうやってウジウジ悩んでる間にあいつが他の女に取られちゃうかも知れないわよ?  
 思い出してよ、この間買い物してたときだって、店中の女の人があいつに見蕩れてたじゃない」  
「それは…イヤ…考えたくない…」  
「ねえ…私はもう頭の片隅で文句言ったり叫んだりすることしかできないのよ?  
 あいつのこと好きになりかけてたことに気づかないまま死んでしまったんだから。  
 だからあんたにはきちんと想いを遂げて欲しいのよ。わかってよ?」  
「うん…ごめんね、意気地がなくて」  
「わかってくれた?じゃあ学校終わったらすぐにアカルンであいつん家に直行ね!  
 ラブにはテキトーに言い繕っとけばいいでしょ?よーし、けってーい!!」  
「ちょちょちょっと待って!なんかあなたキャラ変わってない!?大いなる希望の力を感じるわよ?  
 それにいきなり行っても彼、家に居ないかもしれないじゃない!きっと忙しいだろうし…」  
「馬鹿ねぇ、部屋でいくらでも待ってればいいじゃない!そうだ、服脱いでベッドの中で待機してれば?  
 そのほうが手っ取り早いだろうし!それでも襲ってこなかったら諦めたら?」  
「ばかなこと言わないでよ!そんな…はしたないわ…」  
「じゃあこの先ずっと一人で慰め続ける?」  
「だ、か、ら!こんな日の高いうちにそういう話はしないでって…」  
「私知ってる…あんたはもうあいつ無しじゃいられない体だって。こんなに近くにいるのにどうして  
 触れてくれないのって思ってる。いっっつもあいつに抱かれること想像してるでしょ…?」  
「うう…やめて〜〜」  
「襲わせて既成事実作っちゃえばいいのよ…こういうのは早いもん勝ちよ。  
 善は急げ、よ。いい加減に覚悟決めちゃいなさいよ…?」  
「……全裸待機 で 既成事実……」  
 
 
(あああああ二人ともうるさいうるさいうるさい静かにしてっっ!!今テスト中だって言ってるでしょ!?  
 ただでさえ苦手な漢字の書き取り問題やってるところなんだから!!)  
(せつな、さっきからシャーペンの芯何回もブチブチ折ってるけどどうしたんだろ…?)  
 
 
※「二人」っていうのはもちろん  
 黒い羽と長い尻尾が装備された銀髪の彼女と  
 キュアエンジェル仕様の赤い衣装の彼女です。  
 
 

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