おまけ 西さんと美希たんの会話
前フリみたいなもの。南美希前提。
「よう青いの!」
「美希よ」
「え?こういう名前じゃなかったか」
「蒼乃美希。まあ惜しい……こともないわね」
苦笑する美希。
「そうか……。お、それ」
隼人の視線は、彼女のピックルンに向いていた。
「え?ブルンがどうかした?」
「イ、……せ、せつなに聞いたんだが」
「うん」
「せつなの赤い奴は空間移動が出来るんだよな」
「えぇ、そうね」
「そっちの青いのは何が出来るんだ?」
ブルンの能力説明後、隼人は何か思いついた顔で美希に話しかけた。
「あのさ」
「何?」
「イースの服も出せるのか?」
「……はーっ」
深い深いため息で質問は潰される。
「え?あの」
「ラビリンスの男の人って皆そうなの……?」
「皆って、あ、サウラーか」
隼人が呟いた名前に、少女はぴき、と顔をしかめた。
「そうよ。もう、こっちが頑張って戦ってたってのに何でそういう目で見れるのかしら」
「う、いや、その」
「そりゃ、まあ、いやってわけじゃないけど、でも……ちょっと、聞いてる!?」
「は、ハイィっ……あ」
「何よ、その顔。いい、私は瞬のそういうところが」
「大好き(はぁと)。……くらいは言って欲しいね」
涼しげな声。美希が振り向けば、やたらと爽やかで逆に胡散臭い笑顔の南瞬が立っていた。
「っ、え、い、何時からいたのよっ」
「やだな、最初からに決まってるじゃないか」
「なっ」
「あぁ、隼人君」
「な。なんだ?」
彼が自分をこう呼ぶ時、それは大概ろくでもないことを考えている時だ。
いや、ろくでもないこともないことを考えている場合のほうが少ないのだが。
「僕は美希とお話しないといけないんでね。空気読めよ」
「あ……あ。分かった」
「もがもがむーむーぅっ!!」
口を塞がれて何も言えない少女と、上機嫌の青年。
そして、普段吸うだけだったはずの空気を強制的に読まざるを得なくなった筋肉バカ。
少女は青年に引きずられ、出て行った。
ドーナツ野郎は先程の魅力的な思いつきに、ない脳味噌を捏ね繰り回す。
そこへ、ドアを開けて愛しの彼女は現れたのだった。
そして、夜が更けて朝が来る。
翌日、幸せそうな男どもと、疲労困憊の少女ふたりがいたとかいないとか。