明堂院いつき。
美しい男子の存在に、コブラージャは嫉妬に近い感情を抱き、いつきを付け狙った。
だが、その正体を知り、考えを改めた。
「――ああ、そうか。女の子なら、もっと手っ取り早く花を枯らす方法があったっけねぇ……」
蛇のような長い舌を唇に走らせ、彼はいつきの前に姿を現した。
突然目の前に出現した謎の男に、彼女は警戒心を持ち、身構えた。
「貴様、何者だ」
「へぇ、勇ましい。……これは散らしがいがありそうだ」
所詮、小娘の手習い程度の腕しかない。コブラージャはあっさりと少女を捕らえた。
「な、に。っきゃあぁっ?」
「やっぱり女の子だ。可憐な悲鳴だぁ」
「は、はな、せっ……」
「美しいね。この美しい牡丹を真っ黒に染めてあげよう」
「っ、やめろ、い、いやぁああッ!」
いつきの制服が毟り取られ、少年の鎧が引きちぎられる。
そして、少女が剥きだしにされてしまった。
「白い肌……、ぁあ、イイよ。やはり僕の見込んだ通りの美しさ……!」
「ひっ……」
長い、ざらついた舌が清廉な肌を汚す。
そのおぞましい感覚に、いつきは背筋を凍らせた。
「何、をする気だ……ッ」
必死にちぎれそうな理性をかき集め、少女は男を睨みつける。
だが、そんなささやかな勇気は彼にとって、美の対象外だった。
「フフフ、そうだ。付け入る隙を探さないとねぇ」
「やっ、やぁあ!」
コブラージャはいつきの足を開かせると、その奥を無遠慮な視線で刺し貫いた。
「いやっ……や、見るな……ッ」
ふっくらと盛り上がったなだらかな丘には、なにもなかった。
「毛がない……いいィ、やはり美に毛なんてものはいらないんだよ!」
「やめっ、言うな、言うなぁ……!」
男の言葉に、少女が首を振って拒絶しようとした。
だが彼は、もとより彼女の意思なぞ考えてはいない。
「さぁ、もっと見せてごらん……っ」
指が伸びて、その割れ目に当てられる。
「いやああっ、や、やぁあああ!」
く、と開かれた肉を覗き、男は満足気に嗤う。
「ほらぁ、ここ、この醜い肉の塊ッ。これが君の正体だよ!あっははははッ」
「っく、やめて……いや……」
弱弱しい声に、男は改めて心の花を見る。
花弁から瑞々しさが消えていたが、まだ枯れるには至らない。
「この美しい僕を手間取らせてくれるね……」
「ひくっ……ぅ、う……」
少女はあまりの屈辱に、頬を伝う涙を抑えることができない。
コブラージャはその涙に何の感慨も抱くことなく、次の作業に移った。
「え?……!?っ、や、なに……い、あぐぅああぁっ!!」
ぶつん、ぶつっ。少女の中で、肉の裂ける音がした。
その焼け付くような痛みに、いつきは悲鳴を上げる。
「ひぎ、あ、うぁあぁぁ……!」
「ふぅむ、痛みのせいで心への影響は中々浸透しないなぁ」
男は痛苦に震える少女の身体を、更に抉る。
「がっ、あ、おに、いさまぁ……たすけて……」
「助けェ?そーんなの来るわけないよ。ほぅら、君の心の花、イイ感じだよ!」
大好きな兄への声は、決して届かない。
だから、『私』は『僕』になることを選んだ。なのに――。
「いた、いたい、やだぁ、やだぁああっ」
もがき、助けを求めることしか出来ない。
そんな弱い存在になりたくなかったのに。
結局、私は私でしか、ない……。
美しい牡丹が、黒く染まり。その花を、散らした。