かつてイースであり東せつなである少女は、今のところ幸せゲッチュー状態である。  
ラビリンス復興は先こそ長いものの前途洋洋夢模様であり、  
彼女自身もバカでガテンなイケメンと紆余曲折ありながらもよろしくやっている。  
しかしそんなせつなにも、身近なところでどうにも気がかりなことがあった。  
ラビリンスを共に復興する仲間であるサウラーと、  
プリキュアとしての仲間であり大事な友人である蒼乃美希との仲である。  
デリートホールの一件から色々あって二人は付き合いを始めているようだが、  
せつなには心配なことがあった。  
 
(サウラーは、ちゃんと美希を大事にしているのかしら…)  
 
せつながそう思う理由は、あまり思い出したくないラビリンス時代にあった。  
男二人と女一人。性的欲求を手っ取り早く発散させる方法。  
ウエスターは、気持ち悪いくらい丁寧にイースを抱こうとした。  
当時はそんな彼の優しさに気づかず、いや気づきたくなかっただけだが、  
イースは彼を「グズ」「ノロマ、早く終わらせなさいよ」と罵倒し  
早ければそれはそれで  
「もうバテたの?立派なのは図体とぶら下げてるモノだけなのね」と罵った。  
黒歴史として葬り去りたい過去である。一応ウエスターに謝ってみたのだが  
「あれはあれで興奮したから気にするな!」と言われ複雑な気持ちになった。  
そして、そんなウエスターと対照的なのがサウラーであった。  
 
「抜いてくれればそれでいいよ」  
ふらりとイースの部屋にやってきて、サウラーが言った言葉がそれである。  
「それは楽でいいけど、ずいぶん淡白なのね」  
「動くと疲れる」  
「それなら自分の手でやればいいじゃない」  
「自分の手を動かすのがめんどくさい」  
ものぐさ、ここにきわまれり。  
しかもサウラーは、イースの顔や口の中に射精すると  
「どうも。君がしたくなった時はあのバカに頼むといい」とか言って  
とっとと部屋を出て行ってしまう。  
自分勝手なサウラーの行動にも、当時のイースは別に腹を立てたりはしなかった。  
性欲を処理をするだけの関係。  
やたらと時間をかけて何度もやりたがるウエスターの方が異常なのだと。  
後々ウエスターが「あの頃からお前のことが好きだった」と言ってくれた時は  
「あんなに罵られても好きだったなんて、趣味が特殊なのかしら」  
と嬉しいが不安になったものだ。  
…いや、とりあえず彼は自分のことを大事にしてくれるし  
自分も彼のことが嫌いではないのだから自分たちの関係に問題はないはずだ。  
 
せつなが心配なのは  
『美希に対しても、サウラーがそんな風な態度をとってはいないか』  
ということだ。  
ウエスターに抱かれる時、せつなはこの上もない幸せを感じている。  
自分が愛されているという実感。身体の奥底に与えられる快感。  
自分を見下ろして、幸せそうに笑う彼を見る喜び。  
…もしウエスターが、かつてのサウラーのように自分を扱ったら。  
想像するだけで怖くなる。  
漂白されてからサウラーもだいぶ物腰が柔らかくなったが、  
トゲのある言動やひきこもり体質は今も健在である。  
果たしてサウラーと美希が真っ当な関係を築いているのか。  
気になってしかたがなかった。  
時たま自分たちは四つ葉町を視察だの現状報告だのと理由をつけて訪れるが、  
幹部三人が全員留守にするのは好ましくないということで  
一人ずつ交代制で行くことになっている。  
故に、サウラーと美希がどんな時間を過ごしているのかせつなには知る術がない。  
せつなが時たま会う美希には不幸そうな様子は欠片もないが、  
本当のところはどうなのかはわからない。  
直接聞けば手っ取り早いのだろうが  
「サウラーは美希とどんなセックスしてるの?」  
などと聞く気概は、さすがのせつなにもなかった。  
 
「お帰りイース!カオルちゃんのドーナツは買ってきてくれたようだな!」  
視察という名目でラブたちと楽しい時間を過ごして帰ってきたせつなを  
ウエスターの暑苦しい笑顔が出迎えた。  
サウラーはというといつものようにソファーに座って本を読みながら  
「おかえり」と短く言うのみである。  
「ええ、カオルちゃん特製もっともっと元気が出るドーナツよ」  
「そうか!それは元気が出るな!今すぐ食べたいところだが、夕食後にするか」  
今にも踊りだしそうな様子でせつなの腕から紙袋を取り上げると  
「今日の夕食はカレーだ!あと30分くらいでできるぞ、はっはっは!」  
と笑いながらウエスターは台所へと去っていく。  
「珍しいわね、いつもならすぐ食べようっていうのに」  
「甘い物は間食、もしくはデザートという概念を学習したんじゃないの」  
学習する脳みそがあるとは驚きだね、と驚いた風もなく続けるサウラーの向かいに  
せつなも腰を下ろす。彼が読んでいるのは、カバーがかけられているぶ厚い本だ。  
「何を読んでいるの?」  
「わかる女性の医学」  
リアクションに困る本だった。  
「…何で読んでいるのか、聞いてもいいかしら」  
「美希とセックスする時の参考になるかなと思って」  
あまりにもストレートな物言いに、せつなはある種の感嘆さえ覚えた、気がする。  
サウラーはむっつりスケベかラッキースケベではないかと想像していたが、  
意外とオープンスケベだったのかもしれない。  
 
しかし、これはいい機会だ。サウラーがちゃんと美希を幸せにしているのか、  
そしてサウラーは美希といて幸せなのか。  
幸せのプリキュアとしては、これを機会にぜひ知っておきたいところである。  
「で、参考になりそうなの?」  
つとめて平静に聞いてみたせつなだったが  
「うん、外陰部をよく見ておくことは大事だね。イースもよく見た方がいい。  
ああ、自分だと中の方は見られないからウエスターにでも頼めば?」  
外陰部。中の方は見られないからウエスターにでも。  
その言葉の内容を反芻してみて、せつなの顔は思わず赤くなる。  
そんなせつなの方を見もせずに、サウラーは無表情にページをめくり続ける。  
「乳ガンのセルフチェックとか載ってるけど、イースはやり方知っているかい。  
さすがにまだ早いと思うけど、やり方くらいは知っていてもいいね」  
何だかとんでもない話になってきたものだ。  
しかし彼の言動からわかったことがある。  
「…美希のために、読んでるのね」  
すぐには、返答はなかった。  
「所詮は、僕の自己満足にすぎない気がする。美希が幸せだと僕が幸せになれる。  
つまりは僕の幸せのためだし」  
「…ウエスターと似たようなことを言うのね」  
「あいつと?」  
いかにも嫌そうに眉をしかめるサウラーを見て、せつなは笑った。  
 
(お前が幸せだと、俺も幸せだ)  
そう言った時のウエスターの顔を、せつなは一生忘れない。  
 
「…でも安心したわ」  
「何が」  
「だってあなた…昔はその…ああだったから」  
「ああ、美希の口に突っ込んでるだけかと心配してたのかい」  
せつなが言いにくいことをあっさりと口にするサウラーである。  
「いわゆる人間の三大欲求、知ってるよね」  
食欲、睡眠欲、そして性欲。  
「あの頃の僕は、食欲と睡眠欲が満たされていなかったと思う」  
「あんなに引きこもって紅茶やお菓子ばかり食べてたのに?」  
「引きこもりだからこそだよ。僕の中では、性欲よりは食欲や睡眠欲が勝っていた」  
他の欲が満たされてないから、性欲を満たすことに熱心じゃなかったんだろうね。  
そういうサウラーにせつなは少し納得しかけたが。  
「…じゃウエスターは食欲も睡眠欲も満たされてたのかしら」  
よく食べたしよく寝たしそして…よくイースであるせつなを求めてきた。  
「あいつはバカだから」  
同意するわ、とは口に出して言わないのが一応せつなの優しさである。  
「まあとにかく、僕にとって性欲処理はめんどくさいことだったんだよ」  
疲れるし。そう続けた後に、サウラーは「でも」と続けた。  
「美希と付き合うようになったら、食事が美味しくなった」  
「うん」  
「悪い夢を見ても、美希のことを思ってオナニーするとよく眠れたし」  
「…う、うん」  
「これが好きになるってことなんだなあって考えたら、美希を抱きたくなった」  
「……」  
「ヤるために精一杯がんばったよ」  
「そのフレーズやめて」  
ちょっとはいい話かと思ったが、ものすごい勢いで台無しになった。  
「性欲が満たされることが、こんなに幸せだなんて知らなかった」  
…まあ幸せなら、いいのかもしれない。  
 
「…ま、まあとにかく、美希とあなたがその…普通の、せ、せ…」  
「セックス?性交?君たちヤりまくってるのに、何今さら恥ずかしがってるの」  
「ヤりまくってません!」  
思わず大きな声になってしまい、慌てて口を押さえる。  
「こっちはたまにしかできないっていうのに、君たちときたら毎日毎日…」  
「毎日もしてないわよ!だいたいウエスターがいけないのよ」  
「そうだね、あのバカがいけないね」  
「そ、そうはっきり言われても…」  
「男と女の間に何かあったら、責任は全部男にあるって昔のエロい人が言ってた」  
何だかよくわからないが、男らしい台詞な気がしてしまうせつなであった。  
「…でも、僕は幸せだけど、美希が本当に幸せなのかはわからない」  
真顔でそう言うサウラーに、かつての冷酷な面影はなかった。  
「大丈夫、美希を思うあなたの気持ちはきっと伝わって…」  
「緊縛とか青姦とか放置プレイして視姦したいとかも伝わってるのかな。  
美希を見る時は大抵エロいこと考えているから常に視姦しているかも」  
…冷酷な面影はないが、外道な面影は倍増していた。  
「あ、あの、あまりひどいことはしないであげてほしいんだけど…」  
「アイマスクと猿轡して後ろからしたけど、これってひどい範疇に入る?」  
ひどいのだろうか…。とりあえず自分とウエスターに当てはめて想像してみた。  
アイマスクにボールギャグをして涙を流しているウエスターと、  
そんな彼を足蹴にして鞭を持つ自分。  
「た、楽しそうかも…じゃなくて!美希がいやがったらやめてあげなさいよ」  
「いやがる顔を見ると興奮するんだけどなあ」  
この男、どうしようもないSだ。  
 
とりあえずサウラーが幸せなことはわかったが、美希の方はどうなのか。  
サウラーの話を聞いていると、ひどい目にあっているように感じてしまう。  
サウラー×美希だから略してSM、美希もきっとマゾだから大丈夫!  
…などと考えてもいいものやら。  
「どうしたイース、美味いドーナツ食ってるのに辛気臭い顔をしてるぞ」  
夕食後、せつなとウエスターは二人でドーナツを食べている。  
サウラーは一つドーナツをとると、本を持って自室に引きこもっていった。  
「ううん、たいしたことじゃ…あるけど、私が気にしてもしかたないし」  
「そうか、細かいことはわからん!でも俺に相談したくなったらいつでもこい」  
はっはっは、と豪快に笑ってドーナツを食べるウエスターであった。  
「で、相談があるんだイース」  
「なに?」  
「抱かせてくれ!」  
…口の中にドーナツ入れたままで、何を言い出すのだろう、この男は。  
「元気が出るドーナツ食ったら元気になったぞ!」  
「いや、特製って言ってもカオルちゃんの真心入りなだけで別に」  
「嫌か」  
「そう聞かれると…っていきなり抱き上げない!胸触らないで!」  
「はっはっは、よーしやるぞ!」  
 
「…堪忍袋の緒は切れないけど、静かにやってくれ。むかつくから」  
「すまんなサウラー!はっはっは…ぐはっ」  
翌朝、さわやかに笑うウエスターにサウラーのローキックが炸裂しましたとさ。  
 

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