老人「どうかね。山に登ってみて」
つぼみ「やっぱり自然はいいなあと思います。花もいっぱいで」
老人「違うな」
つぼみ&えりか「え?」
老人「山で花や緑を見て、ほっとするのはいいことだが、君らは何も見ていないよ。君らは大バカだな」
えりか「……(な、何この人……)」
老人「人は森を食うんだからね」
つぼみ&えりか「人が森を食べる?」
老人「そう。例えばギリシャだ。今ははげ山ばかり目立つあの国にも、5000年前までは大きな森があったんだよ」
つぼみ&えりか「うそっ!?」
老人「そこに農耕が始まり、家畜の放牧が始まり、豊かになって、文明が栄えた。
森の木は薪として使われ、船の材料にするために切り出された。
そして木の芽は放牧した羊のエサになった。
そして……森は滅びた。森のなくなった土地の土は雨で流される。その土が湖を埋め、海を埋める。
裸になった土地が雨の降りにくい気候を作り出して、さらに乾燥する。乾燥すればますます緑は育たない。
結局、森と一緒にギリシャの繁栄も滅んだのさ」
つぼみ&えりか「……」
老人「日本はいろんな条件が重なって、森がたまたま残っているわけだ。
だから、逆に森のありがたさを知らない日本人が多い」
えりか「おっしゃることはわかるんですが……私たちはただ……」
つぼみ「私たちは、自然を守りたい、咲いている花を守りたいんです」
老人「自然を守るということは、君らが思っているほど甘っちょろいものじゃないよ」
つぼみ&えりか「!?」