太陽のもと、スポーツに興じる少年少女が駆けまわっている。その顔は明るく、激し  
い動作に応じて飛ぶ銀のしずくも清々しい。  
「――ヒッヒッヒッヒ」  
 しかし、人知れず高笑いを浮かべるのは全身を深緑の布で覆った老婆。箒にまたがっ  
て、上空から活きいきと汗を飛ばす姿を憎々しげに眺めている。  
「フン、くだらないだわさ」  
 さながら魔女とも呼べる格好と、特徴的な声。林檎でも手にすれば様になる風だが、  
彼女が手にしたのは真っ白なページばかりの本。  
「世界よ! 最悪の結末“バッドエンド”に染まるだわさ!」  
 高らかに叫ぶと、魔女は反対側に握った絵の具を飛び散らし、何も描かれていない見  
開きいっぱいに塗りたくる。  
「白紙の未来を黒く塗りつぶすだわさ!」  
 チューブからこぼれた黒が空を歪ませ、一帯を奇妙な空間に変えていく。そのうち、  
どこかから暗い光がやってきて本に集まりだす。  
「ヒーッヒッヒッヒッヒ!」  
 光の筋が一条、二条と増える様子に、老婆はまた大きく笑い声を上げた。  
 
 
 急に景色が落ち込んできた。  
 少女は目が疲れているのかと思ったが、眼前に広がる光景はそうでないことを理解さ  
せてくれる。  
 日光を取り入れていたはずの廊下が廃屋と化したようにくすんだ色になり、蜘蛛の巣  
があらゆる場所に現れている。  
「これって……!」  
 何より異常なのは、直前まで談笑や移動をしていた学生たちが、とつぜん跪いたこと  
だ。表情から活気が無くなり、ぶつぶつと後ろ向きな言葉を呟き始める。  
「世界がバッドエンドに染まっちゃうクル!」  
 鞄から顔だけを出した白いいきものが口にして、星空みゆきはハッと思い至った。こ  
の淀んだ空気の正体はバッドエンド――人々を絶望させて、あらゆる気力を無くしてい  
るのだ。  
 みゆきは耳がクルクルしている生き物と目を合わせて頷くと、階段へと急ぐ。  
 たったった、と暗い顔をしている生徒たちをかわしながら進んで、角に差し掛かった  
とき、  
「わぁっ!?」  
 頭から何かとぶつかり、みゆきは衝撃で尻餅をついてしまった。幸いにして鞄は無事  
で、咄嗟に隠れて難を逃れたようだ。  
「あ、あかねちゃん!」  
 激突した相手は既に立ち直っていた。差し出された手をとって、みゆきも立ち上がる。  
「みゆき、みんなは?」  
「それが、分からないのっ」  
 頭を押さえながらの応答になる。腰に橙色の服を巻きつけた日野あかねに出会えたこ  
とはみゆきにとって都合の良い事だったが、二人だけでは足りない。  
「と、とにかく下におりてみよか。どっかで会えるかもしれへん」  
「うんっ!」  
 言うなり、角でぶつかった関西弁の少女は踵を返してダッシュ。早くも差をつけられ  
たみゆきも慌てて、後頭部で細い尻尾を揺らす姿を追った。  
 
「ヒッヒッヒッヒッ! 人間共の発したバッドエナジーが、悪の皇帝ピエーロ様を蘇ら  
せていくだわさ!」  
 建物の窓というまどから現れる光は、全て魔女の持っている本に吸い込まれていく。  
順調にバッドエナジーが集まる様に高笑いをしたが、ふと視界に見覚えのある姿を捉え、  
箒から離れて地上へとダイブする。  
「んん、お前はプリキュア……」  
「ひゃ……っ!」  
 とつぜん降ってきた存在感たっぷりのローブ姿に、少女は思わず手持ちのスケッチブ  
ックを落としそうになった。  
 暗い緑色が一歩、二歩と近づいてくるのに合わせ、彼女も二歩、三歩と後ずさる。  
 だが、やがて壁を背にして追い詰められてしまう。随分と小さな背丈の老婆はヒッヒ  
ッヒと笑い声を上げた。  
 
「一人しかいないなら丁度いいだわさ!」  
 そう言って、魔女は次に赤い球体を空に掲げる。  
「出でよ! アカンベェ!」  
「きゃあっ!」  
 叫び声と同時に強い光が放たれ、少女は悲鳴と共に目を覆う。  
「……あ、あぁ……!」  
 次に仕切りを外した時、目の前には凶悪な形相をした化け物の姿があった。赤い鼻に  
太い唇、表に出たままの大きな舌と、顔つきは道化を思わせる。だが、何度か見た分か  
りやすいイメージとはかけ離れた、赤黒い体としましまの大股がちっとも釣り合わない。  
「アカァァアンベェェェェッ!!」  
 名前と同じ音で咆哮する。その胴体には身の回り品で表現できるものが無いほど大き  
な手指の他に、なにやらうねる物も見られた。  
 少女は脚が竦んでその場を動けない。弱虫だ泣き虫だと罵られたこともあるが、まさ  
にその通りの状態だった。  
「やよいーっ!」  
「ふぇ……っ?」  
 蛇に睨まれた蛙が、自分の名前を呼ばれて顔を上げた。遠くから走ってくるあかねの  
声を聞いて、黄瀬やよいは不思議と安心さえ覚えた。  
「あかねちゃん、みゆきちゃんっ!」  
「や、やよい、ちゃん……っ」  
 遅れてみゆき。速力が違うのに無理して追いかけたせいか、脚がガクガク言っている。  
友人の名を口にするのも、呼吸が阻んで定まらない。  
「……って、これっ!?」  
 大きな図体を見上げ、あかねは驚いた。壁に追い詰められたやよいの前に立ちはだか  
るその姿は、やはり恐ろしい。  
「カマンベールだっけ?」  
「アカンベェクル、あかね!」  
 と、追いついたみゆきの鞄から顔だけを出した小さな生き物、キャンディに正され、  
彼女は「そうそう、それそれ」と言い直した。  
「みんな、プリキュアに変身するクル!」  
「え、でも……」  
 促すキャンディに対し、少し離れたところでスケッチブックを手にした少女が不安そ  
うな顔を作る。  
「わたし達だけで大丈夫かな……?」  
「平気やって。それに、何とかできるんはウチらだけやで?」  
 欠けているメンバーの心配をしているところに、あかねは握り拳で答えた。この怪物  
と戦う事ができるのは自分たちだけ、ほったらかしにすれば周囲の人々から発生した諦  
めのエネルギーが集まっていくばかりだ。  
「やよいちゃん、やろう!」  
 息を整え、みゆきも加わった。多数決でもやよいの負けだが、彼女には仲間がいる。  
それに、一人より三人の方が心強いのは明らかだ。  
 画材を立てかけた少女はひとつ頷いて、学生服からコンパクトを取り出した。魔女と  
アカンベェを挟んで反対側にいるふたりも、それぞれ同じ形の道具を握る。  
「プリキュア・スマイルチャージ!」  
 三人の声が重なる。『ゴー、ゴー! レッツゴー!』の掛け声とともに桃、橙、檸檬  
の色が各々の身体を包み、きらきらの光、激しい炎、鋭い稲妻は別々の衣装を与える。  
 みゆきに与えられた名前は“キュアハッピー”。次いで、あかねの“キュアサニー”、や  
よいの“キュアピース”が舞い降りた。  
「うう、決め台詞……」  
「そこ、気にしてる場合と違うっ」  
 向こう側から聞こえた呟きに、サニーは裏手を振った。五人で口上を締めくくる決め  
台詞が仲間内にはあったが、あいにく二人欠けているので変身するだけにとどまる。  
 隣で戦闘態勢に入っていたハッピーが転ぶくらいだ、彼女も特に考えていなかったの  
がわかる。  
「……あ、今回の“ぴかりんじゃんけん”はチョキでした!」  
 と、ピースは“プリキュア”に変身する最中に繰り出したサインをアカンベェに突き付  
けた。  
 
「キャンディもチョキだから、おあいこクル!」  
「……チョキ、どこ?」  
 巨大な方は分からなそうに唸るが、足もとの小さいほうはしっかりと応じている。  
 しかし、サニーの目には何度見ても、耳が棒付き飴みたいになっている生き物の指が  
分かれているようには思えなかった。白い腕の先はチョキを作れるとは考えられない。  
「皆を呼んで来るクル!」  
「お願い、キャンディ!」  
 キュアピースとのやり取りを終えたキャンディは、みゆき達が来た道を跳ねて、遡っ  
ていく。三人より五人の方が戦えるのは事実だからだ。  
 ふたりの事を任せた桃色の少女は、バウンドする後姿を見送って向き直る。  
「サニー、行くよ!」  
「ああ、一丁やったろか!」  
 突っ込みに忙しかった橙の少女も、ハッピーに促されて構える。そびえる怪物は上に  
行くほど細く、色を気にしなければ飲料の容器にも捉えられた。  
 短い助走をつけ、跳び上がったハッピーとは別に、敵めがけてダッシュして距離を詰  
めるサニー。  
「アカンベェ、やってしまうだわさ!」  
「アッカン、ベェェッ!」  
 だが、力の源を悪用して生まれた怪物が唸ると同時に上空で短い悲鳴が聞こえ、方向  
転換を余儀なくされる。  
 サニーは受け身を取れずに落下してきた桃色の仲間を受け取り、元通りに立たせた。  
「なんだかぬるぬるするー!」  
 表面の感触はぬるぬる、付着した液体はべとべと、と表現するのが似合う。赤黒い体  
の色と同じ鞭のようなものが伸びかかって、ハッピーはそれを踏み台にするつもりが、  
表面がぬめっていてバランスを崩してしまったのだ。ブーツがぎらりと輝いていた。  
「……ピース!」  
 ハッピーが叫ぶ。  
 未だ、アカンベェは壁の方を向いている。何本か現れた別の鞭がピースの方まで伸び  
ていき、彼女は動きを封じられ振り回されていた。  
「んぁ、っくぅ……!」  
 鈍い声を上げ、否応なしにカウボーイが操るロープの気分を味わうピース。腕は逃れ  
たものの、胴体を締め付けられて抜け出すことができない。それに、拘束具がべとべと  
の液を纏っていて、引き剥がそうとすると滑る。  
「ん……んんっ!」  
 必死で身体に力を込めるが、プリキュアの超人的なパワーを以ってしても振りほどけ  
ず、ピースの額に汗が滲む。  
「わ、わっ、やっぱりぬるぬるするーっ!」  
 そのとき、大きな手での攻撃をかわし、再びジャンプしたハッピーが回転する鞭に飛  
びついた!  
「うわわわわわっ!?」  
 途端、視界が強烈にフラッシュする。そのまま頭から地面に落下するまで、ハッピー  
は何が起きたのか理解できなかった。  
 尻餅をついた黄色の少女が駆け寄ってきて謝罪して初めて、彼女の力が雷に関連する  
もので、繰り出した電撃に痺れたのだと解った。ともあれ、無事で何よりだ。  
「だ、大丈夫かいや?」  
「う、ん。へいきへいき……」  
 煤のような黒いものを顔に貼りつけて笑顔を作られると却って心配になってしまうが、  
サニーはそれ以上触れずにおいた。  
「おやおや、三人だけでは相手もできないのかい? ヒッヒッヒッヒ!」  
 確かマジョリーナと言ったか、怪物と比較するとえらく小さな魔女が笑い声を上げる。  
 とはいえ、先程から満足に攻撃もままならない。図体の大きさはともかく、自在に動  
く鞭が実に厄介で、サニーは歯噛みした。  
 また、平気と口にしたはずのハッピーがちっとも大丈夫そうではないのだ。プリキュ  
ア同士とはいえよほど強烈な電撃を食らわせたのか、背後でピースが肩を貸して、なん  
とか立ち上がっている。……ごめんなさいを五回程度では足りなかったのではないだろ  
うか。  
 
「さあ、遊びは終わりだわさ! アカンベェ、トドメだわさ!」  
「アカァァァァァン……――」  
 指示に応じて、アカンベェの体から生えていた赤黒い鞭が二本、三本と集まり、次第  
にその数は両手では利かなくなる。  
 三人のプリキュアは変化の過程をじっと眺めていたが、いよいよ危険だと思った時に  
はもう遅い。  
「――……ベェェッ!」  
 第三の腕とも呼べそうな代物が、ぶんと唸りを上げて落ちてきた。  
 しかし――主な原因は味方だが――負傷したハッピーを支えるピースも二人分の体重  
を飛び退かせることができず、サニーも咄嗟に彼女たちを突き飛ばすような行動はとれ  
なかった。  
 だんだんと影が濃くなっていき、ピースは桃色の少女と一緒に姿勢を崩す。  
 直前に二人で合わせた視線が合図。サニーは両足に力を込めて腕を伸ばした。  
「――くぅっ……!」  
 ズン、と衝撃。横目に映った二人の仲間は身を屈め、橙の少女が支える手の分だけ隙  
間が生まれる。  
「うわ、ホンマにぬるぬるするなぁ……」  
 二本の腕だけで持ち応えるが、表面がぬめって力のかけ方が分からなくなる。本当に  
支えているのか、接触している手の平から飲みこまれそうにも感じられた。  
「サニー!」  
「ん、うぅ……っ! は、早く、離れてほしいんやけど……!」  
 ピースに、同じくらい震え気味の声で返す橙の少女。  
 心配そうな目を向けるくらいなら、僅かにある空間から脱出してほしい。いずれ来る  
限界の巻き添えになってもらっては困る。  
 神経のほとんどを腕に向けていたサニーの言葉が届いたかは不明だが、黄色と桃色は  
ゆっくりと攻撃範囲から抜け出した。  
「ど、どうしたら……」  
 狼狽えるピースは、やはり加勢するべきという思考に従えずにいた。逃げろと言われ  
て来た手前、戻って行ってはどうしようもない。しかし、ひとりで戦っているキュアサ  
ニーを助けなければならないのに、何もできずに涙が浮かんでしまう。  
 肩を貸してくれた黄色の少女から離れ、電気ショックのダメージから回復したハッピ  
ーも、ただ見ているしかできなかった。いつかの様に敵を持ち上げて投げ飛ばすまで。  
「間に合ったか?」  
「キャンディ! マーチ、ビューティも!」  
 ふと、どこか遠くで聞き覚えのある声がして、振り向いた桃色の少女の胸にキャンデ  
ィが飛び込んできた。それに続いてきた“キュアマーチ”と“キュアビューティ”、二人の  
プリキュアが変身を終えた状態で合流する。  
「すみません、遅くなりました」  
 青色のビューティは律儀にも頭を下げるが、事態はそう悠長に構えている場合ではな  
い。  
「サニーが……!」  
 恐ろしいものを見たような声音になるピースと同じ方向を三人で見たとき、未だ巨大  
な腕と格闘するキュアサニーが映る。  
 だが、何かおかしい。ふつう持ち上げようと踏ん張っている時は爪先が地面について  
いるものだが、彼女は踵だけ触れて腰を引いているようにも見える。  
「く、離しぃや……!」  
 重さに潰されないのは、さすがプリキュアと言ったところだろうか。しかし、サニー  
は自分が押さえていた赤黒い腕の中に両手が埋まってしまった。指を動かしてもそこら  
じゅうが生温かい液体と肉の様な感触ばかりで、だんだん気持ちが悪くなる。  
「うぉわっ!?」  
 ついに抜け出せないまま体が持ち上がり、手の自由を奪われたまま高所に浮いてしま  
う。ピンク、イエロー、グリーン、ブルーの色とりどりな少女たちが遠目に並んでいた。  
「っ、このっ!」  
 ダッと駆けだしたのはキュアマーチ。緑色の髪を靡かせて空中に捕えられた仲間を取  
り戻そうとするが、その進路をアカンベェの鞭が阻む。  
「……滑るっ!?」  
 跳び上がって回避し、それさえ軽い身のこなしで足場にしようとしたものの、表面が  
ぬるりとした液体を纏っていたせいで安定しない。  
 
 先のハッピーと同様にバランスを崩して落下した彼女に迫る敵の数は増え、二、三方  
向から伸びかかってきた。  
 思わず目を瞑ったマーチの耳に、ガラスでも砕いたような冷たい音が届く。  
「大丈夫ですか、マーチ」  
「うん、助かった……」  
 切り揃えられたブルーの髪がいっぱいに映る。キュアビューティが持つ氷の力が鞭を  
凍らせ、彼女はそれを叩き割ったのだ。一緒に欠片が落ちて煌めく。  
 抱きかかえられたまま、すぐにマーチの目は上空へと戻る。サニーは脚をじたばたし  
て抵抗を試みている風だが、逆にいいように振り回されてしまっている。激しい回転に  
耐えようとする声が三百六十度、あらゆる方角へ飛んでいった。  
「ヒッヒッヒッヒ……プリキュアを捕まえる、またと無い事かもしれないだわさ」  
 深緑のローブをまとった魔女が口を開き、プリキュア達の注意はそちらへ向かう。  
「お前達の弱点さえわかれば、悲願も達成できるというものだわさ!」  
 皇帝ピエーロの復活を阻む戦士、プリキュア。その一人を捕獲した今、調査して対抗  
策を練る事だってできる。マジョリーナは再び笑い声を上げた。  
「そんなことっ!」  
 させるものか!と、マーチが自分の腰に取り付けられている“スマイルパクト”に両手  
を添え、力を込める。  
「プリキュア――」  
「マーチ、待って下さい」  
 アクセサリが輝きを増し、決まれば一撃でアカンベェを浄化できる技を繰り出そうと  
いうところで、それをビューティに止められてしまう。  
 もちろん、意見しようとした緑色の少女だったが、そちらも肩に手を乗せた青のプリ  
キュアが先制した。  
「わたくし達はアカンベェの方々にしか、いわゆる必殺技は使っていません。……です  
から、下手にサニーに当ててしまっては、どうなるか」  
「だ、だからってこのまま見過ごすわけには……!」  
 やり取りを見ていたハッピー、ピースの両人もマーチの意見に賛成しつつ、ビューテ  
ィの話に納得する。お互いに技を撃ち合った事がないからこそ、その威力が分からない。  
捕らわれたキュアサニーを救出したいが、その不安要素ひとつのせいで実行に移せない  
のだ。  
「さ、今回はこの辺にしておくかねぇ。二兎を追うものは何とやらって言うしねぇ」  
 箒にまたがり、橙の少女と同じ高さまで上昇するマジョリーナ。巨大な第三の腕を顔  
の前に垂らしたままのアカンベェは、無暗に攻撃を繰り出しては仲間にまで危害が及ん  
でしまう。  
「に、逃げるのかっ!? ……サニーッ!」  
「あかねちゃんっ!」  
 口々に叫ぶマーチ、そして一瞬だけ首を傾げたハッピー。しかし、それに答える声は  
なく、後ろを向いた状態では表情だって窺えない。  
 続いて、ヒッヒッヒッヒッ!という魔女の高笑いと共に召喚された怪物ごと姿の全て  
が消え去った。  
 空は晴れ、至る所にあった蜘蛛の巣も無くなったというのに、残ったプリキュア四人  
の表情は曇っていた。  
 
 
「……あれ」  
 一方、アカンベェに手を引きずられたまま一緒になってしまったキュアサニーは、自  
分がやたらと熱い空間にいることに気付く。  
「この熱気は、やっぱりウチの情熱がそうしてるん? そうに違いない! ……って、  
ぜったい違うやろ!」  
 周囲を見回してみるが、どこもかしこも肉の様な色をしていて、薄暗い。先程まで四  
人の仲間といた場所とはまるで違った光景に動揺する。ノリツッコミでも気分は盛り上  
がらない。  
「え? ……え!? ここ、どこ!?」  
 きょろきょろしながら、橙色の少女は忙しい。  
「それより何? 手がべたべたして気持ち悪いんやけど!」  
 しかし、自分の声ばかりが響き渡って、何か空しい。誰かが説明をつけてくれるわけ  
でもなく、サニーは自分の足で進む他なかった。  
 
 一歩ごとに、鈍い粘着音が靴から発される。しかも、足場から壁、天井までが生き物  
の様に動いている気さえした。  
「……も、もしかして……喰われた?」  
 ぞく、と背筋に寒気が走る。だが、考えてみるとアカンベェの口は道化の様な太い唇  
のほうだ。巨大な赤黒い腕を落として、それを受け止めただけだから確証は無い。一応、  
両手は例の液体をたっぷり纏っているが無事で、全ての指がきちんと動かせた。  
 ただ、いつの間にかこの状態だったせいで出口はどこか分からない。前に歩んでいる  
はずが、脱出できるかも不明なのだ。  
「……え」  
 空気の切れる音がして、橙の少女はその場から飛びのいた。次いで足元の液体がはね、  
ぴちゃりと不気味な雰囲気を作る。  
「このっ!」  
 前後左右、様々な方向から気配を感じ、サニーは手足でそれらを捌く。視界はあまり  
よくないが、プリキュアの力なのか不思議と敵がやってくる感覚だけは鮮明だ。  
 打撃を食らわせる度、また別の方から飛んできた。ブーツを履いている足はともかく  
拳はむき出しで、一発ごとに液体を塗られて湿ってくる。  
「もう、キリないやん!」  
 ぺしょ、と水を含んだスポンジでも叩いているような音だ。いくつも迎え撃ってはま  
た現れて、完全に足を止められたサニーは息も荒く毒づいた。  
 どこか悪い感じの風を浴び、額に滲んだ汗を拭う間もない。絶えず動き回っている事  
で消耗し、やがて無数に来る敵を捌ききれなくなってしまう。  
「うわっ!?」  
 足に何かが巻きつき、橙の少女はすっ転ぶ。ぬるついた液体に顔面で触れるのは避け  
たが、疲弊しきった身体では起き上がる事すらままならなかった。  
「き、気持ち悪っ! ちょっと、これ何なん!? 何なんこれっ!?」  
 二度口にした所で状況は変わらない。  
 腕と足首を締め付けられ、サニーは抜け出そうとしてできなかった。生温かくてぬる  
ぬるとして、自分が戦ったアカンベェの体から生えていた鞭とそっくり。そして、つい  
先ほども叩き落とした敵そのもの。  
「は、離さんかいっ! こんな、格好……!」  
 両方の膝と肘を床につけ、四つん這いの状態だ。こんな姿勢で固定され、付近には誰  
もいないが恥ずかしい事この上ない。  
「う、いっ……!?」  
 首筋を両側から舐め上げられて、思わず肩を竦ませる橙色の少女。べったりと付着し  
た液体が垂れていき、こそばゆさよりも気持ち悪さの方が先に現れる。  
 上下する床から、壁から、天井から、ざわざわとした気配を感じる。それは殺気では  
無いものの、具体的に何かは分かりかねた。  
「っ……ちょ、っと……!」  
 肌を晒している二の腕、太腿と巻きつくものが増え、這いまわる様に動いて粘液を塗  
り付けられる。  
 ゴムとも違った感触と温度、後方をほとんど確認できない薄暗さもあり、捕らわれた  
プリキュアは抵抗する。  
「は、な……せぇ……っ!」  
 手首までを覆っている白い腕抜きと膝上の丈を誇るブーツの内側にも、それは入り込  
む。表面がぬるついているおかげで侵入も容易で、内側を触られることが嫌悪を煽った。  
「く、ぁっ!?」  
 上半身は腋にも攻撃が及んだ。生温いものを擦りつけられ、しかし笑い声を上げられ  
ないキュアサニー。びちゅ、びちゅ、と纏わりつくような音が耳に届いて、放せ、とだ  
けは何度も口から出ていく。  
「い、や……っ、あかん、て……!」  
 さらに、腕や脚を這った時と同様、液体を纏った細い触手が服の中へと進んでいく。  
体を捻る事すら叶わない少女は、侵入を許した上に胸元を擦られて妙な声になった。  
「んぁっ! く……うぅっ」  
 自分の声さえ屈辱的だった。両方の腋から服を持ち上げて入り込んだ肉蔓が、胸や乳  
首を容赦なく擦りあげる。それだけで体が痺れて、握った拳が開いてしまう。  
 ブーツの中も膝裏、脹脛とゆっくり下降し、やがて足指の間にまで液体を塗るまでに  
なる。四肢を封じられては脱ぐことだってできず、されるがまま両足にもべたべたした  
ものが付着する。  
 
「やめ……う、あぁっ」  
 体にフィットした衣装も、少し隙間ができれば触手たちの入り口を作ってしまう。成  
長期の胸が不自然に大きくなるが、その実態は肉の鞭が蠢くばかり。それら全てが粘液  
を纏っているから、ちょっと動くだけで気味の悪い音をぐちゃぐちゃ響かせる。橙の少  
女は聴覚までも攻撃され、せめて声だけは出すまいと口をつぐむ。  
「う、ん……! くっ……!」  
 しかし、いくつもの蔓が這いずり、必然的に挟まれる形になったニップルからは電撃  
めいたものが寄越される。この歳になって他人に触られた事などないゆえ、得体の知れ  
ないものが絡みついて変な声を上げるなど、認めたくはなかった。  
「あぁ……っ、んっ!? んぐ、ぐうぅっ!?」  
 重みを増して許容を超えたプリキュアの衣装が破ける。胸に飾ったリボンごと、いく  
つかの触手が床に叩きつけられたのも聞こえたが、既にサニーの体に巻きついて責めの  
手は緩まない。  
 そればかりか前よりも胸に殺到するようになり、水音は一層強いものへ変わっていく。  
「ぐ、ふっ、んくっ、うぅ……っ!」  
 さらに、無防備になった上半身からの刺激に口を開いた瞬間、少女はそこを塞がれて  
しまう。まるで見計らったようなタイミングで数本が口腔へ飛び込み、発声どころか呼  
吸まで困難にさせた。  
 勝手に前後して舌や歯と擦り合う触手。息苦しさに呻いたサニーの目から涙が漏れる。  
「うぅんっ、く、ふぅ、っ!」  
 唾液と粘液が混じり合ったものはだんだんと口に溜まり、吐き出そうにも触手が邪魔  
して、飲みこまざるを得なくなる。  
「んっ、んっ! ……んぐぅっ!」  
 橙の少女からは呻くような声ばかりが発される。確かに口を閉じて音を出すまいとし  
ていたが、息苦しいのとは話が別だ。  
 そのうえ、すぐ近くで継続している責め方も変化を見せる。ぬるぬると擦られていた  
乳首がいくつかの触手に捕まり、摘ままれてぴりりと刺激を受けた。  
「うぐ、うっ……うんっ、んむっ! ……ううぅっ!?」  
 二本も三本も狭い入口を塞いでいては、特定のひとつに噛み付いたところで意味をな  
さない。口そのものが拡張されるのではないか、そんなことを考えるようにもなる少女。  
 くちゃ、くちゃ、と激しい音を立てて暴れ始め、いよいよ訳が分からなくなる。  
「ん……ぐ、うぅ……」  
 サニーの口腔で束になっていた触手が震え、舌と歯の空間に何かを吐きだした。咥え  
たままで処理できるはずもなく、苦しさから解放されるため、否応なしに首を持ち上げ  
て飲みこむしかなかった。しかし、どろりとして熱いうえにゼリーのような感触を持っ  
ているそれを食道に通すのは時間がかかる。  
 だが、お構いなしに口の中で唾液とかき混ぜ始める肉蔓の動きに逆らえず、橙の少女  
は無理矢理に喉を鳴らす。  
「かはっ……あぁ……」  
 赤黒い触手がもともと纏っていた液体は僅かながらに甘みを持っていたが、今のこれ  
は純粋に苦い。しかも飲み口が悪いだけでなく、徹底的に臭い。飲み込んだ半固形のも  
のが体内の細道を下っていくのが感じられて、サニーは口腔に残っていた残滓をぺっぺ  
っと吐きだした。  
「……うんんっ!」  
 周囲の変化は少女に息つく暇を与えない。  
 両脚を包んでいるブーツも、両手を飾っている白い筒も、同じような液体にたっぷり  
と内部を汚されていたのだ。その粘りっぷりときたら、わずかな隙間を肌が動くだけで、  
ぶきゅ、ぶきゅ、と籠った音を聞かせてくれる。体の外側もこんなものに浸されて、立  
ち上る臭気がプリキュアを呻かせる。  
「んあぁっ!」  
 それまで、ずっと弄られていたニップルが吸引される。どこかにそういう器官がある  
のか、それこそ触手の一つひとつがイキモノであるのか、熱に蒸された頭では思考しよ  
うがない。  
「あ、あっ……んんっ、んあっ!」  
 きゅぽ、きゅぽ、と小気味のいい音をさせ、吸って引き伸ばされた乳首がまた喰いつ  
かれ、二箇所で違う間隔なので対応に困る。  
 もう一杯まで蓄えているのに、尚も腕抜きと膝丈の靴に入り込んだ触手は、その一番  
奥でどぷりと液体を放出していく。  
 
 同じものが直上から雨の様に降ってきては、キュアサニーの背中やスカート、そして  
髪までも汚す。  
 一度でも汚れ物と認識した以上、それが体中に浴びせかけられていい気はしない。し  
かし、彼女は胸に吸い付かれて送られる刺激によって抵抗する力を削がれ、あられもな  
い声を上げてしまう。  
「くぁ、あっ、んっ!」  
 表面の甘い液体か、それとも吐き出されたゼリー状のものか、あるいはこの臭いか…  
…サニーの反応は何かを境にして随分と変わってしまっている。体が熱いのは力が溢れ  
てくるからではなく、未知の刺激をどうにもできない羞恥などが大部分を占めていた。  
 実際、なぜこんな声が出るのかは本人の方が戸惑っている状態で、それでも抑えきれ  
ずに飛ばしていた。  
「ぅん、く……っ! あっ!」  
 吸引し続けて乾いてきた乳首を潤すように、べたべたの液体を滲ませた肉の蔓が這い  
まわる。少しばかりの痛みはすぐに失せ、多方向から擦りつけられて転がり、少女に電  
撃を送った。  
「ひ……あ、あぁっ……!」  
 背中、内腿、体のあらゆる場所を触られ、単純な音ばかりが出ていくサニー。彼女に  
言葉を作っている余裕はなく、放せだのやめろだのといった抵抗のフレーズは二、三歩  
手前でかき消されてしまう。  
「……うあ、ぁ」  
 衣装越しに伝わる熱と臭いに、少女の思考は曖昧になった。とぼけた様な声になり、  
飛び込んできた触手の一つを咥えこむ。  
「う、うむっ……ううっ」  
 とはいえ一方的に口の中をかき回され、ちっとも応じることができない。ぐぷ、ぐぷ、  
と音が立つたび、唇の端に小さな泡が出来ては消える。  
「うぐっ、ぐっ……ぐうぅっ!」  
 手足は抗えず、四つん這いのままどうにもなれずにサニーは嗚咽を漏らした。忍び込  
んだのは涙で汗で吐き出された液体で、とんでもない味を舌で感じ取る。  
 顔に粘り気の強い液を浴びせられても、それを拭う手段さえなかった。様々に責めら  
れるニップルが寄越す刺激に上半身が震え、付近にぼたぼたとこぼれ落ちる。  
「ふ、あ……っ、は……!」  
 そこは、とも音にならずに消える。次々と生える触手は無防備すぎるスカートの内側、  
衣装のメインとも言える橙色とは違う、赤のスパッツに群がり、尻といわず恥部といわ  
ず、舐る様に動き回る。  
 ここでも、プリキュアの少女に胸とは違った刺激を寄越して喘がせた。貼り付いた様  
になって激しい動きを邪魔しない着衣が、この場面で裏目に出てしまう。  
「ひ……っ! あ、あっ……あぁっ!」  
 塗られ、かけられた数種類の液が滲みこんだ布は、もはや防具と呼ぶには相応しくな  
い。生温かい肉が這いずる様子を目にしなくとも伝えてくれて、下着の内側まで透かし  
ているようだ。  
「く、あ……! っああ、はぁっ……」  
 上半身をそうしたように、ぴったりのスパッツに隙間を作った触手が次々と地肌を触  
れてくる。外側の抵抗に比べれば中のショーツなど可愛いもので、異なった感触に悲鳴  
をあげる。  
 その赤が内側から裂けるのに時間はかからなかった。左右の分かれ目から五本、六本  
と入った触手が逆の方を目指して反り返り、少女の恥部を露わにする。  
 下着ごと失い、サニーは下腹が冷える感覚に陥った。どこもかしこも熱っぽいのに不  
思議な話で、そこが特別あついことを理解させた。  
「……やぁっ! あっ、あっ! ひっ、ぃ……っ!」  
 そこへ、触手が吸い付いた。汁でも啜る様に、ずじゅ、ずじゅ、と決まったテンポで  
音を立てては離れ、これまで以上の刺激に橙の少女は高い声で鳴く。  
 いつまでも同じ音色だったのが気がかりで、しかし肉の蔓が持っていた液体のせいに  
しておく。  
 一緒に乳首も吸引攻撃にさらされ、合わせて三点ほどを好き放題されるキュアサニー。  
腰が逃げるように引けて、もともと四つん這いで持ち上がっていた臀部がさらに高くな  
る。  
「――っ!?」  
 だが、いくつもある触手が追い付かない筈がない。それは、少女のぼんやりとしてい  
た意識を現実に引き戻すのには十分すぎた。  
 
「ま、って……! それ、っ……!」  
 ニップルをどうされようが関係なかった。珍しく意思のある言葉を口にしたサニーは、  
自身の女子たる部分に何かが侵入しようとしているのを感じたのだ。  
 とはいえ、嫌だやめてというのを理解し聞き入れてくれるはずもなく、二本、三本の  
蔓が合わさったものが少女の恥部をつつく。  
「……うぐっ、うぅ……っ……!」  
 プリキュアも、元を正せば何の変哲もない女の子だ。怪物と戦える力を持っていたっ  
て、得体の知れないものと対峙するのは恐ろしいし、何よりこの状況では伝説の戦士が  
どうだという場合ではない。姿こそキュアサニーのものでも中身は日野あかねで、純粋  
に女子としての恐怖に体が冷え切っている。  
「うあ、あぁ、あっ、ぐぅ……っ!」  
 他の部分からの刺激を一切拒んで、感覚の全てが肉の洞を探ろうとする一カ所にだけ  
集まる。  
 体を内側から押し広げられ、嫌な音が耳に響いては橙色の少女を呻かせる。尻を揺ら  
して抵抗したが、その方が却って痛みが強く、高かった声は低く鈍くなり、ひゅうひゅ  
うと呼吸しても気は紛れない。  
 焦らす風なのか、いやに遅い動きの触手が奏でる音は軋むような裂けるようなで、し  
かし一思いにやってほしいとは言えない。一度は脱力した手足の指先が、粘液を掴んで  
堪えるように丸まっていく。  
「――――っ!!」  
 また衣服が破けたのか、その方がいいような破裂音が体内でして、少女の体に衝撃が  
襲い掛かる。本当に痛いと思った時は声が出ないもので、全身に鞭打たれた様なダメー  
ジを逃がした口から大きく息を吸い込んで酸素を補う。  
 肉蔓が道を開いた瞬間に正面を向いたサニーの視界は、この空間そのものを薄暗いと  
認識していたのにやたら明るかった。  
「ぐっ、うっ! ……う、ごっ……くな……ぁっ!」  
 触手が尚も奥へと進む感触があり、直前の痛みに震える声で何度も呟く。胸元で音を  
立てるものなど構わず、そちらの情報ばかりが割り込んでくる。  
「かっ……! う、あっ! く……っ」  
 拒絶の意思に従う訳もない。少女の言葉は肉の蔓が洞穴を引き返し始めた事で、鋭い  
ものが走って中断された。  
 これもまた動きは遅く、いつになったら終わるのかと、サニーはそれしか考えられず  
にいた。じわじわと頭を締め付けられるような感覚がたまらなく苦しい。  
「いっ――!?」  
 いっそ気絶できればどんなに楽だったろう。ガンと殴られたような衝撃が下腹から直  
線状に抜け、内臓が持ち上げられた風にも感じた。  
 一度は抜け出た赤黒いものが、勢いをつけて戻ってきたのだ。開けられたばかりの穴  
はすぐに縮んでしまって、いきなり広げられたせいで激痛がやってくる。  
 整えていた息もいっしゅん詰まった。吸うのか吐くのか不明になる程、その衝撃は強  
い。  
「い、たっ……いたいっ……! っ、い……っ!」  
 歪んだ視界は相変わらず白一色で、サニーは涙まじりにショックを表現するほかなか  
った。体に何かが入っては抜かれ、その繰り返しはあまりにも辛いものだった。  
「ふぅぅ、っ! う、ん……ぐぅっ……!」  
 抵抗も空しくなると、そっちのけにしていた感覚が現れてきた。胸に纏わりついて乳  
首を擦るもの、背筋を這いまわるもの、太腿をなぞるもの。脚が浸されている液体の存  
在も明らかになり、強烈なフラッシュに見舞われた視界も元通り、暗くなっていく。  
「や、あっ! いっ、たいっ……! あかんてっ、うごいたら……っ」  
 寒気と一緒に来る弱電流の方が優しかった。次第に声も戻って、口から意思を吐ける  
ようになる。  
「あ、んぁっ、っ……!」  
 それでも幾分かは和らいだ気がして、しかし触手達の責めは容赦がない。二つある胸  
の突起を粘液と一緒に擦り付け、束になって恥部に出入りする傍で太腿をくすぐる。冷  
めきったサニーの身体も熱を覚え、吐息がだんだん短くなっていく。  
「うぁっ、あっ、は……っ、はぁっ!」  
 ぐじゅ、ぐじゅ、と体中から聞こえる鈍い音とは対照的に、少女の口からは甘い響き  
が生まれる。おぞましい肉の蔓に肌というはだを触られ、痛みでしかなかった抽送さえ  
高い声で彼女を喘がせる要因に変わる。  
 
「んく、は、ぁ……っ!」  
 下腹部を内側から責め立てるものは、もともと数本の蔓からできているものだ。地な  
らしを終えた後は各々が異なるタイミングで動き合い、橙色の少女は絶え間なく最奥を  
突かれて悶える。  
 その付近、破れたスパッツを残している腿にも粘液をぬったくる触手がいて、半固形  
の物体が詰め込まれたブーツにも入り込んでいる。  
「あっ、あ、あはっ……んん、うぅっ……!」  
 首筋や胸にも生温かいものが這いずっている。破けた衣装は成長期のふくらみをさら  
して、そこだけ床が盛り上がったように隙間なく埋め尽くされ、乳首が転がっていく。  
「あうっ、うっ! は、んっ、あぁっ!」  
 それら全ての動きが速くなっては堪らない。初めて性感を味わったプリキュアの少女  
は抗う術など知らず、四肢を封じられて一方的に攻撃される。  
 サニーの顔は痛みに歪むことなく、熱のこもった息を吐くばかり。浴びせられた粘り  
の強い液は汗が薄めて頬を伝い、口元で涎と一緒になって落ちる。  
「うああぁっ――!?」  
 解れていた触手がひとまとめになって体の最奥を叩き、またも強い衝撃がサニーを襲  
った。そのついで、さらに奥へと何かが流れるような感覚になり、同時に肉の道から遠  
ざかっていく時の刺激に身を震わせた。  
 髪や背中にも熱い液体が飛ぶ。忘れかけていた臭いが鼻を突き、顔を背けようにも額  
から垂れてくる。  
「……あ、っ」  
 ずるる、と少女を犯していた赤黒い肉が抜け落ち、縮もうとする穴から濁った白の液  
が引きずられる。あわせてゼリー状のものも吐き出され、真下に溜まった。  
「っ……ここ、アカンベェの、っ、中やん……」  
 一時はげしく責め立てた胸元の肉塊は穏やかで、むしろサニーは脱力のあまりそれら  
を強く押してしまっている。ねっとりした動きは言葉を紡ぐ口に横槍を入れるが、直前  
の出来事に比べれば大したことない。  
「ん……っ、もう、会えへんのかな……」  
 床を掴むと、べとべとした汁が拳に付着し、その感触は学校での戦いを思い出させた。  
黄色、緑色、青色。そして桃色、四人のプリキュアがぼんやりと浮かぶ。  
「みゆき……みんな……」  
 触手に体をどうこうされた嫌悪ではなく、悲しみで涙の筋ができる。  
 肉の牢は誰が作ったか、薄暗いここはどこなのか、判っていても伝える術がプリキュ  
アにはなかった。それが、尚のこと橙色の少女を落胆させる。  
「……んぅ、あっ、また……!」  
 挿入感。ずぷ、ずぷ、と細っこいものがサニーの肉壺に差し込まれ、深く進んでいく。  
「も、もう…………かんにんして……っ」  
 消え入るような声で懇願したが、その口は数本の蔓が塞いでしまった。  
 再び体内での往復を開始した触手に翻弄され、キュアサニーは下腹に入った数がひと  
つ増えていること、そして、自身から漆黒の光が上り始めていたことに気付く様子はな  
かった。  
 

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