「もうなぎさのがさつさにも困ったメポ、この間も寝ながら…」
「いや咲のいい加減さも相当な物ラピ、昨日も…」
「のぞみはまた料理を失敗したココ、でも涙目で謝るのぞみは可愛かったココ」
「何言ってるロプ」
妖精たちの遠慮の無い会話と、笑い声とは絶える気配が無い。
パルミエ王国での会議が終わった夜、「男」の妖精たちは迎賓館の国王私室に招かれ、酒席を共にしていた。
ポルンとルルンは会議の途中から眠っていてもう寝室に入っていたが、「女」の方もミルクが接待役となって、別室で話が弾んでいる頃だろうか。
「さすが、パルミエ特産ココナッツワインは一味違いまんなぁ」
「大人の味ですぅ」
「ありがとうナツ、こっちは王国再建の記念に作られた品ナツ、是非どんどん飲んでほしいナツ」
美酒が次々と振舞われたこともあってか、次第に会話は盛り上がり身も蓋も無い話も増えてきた。
「でも、がさつだけれどもなぎさの体は健康的で良いメポ」
メップルが思わずなぎさの体つきに触れたのが最初だっただろうか。
「咲も瞳を閉じて寝息を立ててる顔はそそるものがあるラピ」
ジョッキビール片手のフラッピが声を潜めるように言った。
「ラブはんとせつなはんはええ乳してまっせえ〜、あれは相当なもんや」
「何言ってるナツ、脱いでみたらこまちも凄いナツ」
「乳の大きさだけじゃないロプ、うららの白い首筋にはゾクっとするロプ」
「そうココ、のぞみの子供っぽい体も朝のベッドで触れると柔らかくて良いココ」
タルト・ナッツが自説をぶってシロップとココがそれに反論した。
もはや妖精と言うより淫獣という呼び名が相応しいかもしれない。
「コッペ様コッペ様、いかが思いますムプ?」
飲みもしないグラスを持っただけで立ったままのコッペに、ムープが問いかけた。
長老の言や如何、と一同が注目する中で、目の動きからコフレが返事を通訳した。
「汝らは女体の奥深さを知らぬ、滴るような若さと共に熟れきった豊潤さもまた良からずや…だそうですぅ」
さすがはコッペ様、と盛り上がる一同であった。
酒宴を楽しむ妖精たちは、度重なった激闘から解放されたひとときの休息を満喫していた…
というよりは普段生活を共にしている少女達から離れて同性のみで集まった気安さから、さながら宴会での中年男性達のようではあったが。
と、ここまで一同の中で一人日本酒『岸壁』をちびりちびりと飲んで会話を聞いていただけの妖精が居た。
ポップである。
(未だロイヤルクィーン様目覚めず、メルヘンランドの前途も危うい中、若輩である拙者の不徳と諸先輩の大義は申すに及ばないでござる…
…しかし、先程来の御公論は一体何でござるか、拙者は男として斯様な戯言を申す気などござらぬ!)
そこへココが問いかけてきて、一同の視線はポップに向けられた。
「ポップは誰かに感じたココ?」
これでさすがに酔いが覚めた、とは後にこのことが外交問題になりはしないかと考えて、
国王が国王に行う異例の謹慎処分をココに下したナッツの言である。
「でもココはん、ポップはんは誰とも寝起きは共にしておりまへんから、余り興味もないんとちゃいますか」
「でも意外に普段の様子から分かるラピ」
「皆少し子供っぽそうな体ムプ」
「なおのすらりとした体は良さそうですぅ」
「やよいの丸っぽい体つきも良いロプ」
「5人の中から選り取り見取りで羨ましいメポ」
5人から…そのような考えは無かったが、ポップの脳裏に浮かんだのはれいかだった。
あの凛として礼儀と気品のある態度、道に賭ける情熱などは大いに好感を持っているが、別にれいかの体にではない、とポップは思った。
(れいか殿に失礼でござる)
しかし次の瞬間にはれいかの胸や腰のラインを思い出して、思わず顔を赤くしていた。
れいかは何時も露出度の高い服は着ないが、あの胸は意外に大きそうだし、あの太腿も良い肉付きだし、そしてその間の秘密の園は一体…。
「べ、別に誰の体のことも見たことも…な、ないでござる」
「照れてるココ、きっと誰かが気になってるココ」
ココの突っ込みに一同が沸き、
「さあ誰か教えるメポ」
追及の手を強めようとしたその時。
「いいニャ、サービス・サービスにゃ」
突然聞こえた「女」の声に一同がギョッとしたのは言うまでもない。
「ハミィ、どうしてこの部屋に居るナツ」
机の裏でワインとビールをラッパ飲みして、すっかり出来あがっているハミィに驚いてナッツが尋ねた。
「ジュースを持ってこようとしたらここに瓶があったのでそっと入って飲ませて貰ったにゃ。
不思議なジュースにゃ。それより皆一体何ということを話しとったにゃ。聞くに堪えぬにゃ。
月にかわっておしおきニャ」
暴れ出したハミィに対し余り酔っていなかったポップ達は何とか難を逃れたものの、
それまでほとんど動きもしなかったコッペが「イケメンさん」となってハミィを眠らせるまで暴力の嵐は続いた。
瓶で殴りつけられるなどして重傷2名、軽傷3名の負傷者を出しながら、本人は起きてから何も覚えていなかったことから、
幸福のメロディの歌い手としてではなく、メージャーランドの魔の酒乱としてパルミエ王国史に名を残したハミィの酒乱事件であった。
その次の日。
何とか口を割らずに済んだポップはキャンディに会いに行ってれいかのスクール水着姿を目撃し、やっぱり感じていたとかいないとか。
今宵はここまでに致しとうござる。(おわり)